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大腿骨近位部骨折 (合併症・併存疾患が術前待機期間の主要因)

 Medical Tribune (2009/4/16) に、平成20年度厚生労働科学研究長寿科学総合研究成果発表会の記事が掲載されています。

 鳥取大学医学部保健学科の萩野浩教授 (日本整形外科学会・骨粗鬆症委員会アドバイザー) の大腿骨近位部骨折 (大腿骨頚部骨折、大腿骨転子部骨折) の治療に関するアンケート調査についての発表の要旨を下記に示します。

●大腿骨近位部骨折 (手術時期に関するガイドライン整備が必要)

1.術前待機期間に最も大きな影響を与える要因
 ① 「合併症のため」:37%
 ② 「手術室が確保できない」:23%
 ③ 「麻酔医の都合」:16%
 ④ 「整形外科医が多忙なため」:16%
 ⑤ 「その他」:8%

2.抗凝固薬 (例:ワーファリン) の効果が手術の施行時期に与える影響
 ① 「抗凝固薬の効果が低下するまで待機する」:71%
 ② 「非使用例と同様に早期手術を行う」:24%

3.萩野教授は、「今後、合併症を有する場合や抗凝固薬療法使用時の手術時期に関するガイドラインを示す必要があり、それによって術前待機期間と入院期間、ひいては治療期間の短縮が図れるものと期待される」 と結論付けた。

 上記に関するブログ管理人の考察・結論は下記の通りです。

(1)大腿骨近位部骨折 (大腿骨頚部骨折、大腿骨転子部骨折) の患者さんは、高齢で且つ多彩な合併症・併存疾患 (例:脳卒中・パーキンソン病等の神経疾患、高血圧、心疾患・冠動脈疾患、糖尿病、悪性腫瘍、肝疾患、腎疾患、骨関節疾患、視力障害、聴覚障害、等) のある方および手術リスクとなる薬剤 (例:抗凝固薬) を服用されている方が少なくありません。

 手術ハイリスクの場合、術前待機期間が長くなり、必然的に、入院日数が長期化します。
 また、術前のリスクチェック&管理が不充分だと、術中&術後リスクの上昇・術後の治癒遷延・リハビリテーションリスク管理困難&リハビリテーション治療効果の促進阻害等の問題が生じます。

 したがって、上記3の通り、合併症・併存疾患を有する場合や抗凝固薬療法使用時の手術時期に関するガイドラインを示す必要があり、それによって術前待機期間と入院期間、ひいては治療期間の短縮が図れると思われます。

(2)一方、以前の当ブログ記事 [「脳卒中急性期医療をめぐる課題と展望 (リハビリテーション)」] で述べたように、脳卒中超急性期~急性期治療において、「脳卒中センター」 あるいは日本で言う 「ストローク・ケア・ユニット (SCU)」 で、各専門の医療スタッフが集まり組織づくりをし、チームで脳卒中の発症予防、早期発見および急性期 (発症時) 治療から超急性期~急性期リハビリテーションまでの一貫した総合的な治療を提供するのが理想的です。

 その際の構成メンバーとして、「24 時間体制の、脳卒中専門医 (あるいは脳卒中の経験が深い神経内科医・脳神経外科医、脳血管内治療医)、脳卒中専門ナース等の看護師、薬剤師、診療放射線技師、臨床検査技師」・「放射線科専門医、循環器専門医、呼吸器専門医等の協力」、「リハビリテーション科専門医の関与」、「特に急性期脳卒中リハビリテーションの経験が深い理学療法士 (PT)・作業療法士 (OT)・言語聴覚士 (ST)、管理栄養士、医療ソーシャルワーカー (MSW)」 が挙げられます。
 また、高度医療機器 (CT、MRI、脳血管造影、SPECT、超音波検査等) は24時間フル稼働体制です。

 即ち、通常、チーム医療というと、主治医・看護師・コメディカル等、多職種の各専門性を生かしたチームアプローチを指しますが、脳卒中のように全身の動脈硬化 (特に、脳血管、冠動脈、両下肢の閉塞性動脈硬化症)・併存疾患 (特に高血圧・糖尿病・高脂血症) とそれに伴う各種臓器機能低下が見られる疾患の場合、一人の主治医だけでは全身管理・合併症&併存疾患のリスク管理は困難です。

