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特別養護老人ホーム: 介護職員が 「違法」 吸引、 法と現実に大きなズレ

 中日新聞Web (2009/7/16) に、特養の介護職員による痰の吸引問題に関する記事が掲載されていますので、下記に示します。

特養 介護職員が“違法”吸引 法と現実 大きなズレ

 たんの吸引や、チューブで胃に流動食を流し込む経管栄養の処置は、本来、医師や看護職員以外の人がするのは違法な医療行為。
 しかし、特別養護老人ホームでは、看護職員の手薄な夜間を中心に、介護職員が行わざるをえないのが現実だ。
 現場の職員は 「法律や制度と現実のギャップが大きすぎる」 と法整備を訴える。(佐橋大)。

 「夜、たんが絡まって苦しんでいる人に 『看護師が来るまで、待って』 とは言えない」。
 愛知県の特養で働く女性介護職員は、苦しい胸の内を明かす。

 女性の働く特養では夜間、看護師は原則、自宅待機。
 判断に困る場合は看護師を呼ぶが、その場の介護職員がたんの吸引をすることが多い。
 こうした職場は例外でない。

 日本介護福祉士会が5~6月、特養の介護職員に行った調査では、午後9時~午前6時に介護職員が口の中の吸引の対応をしている施設が83%。
 のどの奥や鼻の吸引も32%あった。
 対応している施設の8割以上の介護職員が不安を感じながら行っている。

 昨年の厚生労働省の調査では、たんの吸引をするはずの看護職員が毎日、夜勤や宿直をする施設は2%。
 ところが、一日の吸引の2割は、看護職員が手薄な午後10時~午前6時に行われていた。

 これには理由がある。特養は 「生活の場」 と位置付けられてきたため、法律が置くよう求める看護職員数は、老人保健施設や療養病床に比べ少ない。
 入所定員100人の施設でも3人。
 法律に従って配置しても、最少人数では夜勤や宿直の体制を敷くことは不可能で、日常的に医療行為が必要な人は受け入れられない。

 ところが、現実には、医療行為が必要な入所者や希望者が増えている。
 本来、こうした人の受け皿である療養病床を削減する政策を国が進めているためだ。

 名古屋市のある特養では約80人の入所者のうち、たんの吸引が日常的に必要な人、経管栄養の人は各6人。
 特養では、法定の3人を上回る5人の看護師を雇い、原則、毎晩一人ずつが宿直し、対応している。
 しかし、人件費などの面から、看護師の増員は難しい。
 「医療行為は看護職員」 という規則がネックになり、入所希望者の受け入れも限界に近いという。
 「行き場がないと分かっていても、受け入れは慎重にならざるをえない」 と担当者は話す。

 特養の全国組織、全国老人福祉施設協議会 (老施協) によると、特養の約75%は基準を超える看護職員を配置している。
 老施協の福間勉事務局長は 「特養は医師が非常勤で、担当する入所者も多い。経験の浅い看護職員では務まらない。でも、ベテランだと夜勤ができる人は少ない。構造的に看護師が集まりにくい。看護職員の増員で対応するのは困難」 と話す。

 現状では、介護職員に違法行為をする精神的負担がのしかかるばかりか、合法でないので研修もできない。
 厚労省は2月、医療行為の一部解禁についての検討会を発足。
 6月に示された案では、医師の指示の下、一定の研修を受けた介護職員が口の中のたんの吸引や経管栄養の準備などを行う。
 のどの奥の吸引や、経管栄養実施前の流動食の確認や注入行為など、より高い技術と知識が求められる部分は看護職員がする。
 今後は、この案を一部特養で試行し、安全性を検証。
 問題がなければ、来年度解禁となる。

 現場の介護職員からは 「法的に問題ない線を示してもらえると気が楽」 と歓迎論の一方、「責任や負担だけ増えるのは困る」 という声も聞かれる。
 また、医療関係者から 「高齢者のたんの吸引は簡単でない」 などの慎重論もある。

(1)「安心と希望の医療確保ビジョン」 具体化に関する検討会の中間とりまとめ (平成20年9月22日) の中で、コメディカル等への医療行為のエンパワーメント (権限と責任の委譲)・スキルミクス (エンパワーメントを伴う真の多専門職種協働) について、次のように示されています。

