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脳卒中急性期医療をめぐる課題と展望 (リハビリテーション)

 週刊医学界新聞 (第2820号:2009年3月2日) に、脳卒中急性期医療についての興味深い記事 (【座談会】 脳卒中急性期医療をめぐる課題と展望) が掲載されていますので、リハビリテーションに関する部分を抜粋して紹介します。

●リハビリ開始は1日でも早く

① (内山真一郎・東京女子医科大学教授)
 もう一つの課題は、急性期~回復期~慢性期にわたるシームレスな医療の実現です。今年から脳卒中専門看護師・専門理学療法士の認定が新たにスタートすることも鑑みると、他職種、他診療形態との連携がいっそう重要になってくると考えます。

② (平野照之・熊本大学医学部附属病院神経内科副科長)
 熊本では、30年以上前にわれわれの一世代前の先輩方が、神経内科におけるリハビリの重要性を強く認識され、国内の先進的な施設で勉強して県内に多くのリハビリ病院をつくられました。同じころから脳外科の先生方が救急の素地をつくっておられましたので、そこにわれわれ神経内科のグループが参加し、脳外科と協力して脳卒中急性期診療を行う、という形が自然と生まれてきました。

 私が卒業した時期、ちょうど先輩の橋本洋一郎先生が国循から戻られた1987年ごろは、救急で入院すると2~3か月してやっとリハビリの転院を考えようかという時代でした。ですから、リハビリ病院の先生から 「あんたたちは、脳卒中の患者さんをスルメにして送ってくるから困る。それをイカに戻すには、ずいぶん時間がかかる」 と言われました (笑)。とにかく、早く送ってほしいと。実際、長期間安静にされた患者さんよりも、ともかくリハビリを早く始めた患者さんのほうが圧倒的に回復がいいということが年を経るごとにわかってきたのです。いまは救急の病態をなるべく早く落ち着けて、早期にリハビリが始められることを急性期のゴールにしていますし、入院したその日から、関節可動域訓練や体位交換といった他動的なリハビリを始めるようにしています。15年以上前から 「電話1本1週間」 をキャッチフレーズに、急性期と回復期で連携を取りながら進んできました。

③ (内山) 長尾先生のところでは、リハビリや後方病院の確保についてはどうされていますか。

④ (長尾毅彦・東京都保健医療公社荏原病院神経内科医長)
 東京の泣き所はリハビリ病院の少なさで、全国でいちばん苦労している地域ではないかと思います。現在、回復期リハの病院は関東地域でも増えつつあり、10年前と比べると状況はかなり改善しています。それでも入院期間は熊本より1週間から10日ほど長くなってしまうのが実情です。

 そこでカギとなるのが、急性期のリハビリです。回復期のリハビリを受けるまでの2~3週間がブランクになると、それこそスルメになってしまいます。それを防ぐためには、発症直後から回復期に負けないレベルでしっかりと急性期リハビリを行い、その上で回復期リハビリ病院への転院を待機する。私は、それが comprehensive stroke center の大きな役割の1つだと考えています。特に、東京のようになかなか転院先が決まらない地域であれば、より急性期のリハビリを重要視して、患者さんの早期回復を狙うべきです。とはいえ、実際に急性期リハビリの体制が整った脳卒中基幹病院は多くないので、今後、リハビリをペアにした脳卒中センターという概念をもう少し強調すべきではないかと考えています。

 当院でも、たかだか2~3日リハビリの開始を前倒ししただけで、すべての回転がスムーズになり、患者さんの状態もよくなるというデータがわずか1年で出てきました。「ああ、こんなに違うんだな」 と実感しましたね。急性期リハビリ脳卒中ケアユニット加算にも入っていることでもあり、そのあたりの認識を、脳卒中の専門医も持つべきだと思います。

 上記に関する当ブログ管理人の考察・結論は、下記の通りです。

(1)上記①の通り、脳卒中医療において、急性期~回復期~慢性期にわたるシームレスな医療の実現が重要です。
 リハビリテーションにおいても、(健康増進リハビリテーション~生活機能低下予防リハビリテーション~) 超急性期・急性期リハビリテーション~回復期リハビリテーション~維持期リハビリテーションの、シームレスなリハビリテーション・システム (地域リハビリテーション連携システム) の構築が必要であり、特に、脳卒中の急性期リハビリテーション・回復期リハビリテーションが肝要と思われます。

(2)何故ならば、以前の当ブログ記事 [「地域リハビリテーション (CBR:community based rehabilitation)」、「脳卒中急性期医療体制の構築 (東京都脳卒中急性期医療機関 2009)」] で述べているように、実際の脳卒中医療において、(a) 不充分な急性期治療・(b) 不充分な早期リハビリテーション・(c) 「医原性」 の二次的合併症・障害 (廃用症候群・過用症候群・誤用症候群)・(d) 不充分な回復期リハビリテーションあるいは回復期リハビリテーションの欠如のため、結果的に障害の回復が不充分なまま、あるいは余計な障害まで作られた上で、介護保険・福祉に受け継がれることが未だ少なくなく、全県的な脳卒中医療、リハビリテーション・ネットワークの構築の必要性が喚起されているからです。

 上記 (a) には 「患者・家族等の脳卒中発症サインの理解不足による病院受診遅延」 とそれに伴う 「血栓溶解療法 (t-PA) の断念」、「脳卒中専門医・脳神経外科医・神経内科医の不足」、「救急・急性期病院における 24時間・365日・発症3時間以内のt-PA 治療体制の不備・未整備」、(b)・(c) には 「急性期病院サイドのリハビリテーション・廃用症候群等についての理解不足」、(d) には 「急性期病院サイドのリハビリテーションについての理解不足 (急性期病院から、リハビリテーションを充分には提供しないまま、回復期リハビリテーション病棟も経由させずに、そのまま自宅等・療養病床・老人保健施設等に退院・転院させる医療機関が未だ存在します)」 および 「回復期リハビリテーション病棟の数的不足、質の問題、および発症から入院までの月数制限」 等の関与が挙げられます。

