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新型インフルエンザ (秋冬の大流行に備え、肺炎球菌ワクチン接種を)

 WHO (世界保健機関) が6月11日に 「世界的大流行 (パンデミック)」 を意味する最高度のフェーズ6を宣言した新型インフルエンザ (2009インフルエンザ) は、今年の秋冬の大流行が予想されています。

 現在、新型インフルエンザは、弱毒性で、感染力も季節型インフルエンザより少し強い程度とされています。

 しかしながら、これから冬を迎えるオーストラリア、南米、オセアニア等にて、大流行し、且つ、突然変異または遺伝子交雑が生じて、強毒性・強い感染性の新型インフルエンザに変貌する可能性があります。

 文藝春秋2009年7月号に掲載されているインタビュー記事 「新型インフルエンザ50問50答 秋冬の大流行に備えよ」 にて、菅谷憲夫・神奈川県警友会けいゆう病院小児科部長が、新型インフルエンザについて、非常にわかりやすく解説されています。

 その中で、同部長が、新型インフルエンザでの死亡を避けるために、肺炎球菌ワクチンの接種の重要性を喚起されていますので、下記に示します。

 新型、季節型問わず、インフルエンザで死亡する原因のほとんどが細菌性肺炎であることから、特に、肺炎球菌ワクチンの接種が重要であり、高齢者 (特に、種々の合併症・併存疾患を抱える方々) とその家族へのワクチン接種についての啓発・啓蒙が肝要と考えられます。
 医療スタッフ・リハビリテーションスタッフ・介護スタッフ等からの積極的な啓発・啓蒙が望まれます。

●新型インフルエンザ50問50答 秋冬の大流行に備えよ

【肺炎球菌ワクチンを打て】

(問31)今後の対策で重要な点は。

(答)
 新型インフルエンザで死ぬ原因はほとんどが肺炎、しかも細菌性肺炎です。
 スペインかぜやアジアかぜ、香港かぜで死んだ人も90%以上は細菌性肺炎だったことが最近明らかになりました。
 毎年のインフルエンザでも高齢者が死んでますが、ほとんどは細菌性肺炎。
 だから、これからすべきことは細菌性肺炎への備えです。

(問32)インフルエンザになると気道が炎症を起こして、細菌を増殖しやすくさせる?

(答)
 その通りです。
 気道がひどくやられて、もともといる細菌が肺炎を起こす。
 重症の細菌性肺炎で死亡するんですね。
 なかでも肺炎球菌による死亡はかなり出ると思います。
 ところが、日本は肺炎球菌ワクチンの接種がものすごく低い。
 肺炎球菌ワクチンは、65歳以上の高齢者に打つことになっているんですが、接種率は5%程度。
 欧米ではインフルエンザワクチンと同程度、60~70%の接種率があります。

(問33)なぜ日本は低いんですか。

(答)
 一つは、知らない人が多いからだと思います。
 インフルエンザで死亡する原因は細菌性肺炎だというメッセージはすごく大事で、日本感染症学会が5月に緊急アピールを出しました。

(問34)肺炎球菌ワクチンはいつ受けたらいいですか。

(答)
 第1波 (註:今秋あるいは来年の1、2月)、第2波の流行の前。
 今こそ高齢者は受けるべきです。

(問35)効果の持続時間は。

(答)
 5年間ですから、新型インフルに備えるには今が好機です。
 問題は、接種回数を日本は1回しか認めていないこと。
 2回目は腫れやすいからといいますが、欧米は2回認めています。
 硬直化した制度が問題ですね。
 加えて、重症の細菌性肺炎で呼吸不全にもなるので、人工呼吸器が必要です。
 水際対策とかマスクとかいってますが、それより人工呼吸器の準備が全然足りない。
 病床が足りたとしても呼吸器がなくては。
 高齢者の場合、肺炎に対する備えは非常に重要ですよ。

(問36)肺炎球菌とインフルエンザのワクチンは一緒に接種してよい?