●3.コメディカル等の専門性の発拝とチーム医療

 よりよい医療を実現するためには、治療にあたるチームを構成する医師のみならず各コメディカルが専門性を発揮していくことが重要である。

○コメディカルが専門性を持ち、キャリアアップできる仕組みが必要であり、そうしたことへのインセンティブの付与や支援が必要である。同時に、コメディカルの数を増加させることについて具体的な検討が必要である。

○チーム医療を実践することや各職種が専門性を発揮し、患者のためのよりよい医療が行われる体制がとられることを前提に、その職種でなくても行いうる業務を他の職種に担わせるスキルミクスを進めるべきである。

○患者の安全性向上のため、4年制大学への移行も視野に、看護師基礎教育の充実を図るべきである。

○医療者と患者間の真の協働関係を樹立するためには、医療従事者が全体として、患者の立場を十分に配慮するという施設の「文化」を醸成する必要がある。そのためには管理者の姿勢が重要である。諸外国の例を参考にしながら、医療における院内メディエーターの活用も今後の検討課題とすべきである。

 コメディカルおよび介護職員等への医療行為のエンパワーメント (権限と責任の委譲) において、最悪のパターンが、「責任と負担だけ押しつけられて、『真の権限委譲および相応の給与アップ』 が伴わない」 場合です。

 インセンティブどころか、逆インセンティブが働き、益々、「介護職員等の立ち去り」 が増大しますので、エンパワーメント (権限と責任の委譲) の施行には周到な準備と配慮が必要と考えられます。

(2)一方、「一定の医療行為を必要とする患者等」 を、「医療パワーが乏しい・急変時の対応を即時に適切に施行することが困難である」 特養等の介護保険施設あるいは在宅等において看ていくことが妥当なのか、という根源的な問題もあります。

 ヒトの尊厳にも係わる問題であり、「療養病床の再編」 の再考・「医療難民・リハビリ難民・介護難民」 対策も含めて、政府・厚生労働省による実効性の高い施策が望まれます。




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介護職の口腔内吸引・経管栄養でモデル事業 (厚労省・特養検討会)

 前回の当ブログ記事 [特養における 「医行為のモデル事業」 を了承 (厚労省検討会)] の続編です。

 Japan Medicine (2009/6/15) に、「特養における医行為のモデル事業」 に関する記事が掲載されていますので、下記に示します。

●介護職の口腔内吸引・経管栄養でモデル事業 (厚労省・特養検討会)

 厚生労働省は、介護職員が口腔内吸引と経管栄養を実施するモデル事業を行う方針を決め、10日の 「特別養護老人ホームにおける看護職員と介護職員の連携によるケアの在り方に関する検討会」 (座長=樋口範雄・東京大大学院法学政治学研究科教授) に提示した。
 介護職員による医行為の 「解禁」 を視野に、ガイドラインづくりと施設内研修の在り方を検討する。
 厚労省はモデル事業を年内に行い、来年度には特養全体での実施を目指す考えだ。

 厚労省が示した 「たたき台」 によると、モデル事業は、
  ①看護職員と介護職員が連携してケアを行う場合の研修内容とケア実施ガ
   イドラインの検討
  ②施設内研修のための指導者養成研修の実施
  ③施設内研修・連携ケアのモデル実施
  ④モデル実施に関する調査・検証
などが柱。
 事前に有識者による検討委員会を設置し、モデル事業での業務指針を策定し、対象施設への研修を実施するとしている。

 介護職員が実施できる範囲は、口腔内吸引は、
  ①必要な物品準備など実施準備
  ②対象者への吸引の説明と環境整備、口腔内観察、吸引の実施
  ③対象者の状態観察、ケア責任者 (看護職員) への報告
  ④吸引びんの排液を捨てるなど片づけ
  ⑤評価記録。
 一方、経管栄養 (経鼻経管栄養と胃ろうによる栄養管理) では、実施ケアのうち 「流動物の確認やチューブの接続と注入、注入直後の状態観察など」 は実施できないが、
  ①注入中の状態を定期的に観察。
  ②注入終了後、30~50mLの白湯などを注入し頭部を挙上した状態を保つ。
ことはできるとした。
 これらはいずれも 「医行為」 の範囲で、現行法では介護職員は実施できない。
 モデル事業では、看護職員がいない場合でも、情報共有や連絡相談体制がとれていれば、介護職員が単独で行えるようにする方針だ。

