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「無診察リハビリ」 に対する 「個別指導」 (「自主返還」 Q&A)

 以前の当ブログ記事 (「無診察によるリハビリの禁止 (毎回のリハビリ前診察の義務)」) に関する下記の質問がありましたので、回答かたがた、本ブログで説明したいと思います。

<質問>

 「個別指導」 (当ブログ管理人・註) において、外来リハビリテーション患者の 「無診察リハビリテーション (医師の再診なしで、リハビリテーションを施行)」 を指摘され、診療報酬の 「自主返還」 対象となった場合、「再診料」 のみの返還ですか? それとも、「再診料」・「リハビリテーション料」 両方とも返還ですか?


 (当ブログ管理人・註)
  ① 「監査」 という言葉は安易に使用しないこと!。
  ②上記①の理由は、以前の当ブログ記事 (『「保険医療機関等の指導・監査」
   と 「保健所による立入検査」
』) を参照。


<当ブログ管理人の回答>

(1)「医科点数表の解釈 平成20年4月版」 (社会保険研究所) (所謂、「青本」) における 「基本診療料と特掲診療料との関係」 に関する記載は下記の通りです。

●基本診療料と特掲診療料との関係 (「青本」 p.18)

 基本診療料として一括して支払うことが適当でない特殊な診療行為の費用は、第2章特掲診療料に定められているが、特掲診療料が設定されている診療行為及びそれらに準ずる特殊な診療行為を行った場合は、それぞれ特掲診療料を基本診療料のほかに算定できるものである。
 従って、1人の患者に対する診療報酬は、基本診療料と特掲診療料を合算した額となる。

●特掲診療料の性格と内容 (「青本」 p.152)

 (1) 特掲診療料は、特殊な診療行為についての費用であるが、基本診療料が基
  本的な医療行為及び通常初診時、再診時又は入院時に行われる基本的な診
  療行為に対する費用であるのに対し、基本診療料として、一括支払うこと
  が妥当でない特別の医療行為に対して個別的な評価をなし、個々に点数を
  設定し、それらの診療行為を行った場合は、個々にそれらの費用を算定す
  ることとしているのである。

 (2) 特掲診療料に掲げられている診療行為を行った場合は、特に規定されてい
  る場合を除き、基本診療料と特掲診療料とをあわせて算定する。

(2)したがって、特掲診療料の算定の原則は、「特掲診療料に規定してある医療行為を行った場合は、それぞれの区分により基本診療料とともに算定するものである。つまり基本診療料の算定のない特掲診療料の算定は無い」 ということです。

(3)上記(2)を再診料とリハビリテーション料との関係で説明したのが、下記の文言 (上記質問に対する当ブログ管理人の回答) です。

●特掲診療料の算定の原則は、「特掲診療料 (リハビリテーション料) に規定してある医療行為を行った場合は、それぞれの区分により基本診療料 (再診料) とともに算定するものである。つまり基本診療料 (再診料) の算定のない特掲診療料 (リハビリテーション料) の算定は無い」 ということです。

 即ち、厚生労働省地方厚生局各県事務所および都道府県が施行する保険医療機関に対する 「個別指導」 において、外来リハビリテーション患者の 「無診察リハビリテーション (医師の再診なしで、リハビリテーションを施行)」 を指摘され、診療報酬の 「自主返還」 対象となった場合、基本的に、「再診料」 と 「リハビリテーション料」 との両方の返還となります。

(4)同様に、上記(3)を再診料と消炎鎮痛等処置との関係で説明したのが、下記の文言です。

●特掲診療料の算定の原則は、「特掲診療料 (消炎鎮痛等処置) に規定してある医療行為を行った場合は、それぞれの区分により基本診療料 (再診料) とともに算定するものである。つまり基本診療料 (再診料) の算定のない特掲診療料 (消炎鎮痛等処置) の算定は無い」 ということです。

 即ち、「個別指導」 において、外来患者の 「無診察による消炎鎮痛等処置 (医師の再診なしで、消炎鎮痛等処置を施行)」 を指摘され、診療報酬の 「自主返還」 対象となった場合、基本的に、「再診料」 と 「消炎鎮痛等処置」 との両方の返還となります。

(5)以前の当ブログ記事 (「無診察によるリハビリの禁止 (毎回のリハビリ前診察の義務)」) でも述べましたが、リハビリテーション前診察の内容は、医師自ら (または、医療クラークが代行入力し、医師が確認署名) が、診療録 (Drカルテの2号用紙) に記載しなければなりません。
 但し、記載する診察内容は、単にバイタルサインのみの記入では不充分です。

