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運動器リハと脳血管リハとの格差是正を要望 (日本臨床整形外科学会)

 Japan Medicine (2009/6/24) に、運動器リハビリテーションに関する興味深い記事が掲載されていますので、下記に示します。

●日本臨床整形外科学会/次期改定で運動器リハの点数体系
 を要望 脳血管疾患等リハとの格差是正が課題


 日本臨床整形外科学会は、次期診療報酬改定に向け現行の疾患別リハビリテーション体系を維持した上で、運動器リハビリテーションについては施設基準を見直し、脳血管系疾患等リハビリテーションとの点数格差の是正を図り、医療現場の歪みを解消することを求めていく方針を固めた。

 現行の脳血管疾患等リハは、PT、OTの人員配置によって235点、190点、100点の3段階設定で、算定日数上限は180日になっている。
 これに対して、運動器リハ料は、170点と80点の2段階で、算定上限は150日。
 同学会では、運動器リハ点数と脳血管系リハの点数格差があることで、運動器リハ施設におけるPT、OTの雇用が難しい状況になっていることが課題として挙げられた。

 実際に、2007年度社会保険診療行為別調査からリハビリテーションのレセプト件数は、運動器リハが脳血管疾患リハの2.5倍となっているのに対して、リハビリテーション総収入では脳血管疾患リハの方が1.9倍高くなっている。
 運動器リハは、リハ回数が多いが、それが実収入に反映されていない薄利多売の実態がある。
 このため現行の点数体系では、運動器リハ施設の雇用環境の改善が図れないとしている。

 改善提案について同学会では、運動器リハについても脳血管系疾患リハと同様にPT、OT合計4人以上、運動器リハの経験を有する医師の配置などを施設基準とした240点を新設し、点数を3段階に組み直すことを要望する。
 このほか、65歳以上の運動器不安定症を有する患者に対する運動機能指導管理料の新設なども盛り込む予定だ。

 藤野圭司理事長は、「PT、OTは毎年1万3,000人ずつ増える計画だが、現行の点数体系では、運動器リハ施設では、経営的にも受け皿になれない厳しい状況にあることを理解してもらいたい」 と指摘した。

 特に、同理事長は、「2,200億円の社会保障費の抑制が骨太の方針09に盛り込むようなことがあってはならない。日本医師会は全力をあげて阻止するよう働き掛けるべきだ」 と述べ、実質的に形骸化された形になったとしても、骨太09に記載することは阻止すべきだと語った。

(1)2006年度改定において、運動器リハビリテーション関連3団体および呼吸器リハビリテーション関連団体が各々の思惑・戦略により (あるいは、良かれと思って?) 行ったロビー活動が功を奏して (且つ厚生労働省の思惑にも合致して) 導入された 「疾患別リハビリテーション体系」 は、結果的に下記のような多くの問題を引き起こしました。

 ①リハビリテーションの理念である 「障害のある方に対する全人的アプローチ」
  の象徴であった 「総合リハビリテーション施設」 の形骸化、ならびに、セラ
  ピストの専門性をないがしろにした 「理学療法料」・「作業療法料」・「言語聴
  覚療法料」 の削除。

 ②疾患別リハビリテーション体系の導入に伴う大きな代償
  (a) 厚生労働省にねじ込まれたリハビリテーション算定日数制限とそれに
   伴って生じた多くの 「リハビリ難民・介護難民」
  (b) 算定日数制限除外患者における算定日数上限超え時の疾患別リハビリ
   テーション継続に必要な毎月の膨大な書類作成 (事務的作業の負担増
   大→その割にはレセプト審査で理不尽な減額査定)。
  (c) 結果的に生じた疾患別リハビリテーション診療報酬点数の減額。

 ③各疾患別リハビリテーションの 「厚生労働省が明示している対象疾患」 以
  外の疾患において、疾患別リハビリテーションの選択が困難な症例 (ある
  いはレセプト審査で却下または減額査定される症例:都道府県あるいは
  国保・社保で格差あり) が少なからず存在する。

 ④複数の疾患および重複障害を有する患者 (特に高齢者) は、疾患別リハビリ
  テーションに馴染まず、充分なリハビリテーションが享受できない。

(2)運動器リハビリテーション料と脳血管疾患等リハビリテーション料との点数格差の原因として、次のようなことが挙げられます。

 ①医療機関によっては、運動器リハビリテーションにおいて少なからず指摘
  されている (脳血管疾患等リハビリテーションにおいても、医療機関によっ
  ては、指摘を受けていますが) 「セラピストおまかせリハビリテーション」
  即ち、医師およびリハビリテーション専任医師の関与が少ないリハビリテ
  ーション
という現実。(時に、「無診察リハビリテーション」 の実態)。