 厚労省老健局計画課の菱田一課長は 「介護職員の痰の吸引などを認める場合、どのような法的構成が考えられるか、法的論点について検討してもらいたい」 と話した。

 同日は日本介護福祉士会が行った 「特養での介護福祉士らの吸引、経管栄養の実施状況」 に関する調査結果の報告もあった。
 調査は5月30日~6月8日に実施し、1,102人から回答を得た。
 口腔内吸引は 「午後5時半~午前8時半まで」 では7割以上が 「介護職も対応している」 と回答。
 鼻腔内吸引は 「午前6時~午前8時半」 では43.0%が介護職も対応していた。
 胃ろうも各時間帯で介護職も対応しており、「午前6時~午前8時半」 の58.1%が最も多かった。
 吸引を実際に行っている人の中で 「不安を感じる」 とした割合は83.8%に上った。

(1)今回の特養での喀痰吸引のモデル事業は、相対的にリスクの高い 「経鼻的喀痰吸引・咽頭より奥の喀痰吸引・気管切開部からの喀痰吸引」 を除いた、「口腔内吸引」 に限定されました。

 しかしながら、上記記事の通り、特養での介護福祉士は、「吸引」 に 「不安を感じている」 割合が8割を超えています。
 但し、この調査結果 (特別養護老人ホームにおける看護職員と介護職員の連携によるケアの在り方に関するアンケート調査・結果概要報告書) における 「吸引」 は、「喀痰吸引」 と明記されておらず、「経鼻的喀痰吸引・咽頭より奥の喀痰吸引・気管切開部からの喀痰吸引」 と 「口腔内吸引」 との区別もされていないようですので、今回のモデル事業で行われる 「口腔内吸引」 に対する不安度は不明確と思われます。

 また、不安を感じる理由について、医療行為であり、違法であるにもかかわらず、業務上行わざるを得ないという 「制度上の不安」 と、喀痰吸引そのものに対する 「技術的な不安」 が多いことが、以前より指摘されています。

(2)一方、介護職員に対して、一部の医療行為をエンパワーメント (「権限」 と 「責任」 の委譲) する側の看護職員の意識として、キャリアブレインのCBニュース (2009/6/15) に下記の記事が掲載されています。

看護職の9割が介護職の喀痰吸引に賛成―全老施協調査

 口腔内の喀痰吸引を介護職員の職務範囲に含めることに、看護職員の9割が賛成していることが、全国老人福祉施設協議会 (中田清会長) などが公表した調査報告書で分かった。

 調査は 「特別養護老人ホーム入所者への医療対応と職務連携のあり方に関する調査研究事業」 の一環。
 昨年10月に全国の特別養護老人ホーム500施設を対象に実施し、介護職員1,184人、看護職員761人から回答を得た。

 それによると、現在違法行為とされている介護職員による口腔内の喀痰吸引を、介護職員の職務範囲とすることに賛成の看護職員の割合は90.7%で、反対は 5.1%だった。
 介護職員自身の賛成は77.6%、反対は19.6%で、介護職員よりも看護職員の方が前向きに考えていることが明らかになった。
 賛成の理由については、看護職員では 「リスクが少ないから」 が37.5%、介護職員では 「対象入所者が多いから」 が34.4%でそれぞれ最多となった。
 同会の福間勉事務局長は、「看護職の業務にしなくていい、切り離していい、という現場の感覚に基づくのではないか」 としている。

 一方、咽頭より奥の喀痰吸引については、看護職員の賛成が37.5%、反対が55.6%、介護職員の賛成が38.1%、反対が58.3%と、共に反対が賛成を上回り、口腔内の喀痰吸引に比べ、介護職員の職務範囲にすることには慎重な姿勢が見られた。

 介護職員が胃ろうの管理をすることについては、看護職員の賛成は67.0%で、反対は27.6%。
 一方、介護職員の賛成は43.2%、反対は52.3%だった。
 賛成する理由として、「リスクが少ない」 と考えている看護職員は24.7%、介護職員は16.0%だった。