リハビリテーション専任医師の責務として、

  ①リハビリテーション診察時の全身状態・健康状態・体調・バイタルサイン
   等 (「当該日にリハビリテーションを受けることができる状態である」とい
   う根拠・データ)

  ②リハビリテーション治療効果判定 [患者の障害像・生活機能 (移動歩行能
   力・ADL能力・コミュニケーション能力等) による客観的効果判定]

  ③上記②の効果判定の結果、「現状として、リハビリテーション継続が必要
   である」 という文言

を、毎回、簡潔に記載する必要があります。

●また、長期漫然とした効果のないリハビリテーションを防止するために、

 「疾患別リハビリテーションの実施に当たっては、医師は、定期的な機能検査等をもとに、その効果判定を行い、リハビリテーション実施計画を作成 (リハビリテーション実施計画書またはリハビリテーション総合実施計画書:多専門職種によるチームアプローチによる詳細なリハビリテーション実施計画の作成) する必要があり、リハビリテーションの開始時及びその後3か月に1回以上、患者に対して当該リハビリテーション実施計画の内容を説明し、診療録 (Drカルテの2号用紙) にその要点を記載すること」

が、保険診療上、定められています。

 また、リハビリテーション専任医師は、専任、即ち、「リハビリテーション医療業務に50%以上の関わり」 が必要であり、リハビリテーション部門に常駐していることが望ましいとされています。
 リハビリテーション専任医師としての担当時間帯において、他の業務との兼任も可能ですが、リハビリテーション室にて患者さんの急変・事故等が生じた場合、すぐに駆けつけることが出来るように、「手術に入ったり、途中で中止できない検査や処置をする」 ことは控える必要があります。

(6)上述の議論は、外来患者および外来リハビリテーション患者は全て該当します。

 一方、入院患者については、1年365日、毎朝、医師が診察しており、無診察の投薬・検査・処置・リハビリテーション等は無いという大前提があるため、入院患者のリハビリテーション前診察については、ほとんど指導対象となりませんでした。

 しかしながら、「個別指導」 で、医師による入院カルテの記載漏れ・記載不備が、以前から、大きな問題になっており、今後、入院患者の無診察治療等についても、個別指導等の指導が厳しくなるかもしれません。
 場合によっては、入院基本料 (基本診療料) の自主返還も有り? [→連動して、自動的に。リハビリテーション料 (特掲診療料) も返還?]。

 仮に、その場合は、入院リハビリテーション患者は、(本来は施行すべきものなのですが)、全員、リハビリテーション前診察かつ診療録への記載 [上記(5)参照] を施行することになり、特に、リハビリテーション専任医師体制に不備のある病院等での医療現場は混乱すると思われます。
 1年365日リハビリテーション体制の場合、日直医または当番医が大変になると思います。
 但し、逆に、1年365日リハビリテーション体制を敷いている病院等のリハビリテーション専任医師体制は完璧かも知れませんが・・・。

(7)以上、以前の当ブログ記事 [『リハビリテーション診療報酬における 「医師の技術料」 (政府見解)』、「疾患別リハビリテーションにおける専任医師の人員基準」、『リハビリ医療における 「医師および疾患別リハビリ専任医師」 の責務』] で論じたように、リハビリテーション料の出来高制度を守るためにも、リハビリテーション医療における医師および疾患別リハビリテーション専任医師の関与度 (特に、リハビリテーション適応判定、定期的なリハビリテーション治療効果判定、原疾患・合併症・併存疾患の医学的コントロールならびにリハビリテーション・リスク管理等の責務) をより高め、且つ、セラピストのスキルアップおよび多専門職種による徹底したチーム・アプローチによる、リハビリテーション治療効果の更なる向上を図る必要があります。




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リハビリ医療における 「医師および疾患別リハビリ専任医師」 の責務

 リハビリテーション医療における 「医師および疾患別リハビリテーション専任医師」 の役割・責務ならびに 「個別指導」 対策 [以前のブログ記事 (「保険医療機関等の指導・監査」 と 「保健所による立入検査」) 参照] について、 「整形外科外来におけるリハビリテーションの理念と取り組みについて」 (梶浦一郎) [越智隆弘・梶浦一郎・編:(整形外科 外来シリーズ 7) 「リハビリテーション外来」、メジカルビュー社1998] に記されていますので紹介します。