 したがって、症例によっては、上記の通り、原疾患・基礎疾患を主に担当する主治医および当該診療科専門医 (脳卒中の場合、脳神経外科医・神経内科医・脳血管内治療医) だけでなく、放射線科専門医、循環器専門医、呼吸器専門医、リハビリテーション科専門医等の複数の専門医が充分に関与・介入するDrチームアプローチが必要と考えられます。

(3)大腿骨近位部骨折に対する治療の場合 (特に、高齢、多彩な合併症・併存疾患がある患者さんの場合) も、上記(2)と同様に、原疾患・基礎疾患を主に担当する整形外科主治医および当該診療科専門医のみならず、脳神経外科医、神経内科医、循環器専門医、呼吸器専門医、リハビリテーション科専門医等の複数の専門医が充分に関与・介入するDrチームアプローチが必要と考えられます。

(4)しかしながら、医療機関によっては、医師・看護師の 「マンパワー不足」 あるいは 「リハビリテーションおよびリハビリテーションリスクに対する理解不足」 等により、発症後・受傷後・手術後等のリハビリテーションにおけるリスク管理の責務をセラピストが負わなければならない状況が少なくありません。

 以前の当ブログ記事 (「リハビリテーション医療におけるリスク管理」) にて述べたように、臨床の場では、セラピストに、医療安全管理 (医療事故防止)・リスク管理に関する豊富な知識および実践能力が要求されます。
 また、患者さんの急変時における緊急トリアージから初期対応 [BLS (一次救命処置)、ACLS (二次救命処置)] までをセラピストが行わなければならない場面も日常的に生じているものと推測されます。

 したがって、セラピストも、リハビリテーション治療技術の研鑽・向上のみならず、リハビリテーションリスク管理・リスク感性・急変時対応の研鑽・向上も重要と考えられ、それが、患者さんのリハビリテーション時の安全確保のみならず、セラピスト自身の自己防衛にも繋がると考えられます。

(5)以上、大腿骨近位部骨折に関する術前待機期間の主要因としての合併症・併存疾患の管理および手術時期に関するガイドライン整備の必要性について論じました。

 上述した通り、大腿骨頸部骨折および脳卒中の急性期治療においては、(特に高齢、多彩な合併症・併存疾患がある場合)、主治医および看護師・コメディカル等の多専門職種によるチーム医療だけでなく、主治医・当該診療科専門医・関連する各診療科専門医のDrチームアプローチも肝要と考えられます。




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脳卒中急性期医療をめぐる課題と展望 (リハビリテーション)

 週刊医学界新聞 (第2820号:2009年3月2日) に、脳卒中急性期医療についての興味深い記事 (【座談会】 脳卒中急性期医療をめぐる課題と展望) が掲載されていますので、リハビリテーションに関する部分を抜粋して紹介します。

●リハビリ開始は1日でも早く

① (内山真一郎・東京女子医科大学教授)
 もう一つの課題は、急性期~回復期~慢性期にわたるシームレスな医療の実現です。今年から脳卒中専門看護師・専門理学療法士の認定が新たにスタートすることも鑑みると、他職種、他診療形態との連携がいっそう重要になってくると考えます。

② (平野照之・熊本大学医学部附属病院神経内科副科長)
 熊本では、30年以上前にわれわれの一世代前の先輩方が、神経内科におけるリハビリの重要性を強く認識され、国内の先進的な施設で勉強して県内に多くのリハビリ病院をつくられました。同じころから脳外科の先生方が救急の素地をつくっておられましたので、そこにわれわれ神経内科のグループが参加し、脳外科と協力して脳卒中急性期診療を行う、という形が自然と生まれてきました。

 私が卒業した時期、ちょうど先輩の橋本洋一郎先生が国循から戻られた1987年ごろは、救急で入院すると2~3か月してやっとリハビリの転院を考えようかという時代でした。ですから、リハビリ病院の先生から 「あんたたちは、脳卒中の患者さんをスルメにして送ってくるから困る。それをイカに戻すには、ずいぶん時間がかかる」 と言われました (笑)。とにかく、早く送ってほしいと。実際、長期間安静にされた患者さんよりも、ともかくリハビリを早く始めた患者さんのほうが圧倒的に回復がいいということが年を経るごとにわかってきたのです。いまは救急の病態をなるべく早く落ち着けて、早期にリハビリが始められることを急性期のゴールにしていますし、入院したその日から、関節可動域訓練や体位交換といった他動的なリハビリを始めるようにしています。15年以上前から 「電話1本1週間」 をキャッチフレーズに、急性期と回復期で連携を取りながら進んできました。