 経鼻経管栄養の管理については、看護職員の賛成が40.7%、反対が52.4%で、介護職員の賛成が34.9%、反対が59.9%となり、いずれも反対が過半数を占めた。

 上記記事の通り、特養の看護職員の意識として、介護職員による 「口腔内の喀痰吸引」 は肯定的ですが、「咽頭より奥の喀痰吸引」 は否定的のようです。

(3)前回の当ブログ記事でも述べましたが、「特養における医行為のモデル事業」 が順調に進み、喀痰吸引をはじめとした各種の医行為・医療行為のエンパワーメント (「権限」 と 「責任」 の委譲) ならびにスキルミクス (真の多専門職種協働) が進展することが望まれます。

 また、リハビリテーションの分野においても、セラピスト [特に、呼吸理学療法を行っている理学療法士 (PT) あるいは嚥下訓練 (特に直接訓練) を行っている言語聴覚士 (ST)] による喀痰吸引の解禁が望まれます。

 但し、医療行為のエンパワーメントの際には、介護職員およびコメディカルへの充分な教育・研修および様々な環境調整等、慎重なアプローチが必要と考えられます。




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「わが国の医療政策の方向」 (厚生労働事務次官・講演)

 Japan Medicine (2009/5/27) に、日本病院会総会において江利川厚生労働事務次官が行った講演 「わが国の医療政策の方向」 に関する記事が掲載されていますので、下記に示します。

【わが国の医療政策の方向】

●少子化問題克服が安定的制度設計につながる

 厚生労働省の江利川毅事務次官は、「わが国の医療政策の方向」 をテーマに、最近の医療施策の動向について言及し、少子化問題が克服できないと安定的な制度設計ができないと指摘した。
 特に、医療費の現状は、高齢者の医療費が若人の約5倍だが、諸外国では同じ数値が約3倍にとどまるとし、高齢者の医療費の削減は避けられない施策であることを示唆した。

 講演後の質疑応答では、フロアから医師の負担軽減策として入院時医学管理加算や、入院基本料7対1など、打たれる施策がちぐはぐとの意見が出された。
 これに対して、江利川事務次官は、「政策の連携が重要」 とし、それを意識した人事異動を夏に行いたいとの考えを示した。

 さらに、医師不足等や医療技術の高度化に伴い、医師、看護師等の役割分担の見直しが求められる中で、NP (ナースプラクティショナー) などの医療職の検討に関する質問が出された。
 同事務次官は、歩みは遅いが検討を進めている状況ではないかと回答した。

(1)相も変わらず、「高齢者の医療費の削減は避けられない」 との御託宣です。
 事ここに至っては、発想の大転換をして頂き、「必要な高齢者の医療費は確保する」 という大前提で、他の分野の 「税金の無駄使い」 を大胆にカットして頂き、その結果、「削減するものが最早ない」 ということを一般国民が充分納得した上で、最後の最後で消費税増税論議に入って頂きたいと思います。

(2)フロアからの質疑応答時の 「打たれる施策がちぐはぐ」 との意見に関しては、2年ごとの診療報酬改定の総責任者である厚生労働省保険局医療課長が変わるたびに、診療報酬体系の精神・思想および方向性が相当変わる、あるいはブレる印象があります。
 政府が最終決定する診療報酬改定率に翻弄されるからかも知れませんが・・・。

(3)上記のNPをはじめとした 「医師から看護師等のコメディカルへのエンパワーメント (権限と責任の委譲)」・「スキルミクス (真の多専門職種協働)」 については、「医師 (特に勤務医) の負担軽減」・「チーム医療」 において大変重要な課題です。

 法律上の諸問題ならびに各専門職種における様々な利害関係等がネックとなり、遅々として進展しない印象を受けますが、「医療崩壊・医療破壊」 のこれ以上の増悪を防ぐためにも、拙速は避けつつ、一歩一歩前進して頂きたいと思います。

【関連記事】
 ◎ 「医師不足対策の誤りを指摘」 (日野原重明・聖路加国際病院理事長)
 ◎PA (非医師高度臨床師) ・NP (ナース・プラクティショナー)
 ◎医療職種の役割分担 「検討の場、設置を」 (医道審議会)
 ◎ 「医行為のコメディカルへの権限委譲」 厚労省見解