(3)実際、上記②の通り、地域によっては、あるいは急性期病院によっては、「脳卒中の患者さんをスルメにして、回復期リハビリテーション病棟、療養病床、介護老人保健施設、あるいは在宅等に送る・送ってしまう」 ことが未だ少なくありません。
 即ち、「医原性の廃用症候群」 (例:関節拘縮、廃用性筋力低下・筋萎縮、誤嚥性肺炎、心肺機能低下・起立性低血圧、深部静脈血栓症・肺塞栓リスク、骨粗鬆症・骨折リスク、褥創、認知症・抑鬱、尿路感染症・尿路結石・尿失禁・便秘、等々) が生じて 「スルメ」 状態になった患者さんを、「イカ」 に戻すのに相当な時間を要するため、本格的な集中的な回復期リハビリテーションを施行するのがかなり遅延、もしくは施行困難となります。(あるいは、「スルメ」 状態にて在宅等に追い出されます)。

 したがって、患者さんのためには、上記②・④の通り、救急の病態をなるべく早く落ち着けて、早期にリハビリが始められることを急性期のゴールにし、入院したその日または遅くとも翌日から、ベッドサイド・リハビリテーション (関節可動域訓練・体位変換・呼吸排痰訓練・深部静脈血栓症予防・精神心理的サポート等の他動的なリハビリテーションが中心) を始める必要があります。そして、厳格なリスク管理 (「リハビリテーション医療におけるリスク管理」 参照) のもと、早期離床 (『脳卒中リハビリテーションにおける 「早期離床」 』参照) に繋げていきます。
 
 そして、上記②の通り、熊本方式でお馴染みの 「電話1本1週間」 をキャッチフレーズにした急性期病院と回復期リハビリテーション病院とのスムーズな連携が肝要です。
 一方、上記④の通り、回復期リハビリテーション病棟の少ない地域では、転院のための待機時期が比較的長くなるため、特に、充実した急性期・回復期前期リハビリテーション体制が必要と考えられます。

(4)上記④で推奨されている脳卒中センター・脳卒中ケアユニットの件については、診療報酬上の 「脳卒中ケアユニット入院医療管理料」+「超急性期脳卒中加算」 [「脳卒中急性期医療体制の構築 (東京都脳卒中急性期医療機関 2009)」 参照] の算定要件・施設基準を満たすものが、いわゆる 「脳卒中センター」 あるいは日本で言う 「ストローク・ケア・ユニット (SCU)」 で、各専門の医療スタッフが集まり組織づくりをし、チームで脳卒中の発症予防、早期発見および急性期 (発症時) 治療から超急性期~急性期リハビリテーションまでの一貫した総合的な治療を提供します。

 構成メンバーとして、「24 時間体制の、脳卒中専門医 (あるいは脳卒中の経験が深い神経内科医・脳神経外科医、脳血管内治療医)、脳卒中専門ナース等の看護師、薬剤師、診療放射線技師、臨床検査技師」・「放射線科専門医、循環器専門医、呼吸器専門医等の協力」、「リハビリテーション科専門医の関与」、「特に急性期脳卒中リハビリテーションの経験が深い理学療法士 (PT)・作業療法士 (OT)・言語聴覚士 (ST)、管理栄養士、医療ソーシャルワーカー (MSW)」 が挙げられます。
 また、高度医療機器 (CT、MRI、脳血管造影、SPECT、超音波検査等) は24時間フル稼働体制です。

 上記のような脳卒中センターが、全国の各二次医療圏に設置され、円滑に運用されれば、脳卒中急性期医療体制は、地域格差も解消され、飛躍的に進化すると思います。

 但し、急性期後の回復期・維持期の医療体制および脳卒中医療連携体制も同時に確立させないと片手落ちになり、それが、医療難民・救急難民・リハビリ難民・介護難民等を生み出します

(5)地域リハビリテーション [「地域リハビリテーション (CBR:community based rehabilitation)」 参照] に関しては、リハビリテーション従事者以外の関係機関・関係者の一部に誤解があるようですが、地域リハビリテーションは、単に介護保険下の維持的リハビリテーション (訪問リハビリテーション・通所リハビリテーション)・介護予防のみを指すのではありません。

 真の地域リハビリテーションとは、地域 (二次医療圏) における包括的なリハビリテーションシステム (CBR:community-based rehabilitation) です。
 したがって、「健康増進リハビリテーション~生活機能低下予防リハビリテーション~超急性期・急性期リハビリテーション~回復期 (集中的) リハビリテーション~維持期 (断続的) リハビリテーションまでのシームレスなリハビリテーションが、二次医療圏において円滑に進むようなシステム」 を構築する必要があります。

 また、地域リハビリテーション (CBR) の確立のためには、「緊密な病診連携・病病連携・病介 (病施設) 連携による地域医療連携・地域リハビリテーション連携システムの構築」、「医療保険と介護保険の円滑な流れ・連携」、ならびに、「リハビリテーション・マインドの啓発・啓蒙」 が重要と考えられます。

 実際、地域リハビリテーション活動にて、維持期リハビリテーション・介護予防等をいくら頑張っても、急性期・回復期リハビリテーションが不充分であれば、障害が重度化 (当初軽度障害→結局中等度障害、当初中等度障害→結局重度障害) して、どうにもなりません。片手落ちあるいはお手上げ状態になります。

 したがって、地域リハビリテーション活動として、「脳卒中や骨折等で入院した高齢者等が、発症後早期に適切なリハビリテーションが受けられるように、急性期リハビリテーションの重要性について、医療機関等に働きかける」・「医療機関に回復期リハビリテーション病棟の開設・増床を働きかける」 必要があります。

 但し、上記の働きかけが一番困難なタスクであり (当ブログ管理人も困っていますが・・・)、各医療機関のポリシー、財務事情、リハビリテーション・マンパワー等も絡みます。
 地域リハビリテーション支援事業のマンパワー・予算が潤沢であれば、「当該医療機関へのリハビリテーション・マンパワーの派遣」、「充分なリハビリテーション機能を持つストロークユニット (脳卒中専門病棟)・回復期リハビリテーション病棟の開設の促進」、あるいは 「熊本方式等の地域リハビリテーションシステム構築」 等が出来るのですが・・・。(それだけのことをする価値は充分あるのですが・・・)。