(答)
 1週間あければ問題ありません。
 H5N1 (註:鳥インフルエンザ) に対するプレパンデミックワクチンを打つよりは、肺炎球菌ワクチンを打った方がいいというのが私の意見です。




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新型インフルエンザ (「豚インフル」) 対処心得 (神戸大学・岩田教授)

 2009年3月下旬にメキシコや米国で発生した豚インフルエンザの人への大量感染を受け、世界保健機関 (WHO) は、4月27日夜 (日本時間28日朝)、世界の警戒水準 (フェーズ) を、「3」 から、豚インフルエンザウイルスが人から人への感染力を十分に得た段階を示す 「4」 に引き上げました。

 即ち、「新型インフルエンザ」 発生を認定したことになります。(名称も、「豚インフルエンザ」 から、「新型インフルエンザ」 に変更されました)。

 さらに、WHOは4月29日夜 (日本時間30日朝)、全世界で拡大を続けている新型インフルエンザについて、警戒水準 (フェーズ) を、現行の 「4」 から、 「5」 に引き上げました。

 新型インフルエンザの警戒レベルは6段階あり、フェーズ 「6」 (世界的大流行:パンデミック) の一歩手前の状況です。

 神戸大学 大学院医学研究科・医学部 微生物感染症学講座 (感染治療学分野) の岩田健太郎教授が提唱されている 「研修医への新型インフルエンザ症例への対処心得」 が参考になると考えられますので、下記に示します。

豚インフルについて、研修医の皆さんへ (神戸大学・岩田教授:2009/4/28)

(1)まず、毎日の診療を大切にしてください。
 呼吸器症状の有無を確認し、ないときに安易に 「上気道炎」 と診断せず、旅行歴、シックコンタクト、動物暴露歴など問診を充分に聴取してください。

 患者さんが言わない、ということは、その事実がない、という意味ではありません。
 「せきをしていますか?」 と聞かなければ、せきをしているとは言わないかも知れません。

 原因不明の発熱であれば、必ず血液培養を検討してください。
 バイタルサインを大切にしてください。

 バイタルサインの重要度は重要な順番に、血圧、脈拍、呼吸数、(第5のバイタル) 酸素飽和度、そして、体温です。
 極端な低体温などはまずいですが、発熱患者で大切なのは体温 「以外」 のバイタルサインと意識状態であることは認識してください。

 発症のオンセット、潜伏期など、時間の感覚には鋭敏になってください。
 要するに、ブタインフルエンザ診療のポイントは普段の診療の延長線上にしかありません。
 ほとんど特別なものはないことを理解してください。

 上記の診療は診療所、大学病院、どこのセッティングでも可能です。
 大抵の感染症診療は、大抵のセッティングで可能なのです。

(2)自分の身を護ってください。
 とくに初診患者では外科用マスクの着用をお奨めします。
 患者の診察前とあとで、ちゃんと手を洗っていますか。
 呼吸器検体を採取するなら採痰ブースが理想的ですが、理想的な環境がないからといって嘆く必要は少しもありません。

 「うちには○○がない」 と何百万遍となえても嘆いても、物事は一つも前に進みません。
 「うちには○○がないので、代わりに何が出来るだろう」 と考えてください。
 考えても思いつかなかったら、そこで思考停止に陥るのではなく、分かっていそうな上の先生に相談してください。
 いつだって相談することは大切なのです。
 診察室で痰を採取するなら、部屋の外に出て患者さんだけにしてあげるのもいいかもしれません。
 日常診療でも、とくに女性の患者は人前で痰なんて出せないものです。
 呼吸器検体を扱うとき、気管内挿管時などはゴーグル、マスク (できればN95)、ガウン、手袋が必要です。
 採血時やラインを取るときも手袋をしたほうがよいでしょう。

 こういうことは豚インフルに関わらず、ほとんどすべての患者さんに通用する策に過ぎません。
 繰り返しますが、日常診療をまっとうにやることが最強の豚インフル対策です。

(3)あなたが不安に思っているときは、それ以上に周りはもっと不安かも知れません。
 自分の不安は5秒間だけ棚上げにして、まずは周りの不安に対応してあげてください。
 豚インフルのリスクは、少なくとも僕たちが今知っている限り、かつて遭遇した感染症のリスクをむちゃくちゃに逸脱しているわけではありません。
 北京にいたときは、在住日本人がSARSのリスクにおののいてパニックに陥りましたが、実際にはそれよりもはるかに死亡者の多かった交通事故には全く無頓着でした。
 ぼくたちはリスクをまっとうに見つめる訓練を受けておらず、しばしばリスクを歪めて捕らえてしまいます。
 普段の診療をちゃんとやっているのなら、豚インフルのリスクに不安を感じるのはいいとしても、パニックになる必要はありません。

