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平成22年度診療報酬改定に係る要望書・第2報 (日本病院団体協議会)

 日本病院団体協議会 (日病協:国立大学附属病院長会議、独立行政法人国立病院機構、全国公私病院連盟、全国自治体病院協議会、全日本病院協会、日本医療法人協会、日本私立医科大学協会、日本精神科病院協会、日本病院会、日本慢性期医療協会、独立行政法人労働者健康福祉機構) が、厚生労働省保険局長宛に提出した 「平成22年度診療報酬改定に係る要望書 (第2報)」 (2009/7/31) を下記に示します。

●平成22年度診療報酬改定に係る要望書 (第2報)-日病協-

 日本病院団体協議会は、崩壊しつつある病院医療の再生のために、平成21年4月16日付で 「平成22年度診療報酬改定に係る要望書 (第1報)」 を提出した。
 第1報では、医師不足に起因した日本の病院医療崩壊の現状、看護師不足に起因した病院閉鎖の現状を述べるとともに、下記の2項目を要望した。

 1.入院基本料の根拠に基づく算定方式の創設と増額
 2.介護 (看護補助) 業務の確立と看護基準の柔軟な運用

 この度、平成22年度診療報酬改定において、上記2項目とともに病院医療全般に関して次の事項を要望する。

1.入院医療全般について

(1)入院基本料の根拠に基づく算定方式の創設と増額

 病院医療の再生に向け、根拠に基づく算定方式の創設と入院基本料の増額を要望する。
 *平成22年改定においては、医療経済実態調査、各病院団体の経営調査等
  の結果を反映し、実態に即した入院基本料の増額を要望する。
 *短中期的課題として根拠に基づく入院基本料の算定方式の創設が必須で
  ある。このためには診療報酬調査専門組織医療機関のコスト調査分科会
  等、専門的な議論が可能な組織での立案、検証が行われるべきである。
 *また、医師、看護師、薬剤師、管理栄養士、リハ職員、MSW、PSW
  等の多専門職によるチーム医療を評価し、入院基本料に加算することを
  要望する。

(2)介護 (看護補助) 業務の確立と看護基準の柔軟な運用
 医療の安全と質を向上させるとともに、慢性的に不足している看護職員にとって働きやすい職場を創造するために、以下を要望する。
 *7:1、10:1入院基本料の病棟においても、現実には介護 (看護補助)
  業務も多く、介護 (看護補助) 職を配置せざるを得ない。上記病棟におい
  て、看護補助加算を算定可能とするとともに、介護 (看護補助) 職の夜勤
  に対する評価を要望する。
 *病棟における患者の状態によっては、医療安全のために3名以上の夜勤
  看護師が必要となる。さらに、小規模な病棟では月平均夜勤72時間の基
  準を満たすことは不可能である。看護基準において、72時間の制限を緩
  和するとともに、2人夜勤体制は看護職員不足等の現実を考慮し、その
  一部を介護 (看護補助) 職の適応を認めるなど、現場の状況に応じた柔軟
  な対応を可能とすることを要望する。
 *日勤のみ勤務者や短時間労働者の雇用を促進するために月平均夜勤時間
  の算定において月夜勤時間数16時間以下の者も含めることを要望する。
 *1週あたり40時間労働は日本における全産業の労働時間の基本である。
  夜勤専従看護師においても例外ではなく、このように診療報酬によって
  労働時間の制限を規定することは避けるべきである。

(3)医師事務作業補助体制加算の適用拡大
 *入院医療全般にわたり医師事務作業は増加しており、その補助体制加算
  の点数を引き上げるとともに、すべての病院に対する加算に適用拡大す
  ることを要望する。

(4)診療情報の電子化加算の正当な評価
 *電子カルテやオンラインレセプトなど診療情報のIT化を推進するため
  必要な費用を診療報酬上正当に評価した電子化加算を要望する。