(6)以上、脳卒中急性期医療をめぐる課題と展望 (リハビリテーション) に関する考察等を述べました。

 上述の通り、超急性期・急性期~回復期~維持期の各ステージの脳卒中医療体制・リハビリテーション体制が確立し、且つ、充実した脳卒中医療連携体制および地域リハビリテーション連携ネットワークの構築が実現すれば、実際の脳卒中医療において、『濃厚な急性期治療ならびに充分な早期リハビリテーションが実施されることにより、脳の損傷が最小限に抑えられ、且つ 「医原性」の二次的合併症・障害 (廃用症候群・過用症候群・誤用症候群) の出現も防止でき、そして、その後、充分な回復期リハビリテーションが行われることにより、「可能な限りの障害の回復が得られ、余計な障害も作られることなく」、介護保険・福祉に円滑に受け継がれる』という理想的な流れが得られると思います。

 但し、地域リハビリテーション活動には、医療制度・診療報酬問題 (疾患別リハビリテーション体系・単価の減額、リハビリテーション算定日数制限、回復期リハビリテーション病棟の成果主義、障害者施設等入院基本料からの脳卒中・認知症患者の除外、後期高齢者医療制度等) ・介護報酬問題 (要介護認定の厳格化、介護給付費の抑制、支給限度額等)・障害者自立支援法 (応能負担→一律1割の応益負担、年収制限の厳格化、障害区分認定問題) 等も大きく影響します。

 したがって、医療難民・リハビリ難民・救急難民・脳卒中難民・認知症難民・介護難民・障害者難民等を防止するためにも、厚生労働省の医療・介護・福祉政策の策定・施行に対して、エビデンスを掲げて、良い意味での影響力を行使するのも、地域リハビリテーション活動の一つと思われます。

 また、地域リハビリテーション支援事業の実効性をより高めるためには、当該事業の実施に、厚生労働省の老健局・保険局・医政局・健康局・障害保健福祉部の横の連携・コラボレーションが肝要と思われます。

【関連記事】 (本文中に引用した関連記事は除く)
 ◎障害者施設等入院基本料・算定要件の解釈の厳格化
 ◎回復期リハビリ病棟への成果主義の導入 (厚労省保険局医療課の見解)
 ◎リハビリ算定日数制限 (厚労省保険局医療課の見解)
 ◎地域包括ケアの実現に向けて (講演:厚生労働省・宮島老健局長)
 ◎平成20年度リハビリ診療報酬改定 (日本リハビリ医学会の総括)
 ◎ 「リハビリテーション医療のあり方」 日病協の提言
 ◎6万床時代を迎える回復期リハビリ病棟 (回リ協・会長講演) ①
 ◎6万床時代を迎える回復期リハビリ病棟 (回リ協・会長講演) ②




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靴の中敷きの微小振動による高齢者の転倒防止

 65 歳以上の高齢者において、転倒の年間発生率は10~20%であり、そのうちの約10%は骨折に至ると報告されています。
 転倒を経験した高齢者は、たとえ軽傷で済んでも心理面に強い影響を受け、閉じこもって不活発な生活に陥り易く、様々な健康障害を招くことが知られています。
 不幸にも、骨折 (特に大腿骨頸部骨折) に至った場合は、その後の手術やリハビリテーションの治療効果ならびに患者要因 (高齢、重度・重複障害、複数の合併症・併存疾患) によっては、廃用症候群も重なり、寝たきりになることも少なくありません。
 したがって、高齢者の転倒防止は、生活・人生の質 (QOL) のためにも、重要な課題です。

【関連記事】
 ◎リハビリテーション医療におけるリスク管理

 Medical Tribune (2008/10/23) に、靴の中敷きの微小振動を用いた転倒防止対策に関する記事が掲載されていますので紹介します。

●靴からの振動で高齢者の転倒防止

 米国ボストン大学生体力学センターの James J. Collins 教授と Attila A. Priplata 博士が行っている研究によると、70歳の高齢者が20歳の若者と同等のバランスを維持するためには、靴の中敷きから雑音 (ノイズ) が出るようにした 「ノイジーシューズ」 が一つの解決策となるかもしれない。

 高齢者は転倒しやすく、骨折に至ることも多い。
 今回の方法は、バランス感覚にかかわるすべての障害の解決策になることは期待できないものの、少なくとも高齢者にとっては役立つ可能性がある。
 また、この方法は、足の感覚が失われてしまう糖尿病患者にも役立つ可能性がある。

 今回考案されたノイジーシューズは、統合閾値を持つ感覚神経系におけるノイズに対する反応を利用するものである。
 高齢者では活動を促す信号が加齢とともに衰えるが、この信号の弱まりを救済するのがノイズである。

 Collins 教授らが開発したのは、ゲル状の中敷きに電気モーターを挿入し、そこから微小振動を足に伝えることで、感覚神経にノイズを加える方法である。

 同教授らは高齢者にノイジーシューズを履いてもらい、静止して立っている間にどの程度揺れてしまうかを測定し、バランス維持能力を調査した。
 その結果、この中敷きの効果によって、高齢者の揺れは普通の靴を履いた20代の若者と同等にまで改善されたという。

 電気中敷きを敷いたノイジーシューズは、Afferent 社 (米国ロードアイランド州) が製造し、2年以内に上市される予定である。

【関連論文】
 ●Priplata AA, Patritti BL, Niemi JB, Hughes R, Gravelle DC, Lipsitz LA, Veves A,
  Stein J, Bonato P, Collins JJ. Noise-enhanced balance control in patients with
  diabetes and patients with stroke. Ann. Neurol. 59 (1): 4-12, 2006.