(4)今分かっていることでベストを尽くしてください。
 分からないことはたくさんあります。
 なぜメキシコ? なぜメキシコでは死亡率が高いの? これからパンデミックになるの? 分かりません。
 今、世界のどの専門家に訊いても分かりません。
 時間と気分に余裕のあるときにはこのような疑問に思考をめぐらせるのも楽しい知的遊戯ですが、現場でどがちゃかしているときは、時間の無駄以外の何者でもありません。
 知者と愚者を分けるのは、知識の多寡ではなく、自分が知らないこと、現時点ではわかり得ないこととそうでないものを峻別できるか否かにかかっています。
 そして、分からないことには素直に 「分かりません」 というのが誠実でまっとうな回答なのです。

(5)情報は一所懸命収集してください。
 でも、情報には 「中腰」 で対峙しましょう。
 炭疽菌事件では、米国CDCが 「過去のデータ」 を参照して郵便局員に 「封をした郵便物から炭疽感染はない。いつもどおり仕事をしなさい」 と言いました。
 それは間違いで、郵便局員の患者・死者がでてしまいました。
 未曾有の出来事では、過去のデータは参考になりますが、すがりつくほどの価値はありません。

 「最新の」 情報の多くはガセネタです。
 ガセネタだったことにむかつくのではなく、こういうときはガセネタが出やすいものである、と腹をくくってしまうのが一番です。
 他者を変えるのと、自分が変わるのでは、後者が圧倒的にらくちんです。

(6)自らの不安を否定する必要はありません。
 臆病なこともOKです。
 ぼくが北京で発熱患者を診療するとき、本当はこわくてこわくて嫌で嫌で仕方がありませんでした。
 危険に対してなんのためらいもなく飛び込んでいくのは、ノミが人を咬みに行くような蛮行で、それを 「勇気」 とは呼びません。
 勇気とは恐怖を認識しつつ、その恐怖に震えおののきながら、それでも歯を食いしばってリスクと対峙する態度を言います。
 従って勇気とは臆病者特有の属性で、リスクフリーの強者は、定義からして勇気を持ち得ません。

(7)チームを大切にしてください。
 チーム医療とは、ただ集団で仕事をすることではありません。
 今の自分がチームの中でどのような立ち位置にあるのか考えてみてください。
 自分がチームに何が出来るか、考えてください。
 考えて分からなければ、チームリーダーに訊くのが大切です。
 自分が自分が、ではなく、チームのために自分がどこまで役に立てるか考えてください。
 タミフルをだれにどのくらい処方するかは、その施設でちゃんと決めておきましょう。
 「俺だけに適用されるルール」 を作らないことがチーム医療では大切です。
 我を抑えて、チームのためにこころを尽くせば、チームのみんなもあなたのためにこころを尽くしてくれます。
 あなたに求められているのは、不眠不休でぶっ倒れるまで働き続ける勇者になることではなく、適度に休養を取って 「ぶったおれない」 ことなのです。
 それをチームは望んでいるのです。

(8)ぼくは、大切な研修医の皆さんが安全に確実に着実に、この問題を乗り越えてくれることを、こころから祈っています。

 我々リハビリテーション関係者も、新型インフルエンザに限らず、様々な感染症のリスクに曝されています。

 特に、ボディコンタクト等の機会が多いリハビリテーションスタッフにおいて、患者さんからの飛沫感染・接触感染等 (含、尿便、咳、痰、唾液等の体液) [時に、血液感染 (患者さんの創部等の血液がスタッフの傷口<含、口腔内>から感染)・患者さんによる咬傷による感染、等] による感染リスクが比較的高く、また、患者さんからの感染のみならず、スタッフ自身が媒介して、他の患者さんとその家族・同僚スタッフ・その他の医療スタッフ・自身の家族等に感染を拡大させる可能性があるため、周到な院内感染防止対策が肝要です。

 各医療機関・各介護保険施設等において、「院内 (施設内) 感染防止対策マニュアル」 あるいは 「リハビリテーションにおける感染防止対策マニュアル」 が作成され、各スタッフに周知徹底されているとは思いますが、この機会に、上記の対処心得のエッセンスの組み込みも含めて、再度、各々の 「院内感染防止対策マニュアルおよび運用体制の見直し」 を行うことが必要と考えられます。




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