2.急性期入院医療について

(1)「入院時医学管理加算」 の見直し
 *平成20年度改定での見直しは現実に即したものではない。現状を勘案し
  た運用に変更すべきである。

(2)「救急搬送受け入れ加算」 の創設と 「緊急手術加算」 の増額
 *円滑な救急医療体制の構築においては三次救急 (救命救急センター) への
  患者一極集中を緩和する必要がある。しかしながら、二次救急医療体制
  の維持や緊急手術に備えるためには、多くの人件費等の固定支出が必要
  である。「救急搬送受け入れ加算」 の創設と 「緊急手術加算」 の増額を要
  望する。

(3)DPC救急入院時の評価
 *DPC対象病院への救急入院時、診断確定までの診療報酬を出来高方式
  とすることを要望する。

3.慢性期入院医療について

(1)医療療養病床における緊急対応の評価
 *在宅や介護保険施設などで療養中の慢性期患者が急変した場合の入院に
  ついて、「緊急対応入院加算」 の創設を要望する。

(2)急性期病床からの積極的受け入れの評価
 *急性期病棟から、医療区分2、3に相当する患者を受け入れる場合、30
  日間の 「医療対応初期加算」 の創設を要望する。

4.精神科医療について

(1)精神病棟入院基本料の増額
 *精神科の入院料は他科に比べ著しく低く、精神科入院基本料の大幅な増
  額を要望する。

(2)精神科救急・合併症入院料の算定要件の緩和
 *精神科疾患患者の身体合併症への対応を図るため、算定要件の大幅な緩
  和を要望する。

(3)児童精神科医療の充実
 *児童精神科医療の充実を要望する。

5.リハビリテーションについて

(1)急性期病院におけるリハビリテーションの評価
 *ベッドサイド・リハが中心となる急性期病院については、「施設基準」 で
  はなく、「人員配置基準」 として評価することを要望する。

(2)リハビリテーション起算日の変更
 *各疾患において、リハビリテーションの開始はその個々の病態において
  大きく異なる。リハビリテーション起算日は、リハビリテーション開始
  日とすることを要望する。

(3)維持期リハビリテーションの適用拡大
 *医学的に長期にわたるリハビリテーションを要する疾患・病態について、
  根拠に基づく適用の拡大を要望する。

6.外来診療について

 外来の診療報酬については、病院・診療所の一物多価を改めるとともに、現行の同日多科受診時における第2科以降の診療報酬の算定不可を改める必要がある。
 *再診料等の同一診療行為は同一診療報酬とすることを要望する。
 *同日多科受診時、第2科以降もすべて同様の算定を可能とすることを要
  望する。

(1)上記の通り、日本病院団体協議会の 「平成22年度診療報酬改定に係る要望書 (第2報)」 において、リハビリテーション医療の分野では、下記の3つの要望が成されています。

 ①急性期病院におけるリハビリテーションの評価
  ◎ベッドサイド・リハビリテーションが中心となる急性期病院について
   は、「施設基準」 ではなく、「人員配置基準」 として評価する。

 ②リハビリテーション起算日の変更
  ◎各疾患において、リハビリテーションの開始はその個々の病態におい
   て大きく異なるため、リハビリテーション起算日は、リハビリテーシ
   ョン開始日
とする。

 ③維持期リハビリテーションの適用拡大
  ◎医学的に長期にわたるリハビリテーションを要する疾患・病態につい
   て、根拠に基づく適用の拡大を行う。

 その他の各団体のリハビリテーション診療報酬に対する要望ならびに各種問題点に関しては、以前の当ブログ記事 (『回復期リハ病棟の評価に 「プロセス指標」・「構造指標」 の導入を提唱』 および 『2010年度リハビリ診療報酬改定に対する各医療団体の要望』) をご参照下さい。

(2)次期2010年度 (平成22年度) 診療報酬改定は、基本的にはプラス改定と巷間で言われていますが、問題は、やはり財源です。

 日本福祉大学の二木立教授は、公的医療費増加の財源について、
  ①消費税の増税
  ②政府の税金の無駄使いの根絶
  ③社会保険料の引き上げ
を挙げ、現実的には③が妥当と述べています。
 詳細は、同教授のインタビュー記事 [医療改革の 「希望の芽」 の拡大を (『医療改革と財源選択』の出版にあたって)] をご参照下さい。