 上記に関する当ブログ管理人の考察・結論は、下記の通りです。

(1)ノイジーシューズは、靴の中敷きタイプの転倒予防装置であり、装着しやすく、実用性・利便性は高いと思われます。

(2)上記関連論文によると、電気モーター (電池式) による微小振動刺激 (ランダムな刺激) については、「本人が気がつかないほど、非常に微弱なもの」 で、不快感は生じにくいとのことです。
 但し、微小振動刺激が、脳卒中・糖尿病患者あるいは高齢者において、下肢のしびれ (異常感覚) を出現・増悪させる可能性も否定できないと思われます。(刺激パターンの工夫が必要と思われます)。
 また、下肢の末梢神経障害の程度によっては、転倒予防効果はあまり望めないと推察されます。

(3)高齢者の転倒・骨折は、寝たきり、あるいは閉じこもり・廃用症候群を生じやすく、医療費も相当かかります。
 転倒には、多くの様々な内的要因・外的要因が関与しますので、本装置だけでは完全には防止できませんが、少しでも、数%でも、高齢者の転倒事故が減少すれば、高齢者のQOLに大きく貢献すると思います。
 できるだけ早期の製品化が望まれます。




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地域リハビリテーション (CBR:community based rehabilitation)

 地域リハビリテーションに関して、「都道府県によって活動の度合いに温度差が相当ある」・「地域リハビリテーションに関する考え方・方向性が、関係者間で異なることが少なくない」・「マンパワー・予算不足等にて、活動の実効性・効果があまり高くない」 等、様々な問題点が浮き彫りになっています。
 本ブログ記事では、地域リハビリテーションの在り方について考察したいと思います。

(資料1) 地域リハビリテーション (CBR:community based rehabilitation) の定義
     (ILO・UNESCO・WHO、1994年)


 地域リハビリテーション (CBR) とは、障害のあるすべての人々のリハビリテーション、機会の均等、そして社会への統合を地域の中で進めるための戦略である。
 CBRは、障害のある人々と家族、そして地域、さらに適切な保健医療、教育、職業および社会サービスが一体となって努力する中で履行されていく。

(資料2) 地域リハビリテーションの定義と活動指針
     (日本リハビリテーション病院・施設協会、2001年)


●定義
 地域リハビリテーションとは、障害のある人々や高齢者およびその家族が住み慣れたところで、そこに住む人々とともに、一生安全に、いきいきとした生活が送れるよう、医療や保健、福祉及び生活にかかわるあらゆる人々や機関・組織がリハビリテーションの立場から協力し合って行う活動のすべてを言う。

●活動指針
 これらの目的を達成するためには、障害の発生を予防することが大切であるとともに、あらゆるライフステージに対応して継続的に提供できる支援システムを地域に作っていくことが求められる。
 ことに医療においては廃用症候の予防および機能改善のため、疾病や傷害が発生した当初よりリハビリテーション・サービスが提供されることが重要であり、そのサービスは急性期から回復期、維持期へと遅滞なく効率的に継続される必要がある。
 また、機能や活動能力の改善が困難な人々に対しても、できうる限り社会参加を可能にし、生あるかぎり人間らしく過ごせるよう専門的サービスのみでなく地域住民も含めた総合的な支援がなされなければならない。
 さらに、一般の人々が障害を負うことや年をとることを自分自身の問題としてとらえるよう啓発されることが必要である。

(資料3) 地域リハビリテーション支援体制整備推進事業 (厚生労働省老健局)

 高齢者が寝たきり状態になることを予防するためには、脳卒中や骨折等による障害発生時においては、急性期リハビリテーション及びその後の回復期リハビリテーション、また、安定期にある場合や廃用症候群に対しては、維持期リハビリテーションというように、高齢者それぞれの状態に応じた適切なリハビリテーションが提供されることが必要である。
 さらに、障害を持つ者や高齢者が、閉じこもり状態となり、老化に伴う心身機能の低下とあわせて寝たきり状態となることを予防し、住み慣れた地域において、生涯にわたって生き生きとした生活を送ることができるよう、保健・医療・福祉の関係者のみならず、ボランティア等の地域における住民が参画して行う、いわゆる地域リハビリテーションが適切に行われることも重要である。
 このような、高齢者等の様々な状況に応じたリハビリテーション事業が適切かつ円滑に提供される体制の整備を図ることを目的として、地域リハビリテーション支援体制整備推進事業を実施するものである。
 地域リハビリテーション支援体制整備推進事業のシステムは、下記の (図1) 参照。

(資料4) 地域リハビリテーション支援体制整備推進事業の現状
     (全国地域リハビリテーション支援事業連絡協議会)

 地域リハビリテーション支援体制整備推進事業が平成12年に始まり、現在、全国に都道府県リハビリテーション支援センターと約300の地域リハビリテーション広域支援センターが指定されている。これまで地域リハビリテーションの拠点施設として、現地指導や研修会の開催、介護予防事業への取り組みなど、様々な活動に成果を上げてきた。
 平成17年度からは国の補助事業から、各都道府県における事業へと移行した。その結果、全国的に都道府県における地域リハビリテーション事業への取り組みは、自主性と独創性を持つようになった。
 同時に介護予防事業や障害者自立支援法のスタートにより、地域リハビリテーション広域支援センターの果たす役割はより重要になってきている。

(資料5) 今後の地域リハビリテーション推進課題
     (日本リハビリテーション病院・施設協会、2007年)


 ①地域リハビリテーション活動課題
  (a) 介護予防の推進
    ◎地域包括支援センターと地域リハビリテーション推進組織との連携
  (b)在宅リハビリテーション推進拠点の確立 (在宅リハビリテーションセンター、
   訪問リハビリテーションステーション等) とその支援 (診療所・「かかりつけ
   医」、介護サービス提供事業所等との連携)
  (c) 地域医療連携 (リハビリテーションの流れ) づくり
    ◎地域リハビリテーション連絡協議会等を発展させた地域連携の推進
  (d) 当事者・市民が参画する地域リハビリテーション活動の展開 (住民組織等へ
    の支援)
 ②地域リハビリテーション推進組織としての課題
  (a) 都道府県全体の意識向上
    ◎都道府県ごとの地域リハビリテーション推進体制の再構築
  (b) 地域リハビリテーション広域支援センターの活性化