健保診療におけるリハビリテーション医療のあり方
 最近、リハビリテーション医療の件数が増大するに伴い、漫然とした長期の医療行為を防ぐ意味で適正化の指導がなされている。それらの項目の一部を抜粋した。
 ①リハビリテーションを実施するにあたって、医師は、患者ごとの実施計画
  を作成し、訓練効果の評価を行う (下記 「注釈1」 参照)。
 ②医師は、全ての患者に対し、毎回リハビリテーション前に、必ず診察を行
  い、診療録に病理学的所見などの評価項目を記載すること (下記 「注釈2」
  参照)。
 ③無診察によるリハビリテーション実施は認められない。
 ④処方箋は、患者の病状、治療種目、治療メニュー、治療期間を、記録する
  こと (特に治療期間は明確にすること)。
 ⑤処方内容においても、例えば筋力増強訓練と記載するだけでなく、訓練箇
  所、訓練方法、訓練期間などを記載しなければならない。
 ⑥リハビリテーション施設基準における専任医師の役割 (下記 「注釈3」 参照)
  ⓐリハビリテーション診察業務の徹底、当日分の全症例のリハビリテーショ
   ン実施前診察をすること (下記 「注釈2」 参照)。
  ⓑ専任医師は、リハビリテーション部門に常駐していることが望ましい。

●注釈1(医師による定期的なリハビリテーション実施計画の作成等)
 医師は定期的な機能検査等をもとに、その効果判定を行い、リハビリテーション実施計画を作成する必要がある。また、リハビリテーションの開始時及びその後3か月に1回以上、患者に対して当該リハビリテーション実施計画の内容を説明し、診療録 (Drカルテの2号用紙) にその要点を記載すること。【入院リハ患者ならびに外来リハ患者の全症例】。

●注釈2(リハビリテーション診察・カルテ記載内容の例示)
 ⓐリハビリテーション施行患者の状態を、診察・評価し、リハビリテーション
  訓練 (治療) が必要か、最適か、できる状態か、等を把握する。
 ⓑリハビリテーション施行患者を診察し、「その時の全身状態・健康状態・体
  調・バイタルサイン等 (リハビリテーションを受けることができる状態であ
  るという根拠・データ)」、「リハビリテーション治療効果判定 [患者の障害
  像・生活機能 (移動歩行能力・ADL能力・コミュニケーション能力等) に
  よる客観的効果判定]」、ならびに 「現状として、リハビリテーション継続が
  必要である」 ということを診療録 (Drカルテの2号用紙) に記載する。

●注釈3.診療報酬上、「専任」 は50%以上の関わり、「専従」 は100%の関わり。

(参考) リハビリテーション専任医師とは、主にリハビリテーション指示、リハビリテーション方針・リハビリテーション実施計画の策定に従事する医師であり、リハビリテーションを実施していない患者への診察業務と兼務も可能であるが、割合としてリハビリテーションへの関わりが多くなくてはいけない (リハビリテーション科へ配置されている医師が必要)。通常では、主治医からの依頼についてリハビリテーション専任医師が確認後に指示を出し、セラピストと共に方針や実施計画等を決定していく形が望ましい。

 以前のブログ [リハビリテーション診療報酬における 「医師の技術料」 (政府見解)] でも述べたように、一部の医療機関の管理者・医師において、上記のような 「診療報酬上におけるリハビリテーション医療のあり方」 についての理解不足があり、「おまかせリハビリテーションの蔓延」・「リハビリテーション専任医師の形骸化または不充分な勤務状況」 等が生じています。
 そして、そのことが実際に常態化し、リハビリテーションへの医師の関与が少ない医療機関も少なくなく、それが、「リハビリテーション・レセプトの返戻および減額査定の増加」・「疾患別リハビリテーション料の1単位当たりの点数の減額」・「個別指導における医師および疾患別リハビリテーション専任医師に対する厳しい指摘・指導」 に繋がっているとされています。

 さらに、リハビリテーションへの医師の関与の低下傾向が強まると、最悪の場合、現在DPCで出来高部分であるリハビリテーション料が包括部分に含まれる (即ち、リハビリテーションが、ドクターフィーから、薬・検査・放射線等と同様のホスピタルフィーとなる) など、急性期・回復期・維持期のリハビリテーションの包括化へと進展する可能性も完全には否定できません。

 したがって、リハビリテーション医療の出来高制度・ドクターフィー制度の維持ならびに質の向上のためにも、また、障害のある方とその家族の幸福ならびにリハビリ難民解消のためにも、リハビリテーションを施行している医療機関の医師、特に、リハビリテーション医学を専門とされていない又はリハビリテーションに馴染みの少ない 「管理者・各診療科医師・施設基準届出上のリハビリテーション専任医師等」 のご理解とご協力をお願いしたいと思います。




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