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「医師不足対策の誤りを指摘」 (日野原重明・聖路加国際病院理事長)

 首相官邸ホームページに 『経済危機克服のための「有識者会合」』 における各有識者の提案が掲載されています。
 その中で、社会保障部門 (2009/3/21) における日野原重明・聖路加国際病院理事長の提案内容を下記に示します。

 97歳の現役医師、且つ、学会・講演会で全国を飛び回られている日野原重明先生のバイタリティ・ヒューマニティには頭が下がります。
 その日野原先生が、2009年に政府が決定した医師不足対策をバッサリと切り捨て、また、医師から看護師等のコメディカルへのエンパワーメント (権限と責任の委譲)・真のスキルミクス (多専門職種協働)、メディカルスクールの導入、はたまた、自衛隊隊員増員による雇用対策等、斬新な私案を主張されています。

 これからも、日本の社会保障、ひいては日本の将来のために、更なるご尽力をお願いしたいと思います。

●医師不足への対策の誤りを指摘する。

(1)医師不足への対応として医学生入学定員を693名増員 (総数8,486名) させることを2009年に決定した政府の対策は将来悪化する医師不足への解決法とならない。

 医師不足の中での一番の問題は麻酔科医・産科医・小児科医の不足であるが、本年度から医学生入学定員を増しても、卒後1~2年の研修終了医師が独立して医療が行えるのは今から7~8年後であり、その時点で若手医師が自ら専門科目を選ぶ時は、条件の不利な麻酔科、産科、小児科を選択する見込みは依然少ない。
 医療過誤の賠償支払いの危険性の高い産科医、外科医、麻酔科、そして、今の健康保険支払い下での収入の少ない小児科医を選択する医師も少ないと予想される。

 産科医の多くは女医であり、病院の産科で女医と共に働く男性産科医は女性の妊娠、育児、家事により職場を休む期間は男性産科医には勤務時間過多の不利を招く。

 麻酔科医は麻酔前後の2日間のみしか患者・医師の関係が維持されないので、臨床医としての生き甲斐を感じさせる患者との関わり合いは一時的のもので終わる。

 以上のことから、今回の厚生労働省と文部科学省案での医学生入学定員増は、毎年の卒後医師を12%増加させるに止まり、10年先の医師必要数をすぐに補うことはできない。

(2)医師不足への私案

 医師として登録された者は、医療を生涯行える特権があるが、看護師 (保・助・看) は、「傷病もしくはじょく婦に対する療養上の世話または診療の補助を行うことを業とするものをいう」 との昭和23年の昔に制定された法律が引きずられて今日に至っている。

 現在、日本には6年制医学部が80校あるに対して、4年制看護大学は167校あり、その中で2年の修士課程を持つ大学は109校もある。

 私はこの109看護大学がその修士課程で患者の持つ疾病の診断とある程度の治療をも医師の諒解の下に行える体制に導くことが保健師、助産師、看護師にも適用できる法規に改正されれば、上述の医師不足を補うことが可能と思う。

 米国・カナダでは、40年も前からナース麻酔師 (Nurse anesthesist) が麻酔専門医師 (Anestheologist) の監督の下に独立して麻酔術が行える体制にあり、外科手術の80%はナース麻酔師により独立して行われている現状である。

 同様に米国・カナダでは訪問看護師 (visiting nurse practitioner) は病院外で在宅診療 (診断、薬物処方、医療処置) が行えるようになっている。

 専門助産師も診療の他、小手術や薬物処方ができ、また小児科学をマスターした小児科看護プラクティショナーは哺乳、育児、はしかその他のcommon diseaseなどのプライマリー・ケア実地診療が行えるようになっている。

 米国やカナダでは看護師を修士レベルで教育した上で、上述の業務が行えるように許可されているので、このことは日本でも可能であると思い、この修士コースを聖路加看護大学大学院修士課程で4月から発足の準備中である。