 (図1) 地域リハビリテーション支援体制整備推進事業のシステム
地域リハシステム図.gif


 上記に関する当ブログ管理人の考察は、下記の通りです。

(1)地域リハビリテーションの主なタスクは、次の通りです。
 ①急性期リハビリテーションの充実
  ◎廃用症候群の予防、徹底したリスク管理のもとの早期離床・早期リハビリテ
   ーション
 ②回復期リハビリテーションの充実
  ◎在宅を視野に入れた実用的なADL向上を目的とした集中的リハビリテーシ
   ョンと多専門職種による徹底したチームアプローチ
  ◎回復期リハビリテーション病棟の更なる普及と質の向上
 ③維持期リハビリテーションの充実
  ◎生活機能低下予防・介護予防、特に在宅等での訪問リハビリテーション・通
   所リハビリテーション
 ④地域リハビリテーション連携の推進
  ◎急性期~回復期~維持期のシームレスなリハビリテーション連携体制
  ◎地域連携クリニカルパス、地域医療連携室、地域医療連携カンファレンス、
   ケアカンファレンス、情報の共有化 (特に患者・利用者の生活機能に関する
   情報)・IT (情報技術) 化、プライマリケアを担う 「かかりつけ医」 の明確化
   と連携
  ◎「脳卒中モデル」 のみならず 「廃用症候群モデル」 にも対応したシステム
 ⑤予防的リハビリテーションの推進
  ◎健康増進、生活機能低下予防、介護予防 (新予防給付、地域支援事業)
 ⑥地域リハビリテーションを支える人材の確保・育成
  ◎リハビリテーション専門職のみならず、リハビリテーション・マインドを持
   った看護職員・介護職員・介護支援専門員・ソーシャルワーカー等の養成も
   必要。
 ⑦新たなニーズに応じたリハビリテーションの提供
  ◎特に、高次脳機能障害、摂食嚥下障害、認知症
 ⑧テクノエイドサービスの充実
  ◎福祉機器・用具や住宅改修などのテクノエイドサービスの提供、テクノエイ
   ドサービスの拡充とノーマライゼーション社会の実現を目的としたネットワ
   ークの整備
 ⑨地域リハビリテーション、リハビリテーションマインドの普及・啓発活動の推進
  ◎障害のある方、家族、地域住民、医療機関・「かかりつけ医」、訪問看護ステ
   ーション、介護保険施設、居住系施設 (高齢者専用賃貸住宅、有料老人ホー
   ム、グループホーム等)、障害者施設、関係団体 [職能団体 (医師会・看護協
   会等)、住民組織 (患者の会・家族の会・ボランティアグループ等)]、行政 (県
   や市町村、保健所、地域包括支援センター) 等の関係者への啓発
 ⑩NPO法人やボランティアの育成、支援
 ⑪高齢者・障害のある方にやさしい福祉のまちづくりの推進
  ◎バリアフリー、ユニバーサルデザイン
 ⑫ノーマライゼーションの推進
  ◎「高齢者も障害者も子どもも女性も男性もすべての人々が、人種や年齢、身
   体的条件に関わりなく、自分らしく生きたいところで生き、したい仕事や
   社会参加ができる、そうしたチャンスを平等に与えられる」 “みんなが一緒
   に”暮らせる社会が“当たり前”だとする考え方
 ⑬障害者雇用の促進
  ◎社会での役割を担う (社会参加、社会貢献)、生きがい・QOLの向上

(2)資料1の通り、地域リハビリテーションは、CBR (community based
rehabilitation)
、即ち、地域に根ざした (あらゆる) リハビリテーション・アプローチのことです。
 また、資料2・3に記されているように、地域リハビリテーションは、(健康増進~生活機能低下予防~) 急性期~回復期~維持期のシームレスなリハビリテーション連携体制が肝要です。
 しかしながら、地域リハビリテーション支援体制整備推進事業は、厚生労働省の老健局が所掌したため (対象者が介護保険制度の被保険者であり)、どちらかといえば、事業の活動が、維持期リハビリテーション・介護保険リハビリテーション (訪問リハビリテーション・通所リハビリテーション)・介護予防・地域支援事業等に偏っていることは否めません。

(3)資料4の通り、平成17年度からは、地域リハビリテーション支援体制整備推進事業が、国の補助事業から、各都道府県における事業へと移行したため、(都道府県によって温度差がありますが)、予算とマンパワーの不足が本事業の大きな阻害因子となっています。
 また、 「関係機関・関係者 [(1)-⑨参照] の地域リハビリテーション、リハビリテーション・マインドについての理解不足および連携不足」・「リハビリテーション科以外の医師、リハビリテーション・ナース以外の看護師、セラピスト以外のコメディカル等の地域リハビリテーション、リハビリテーション・マインドについての理解不足」 等も同様に地域リハビリテーション活動およびリハビリテーション医療の阻害因子となっています。
 したがって、地域リハビリテーションを推進するためには、上記の方々に対する地域リハビリテーション、リハビリテーション・マインドの普及・啓発活動の推進が重要と考えられます。特に、行政サイドの充分な理解が肝要です。

(4)都道府県によって相当な温度差がありますが、マンパワー・予算不足の現状では、実際の地域リハビリテーション活動は、研修会や技術指導・支援 (主に、地域リハビリテーション概念の普及、脳卒中リハビリテーション関連) 、各種相談事業および介護予防事業を中心とした活動 (運動機能向上・転倒予防・体力向上、口腔ケア、認知症への取り組み等) に限定されている所も少なくないようです。

(5)各都道府県およびその二次医療圏においては、人口・人口密度・高齢者比率、各種医療・介護・福祉サービス医療提供体制、地域医療連携体制、地域リハビリテーション連携体制、リハビリテーション資源、地域リハビリテーションとリハビリテーション・マインドに関する理解度、地域包括ケア体制等々に、かなりの地域差があり、各地域独自の地域リハビリテーション支援体制の構築が必要と考えられます。(熊本方式、尾道方式が有名です)。