(3)ともあれ、現在、衆議院総選挙を控え、「民主党への政権交代」 あるいは 「自公与党の政権維持」 の決着がつくまでは、次期2010年度診療報酬改定の行方は、「不明確・未確定」 であり、国民による政権選択後の診療報酬改定あるいは社会保障 (医療・介護・福祉・雇用・年金・子育て・教育) の行方が楽しみでもあり、また、不安でもあります。




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特別養護老人ホーム: 介護職員が 「違法」 吸引、 法と現実に大きなズレ

 中日新聞Web (2009/7/16) に、特養の介護職員による痰の吸引問題に関する記事が掲載されていますので、下記に示します。

特養 介護職員が“違法”吸引 法と現実 大きなズレ

 たんの吸引や、チューブで胃に流動食を流し込む経管栄養の処置は、本来、医師や看護職員以外の人がするのは違法な医療行為。
 しかし、特別養護老人ホームでは、看護職員の手薄な夜間を中心に、介護職員が行わざるをえないのが現実だ。
 現場の職員は 「法律や制度と現実のギャップが大きすぎる」 と法整備を訴える。(佐橋大)。

 「夜、たんが絡まって苦しんでいる人に 『看護師が来るまで、待って』 とは言えない」。
 愛知県の特養で働く女性介護職員は、苦しい胸の内を明かす。

 女性の働く特養では夜間、看護師は原則、自宅待機。
 判断に困る場合は看護師を呼ぶが、その場の介護職員がたんの吸引をすることが多い。
 こうした職場は例外でない。

 日本介護福祉士会が5~6月、特養の介護職員に行った調査では、午後9時~午前6時に介護職員が口の中の吸引の対応をしている施設が83%。
 のどの奥や鼻の吸引も32%あった。
 対応している施設の8割以上の介護職員が不安を感じながら行っている。

 昨年の厚生労働省の調査では、たんの吸引をするはずの看護職員が毎日、夜勤や宿直をする施設は2%。
 ところが、一日の吸引の2割は、看護職員が手薄な午後10時~午前6時に行われていた。

 これには理由がある。特養は 「生活の場」 と位置付けられてきたため、法律が置くよう求める看護職員数は、老人保健施設や療養病床に比べ少ない。
 入所定員100人の施設でも3人。
 法律に従って配置しても、最少人数では夜勤や宿直の体制を敷くことは不可能で、日常的に医療行為が必要な人は受け入れられない。

 ところが、現実には、医療行為が必要な入所者や希望者が増えている。
 本来、こうした人の受け皿である療養病床を削減する政策を国が進めているためだ。

 名古屋市のある特養では約80人の入所者のうち、たんの吸引が日常的に必要な人、経管栄養の人は各6人。
 特養では、法定の3人を上回る5人の看護師を雇い、原則、毎晩一人ずつが宿直し、対応している。
 しかし、人件費などの面から、看護師の増員は難しい。
 「医療行為は看護職員」 という規則がネックになり、入所希望者の受け入れも限界に近いという。
 「行き場がないと分かっていても、受け入れは慎重にならざるをえない」 と担当者は話す。

 特養の全国組織、全国老人福祉施設協議会 (老施協) によると、特養の約75%は基準を超える看護職員を配置している。
 老施協の福間勉事務局長は 「特養は医師が非常勤で、担当する入所者も多い。経験の浅い看護職員では務まらない。でも、ベテランだと夜勤ができる人は少ない。構造的に看護師が集まりにくい。看護職員の増員で対応するのは困難」 と話す。

 現状では、介護職員に違法行為をする精神的負担がのしかかるばかりか、合法でないので研修もできない。
 厚労省は2月、医療行為の一部解禁についての検討会を発足。
 6月に示された案では、医師の指示の下、一定の研修を受けた介護職員が口の中のたんの吸引や経管栄養の準備などを行う。
 のどの奥の吸引や、経管栄養実施前の流動食の確認や注入行為など、より高い技術と知識が求められる部分は看護職員がする。
 今後は、この案を一部特養で試行し、安全性を検証。
 問題がなければ、来年度解禁となる。

 現場の介護職員からは 「法的に問題ない線を示してもらえると気が楽」 と歓迎論の一方、「責任や負担だけ増えるのは困る」 という声も聞かれる。
 また、医療関係者から 「高齢者のたんの吸引は簡単でない」 などの慎重論もある。

