(1)以前の当ブログ記事 (『
「保険医療機関等の指導・監査」 と 「保健所による立入検査」』) において、一部のリハビリテーションスタッフの
「監査」 という言葉の誤用 (
「個別指導」 との混同) を指摘しました。
一方、一部のリハビリテーションスタッフにおいて、
「レセプトの返戻」 という言葉の誤用 [
「レセプトの査定 (減額査定)」 との混同] がみられますので、今回、簡単に解説します。
●レセプト (診療報酬明細書) の 「返戻」 と 「査定 (減額査定)」
医療機関は、毎月初めに前月の医療費を、まとめて審査支払機関 [「社会保険診療報酬支払基金 (通称、支払基金)」 や 「国民健康保険団体連合会 (通称、国保連)」] に請求します。
この際、診療内容を記載した診療報酬明細書 (レセプト) を提出します。
審査支払機関による審査の段階で、レセプトの内容に不備が見つかった場合は、医療機関に差し戻される事があります。
これを 「返戻」 といいます。
「返戻」 の理由としては、 保険証の記号・番号の不備、点数、診療内容と病名の不一致などです。
レセプトが返戻された場合は内容を見直して、注記・修正した上で再提出しなければなりません。
返戻されたレセプトは診療報酬の支払が最低1ヶ月は遅れてしまうため、返戻を減らす事が医療機関の経営にとって重要です。
一方、「査定 (減額査定)」 は、請求額から減額されたり減点される事です。
「査定 (減額査定)」 の理由として、「適応外、過剰、重複、不適当又は不必要」 というような理由が挙げられます。
減点されてしまうと医療機関の収益にも影響を与える事になります。
また医療機関として減点に納得がいかない場合は、 医師と相談の上で6ヶ月以内であれば再審査請求をする事が可能です。
(2)上記の通り、レセプトの
「返戻」 は、いわば 「執行猶予」、
「査定 (減額査定)」 は、いわば 「罰金刑の執行」 であり、全くの別物です。
したがって、
コミュニケーションの場において、「レセプトの返戻」 という文言と、「レセプトの査定 (減額査定)」 という文言とは、厳密に使い分けする必要があります (さもなければ、会話が混乱し、話が通じなくなります)。
(3)リハビリテーション料のレセプト審査において、
「理不尽な・非常識な・理解不能な」 減額査定が多く見られます。
この要因として、
①他の診療報酬 (例:検査、投薬、注射、手術) と異なり、リハビリテーショ
ン料は、
「適応外、過剰、不適当又は不必要」 の審査基準が曖昧。
②
「おまかせリハビリ」 が多く、医師の関与が少ないと認識されていること
が多い。
③
検査・投薬・注射・手術等は、材料費と人件費がかかっているが、リハ
ビリテーション料は人件費のみであると認識されていることが多い。
等が挙げられます。
また、レセプト審査委員による格差 (リハビリテーションに対する理解不足も一因)、都道府県による格差、
「社保」 と 「国保」 との格差も問題視されています。
この件に関する詳細な考察・対策等は、非常に長いブログ記事となるため、また、別の機会に論じたいと思います。
(4)以上、リハビリテーション料のレセプト審査に関するコミュニケーションの場において、
「返戻」 と 「査定 (減額査定)」 とは、「厳密に使い分ける・明確に表現する」 ことの重要性・必要性を述べました。
また、医療機関あるいはリハビリテーションに対する 「指導・監査」 に関するコミュニケーションの場における
「個別指導」 と 「監査」 との文言の峻別も重要と考えられます。