③ (内山) 長尾先生のところでは、リハビリや後方病院の確保についてはどうされていますか。

④ (長尾毅彦・東京都保健医療公社荏原病院神経内科医長)
 東京の泣き所はリハビリ病院の少なさで、全国でいちばん苦労している地域ではないかと思います。現在、回復期リハの病院は関東地域でも増えつつあり、10年前と比べると状況はかなり改善しています。それでも入院期間は熊本より1週間から10日ほど長くなってしまうのが実情です。

 そこでカギとなるのが、急性期のリハビリです。回復期のリハビリを受けるまでの2~3週間がブランクになると、それこそスルメになってしまいます。それを防ぐためには、発症直後から回復期に負けないレベルでしっかりと急性期リハビリを行い、その上で回復期リハビリ病院への転院を待機する。私は、それが comprehensive stroke center の大きな役割の1つだと考えています。特に、東京のようになかなか転院先が決まらない地域であれば、より急性期のリハビリを重要視して、患者さんの早期回復を狙うべきです。とはいえ、実際に急性期リハビリの体制が整った脳卒中基幹病院は多くないので、今後、リハビリをペアにした脳卒中センターという概念をもう少し強調すべきではないかと考えています。

 当院でも、たかだか2~3日リハビリの開始を前倒ししただけで、すべての回転がスムーズになり、患者さんの状態もよくなるというデータがわずか1年で出てきました。「ああ、こんなに違うんだな」 と実感しましたね。急性期リハビリ脳卒中ケアユニット加算にも入っていることでもあり、そのあたりの認識を、脳卒中の専門医も持つべきだと思います。

 上記に関する当ブログ管理人の考察・結論は、下記の通りです。

(1)上記①の通り、脳卒中医療において、急性期~回復期~慢性期にわたるシームレスな医療の実現が重要です。
 リハビリテーションにおいても、(健康増進リハビリテーション~生活機能低下予防リハビリテーション~) 超急性期・急性期リハビリテーション~回復期リハビリテーション~維持期リハビリテーションの、シームレスなリハビリテーション・システム (地域リハビリテーション連携システム) の構築が必要であり、特に、脳卒中の急性期リハビリテーション・回復期リハビリテーションが肝要と思われます。

(2)何故ならば、以前の当ブログ記事 [「地域リハビリテーション (CBR:community based rehabilitation)」、「脳卒中急性期医療体制の構築 (東京都脳卒中急性期医療機関 2009)」] で述べているように、実際の脳卒中医療において、(a) 不充分な急性期治療・(b) 不充分な早期リハビリテーション・(c) 「医原性」 の二次的合併症・障害 (廃用症候群・過用症候群・誤用症候群)・(d) 不充分な回復期リハビリテーションあるいは回復期リハビリテーションの欠如のため、結果的に障害の回復が不充分なまま、あるいは余計な障害まで作られた上で、介護保険・福祉に受け継がれることが未だ少なくなく、全県的な脳卒中医療、リハビリテーション・ネットワークの構築の必要性が喚起されているからです。

 上記 (a) には 「患者・家族等の脳卒中発症サインの理解不足による病院受診遅延」 とそれに伴う 「血栓溶解療法 (t-PA) の断念」、「脳卒中専門医・脳神経外科医・神経内科医の不足」、「救急・急性期病院における 24時間・365日・発症3時間以内のt-PA 治療体制の不備・未整備」、(b)・(c) には 「急性期病院サイドのリハビリテーション・廃用症候群等についての理解不足」、(d) には 「急性期病院サイドのリハビリテーションについての理解不足 (急性期病院から、リハビリテーションを充分には提供しないまま、回復期リハビリテーション病棟も経由させずに、そのまま自宅等・療養病床・老人保健施設等に退院・転院させる医療機関が未だ存在します)」 および 「回復期リハビリテーション病棟の数的不足、質の問題、および発症から入院までの月数制限」 等の関与が挙げられます。