(1)「安心と希望の医療確保ビジョン」 具体化に関する検討会の中間とりまとめ (平成20年9月22日) の中で、コメディカル等への医療行為のエンパワーメント (権限と責任の委譲)・スキルミクス (エンパワーメントを伴う真の多専門職種協働) について、次のように示されています。

●3.コメディカル等の専門性の発拝とチーム医療

 よりよい医療を実現するためには、治療にあたるチームを構成する医師のみならず各コメディカルが専門性を発揮していくことが重要である。

○コメディカルが専門性を持ち、キャリアアップできる仕組みが必要であり、そうしたことへのインセンティブの付与や支援が必要である。同時に、コメディカルの数を増加させることについて具体的な検討が必要である。

○チーム医療を実践することや各職種が専門性を発揮し、患者のためのよりよい医療が行われる体制がとられることを前提に、その職種でなくても行いうる業務を他の職種に担わせるスキルミクスを進めるべきである。

○患者の安全性向上のため、4年制大学への移行も視野に、看護師基礎教育の充実を図るべきである。

○医療者と患者間の真の協働関係を樹立するためには、医療従事者が全体として、患者の立場を十分に配慮するという施設の「文化」を醸成する必要がある。そのためには管理者の姿勢が重要である。諸外国の例を参考にしながら、医療における院内メディエーターの活用も今後の検討課題とすべきである。

 コメディカルおよび介護職員等への医療行為のエンパワーメント (権限と責任の委譲) において、最悪のパターンが、「責任と負担だけ押しつけられて、『真の権限委譲および相応の給与アップ』 が伴わない」 場合です。

 インセンティブどころか、逆インセンティブが働き、益々、「介護職員等の立ち去り」 が増大しますので、エンパワーメント (権限と責任の委譲) の施行には周到な準備と配慮が必要と考えられます。

(2)一方、「一定の医療行為を必要とする患者等」 を、「医療パワーが乏しい・急変時の対応を即時に適切に施行することが困難である」 特養等の介護保険施設あるいは在宅等において看ていくことが妥当なのか、という根源的な問題もあります。

 ヒトの尊厳にも係わる問題であり、「療養病床の再編」 の再考・「医療難民・リハビリ難民・介護難民」 対策も含めて、政府・厚生労働省による実効性の高い施策が望まれます。




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2010年度診療報酬改定・DPC新機能評価係数候補 (2009/6/24現在)

 キャリアブレインのCBニュース (2009/6/24) の記事 (新係数の候補、「導入妥当」 に4項目-基本問題小委) および Japan Medicine (2009/6/26) の記事 (中医協:DPC新係数を絞り込み/「正確なデータ提出」 など4項目ほぼ当確、複雑性指標は 「重複評価」 の指摘も) によると、2009年6月24日の中央社会保険医療協議会 (中医協) 診療報酬基本問題小委員会 (委員長:遠藤久夫・学習院大教授) における議論の結果、2010年度診療報酬改定・DPC 「新機能評価係数」 候補は、下記の10項目に絞り込まれました。

 その内、青色の4項目がほぼ当確、残りの6項目の中で、赤色の2項目が有力 (遠藤委員長の強い支持) となりました。

 診療報酬全体の改定率なども見極める必要があるため、2010年度に導入するDPC新機能評価係数が確定するのは、年末になる見通しとのことですが、「DPC対象病院」 ならびに 「2010年度にDPC対象病院に昇格する予定のDPC準備病院」 のためにも、できるだけ早急の確定が望まれます。

●DPC 「新機能評価係数」 候補 (2009/6/24現在)

1.DPCデータを用いて分析が可能であるもの

 ①DPC病院として正確なデータを提出していることの評価 (正確なデータ
  提出のためのコスト、部位不明・詳細不明コードの発生頻度、 様式1の
  非必須項目の入力割合、等)


 ②効率化に対する評価 (効率性指数、アウトカム評価と合わせた評価、等)