●4年制大学 (一般教養または文理科いずれかの4年制大学卒業者を入学させて
 の4年制大学院医学校) 発足の準備


 日本では医師は高等学校卒業直後の入学試験で医学部に入学できた者で、6年の課程修了者は医師国家試験に合格すれば、医師として医療に従事可能である。
 しかし高校卒の時点での学生は将来医師を志す動機が弱く、社会人として人間の命に直結する学習を始めるには人間的に未熟である。
 然し筆答試験を主とした入学試験に合格すれば医学生として教育されることになる。
 この人間として未熟である時期に医学部に入学した医学生らには将来医師として働くことの使命感が少なく、学習に真剣さがなく、出席がとられない授業には欠席や遅刻が多い。
 この点では米国やカナダでの医学生の勤勉ぶりには遙かに劣っている。
 米国やカナダの医学教育は真の教育法を心得た専門家の援助を受け、基礎医学、臨床医学、栄養学、臨床疫学、生命倫理の学習が行われ、4年の課程の中でも、医学研究の方法論が実践的に学習されており、臨床医学を修得した者が、後に基礎医学の専門に進む者も少なくない。

 日本の医学部の教授の専門性別の数の配分には今日でも明治時代の旧帝大の名残りが残っている。
 一方、米国やカナダの医学生の年々の急速な学力の伸びには驚くべきものがある。

 そこで私は米国、カナダ式の大学院レベルの4年制の医学校 (法科大学院に準じる) を東京都石原慎太郎知事とも相談して企画し、伝統ある聖路加国際病院を母胎として米国のメーヨー・クリニックやクリーブランド・クリニックが優れた総合病院を土台として医学校を発足させた例に学び、内閣府に教育特区を申請し、在来の日本の旧制の医学部での実績と教育的効果を競う特権が与えられる大学院医学校が開校できることを切望し、目下その準備中である。

 日本の従来の医学教育は世界的に見てひどく見劣りがしている。過去1世紀余の間にノーベル生理学医学賞は2008年までに196人に授与されているが、日本人の受賞者数は僅か1人 (しかも理学士の利根川進氏のみ) で、世界の国別のノーベル医学・生理学賞受賞者の数が1名というのは、世界で17位である。
 日本では過去100年あまりの間に約100万人の医学生が医学部を卒業したが、今までに1人の医学部卒業生も受賞していない事実は大問題である。

●最後に一言

 自衛隊員 (現在約24万人) を2倍に増員し、国内外での自然災害や難民の救済を日夜いつでも出動できる体制を作り、政府の直轄公共事業に参与させる。
 そのことを今日の失業対策の一方法とする。
 大学や専門学校の卒後の男子で25~50歳の者で職を探しているものは自衛隊に入隊して訓練を行い、そのことにより彼らは生活の保障を与える。
 そのための給料の支給費は、自衛隊の軍備の予算を削って支払う。米軍に貸与した国内米軍基地の縮小により削られた政府の予算は、自衛隊員の人件費に回す。
 10年後には米軍基地を引き上げるように米国側に交渉し、その5年後の、今から15年後には空母艦隊をも日本の近海から引き上げる交渉をオバマ米国大統領に日本政府は申し出て、日本を武装ない国家として日本憲法九条の実を挙げる。
 また、日本人には18歳にて選挙権を与え、若者の自己責任心を助長させ、日本を平和を志向する武装なき文化国家のモデルの1号とする。
 そのためには今のうちから小学生に命を愛する心の授業を戦争を経験した老人が行う 「新老人の会運動」 (会長・日野原重明) の使命を果たすことを期したい。




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経済危機克服のための 「有識者会合」 発言のポイント (社会保障)

 経済財政諮問会議 (2009/4/7) (議事:①経済危機克服の道筋、②経済危機克服のための 「有識者会合」 への対応) において、『経済危機克服のための 「有識者会合」 84名の発言のポイント (内閣府)』 という資料が配付されています。

 その中の、「社会保障」 分野における有識者12名の発言のポイントを下記に示します。

 麻生太郎首相が4月7日、社会保障や財政などの政策目標や優先順位を議論する有識者会議 「安心社会実現会議」 の設置を表明したことを受け、政府の経済財政諮問会議は4月下旬から、医療や介護などに関する実態分析や社会保障改革の工程表の具体化について集中的に審議していく予定です。

 社会保障の有識者12名の発言が、経済危機克服のみならず、「社会保障危機、医療・介護・福祉の危機 (社会保障崩壊、医療・介護・福祉の崩壊)」 の克服に、どう生かされていくのかが注目されます。