(3)実際、上記②の通り、地域によっては、あるいは急性期病院によっては、「脳卒中の患者さんをスルメにして、回復期リハビリテーション病棟、療養病床、介護老人保健施設、あるいは在宅等に送る・送ってしまう」 ことが未だ少なくありません。
 即ち、「医原性の廃用症候群」 (例:関節拘縮、廃用性筋力低下・筋萎縮、誤嚥性肺炎、心肺機能低下・起立性低血圧、深部静脈血栓症・肺塞栓リスク、骨粗鬆症・骨折リスク、褥創、認知症・抑鬱、尿路感染症・尿路結石・尿失禁・便秘、等々) が生じて 「スルメ」 状態になった患者さんを、「イカ」 に戻すのに相当な時間を要するため、本格的な集中的な回復期リハビリテーションを施行するのがかなり遅延、もしくは施行困難となります。(あるいは、「スルメ」 状態にて在宅等に追い出されます)。

 したがって、患者さんのためには、上記②・④の通り、救急の病態をなるべく早く落ち着けて、早期にリハビリが始められることを急性期のゴールにし、入院したその日または遅くとも翌日から、ベッドサイド・リハビリテーション (関節可動域訓練・体位変換・呼吸排痰訓練・深部静脈血栓症予防・精神心理的サポート等の他動的なリハビリテーションが中心) を始める必要があります。そして、厳格なリスク管理 (「リハビリテーション医療におけるリスク管理」 参照) のもと、早期離床 (『脳卒中リハビリテーションにおける 「早期離床」 』参照) に繋げていきます。
 
 そして、上記②の通り、熊本方式でお馴染みの 「電話1本1週間」 をキャッチフレーズにした急性期病院と回復期リハビリテーション病院とのスムーズな連携が肝要です。
 一方、上記④の通り、回復期リハビリテーション病棟の少ない地域では、転院のための待機時期が比較的長くなるため、特に、充実した急性期・回復期前期リハビリテーション体制が必要と考えられます。

(4)上記④で推奨されている脳卒中センター・脳卒中ケアユニットの件については、診療報酬上の 「脳卒中ケアユニット入院医療管理料」+「超急性期脳卒中加算」 [「脳卒中急性期医療体制の構築 (東京都脳卒中急性期医療機関 2009)」 参照] の算定要件・施設基準を満たすものが、いわゆる 「脳卒中センター」 あるいは日本で言う 「ストローク・ケア・ユニット (SCU)」 で、各専門の医療スタッフが集まり組織づくりをし、チームで脳卒中の発症予防、早期発見および急性期 (発症時) 治療から超急性期~急性期リハビリテーションまでの一貫した総合的な治療を提供します。

 構成メンバーとして、「24 時間体制の、脳卒中専門医 (あるいは脳卒中の経験が深い神経内科医・脳神経外科医、脳血管内治療医)、脳卒中専門ナース等の看護師、薬剤師、診療放射線技師、臨床検査技師」・「放射線科専門医、循環器専門医、呼吸器専門医等の協力」、「リハビリテーション科専門医の関与」、「特に急性期脳卒中リハビリテーションの経験が深い理学療法士 (PT)・作業療法士 (OT)・言語聴覚士 (ST)、管理栄養士、医療ソーシャルワーカー (MSW)」 が挙げられます。
 また、高度医療機器 (CT、MRI、脳血管造影、SPECT、超音波検査等) は24時間フル稼働体制です。

 上記のような脳卒中センターが、全国の各二次医療圏に設置され、円滑に運用されれば、脳卒中急性期医療体制は、地域格差も解消され、飛躍的に進化すると思います。

 但し、急性期後の回復期・維持期の医療体制および脳卒中医療連携体制も同時に確立させないと片手落ちになり、それが、医療難民・救急難民・リハビリ難民・介護難民等を生み出します

(5)地域リハビリテーション [「地域リハビリテーション (CBR:community based rehabilitation)」 参照] に関しては、リハビリテーション従事者以外の関係機関・関係者の一部に誤解があるようですが、地域リハビリテーションは、単に介護保険下の維持的リハビリテーション (訪問リハビリテーション・通所リハビリテーション)・介護予防のみを指すのではありません。

 真の地域リハビリテーションとは、地域 (二次医療圏) における包括的なリハビリテーションシステム (CBR:community-based rehabilitation) です。
 したがって、「健康増進リハビリテーション~生活機能低下予防リハビリテーション~超急性期・急性期リハビリテーション~回復期 (集中的) リハビリテーション~維持期 (断続的) リハビリテーションまでのシームレスなリハビリテーションが、二次医療圏において円滑に進むようなシステム」 を構築する必要があります。

