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脳血管疾患等リハビリ料における廃用症候群の 「外科手術」 とは

 リハビリテーション医療従事者の一部で、脳血管疾患等リハビリテーション料の対象患者である 「廃用症候群」 における 「外科手術」 の解釈に関して、未だ混乱があるようです。
 下記の各資料を用いて考察したいと思います。

(資料1) 脳血管疾患等リハビリテーション料の対象患者 (平成20年度診療報酬改定)
 ア.急性発症した脳血管疾患又はその手術後の患者とは、脳梗塞、脳出血、
  くも膜下出血、脳外傷、脳炎、急性脳症 (低酸素脳症等)、髄膜炎等のも
  のをいう。
 イ.急性発症した中枢神経疾患又はその手術後の患者とは、脳膿瘍、脊髄
  損傷
、脊髄腫瘍、脳腫瘍摘出術などの開頭術後、てんかん重積発作等の
  ものをいう。
 (中略)
 キ.リハビリテーションを要する状態であって、一定程度以上の基本動作
  能力、応用動作能力、言語聴覚能力の低下及び日常生活能力の低下を来
  している患者とは、外科手術又は肺炎等の治療時の安静による廃用症候
  群
、脳性麻痺等に伴う先天性の発達障害等の患者であって、治療開始時
  のFIM 115 以下、BI85 以下の状態等のものをいう。

(資料2) 運動器リハビリテーション料の対象患者 (平成20年度診療報酬改定)
 ア.急性発症した運動器疾患又はその手術後の患者とは、上・下肢の複合
  損傷 (骨、筋・腱・靭帯、神経、血管のうち3種類以上の複合損傷)、
  脊椎損傷による四肢麻痺 (1肢以上)、体幹・上・下肢の外傷・骨折、
  切断・離断 (義肢)、運動器の悪性腫瘍等のものをいう。
 イ.慢性の運動器疾患により、一定程度以上の運動機能の低下及び日常生
  活能力の低下を来している患者とは、関節の変性疾患、関節の炎症性疾
  患、熱傷瘢痕による関節拘縮、運動器不安定症等のものをいう。

(資料3) 呼吸器リハビリテーション料の対象患者 (平成20年度診療報酬改定)
 ア.急性発症した呼吸器疾患の患者とは、肺炎、無気肺等のものをいう。
 イ.肺腫瘍、胸部外傷その他の呼吸器疾患又はその手術後の患者とは、肺
  腫瘍、胸部外傷、肺塞栓、肺移植手術、慢性閉塞性肺疾患 (COPD) に
  対するLVRS (Lung volume reduction surgery) 等の呼吸器疾患又はそ
  の手術後の患者をいう。
 (中略)
 エ.食道癌、胃癌、肝臓癌、咽・喉頭癌等の手術前後の呼吸機能訓練を要
  する患者とは、食道癌、胃癌、肝臓癌、咽・喉頭癌等の患者であって、
  これらの疾患に係る手術日から概ね1週間前の患者及び手術後の患者で
  呼吸機能訓練を行うことで術後の経過が良好になることが医学的に期待
  できる患者のことをいう。

(資料4) 早期リハビリテーション加算の対象患者 (急性発症した脳血管疾患等の
    疾患) (平成16年度診療報酬改定)

 ①脳血管疾患
 ②脊髄損傷等の脳・脊髄 (中枢神経) 外傷
 ③大腿骨頸部骨折、下肢・骨盤等の骨折、上肢骨折
 ④開腹・開胸手術後
 ⑤脳腫瘍などの開頭術後
 ⑥急性発症した脳炎、ギランバレーなどの神経筋疾患
 ⑦高次脳機能障害
 ⑧脳性麻痺
 ⑨四肢 (手部、足部を含む) の骨折・切断・離断・腱損傷
 ⑩脊椎・肩甲骨・関節の手術後
 ⑪四肢の熱傷 (Ⅱ度は体表面積15%以上、Ⅲ度は10%以上)、気道熱傷を伴
  う熱傷
 ⑫多発外傷
 ⑬植皮術後
 ⑭15歳未満の先天性股関節脱臼症 (LCC) の手術後