(6)上記の通り、地域リハビリテーション活動には、様々な障壁がありますので、資料5のように、日本リハビリテーション病院・施設協会が、今後の地域リハビリテーション推進課題と対策について記しています。

(7)地域リハビリテーションにおいて、当ブログ管理人が一番問題視しているのは、脳卒中の急性期・回復期リハビリテーションの充実 [(1)-①・②] です。(この充実度は、都道府県および各二次医療圏によって相当異なりますが)。
 この項目を挙げた理由は、下記の通りです。

●実際の脳卒中医療において、①不充分な急性期治療・②不充分な早期リハビリテーション・③「医原性」 の二次的合併症・障害 (廃用症候群・過用症候群・誤用症候群)・④不充分な回復期リハビリテーションあるいは回復期リハビリテーションの欠如のため、結果的に障害の回復が不充分なまま、あるいは余計な障害まで作られた上で、介護保険・福祉に受け継がれることが未だ少なくなく、全県的な脳卒中医療、リハビリテーション・ネットワークの構築の必要性が喚起されています。

 上記理由の①には 「患者・家族等の脳卒中発症サインの理解不足による病院受診遅延」 とそれに伴う 「血栓溶解療法 (t-PA) の断念」、②・③には 「急性期病院サイドのリハビリテーション・廃用症候群等についての理解不足」、④には 「急性期病院サイドのリハビリテーションについての理解不足 (急性期病院から、リハビリテーションを充分には提供しないまま、回復期リハビリテーション病棟も経由させずに、そのまま自宅等・療養病床・老人保健施設等に退院・転院させる医療機関が未だ存在します)」 および 「回復期リハビリテーション病棟の数的不足および質の問題」 等の関与が挙げられます。

 地域リハビリテーション活動にて、維持期リハビリテーション・介護予防等をいくら頑張っても、急性期・回復期リハビリテーションが不充分であれば、障害が重度化 (当初軽度障害→結局中等度障害、当初中等度障害→結局重度障害) して、どうにもなりません。片手落ちあるいはお手上げ状態になります。
 したがって、地域リハビリテーション活動として、「脳卒中や骨折等で入院した高齢者等が、発症後早期に適切なリハビリテーションが受けられるように、急性期リハビリテーションの重要性について、医療機関等に働きかける」・「医療機関に回復期リハビリテーション病棟の開設・増床を働きかける」 必要があります。
 但し、上記の働きかけが一番困難なタスクであり (当ブログ管理人も困っていますが・・・)、各医療機関のポリシー、財務事情、リハビリテーション・マンパワー等も絡みます。
 地域リハビリテーション支援事業のマンパワー・予算が潤沢であれば、「当該医療機関へのリハビリテーション・マンパワーの派遣」「充分なリハビリテーション機能を持つストロークユニット (脳卒中専門病棟)・回復期リハビリテーション病棟の開設の促進」、あるいは 「熊本方式等の地域リハビリテーションシステム構築」 等が出来るのですが・・・。(それだけのことをする価値は充分あるのですが・・・)。


 以上、地域リハビリテーションについて、当ブログ管理人独自 (いつも好き勝手な意見かつ長々とした文章で恐縮ですが) の考察を述べてきました。

 リハビリテーション従事者以外の関係機関・関係者 [(1)-⑨参照] の一部に誤解があるようですが、地域リハビリテーションは、単に介護保険下の維持的リハビリテーション (訪問リハビリテーション・通所リハビリテーション)・介護予防のみを指すのではありません。
 真の地域リハビリテーションとは、地域 (二次医療圏) における包括的なリハビリテーションシステム (CBR:community-based rehabilitation) です。
 したがって、「健康増進リハビリテーション~生活機能低下予防リハビリテーション~超急性期・急性期リハビリテーション~回復期 (集中的) リハビリテーション~維持期 (断続的) リハビリテーションまでのシームレスなリハビリテーションが、二次医療圏において円滑に進むようなシステム」 を構築する必要があります。

 また、地域リハビリテーション (CBR) の確立のためには、「緊密な病診連携・病病連携・病介 (病施設) 連携による地域医療連携・地域リハビリテーション連携システムの構築」、「医療保険と介護保険の円滑な流れ・連携」、ならびに、「リハビリテーション・マインドの啓発・啓蒙」 が重要と考えられます。

 但し、地域リハビリテーション活動には、医療制度・診療報酬問題 (疾患別リハビリテーション体系・単価の減額、リハビリテーション算定日数制限、回復期リハビリテーション病棟の成果主義、障害者施設等入院基本料からの脳卒中・認知症患者の除外、後期高齢者医療制度等) ・介護報酬問題 (要介護認定の厳格化、介護給付費の抑制等)・障害者自立支援法 (応能負担→一律1割の応益負担、年収制限の厳格化、障害区分認定問題) 等も大きく影響します。
 したがって、医療難民・リハビリ難民・救急難民・脳卒中難民・認知症難民・介護難民・障害者難民等を防止するためにも、厚生労働省の医療・介護・福祉政策の策定・施行に対して、エビデンスを掲げて、良い意味での影響力を行使するのも、地域リハビリテーション活動の一つと思います。
 また、地域リハビリテーション支援事業の実効性をより高めるためには、当該事業の実施に、厚生労働省の老健局・保険局・医政局・健康局・障害保健福祉部の横の連携・コラボレーションが肝要と思います。

【関連記事】
 ◎脳卒中リハビリテーションにおける 「早期離床」
 ◎障害者施設等入院基本料・算定要件の解釈の厳格化
 ◎回復期リハビリ病棟への成果主義の導入 (厚労省保険局医療課の見解)
 ◎リハビリ算定日数制限 (厚労省保険局医療課の見解)
 ◎介護保険改革は 「家族の問題は遮断」 (厚労省老健局長)
 ◎平成20年度リハビリ診療報酬改定 (日本リハビリ医学会の総括)
 ◎「入院医療のあり方 (機能分化)」 日本病院団体協議会の提言
 ◎リハビリテーション医療におけるリスク管理
 ◎脳血管疾患等リハビリ料における廃用症候群の 「外科手術」 とは
 ◎「後期高齢者医療制度」 与野党間の不毛な議論
 ◎「リハビリテーション医療のあり方」 日病協の提言
  