 また、地域リハビリテーション (CBR) の確立のためには、「緊密な病診連携・病病連携・病介 (病施設) 連携による地域医療連携・地域リハビリテーション連携システムの構築」、「医療保険と介護保険の円滑な流れ・連携」、ならびに、「リハビリテーション・マインドの啓発・啓蒙」 が重要と考えられます。

 実際、地域リハビリテーション活動にて、維持期リハビリテーション・介護予防等をいくら頑張っても、急性期・回復期リハビリテーションが不充分であれば、障害が重度化 (当初軽度障害→結局中等度障害、当初中等度障害→結局重度障害) して、どうにもなりません。片手落ちあるいはお手上げ状態になります。

 したがって、地域リハビリテーション活動として、「脳卒中や骨折等で入院した高齢者等が、発症後早期に適切なリハビリテーションが受けられるように、急性期リハビリテーションの重要性について、医療機関等に働きかける」・「医療機関に回復期リハビリテーション病棟の開設・増床を働きかける」 必要があります。

 但し、上記の働きかけが一番困難なタスクであり (当ブログ管理人も困っていますが・・・)、各医療機関のポリシー、財務事情、リハビリテーション・マンパワー等も絡みます。
 地域リハビリテーション支援事業のマンパワー・予算が潤沢であれば、「当該医療機関へのリハビリテーション・マンパワーの派遣」、「充分なリハビリテーション機能を持つストロークユニット (脳卒中専門病棟)・回復期リハビリテーション病棟の開設の促進」、あるいは 「熊本方式等の地域リハビリテーションシステム構築」 等が出来るのですが・・・。(それだけのことをする価値は充分あるのですが・・・)。

(6)以上、脳卒中急性期医療をめぐる課題と展望 (リハビリテーション) に関する考察等を述べました。

 上述の通り、超急性期・急性期~回復期~維持期の各ステージの脳卒中医療体制・リハビリテーション体制が確立し、且つ、充実した脳卒中医療連携体制および地域リハビリテーション連携ネットワークの構築が実現すれば、実際の脳卒中医療において、『濃厚な急性期治療ならびに充分な早期リハビリテーションが実施されることにより、脳の損傷が最小限に抑えられ、且つ 「医原性」の二次的合併症・障害 (廃用症候群・過用症候群・誤用症候群) の出現も防止でき、そして、その後、充分な回復期リハビリテーションが行われることにより、「可能な限りの障害の回復が得られ、余計な障害も作られることなく」、介護保険・福祉に円滑に受け継がれる』という理想的な流れが得られると思います。

 但し、地域リハビリテーション活動には、医療制度・診療報酬問題 (疾患別リハビリテーション体系・単価の減額、リハビリテーション算定日数制限、回復期リハビリテーション病棟の成果主義、障害者施設等入院基本料からの脳卒中・認知症患者の除外、後期高齢者医療制度等) ・介護報酬問題 (要介護認定の厳格化、介護給付費の抑制、支給限度額等)・障害者自立支援法 (応能負担→一律1割の応益負担、年収制限の厳格化、障害区分認定問題) 等も大きく影響します。

 したがって、医療難民・リハビリ難民・救急難民・脳卒中難民・認知症難民・介護難民・障害者難民等を防止するためにも、厚生労働省の医療・介護・福祉政策の策定・施行に対して、エビデンスを掲げて、良い意味での影響力を行使するのも、地域リハビリテーション活動の一つと思われます。

 また、地域リハビリテーション支援事業の実効性をより高めるためには、当該事業の実施に、厚生労働省の老健局・保険局・医政局・健康局・障害保健福祉部の横の連携・コラボレーションが肝要と思われます。

【関連記事】 (本文中に引用した関連記事は除く)
 ◎障害者施設等入院基本料・算定要件の解釈の厳格化
 ◎回復期リハビリ病棟への成果主義の導入 (厚労省保険局医療課の見解)
 ◎リハビリ算定日数制限 (厚労省保険局医療課の見解)
 ◎地域包括ケアの実現に向けて (講演:厚生労働省・宮島老健局長)
 ◎平成20年度リハビリ診療報酬改定 (日本リハビリ医学会の総括)
 ◎ 「リハビリテーション医療のあり方」 日病協の提言
 ◎6万床時代を迎える回復期リハビリ病棟 (回リ協・会長講演) ①
 ◎6万床時代を迎える回復期リハビリ病棟 (回リ協・会長講演) ②