 基本的に、脳血管疾患等リハビリテーション料の対象患者における廃用症候群 (資料1-キ) の 「外科手術」 とは、胸腹部の手術のことであり、通常、開胸術ならびに開腹術 [資料4-④] のことを指します。
 開胸術・開腹術の一部で、呼吸機能訓練のみで対処できる場合は、呼吸器リハビリテーション料の対象患者 (資料3-イ・エ) となります。
 胸腔鏡下手術・腹腔鏡下手術の場合は、(通常、開胸術・開腹術と同様に、術後廃用症候群として取り扱いますが)、手術侵襲が低く、廃用症候群が生じにくいと見なされると、レセプト返戻 (呼吸器リハビリテーションへの変更勧告等) もしくは減額査定されやすくなります (都道府県によって温度差がありますが・・・)。

 四肢・体幹・脊椎 (整形外科領域:運動器) の手術後 [資料4-③術後・⑨術後・⑩・⑭] は、運動器リハビリテーション料の対象患者 (資料2-アの手術後の患者) に該当します。但し、脊髄障害を呈している場合は脳血管疾患等リハビリテーション料の対象患者 (資料1-イ) に該当します。

 ちなみに、頭部の外科手術後 [開頭術後 (資料4-⑤)] は、脳血管疾患等リハビリテーション料の対象患者 (資料1-イ) に該当します。

 上述の通り、基本的には、四肢・体幹・脊椎 (整形外科領域:運動器) の手術後は、「臨床的に廃用症候群症状が合併していても」、診療報酬上は、脳血管疾患等リハビリテーション料の対象患者における廃用症候群 (資料1-キ) の 「外科手術」 には該当せず、脳血管疾患等リハビリテーション料は算定できません。運動器リハビリテーション料での算定になります。
 即ち、診療報酬上、脳血管疾患等リハビリテーション料の対象患者における廃用症候群 (資料1-キ) は、あくまで、運動器リハビリテーション料の対象患者に該当しない場合に適用できます。
 呼吸器リハビリテーション料との関係は微妙ですが、上述のように、通常、呼吸機能訓練のみの場合は呼吸器リハビリテーション料での算定、それ以外は、術後廃用症候群として脳血管疾患等リハビリテーション料を算定するのがベターと考えられます。


 厚生労働省も、「術後の整形疾患なども廃用症候群として算定してくる例が多く、何でも廃用症候群として算定してくる例が多い」 という認識であり、一時期、「廃用症候群を対象患者から削除する」 という考えでした。リハビリテーション関連5団体等との交渉により、削除案は撤回されましたが、平成20年度診療報酬改定における 「廃用症候群に係る評価表」 (下記参照) の義務化に繋がりました。

●廃用症候群に該当するものとして脳血管疾患等リハビリテーション料を算定する場合は、廃用をもたらすに至った要因、臥床・活動性低下の期間、廃用の内容、介入による改善の可能性、改善に要する見込み期間、前回の評価からの改善や変化、廃用に陥る前のADLについて別紙様式22を用いて、月ごとに評価し、診療報酬明細書に添付すること。

 運動器リハビリテーション料の対象患者の中にも、運動器疾患の廃用症候群とも呼ばれている 「運動器不安定症 (資料2-イ)」 がありますが、整形外科手術後の廃用症候群にはあまり馴染みません。
 そこで、日本運動器リハビリテーション学会は、「社会保険診療報酬に関する改正要望書 (概要版) 平成20年11月12日 外科系学会社会保険委員会連合 (外保連)」 にて、平成22年度診療報酬改定に向けて、「運動器リハビリテーションにも廃用症候群を追加」 という要望を出しています。 (導入されるかどうかは、今のところは懐疑的ですが・・・)。