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脳血管疾患等リハビリ料における廃用症候群の 「外科手術」 とは

 リハビリテーション医療従事者の一部で、脳血管疾患等リハビリテーション料の対象患者である 「廃用症候群」 における 「外科手術」 の解釈に関して、未だ混乱があるようです。
 下記の各資料を用いて考察したいと思います。

(資料1) 脳血管疾患等リハビリテーション料の対象患者 (平成20年度診療報酬改定)
 ア.急性発症した脳血管疾患又はその手術後の患者とは、脳梗塞、脳出血、
  くも膜下出血、脳外傷、脳炎、急性脳症 (低酸素脳症等)、髄膜炎等のも
  のをいう。
 イ.急性発症した中枢神経疾患又はその手術後の患者とは、脳膿瘍、脊髄
  損傷
、脊髄腫瘍、脳腫瘍摘出術などの開頭術後、てんかん重積発作等の
  ものをいう。
 (中略)
 キ.リハビリテーションを要する状態であって、一定程度以上の基本動作
  能力、応用動作能力、言語聴覚能力の低下及び日常生活能力の低下を来
  している患者とは、外科手術又は肺炎等の治療時の安静による廃用症候
  群
、脳性麻痺等に伴う先天性の発達障害等の患者であって、治療開始時
  のFIM 115 以下、BI85 以下の状態等のものをいう。

(資料2) 運動器リハビリテーション料の対象患者 (平成20年度診療報酬改定)
 ア.急性発症した運動器疾患又はその手術後の患者とは、上・下肢の複合
  損傷 (骨、筋・腱・靭帯、神経、血管のうち3種類以上の複合損傷)、
  脊椎損傷による四肢麻痺 (1肢以上)、体幹・上・下肢の外傷・骨折、
  切断・離断 (義肢)、運動器の悪性腫瘍等のものをいう。
 イ.慢性の運動器疾患により、一定程度以上の運動機能の低下及び日常生
  活能力の低下を来している患者とは、関節の変性疾患、関節の炎症性疾
  患、熱傷瘢痕による関節拘縮、運動器不安定症等のものをいう。

(資料3) 呼吸器リハビリテーション料の対象患者 (平成20年度診療報酬改定)
 ア.急性発症した呼吸器疾患の患者とは、肺炎、無気肺等のものをいう。
 イ.肺腫瘍、胸部外傷その他の呼吸器疾患又はその手術後の患者とは、肺
  腫瘍、胸部外傷、肺塞栓、肺移植手術、慢性閉塞性肺疾患 (COPD) に
  対するLVRS (Lung volume reduction surgery) 等の呼吸器疾患又はそ
  の手術後の患者をいう。
 (中略)
 エ.食道癌、胃癌、肝臓癌、咽・喉頭癌等の手術前後の呼吸機能訓練を要
  する患者とは、食道癌、胃癌、肝臓癌、咽・喉頭癌等の患者であって、
  これらの疾患に係る手術日から概ね1週間前の患者及び手術後の患者で
  呼吸機能訓練を行うことで術後の経過が良好になることが医学的に期待
  できる患者のことをいう。

(資料4) 早期リハビリテーション加算の対象患者 (急性発症した脳血管疾患等の
    疾患) (平成16年度診療報酬改定)

 ①脳血管疾患
 ②脊髄損傷等の脳・脊髄 (中枢神経) 外傷
 ③大腿骨頸部骨折、下肢・骨盤等の骨折、上肢骨折
 ④開腹・開胸手術後
 ⑤脳腫瘍などの開頭術後
 ⑥急性発症した脳炎、ギランバレーなどの神経筋疾患
 ⑦高次脳機能障害
 ⑧脳性麻痺
 ⑨四肢 (手部、足部を含む) の骨折・切断・離断・腱損傷
 ⑩脊椎・肩甲骨・関節の手術後
 ⑪四肢の熱傷 (Ⅱ度は体表面積15%以上、Ⅲ度は10%以上)、気道熱傷を伴
  う熱傷
 ⑫多発外傷
 ⑬植皮術後
 ⑭15歳未満の先天性股関節脱臼症 (LCC) の手術後


 基本的に、脳血管疾患等リハビリテーション料の対象患者における廃用症候群 (資料1-キ) の 「外科手術」 とは、胸腹部の手術のことであり、通常、開胸術ならびに開腹術 [資料4-④] のことを指します。
 開胸術・開腹術の一部で、呼吸機能訓練のみで対処できる場合は、呼吸器リハビリテーション料の対象患者 (資料3-イ・エ) となります。
 胸腔鏡下手術・腹腔鏡下手術の場合は、(通常、開胸術・開腹術と同様に、術後廃用症候群として取り扱いますが)、手術侵襲が低く、廃用症候群が生じにくいと見なされると、レセプト返戻 (呼吸器リハビリテーションへの変更勧告等) もしくは減額査定されやすくなります (都道府県によって温度差がありますが・・・)。

 四肢・体幹・脊椎 (整形外科領域:運動器) の手術後 [資料4-③術後・⑨術後・⑩・⑭] は、運動器リハビリテーション料の対象患者 (資料2-アの手術後の患者) に該当します。但し、脊髄障害を呈している場合は脳血管疾患等リハビリテーション料の対象患者 (資料1-イ) に該当します。

 ちなみに、頭部の外科手術後 [開頭術後 (資料4-⑤)] は、脳血管疾患等リハビリテーション料の対象患者 (資料1-イ) に該当します。

 上述の通り、基本的には、四肢・体幹・脊椎 (整形外科領域:運動器) の手術後は、「臨床的に廃用症候群症状が合併していても」、診療報酬上は、脳血管疾患等リハビリテーション料の対象患者における廃用症候群 (資料1-キ) の 「外科手術」 には該当せず、脳血管疾患等リハビリテーション料は算定できません。運動器リハビリテーション料での算定になります。
 即ち、診療報酬上、脳血管疾患等リハビリテーション料の対象患者における廃用症候群 (資料1-キ) は、あくまで、運動器リハビリテーション料の対象患者に該当しない場合に適用できます。
 呼吸器リハビリテーション料との関係は微妙ですが、上述のように、通常、呼吸機能訓練のみの場合は呼吸器リハビリテーション料での算定、それ以外は、術後廃用症候群として脳血管疾患等リハビリテーション料を算定するのがベターと考えられます。