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靴の中敷きの微小振動による高齢者の転倒防止

 65 歳以上の高齢者において、転倒の年間発生率は10~20%であり、そのうちの約10%は骨折に至ると報告されています。
 転倒を経験した高齢者は、たとえ軽傷で済んでも心理面に強い影響を受け、閉じこもって不活発な生活に陥り易く、様々な健康障害を招くことが知られています。
 不幸にも、骨折 (特に大腿骨頸部骨折) に至った場合は、その後の手術やリハビリテーションの治療効果ならびに患者要因 (高齢、重度・重複障害、複数の合併症・併存疾患) によっては、廃用症候群も重なり、寝たきりになることも少なくありません。
 したがって、高齢者の転倒防止は、生活・人生の質 (QOL) のためにも、重要な課題です。

【関連記事】
 ◎リハビリテーション医療におけるリスク管理

 Medical Tribune (2008/10/23) に、靴の中敷きの微小振動を用いた転倒防止対策に関する記事が掲載されていますので紹介します。

●靴からの振動で高齢者の転倒防止

 米国ボストン大学生体力学センターの James J. Collins 教授と Attila A. Priplata 博士が行っている研究によると、70歳の高齢者が20歳の若者と同等のバランスを維持するためには、靴の中敷きから雑音 (ノイズ) が出るようにした 「ノイジーシューズ」 が一つの解決策となるかもしれない。

 高齢者は転倒しやすく、骨折に至ることも多い。
 今回の方法は、バランス感覚にかかわるすべての障害の解決策になることは期待できないものの、少なくとも高齢者にとっては役立つ可能性がある。
 また、この方法は、足の感覚が失われてしまう糖尿病患者にも役立つ可能性がある。

 今回考案されたノイジーシューズは、統合閾値を持つ感覚神経系におけるノイズに対する反応を利用するものである。
 高齢者では活動を促す信号が加齢とともに衰えるが、この信号の弱まりを救済するのがノイズである。

 Collins 教授らが開発したのは、ゲル状の中敷きに電気モーターを挿入し、そこから微小振動を足に伝えることで、感覚神経にノイズを加える方法である。

 同教授らは高齢者にノイジーシューズを履いてもらい、静止して立っている間にどの程度揺れてしまうかを測定し、バランス維持能力を調査した。
 その結果、この中敷きの効果によって、高齢者の揺れは普通の靴を履いた20代の若者と同等にまで改善されたという。

 電気中敷きを敷いたノイジーシューズは、Afferent 社 (米国ロードアイランド州) が製造し、2年以内に上市される予定である。

【関連論文】
 ●Priplata AA, Patritti BL, Niemi JB, Hughes R, Gravelle DC, Lipsitz LA, Veves A,
  Stein J, Bonato P, Collins JJ. Noise-enhanced balance control in patients with
  diabetes and patients with stroke. Ann. Neurol. 59 (1): 4-12, 2006.


 上記に関する当ブログ管理人の考察・結論は、下記の通りです。

(1)ノイジーシューズは、靴の中敷きタイプの転倒予防装置であり、装着しやすく、実用性・利便性は高いと思われます。

(2)上記関連論文によると、電気モーター (電池式) による微小振動刺激 (ランダムな刺激) については、「本人が気がつかないほど、非常に微弱なもの」 で、不快感は生じにくいとのことです。
 但し、微小振動刺激が、脳卒中・糖尿病患者あるいは高齢者において、下肢のしびれ (異常感覚) を出現・増悪させる可能性も否定できないと思われます。(刺激パターンの工夫が必要と思われます)。
 また、下肢の末梢神経障害の程度によっては、転倒予防効果はあまり望めないと推察されます。

(3)高齢者の転倒・骨折は、寝たきり、あるいは閉じこもり・廃用症候群を生じやすく、医療費も相当かかります。
 転倒には、多くの様々な内的要因・外的要因が関与しますので、本装置だけでは完全には防止できませんが、少しでも、数%でも、高齢者の転倒事故が減少すれば、高齢者のQOLに大きく貢献すると思います。
 できるだけ早期の製品化が望まれます。