 以上、現時点では、医療機関において、安易に 「術後の整形疾患など、何でも廃用症候群として算定する」 ことは厳に慎み、また、「廃用症候群に係る評価表」 をきちんと作成することにより、廃用症候群が、脳血管疾患等リハビリテーション料の対象患者から削除されないために、リハビリテーション関係者の不断の努力が肝要と思われます。また、廃用症候群に対するリハビリテーション治療効果等についての更なる強いエビデンスの確立が望まれます。

【追記】
 疾患別リハビリテーション料体系を廃止すれば、上記の件も含めて、多くの混乱
がなくなるのですが・・・。




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心大血管疾患・呼吸器リハの起算日が開始日である理由 (政府見解)

 診療報酬における 「リハビリテーション起算日」 において、脳血管疾患等リハビリテーション・運動器リハビリテーションと、心大血管疾患リハビリテーション・呼吸器リハビリテーションとでは異なっています。その理由の政府・厚生労働省見解が、「リハビリテーション料改定等に関する質問主意書」 (平成19年11月15日提出 質問第223号 提出者:山井和則) に対する政府答弁書 (内閣衆質168第223号 平成19年11月22日 内閣総理大臣 福田康夫) に示されていますので紹介します。

(質問7) 脳血管疾患等リハビリテーションと運動器リハビリテーションでは、リハビリテーション起算日が発症日と同日になっている。一方で、心大血管疾患リハビリテーションと呼吸器リハビリテーションでは、リハビリテーション起算日が発症日と異なっている。なぜか。【註:原文にミスあるため、一部訂正】。

(回答) お尋ねについては、心大血管疾患に係るリハビリテーションは発症後一定の検査等を行いその結果を踏まえてその開始日を決める必要があること、また、呼吸器疾患に係るリハビリテーションは発症日の特定が一般に困難であることから、これらについては、その開始日をそれぞれ心大血管疾患リハビリテーション料又は呼吸器リハビリテーション料の起算日としているものであるのに対して、脳血管疾患及び運動器疾患に係るリハビリテーションは発症、手術又は急性増悪直後からの開始が効果的とされていることを踏まえ、原因疾患の発症日等と脳血管疾患等リハビリテーション料又は運動器リハビリテーション料の起算日を同一としているものである。


 整理すると、下記の様になります。

(1) 心大血管疾患リハビリテーション
 発症後一定の検査等を行いその結果を踏まえてその開始日を決める必要があることから、リハビリテーション開始日をリハビリテーション起算日とする。
(2) 呼吸器リハビリテーション
 発症日の特定が一般に困難であることから、リハビリテーション開始日をリハビリテーション起算日とする。
(3) 脳血管疾患等リハビリテーション
 発症、手術又は急性増悪直後からの開始が効果的とされていることを踏まえ、原因疾患の発症日等をリハビリテーション起算日とする。
(4) 運動器リハビリテーション
 発症、手術又は急性増悪直後からの開始が効果的とされていることを踏まえ、原因疾患の発症日等をリハビリテーション起算日とする。

 (1)・(2) に関しては妥当と考えられます。
 しかしながら、(3)・(4) においても、発症日の特定が困難な症例も少なくなく、また、発症後一定の検査等を行いその結果を踏まえてその開始日を決める必要のある症例 (例:脳卒中の臨床病型、脳卒中患者等の合併症・併存疾患のチェック&リスク管理)、さらには症例によっては全身状態や合併症・併存疾患の影響でリハビリテーション開始が遅延する場合も少なくありません。
 したがって、脳血管疾患等リハビリテーションや運動器リハビリテーションにおいても、心大血管疾患リハビリテーション・呼吸器リハビリテーションと同様に、基本的には、リハビリテーション開始日をリハビリテーション起算日とする方がベターと考えられます。
 また、(官僚の机上の理論特有の) 「全国一律の」 算定日数制限も撤廃して、現場の判断 (医師の裁量) に任せるべきと思います。




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