経済危機克服のための 「有識者会合」 84名の発言のポイント

【社会保障】

●大久保 満男氏 (社団法人・日本歯科医師会会長)

①日本歯科医師会は健康日本21の中で、8020 (80歳で歯が20本) 運動を推進し、高齢者の歯の健康維持に取り組んできたが、5年間の中間評価では予想以上の高い割合で高齢者の歯の健康が保たれている。

②歯の健康が身体的健康や生活の活発化にもつながるという調査結果や実例、また、かかりつけ歯科医師の有無が累積生存率に影響が大きいという調査結果もあり、歯の健康は、生活の活発化、ひいては健全な消費活動につながり社会全体も活性化すると考えられることから、社会保障費の削減はまずい政策だと思っている。


●唐澤人氏 (社団法人・日本医師会会長)

①経済危機が叫ばれる中、地域医療体制も崩壊の危機。社会保障国民会議において社会保障の機能強化が示されたところだが、真に国民が安心できる社会保障制度の構築が必要不可欠。

②国民の不安が高まる中で良質で安全な医療を安定的に提供するのは、投資が必要だが、医療機関の経営状況は厳しく、原材料価格高騰対策等緊急保証制度において、医療機関を対象としていただきたい。

③病院勤務医の労働環境は厳しく、看護・介護従事者の給与水準は全産業平均で見ても低水準。職業倫理による努力も限界に近づきつつあることから、勤務状況を改善し、魅力的な職種にしていくことが必要。

④医療・介護分野に対し、積極的な財源投入を行い、着実な雇用拡大を行うとともに、あまねく国民へ還元すべきことを提案する。


●京極宣氏 (国立社会保障・人口問題研究所所長)

①社会保障は、経済効果 (内部経済効果、バリアフリー等への投資効果、セーフティネットの整備に伴う安心による所得効果) が大きい。

②21世紀の社会保障の量から質が重要となり、サービスの水準等を向上させることにより、社会保障の拡充とスリム化は両立できると考える。

③現行の生産年齢人口の15~64歳を 25~74歳に捉え直せば、2055年の65歳以上の社会は高齢者1人を1人が支える社会から75歳以上の高齢者1人を2人強で支える非常に安定した社会となる。

④従来は公共事業が景気対策の主な柱であったが、日本版ニューディールとして、従来型の景気対策でなく、社会保障サービスの充実を切り口に大不況を克服するという視点を持つべき。


●児玉 孝氏 (社団法人・日本薬剤師会会長)

①政府は社会保障費の2,200億円抑制方針を未だに撤回していない。長期安定的な社会保障制度の確立に向けた目的税の確保が必要。

②今後高齢化が進む中で、高齢者が使用する医薬品数も増え、複数の医療機関を受診する確率も高くなる。現在60%である医薬分業を欧米並みに拡大するとともに、在宅医療のニーズが高まっており、入院から在宅まで他職種と連携したチーム医療を普及することが重要。

③健康を自分で守るセルフメディケーションを推進すべき。


●竹中ナミ氏 (社会福祉法人プロップ・ステーション理事長)

①すべての人に、人や社会を支える力がある。それを引き出し、誇らしく生きられるようにすることが、元気な社会づくりの基盤である。

②性別や年齢や障害の有無に関わりなく、誰もが社会を支える一員となれる共生・共助の社会を作るため、「ユニバーサル社会 (共生と共助の社会) 基本法」 の制定に向け取り組んでいる。

③アメリカでは、ペンタゴンにあるCAPという組織で、各省庁の重い障害を持つ職員のICT支援を行っており、そこでの最先端の科学技術を応用した取組が大統領クオリティ賞を受賞した。スウェーデンでもやはりICT技術と人のサポートを組み合わせ、認知症の高齢者が街中で一人で、あるいは家族と生き生き生活している。障害のある人が活き活きと働き社会の支え手ともなれる仕組みは、女性や高齢者の力を生かす仕組みともなる。諸外国のすばらしい取組は、きっと日本でも実現が可能である

④ICT等を活用し 「障害者 (チャレンジド) をタックスペイヤーに出来る日本」 を実現することが、今求められている。


●中田 清氏 (社団法人・全国老人福祉施設協議会副会長)