 厚生労働省も、「術後の整形疾患なども廃用症候群として算定してくる例が多く、何でも廃用症候群として算定してくる例が多い」 という認識であり、一時期、「廃用症候群を対象患者から削除する」 という考えでした。リハビリテーション関連5団体等との交渉により、削除案は撤回されましたが、平成20年度診療報酬改定における 「廃用症候群に係る評価表」 (下記参照) の義務化に繋がりました。

●廃用症候群に該当するものとして脳血管疾患等リハビリテーション料を算定する場合は、廃用をもたらすに至った要因、臥床・活動性低下の期間、廃用の内容、介入による改善の可能性、改善に要する見込み期間、前回の評価からの改善や変化、廃用に陥る前のADLについて別紙様式22を用いて、月ごとに評価し、診療報酬明細書に添付すること。

 運動器リハビリテーション料の対象患者の中にも、運動器疾患の廃用症候群とも呼ばれている 「運動器不安定症 (資料2-イ)」 がありますが、整形外科手術後の廃用症候群にはあまり馴染みません。
 そこで、日本運動器リハビリテーション学会は、「社会保険診療報酬に関する改正要望書 (概要版) 平成20年11月12日 外科系学会社会保険委員会連合 (外保連)」 にて、平成22年度診療報酬改定に向けて、「運動器リハビリテーションにも廃用症候群を追加」 という要望を出しています。 (導入されるかどうかは、今のところは懐疑的ですが・・・)。

 以上、現時点では、医療機関において、安易に 「術後の整形疾患など、何でも廃用症候群として算定する」 ことは厳に慎み、また、「廃用症候群に係る評価表」 をきちんと作成することにより、廃用症候群が、脳血管疾患等リハビリテーション料の対象患者から削除されないために、リハビリテーション関係者の不断の努力が肝要と思われます。また、廃用症候群に対するリハビリテーション治療効果等についての更なる強いエビデンスの確立が望まれます。

【追記】
 疾患別リハビリテーション料体系を廃止すれば、上記の件も含めて、多くの混乱
がなくなるのですが・・・。




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脳卒中リハビリテーションにおける 「早期離床」

 脳卒中の急性期リハビリテーションにおいて、「合併症の予防・廃用症候群の予防」・「早期離床」・「早期リハビリテーション」 が肝要です。

(1) 「早期離床」 の定義
  (栗原正紀 「続・救急車とリハビリテーション」:119-120, 2008)
 早期離床とは、可及的速やかに、食事はベッドの上ではなく食堂で、排泄もまたベッド上ではなく車椅子を用いてもトイレで、整容は洗面所などで、実施できるようにしていくということであり、結局、寝る時だけがベッドというように、明確に場を分離して極力早く日常の生活パターンに戻すということになります。

続・救急車とリハビリテーション―高知から長崎へ 回復帰リハ病棟への熱い想いをかたちに続・救急車とリハビリテーション―高知から長崎へ 回復帰リハ病棟への熱い想いをかたちに
(2008/01)
栗原 正紀

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(2) 回復期リハ病棟のケア:10項目宣言
  (2003年9月:全国回復期リハ病棟連絡協議会・看護研修会)
 ①食事は食堂やデイルームに誘導し、経口摂取への取り組みを推進しよう。
 ②洗面は洗面所で朝夕、口腔ケアは毎食後実施しよう。
 ③排泄はトイレへ誘導し、オムツは極力使用しないようにしよう。
 ④入浴は週2回以上、必ず浴槽に入れよう。
 ⑤日中は普段着で過ごし、更衣は朝夕実施しよう。
 ⑥二次的合併症を予防し、安全対策を徹底し、可能な限り抑制は止めよう。
 ⑦他職種と情報の共有化を推進しよう。
 ⑧リハ技術を習得し看護・介護ケアに生かそう。
 ⑨家族へのケアと介護指導を徹底しよう。
 ⑩看護計画を頻回に見直しリハ計画に反映しよう。



 上記 (1) の 「早期離床」 の定義に対して、急性期病院の医師・看護師・リハビリテーションスタッフの中で違和感を持つ方も少なからずいると思います。

 急性期病院の医療スタッフは、「早期離床」 というと、脳卒中の種類・臨床病型・病態像別の離床開始基準を厳格に適用しながら、「早めに起こして車椅子に乗せる」、即ち、リスク管理の基、ベッド上臥位→坐位→車椅子移乗 (→起立→歩行) へとステップアップすることであり、 (1) の様なことまでは想定していないスタッフも少なくないと思われます。また、上記 (2) ①~⑤に挙げられているように、 (1) については回復期リハビリテーション病棟に転院してからの話と思われがちです。

 急性期病院では、医療スタッフが、脳卒中に対する濃厚な急性期治療の方に傾注せざるを得なく、また、ハードウェアの問題 (病室の広さ・車椅子トイレ・食堂・片麻痺用浴槽等の整備状況等) 、ソフトウェアの問題 (看護&ケアスタッフ・リハビリテーションスタッフのマンパワー不足等)、および患者さんの合併症・併存疾患・リスク、等にて、 (1) の様なアプローチが困難な病院も少なくないと思われます。

 しかしながら、ストロークユニット (脳卒中専門病棟) あるいは通常2週間以内に回復期リハビリテーション病棟に転院させるような急性期病院以外の急性期病院においては、上述の諸問題があるにしても、徹底したリスク管理の基、できる限り (1) に則った 「早期離床」 アプローチを行い、極力早く日常の生活パターンに戻すことがベターと考えられます。そしてそれが早期退院・在院日数の短縮に繋がると考えられます。




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