 ③複雑性指数による評価

 ④診断群分類のカバー率による評価

 ⑤救急・小児救急医療の実施状況及び救急における精神科医療への対応状
  況による評価


 ⑥患者の年齢構成による評価

2.DPCデータによって一部分析が可能なもの、又は医療機関の負担が少なく
 速やかにデータを把握することが可能なもの

 ⑦診療ガイドラインを考慮した診療体制確保の評価

 ⑧医療計画で定める事業等について、地域での実施状況による評価

 ⑨医師、看護師、薬剤師等の人員配置 (チーム医療) による評価

 ⑩医療の質に係るデータを公開していることの評価




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「わが国の医療政策の方向」 (厚生労働事務次官・講演)

 Japan Medicine (2009/5/27) に、日本病院会総会において江利川厚生労働事務次官が行った講演 「わが国の医療政策の方向」 に関する記事が掲載されていますので、下記に示します。

【わが国の医療政策の方向】

●少子化問題克服が安定的制度設計につながる

 厚生労働省の江利川毅事務次官は、「わが国の医療政策の方向」 をテーマに、最近の医療施策の動向について言及し、少子化問題が克服できないと安定的な制度設計ができないと指摘した。
 特に、医療費の現状は、高齢者の医療費が若人の約5倍だが、諸外国では同じ数値が約3倍にとどまるとし、高齢者の医療費の削減は避けられない施策であることを示唆した。

 講演後の質疑応答では、フロアから医師の負担軽減策として入院時医学管理加算や、入院基本料7対1など、打たれる施策がちぐはぐとの意見が出された。
 これに対して、江利川事務次官は、「政策の連携が重要」 とし、それを意識した人事異動を夏に行いたいとの考えを示した。

 さらに、医師不足等や医療技術の高度化に伴い、医師、看護師等の役割分担の見直しが求められる中で、NP (ナースプラクティショナー) などの医療職の検討に関する質問が出された。
 同事務次官は、歩みは遅いが検討を進めている状況ではないかと回答した。

(1)相も変わらず、「高齢者の医療費の削減は避けられない」 との御託宣です。
 事ここに至っては、発想の大転換をして頂き、「必要な高齢者の医療費は確保する」 という大前提で、他の分野の 「税金の無駄使い」 を大胆にカットして頂き、その結果、「削減するものが最早ない」 ということを一般国民が充分納得した上で、最後の最後で消費税増税論議に入って頂きたいと思います。

(2)フロアからの質疑応答時の 「打たれる施策がちぐはぐ」 との意見に関しては、2年ごとの診療報酬改定の総責任者である厚生労働省保険局医療課長が変わるたびに、診療報酬体系の精神・思想および方向性が相当変わる、あるいはブレる印象があります。
 政府が最終決定する診療報酬改定率に翻弄されるからかも知れませんが・・・。

(3)上記のNPをはじめとした 「医師から看護師等のコメディカルへのエンパワーメント (権限と責任の委譲)」・「スキルミクス (真の多専門職種協働)」 については、「医師 (特に勤務医) の負担軽減」・「チーム医療」 において大変重要な課題です。

 法律上の諸問題ならびに各専門職種における様々な利害関係等がネックとなり、遅々として進展しない印象を受けますが、「医療崩壊・医療破壊」 のこれ以上の増悪を防ぐためにも、拙速は避けつつ、一歩一歩前進して頂きたいと思います。

【関連記事】
 ◎ 「医師不足対策の誤りを指摘」 (日野原重明・聖路加国際病院理事長)
 ◎PA (非医師高度臨床師) ・NP (ナース・プラクティショナー)
 ◎医療職種の役割分担 「検討の場、設置を」 (医道審議会)
 ◎ 「医行為のコメディカルへの権限委譲」 厚労省見解




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新型インフルエンザ (「豚インフル」) 対処心得 (神戸大学・岩田教授)

 2009年3月下旬にメキシコや米国で発生した豚インフルエンザの人への大量感染を受け、世界保健機関 (WHO) は、4月27日夜 (日本時間28日朝)、世界の警戒水準 (フェーズ) を、「3」 から、豚インフルエンザウイルスが人から人への感染力を十分に得た段階を示す 「4」 に引き上げました。