①重度要介護者20万人の待機者解消のための緊急的な介護施設整備を行うべき。民間主体で2兆円規模となり、15万人の雇用創出効果が期待される。これは、小規模多機能等に比べて、運営効率化の観点から職員処遇の改善や介護給付費の抑制にもつながる。そのために、施設の総量規制の緩和と公費負担割合の見直しを行うべき。

②在宅介護では家族の負担は大きい。渋川のNPO法人による無認可老人施設が火災し、多くの人が亡くなる痛ましい事件があった。宿直職員が1人しかおらず、介護保険法上の必要な届出をしていない施設だったとのことで、このような施設が数多くあるのは、要介護高齢者の行き場がないからだ。


●久常節子氏 (社団法人・日本看護協会会長)

①超過勤務をやめ、7時間労働にする等、看護師を含む女性の働き方を見直し、少子化対策として推進すべき。

②生活習慣病対策として、5年ごとに個人の生活習慣病予防の努力を評価する仕組みを構築すべき。医療費増の要因は、生活習慣病予防であり、糖尿病が進行し、透析を受けた場合、年間の医療費は約600万円かかる。


●日野原 重明氏 (聖路加国際病院理事長)

①医学部定員の増は、将来的に産科、小児科、麻酔科等の医師不足の診療科目を選択する保証はない。医師不足解消のためには、昭和23年から抜本的に改正されていない医師・看護師の役割分担を見直し、(アメリカのように) 診断や治療等の一部を看護師に担わせるべき。

②医学教育強化のため、4年制大学院医学校を設置すべき (特区を活用)。日本人のノーベル医学・生理学賞の受賞者はわずか1人に過ぎない (しかも理学部卒業者である)。

③老人の定義について65歳から75歳に引き上げるべきことを2010年の国連総会において提言予定。


●堀田 力氏 (財団法人・さわやか福祉財団理事長)

①不足する福祉施設 (保育園、子育ち支援施設、特別支援学校、グループホーム等) の整備のために、高齢者の投資への優遇措置 (優先入居や孫の優先入園、相続税優遇、政府保証等) を行い、眠っている資金を活用すべき。

②福祉施設就労に向けた無償教育等を行い、志を持つ者の教育の充実を図る等、人材への投資を推進すべき。


●矢崎義雄氏 (独立行政法人・国立病院機構理事長)

①診療報酬とは別枠で病院にもドクターフィーを導入することにより、勤務医確保のための処遇改善を行う必要がある。

②病院の耐震化や太陽光パネルの設置等のエコ改修も行うべき。

③外来患者のトリアージを行う戸山病院、国府台病院の外来棟改修やワクチンの大規模生産のための整備等新型インフルエンザ対策を行うべき。

④医療職の業務の見直し、特に医師と看護師の協働の促進。

⑤レセプト・電子カルテへの財政支援、地域で病院群がコンソーシアムを形成して、機能分担や共同研修を行う等、地域医療の課題克服のための対策や治験促進への財政支援を進めるべき。


●山本修三氏 (社団法人・日本病院会会長)

①医療の質・安全確保のための病院耐震化や医療機器の整備支援、および 病院IT化推進のため電子カルテの基本となるオーダリングシステムの標準化を政府が行うべき。

②ドクターズ・セクレタリーの導入による、医師の勤務環境の改善につながる新規雇用の創出を行うべき。

③高度先進医療、特に再生医療の臨床応用に向けた研究開発を推進すべき。


●湯浅 誠氏 (反貧困ネットワーク事務局長)

①政府の雇用対策や住宅対策の利用に当たって、自治体主導では住民票要件がある、利用希望者が集まってしまうことを懸念して取組に消極的になる等の理由から、折角の対策にたどり着かない人が多く存在。つなぎ対策を受けるための 「つなぎのつなぎ」 支援が必要。国が会社の寮の空き室、民間アパート、公営住宅を借りるに当たって、直接借り上げを行うべき。

②4月、遅くとも5月には、「民間アパート等を国としてこれだけ確保している」 というメッセージを明確にするなど、住宅確保や生活費確保等の貧困対策を雇用対策のパッケージの中に含めるべき。




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