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リハビリテーション医療におけるリスク管理

 近年、医療事故・医療過誤・医療訴訟の増加に伴い、医療安全管理 (医療事故防止)・リスク管理が重要視されています。

 リハビリテーション医療においても、リハビリテーション中の 「転倒・転落、骨折等の外傷、熱傷」 や 「脳卒中・急性心筋梗塞・肺塞栓・けいれん発作等の発症・再発」 等が問題視されています。
 「早期リハビリテーション実施」・「高齢患者の増加」・「急性期にて全身状態・原疾患が不安定およびまたは合併症・併存疾患のコントロール不良状態の患者の増加」 等により、リハビリテーション部門においても、以前よりも、急変リスクの高い患者が増えています。
 【関連記事】脳卒中リハビリテーションにおける 「早期離床」

 しかしながら、病院 (特に急性期病院) のリハビリテーション部門の多くが、リハビリテーション専任医師や看護師が常駐しておらず、安全管理や急変時対策が不充分な実態が少なくありません。小規模病院・診療所や介護施設 (老健施設、あるいは特養ホーム) のリハビリテーション部門ではなおさらと思います。
 したがって、(病院といえども) 急変時にすぐ医師 (あるいは看護師) の応援を依頼できない状況も充分想定され、緊急トリアージから初期対応 [BLS (一次救命処置)、ACLS (二次救命処置)] までをセラピストが行わなければならない場面も日常的に生じているものと推測されます。

 上記のような背景のもと、2008年11月に刊行された 「リハビリテーションリスク管理ハンドブック」 は、誠に時機を得たものだと思います。
 リハビリテーションを行う患者には常に急変が起こりうることを想定し、未然にリスクを回避するためにはどうしたらよいか [患者の観察・気づき (リスク感性)]、リハビリテーション室で遭遇しやすい症状・病態とそれらへの対処法、急変した際の対処法 (BLS、ACLS) 等、写真・イラストのビジュアルな面も考慮の上、解説されています。

 リハビリテーション医療におけるリスク管理は、患者さんのリハビリテーション時の安全確保のみならず、セラピスト自身の自己防衛にも繋がります。

 本書は、急性期~回復期~維持期の医療機関・介護施設等のリハビリテーション部門に常備したい1冊として推奨されます。また、セラピスト養成校の教科書・参考書にも適していると思います。値段も4,200円と比較的手頃です。

 以下に、本書の序文ならびに目次 (章のみ) を紹介します。

【序文】
 リハビリテーション (以下、リハ) は身体機能に障害をもった患者を対象に行うものである。高齢者やさまざまな合併症をもつ患者が対象となることが多く、病院内でも比較的急変のリスクが高い患者が多く集まる部門である。さらに、早期リハの必要性が一般にも認知されるようになり、リハの対象患者は全身状態の不安定な急性期患者も多く含まれるようになってきた。そして現代では質の高い医療が求められると同時に、内容の透明性が求められる情勢となり、マスメディアによる医療事故報道が多くなされるなど、医療を取り巻く環境には大きな変化がみられる。こういった背景があるにも関わらず、診療報酬改定ごとにリハの単価の切り下げが続き、健全な病院機能を維持するためにセラピスト一人あたりの稼働率の向上が求められ、時間的・精神的なゆとりをもてないなかでの診療を余儀なくされている。
 また、近年では療法士養成校の新設が盛んであるが、リハというリスクを伴う医療行為を行うにあたり、十分な医学知識が与えられていない卒業生も一部に見受けられる。さらにリハ部門の診療管理をし、リハスタッフの教育をするべきリハ科専門医は日本全国で約1,400名という状況であり、リハ部門の安全管理に従事する医師の供給は十分とは考えにくい。特に小規模病院・診療所や老健施設でのリハ部門など、急変時にすぐ医師の応援を依頼できない状況も十分想定され、緊急性のトリアージから初期対応までをセラピストが行わなければならない場面も日常的に生じているものと予想される。
 リハ部門で管理するべきリスクの内容としてはインシデントと急変などの医学的リスクの2つに分類されると考える。インシデントについては他の書籍に譲り、本書ではリハ中に生じた医学的リスクに対応する手法を述べることとした。内容としては、急変を予測するための情報収集から、その情報を解釈して緊急性の判断ができること、現場で行わなくてはならない応急処置につき紹介している。このため内容は多少の医学的知識を必要とするものとなっている。しかし広い範囲の疾患を対象とするリハの臨床においては本書の内容だけでは情報は十分とはいえない。実際の臨床場面での応用にあたっては、各施設のリハ科医師や処方箋を作成した担当医師と十分なコミュニケーションをとり、リスクの確認をする必要がある。
 本書がリハ医療の質および安全性のさらなる向上の一助となれば幸いである。