 即ち、「新型インフルエンザ」 発生を認定したことになります。(名称も、「豚インフルエンザ」 から、「新型インフルエンザ」 に変更されました)。

 さらに、WHOは4月29日夜 (日本時間30日朝)、全世界で拡大を続けている新型インフルエンザについて、警戒水準 (フェーズ) を、現行の 「4」 から、 「5」 に引き上げました。

 新型インフルエンザの警戒レベルは6段階あり、フェーズ 「6」 (世界的大流行:パンデミック) の一歩手前の状況です。

 神戸大学 大学院医学研究科・医学部 微生物感染症学講座 (感染治療学分野) の岩田健太郎教授が提唱されている 「研修医への新型インフルエンザ症例への対処心得」 が参考になると考えられますので、下記に示します。

豚インフルについて、研修医の皆さんへ (神戸大学・岩田教授:2009/4/28)

(1)まず、毎日の診療を大切にしてください。
 呼吸器症状の有無を確認し、ないときに安易に 「上気道炎」 と診断せず、旅行歴、シックコンタクト、動物暴露歴など問診を充分に聴取してください。

 患者さんが言わない、ということは、その事実がない、という意味ではありません。
 「せきをしていますか?」 と聞かなければ、せきをしているとは言わないかも知れません。

 原因不明の発熱であれば、必ず血液培養を検討してください。
 バイタルサインを大切にしてください。

 バイタルサインの重要度は重要な順番に、血圧、脈拍、呼吸数、(第5のバイタル) 酸素飽和度、そして、体温です。
 極端な低体温などはまずいですが、発熱患者で大切なのは体温 「以外」 のバイタルサインと意識状態であることは認識してください。

 発症のオンセット、潜伏期など、時間の感覚には鋭敏になってください。
 要するに、ブタインフルエンザ診療のポイントは普段の診療の延長線上にしかありません。
 ほとんど特別なものはないことを理解してください。

 上記の診療は診療所、大学病院、どこのセッティングでも可能です。
 大抵の感染症診療は、大抵のセッティングで可能なのです。

(2)自分の身を護ってください。
 とくに初診患者では外科用マスクの着用をお奨めします。
 患者の診察前とあとで、ちゃんと手を洗っていますか。
 呼吸器検体を採取するなら採痰ブースが理想的ですが、理想的な環境がないからといって嘆く必要は少しもありません。

 「うちには○○がない」 と何百万遍となえても嘆いても、物事は一つも前に進みません。
 「うちには○○がないので、代わりに何が出来るだろう」 と考えてください。
 考えても思いつかなかったら、そこで思考停止に陥るのではなく、分かっていそうな上の先生に相談してください。
 いつだって相談することは大切なのです。
 診察室で痰を採取するなら、部屋の外に出て患者さんだけにしてあげるのもいいかもしれません。
 日常診療でも、とくに女性の患者は人前で痰なんて出せないものです。
 呼吸器検体を扱うとき、気管内挿管時などはゴーグル、マスク (できればN95)、ガウン、手袋が必要です。
 採血時やラインを取るときも手袋をしたほうがよいでしょう。

 こういうことは豚インフルに関わらず、ほとんどすべての患者さんに通用する策に過ぎません。
 繰り返しますが、日常診療をまっとうにやることが最強の豚インフル対策です。

(3)あなたが不安に思っているときは、それ以上に周りはもっと不安かも知れません。
 自分の不安は5秒間だけ棚上げにして、まずは周りの不安に対応してあげてください。
 豚インフルのリスクは、少なくとも僕たちが今知っている限り、かつて遭遇した感染症のリスクをむちゃくちゃに逸脱しているわけではありません。
 北京にいたときは、在住日本人がSARSのリスクにおののいてパニックに陥りましたが、実際にはそれよりもはるかに死亡者の多かった交通事故には全く無頓着でした。
 ぼくたちはリスクをまっとうに見つめる訓練を受けておらず、しばしばリスクを歪めて捕らえてしまいます。
 普段の診療をちゃんとやっているのなら、豚インフルのリスクに不安を感じるのはいいとしても、パニックになる必要はありません。

(4)今分かっていることでベストを尽くしてください。
 分からないことはたくさんあります。
 なぜメキシコ? なぜメキシコでは死亡率が高いの? これからパンデミックになるの? 分かりません。
 今、世界のどの専門家に訊いても分かりません。
 時間と気分に余裕のあるときにはこのような疑問に思考をめぐらせるのも楽しい知的遊戯ですが、現場でどがちゃかしているときは、時間の無駄以外の何者でもありません。
 知者と愚者を分けるのは、知識の多寡ではなく、自分が知らないこと、現時点ではわかり得ないこととそうでないものを峻別できるか否かにかかっています。
 そして、分からないことには素直に 「分かりません」 というのが誠実でまっとうな回答なのです。

(5)情報は一所懸命収集してください。
 でも、情報には 「中腰」 で対峙しましょう。
 炭疽菌事件では、米国CDCが 「過去のデータ」 を参照して郵便局員に 「封をした郵便物から炭疽感染はない。いつもどおり仕事をしなさい」 と言いました。
 それは間違いで、郵便局員の患者・死者がでてしまいました。
 未曾有の出来事では、過去のデータは参考になりますが、すがりつくほどの価値はありません。

 「最新の」 情報の多くはガセネタです。
 ガセネタだったことにむかつくのではなく、こういうときはガセネタが出やすいものである、と腹をくくってしまうのが一番です。
 他者を変えるのと、自分が変わるのでは、後者が圧倒的にらくちんです。

(6)自らの不安を否定する必要はありません。
 臆病なこともOKです。
 ぼくが北京で発熱患者を診療するとき、本当はこわくてこわくて嫌で嫌で仕方がありませんでした。
 危険に対してなんのためらいもなく飛び込んでいくのは、ノミが人を咬みに行くような蛮行で、それを 「勇気」 とは呼びません。
 勇気とは恐怖を認識しつつ、その恐怖に震えおののきながら、それでも歯を食いしばってリスクと対峙する態度を言います。
 従って勇気とは臆病者特有の属性で、リスクフリーの強者は、定義からして勇気を持ち得ません。

(7)チームを大切にしてください。
 チーム医療とは、ただ集団で仕事をすることではありません。
 今の自分がチームの中でどのような立ち位置にあるのか考えてみてください。
 自分がチームに何が出来るか、考えてください。
 考えて分からなければ、チームリーダーに訊くのが大切です。
 自分が自分が、ではなく、チームのために自分がどこまで役に立てるか考えてください。
 タミフルをだれにどのくらい処方するかは、その施設でちゃんと決めておきましょう。
 「俺だけに適用されるルール」 を作らないことがチーム医療では大切です。
 我を抑えて、チームのためにこころを尽くせば、チームのみんなもあなたのためにこころを尽くしてくれます。
 あなたに求められているのは、不眠不休でぶっ倒れるまで働き続ける勇者になることではなく、適度に休養を取って 「ぶったおれない」 ことなのです。
 それをチームは望んでいるのです。

(8)ぼくは、大切な研修医の皆さんが安全に確実に着実に、この問題を乗り越えてくれることを、こころから祈っています。

 我々リハビリテーション関係者も、新型インフルエンザに限らず、様々な感染症のリスクに曝されています。

 特に、ボディコンタクト等の機会が多いリハビリテーションスタッフにおいて、患者さんからの飛沫感染・接触感染等 (含、尿便、咳、痰、唾液等の体液) [時に、血液感染 (患者さんの創部等の血液がスタッフの傷口<含、口腔内>から感染)・患者さんによる咬傷による感染、等] による感染リスクが比較的高く、また、患者さんからの感染のみならず、スタッフ自身が媒介して、他の患者さんとその家族・同僚スタッフ・その他の医療スタッフ・自身の家族等に感染を拡大させる可能性があるため、周到な院内感染防止対策が肝要です。

 各医療機関・各介護保険施設等において、「院内 (施設内) 感染防止対策マニュアル」 あるいは 「リハビリテーションにおける感染防止対策マニュアル」 が作成され、各スタッフに周知徹底されているとは思いますが、この機会に、上記の対処心得のエッセンスの組み込みも含めて、再度、各々の 「院内感染防止対策マニュアルおよび運用体制の見直し」 を行うことが必要と考えられます。




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