【目次】
 第1章 リハビリテーションにおけるリスク管理
 第2章 急変を予測するために
 第3章 疾患ごとのリスク予想
 第4章 どのような急変を生じるか (遭遇しやすい症状とその対処法)
 第5章 急変を生じた場合に
 付録 カルテに使用されることの多い略語


リハビリテーションリスク管理ハンドブックリハビリテーションリスク管理ハンドブック
(2008/11)
亀田メディカルセンターリハビリテーション

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【追記】
 リハビリテーション医療におけるリスク管理については、また別の機会に、様々な角度から、当ブログで詳述したいと思っています。




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脳卒中リハビリテーションにおける 「早期離床」

 脳卒中の急性期リハビリテーションにおいて、「合併症の予防・廃用症候群の予防」・「早期離床」・「早期リハビリテーション」 が肝要です。

(1) 「早期離床」 の定義
  (栗原正紀 「続・救急車とリハビリテーション」:119-120, 2008)
 早期離床とは、可及的速やかに、食事はベッドの上ではなく食堂で、排泄もまたベッド上ではなく車椅子を用いてもトイレで、整容は洗面所などで、実施できるようにしていくということであり、結局、寝る時だけがベッドというように、明確に場を分離して極力早く日常の生活パターンに戻すということになります。

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(2008/01)
栗原 正紀

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(2) 回復期リハ病棟のケア:10項目宣言
  (2003年9月:全国回復期リハ病棟連絡協議会・看護研修会)
 ①食事は食堂やデイルームに誘導し、経口摂取への取り組みを推進しよう。
 ②洗面は洗面所で朝夕、口腔ケアは毎食後実施しよう。
 ③排泄はトイレへ誘導し、オムツは極力使用しないようにしよう。
 ④入浴は週2回以上、必ず浴槽に入れよう。
 ⑤日中は普段着で過ごし、更衣は朝夕実施しよう。
 ⑥二次的合併症を予防し、安全対策を徹底し、可能な限り抑制は止めよう。
 ⑦他職種と情報の共有化を推進しよう。
 ⑧リハ技術を習得し看護・介護ケアに生かそう。
 ⑨家族へのケアと介護指導を徹底しよう。
 ⑩看護計画を頻回に見直しリハ計画に反映しよう。



 上記 (1) の 「早期離床」 の定義に対して、急性期病院の医師・看護師・リハビリテーションスタッフの中で違和感を持つ方も少なからずいると思います。

 急性期病院の医療スタッフは、「早期離床」 というと、脳卒中の種類・臨床病型・病態像別の離床開始基準を厳格に適用しながら、「早めに起こして車椅子に乗せる」、即ち、リスク管理の基、ベッド上臥位→坐位→車椅子移乗 (→起立→歩行) へとステップアップすることであり、 (1) の様なことまでは想定していないスタッフも少なくないと思われます。また、上記 (2) ①~⑤に挙げられているように、 (1) については回復期リハビリテーション病棟に転院してからの話と思われがちです。

 急性期病院では、医療スタッフが、脳卒中に対する濃厚な急性期治療の方に傾注せざるを得なく、また、ハードウェアの問題 (病室の広さ・車椅子トイレ・食堂・片麻痺用浴槽等の整備状況等) 、ソフトウェアの問題 (看護&ケアスタッフ・リハビリテーションスタッフのマンパワー不足等)、および患者さんの合併症・併存疾患・リスク、等にて、 (1) の様なアプローチが困難な病院も少なくないと思われます。

 しかしながら、ストロークユニット (脳卒中専門病棟) あるいは通常2週間以内に回復期リハビリテーション病棟に転院させるような急性期病院以外の急性期病院においては、上述の諸問題があるにしても、徹底したリスク管理の基、できる限り (1) に則った 「早期離床」 アプローチを行い、極力早く日常の生活パターンに戻すことがベターと考えられます。そしてそれが早期退院・在院日数の短縮に繋がると考えられます。




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