 ②施設基準におけるリハビリテーション専任医師の数の差異 【運動器リハビ
  リテーション料 (Ⅰ)
は、運動器リハビリテーションの経験を有する専任の
  常勤医師が1名以上勤務、一方、脳血管疾患等リハビリテーション料 (Ⅰ)
  は、専任の常勤医師が2名以上勤務していること [ただし、そのうち1名
  は、脳血管疾患等のリハビリテーション医療に関する3年以上の臨床経験
  又は脳血管疾患等のリハビリテーション医療に関する研修会、講習会の受
  講歴 (又は講師歴) を有すること]】。

 ③施設基準におけるセラピストの数の差異 【運動器リハビリテーション料
  (Ⅰ)
は、専従の常勤理学療法士 (PT) が2名以上勤務、又は、専従の常勤
  作業療法士 (OT) が2名以上勤務、又は、専従の常勤PT及び専従のOT
  が合せて2名以上勤務していること、一方、脳血管疾患等リハビリテーシ
  ョン料 (Ⅰ)
は、専従の常勤PT5名以上勤務&専従の常勤OTが3名以上
  勤務 [言語聴覚療法を行う場合は、専従の常勤言語聴覚士 (ST) が1名以
  上勤務]】。

 ④運動器リハビリテーション料 (Ⅰ) の施設基準における有資格者による代替
  者の問題
(当分の間、適切な運動器リハビリテーションに係る研修を修了し
  た看護師、准看護師、あん摩マッサージ指圧師又は柔道整復師が、専従の
  常勤職員として勤務している場合であって、運動器リハビリテーションの
  経験を有する医師の監督下に当該療法を実施する体制が確保されている場
  合に限り、理学療法士が勤務しているものとして届け出ることができる)。

 ⑤一部の医療機関にて、「処置 (介達牽引および消炎鎮痛等処置) と区別がつ
  かないような運動器リハビリテーション」
が行われている。また、定期的
  なリハビリテーション治療効果判定がなされていない (長期漫然としたリ
  ハビリテーション)


 ⑥一部の医療機関において、運動器リハビリテーションの算定日数上限が来
  るたびに、リセットを繰り返している。(例:変形性頸椎症→右肩関節周囲
  炎→左肩関節周囲炎→変形性腰椎症→右変形性膝関節症→左変形性膝関節
  症→腰部脊柱管狭窄症→左変形性股関節症→・・・・・・)。

  ●上記リセット問題に対して発出された厚労省疑義解釈。

(問)「膝の変形性関節症」 での運動器リハビリテーションが終了した日以降、「脊椎疾患」 や 「隣接関節疾患」 などで、新たな運動器リハビリテーション料を算定できるのか。

(答)脊椎疾患等の傷病が新たに発症したものであれば算定できる。なお、脊椎疾患等の慢性的な疾患については、膝変形性関節症に対するリハビリテーションを実施中に既に発症していた可能性が高いことから、発症日を十分に確認する必要がある。

 ⑦疾患別リハビリテーション料の施設基準の要件 [(a) リハビリテーションに
  関する記録 (医師の指示、実施時間、訓練内容、担当者等) は患者ごとに一
  元的に保管され、常に医療従事者により閲覧が可能であること。(b) 定期的
  に担当の多職種が参加するカンファレンスが開催されていること] が遵守さ
  れていない一部の医療機関。

 ⑧ 「運動器不安定症」 は、慢性期的、廃用症候群的、介護保険的、あるいは介
  護予防的な 「疾患名 (?)」 であり、医療保険・診療報酬には馴染まず、使用
  すべきではないと考えられている。(レセプト減額査定も少なくない)。

(3)上記(2)の種々の課題が解決されない限り、運動器リハビリテーション料と脳血管疾患等リハビリテーション料との点数格差は解消されないと思われます。

(4)以前の当ブログ記事 [運動器リハの日数制限を180日に (日本臨床整形外科学会が要望)] で述べたように、これまでのリハビリテーション診療報酬改定において、したたかな厚生労働省は、

 ①運動器リハビリテーション関連3団体 (日本整形外科学会・日本臨床整形外
  科学会・日本運動器リハビリテーション学会)

 ②呼吸器リハビリテーション関連学会 (日本呼吸器学会・日本呼吸ケア・リハ
  ビリテーション学会)

 ③リハビリテーション関連5団体 (日本リハビリテーション医学会、日本リハ
  ビリテーション病院・施設協会、日本理学療法士協会、日本作業療法士協
  会、日本言語聴覚士協会)

 ④日本心臓リハビリテーション学会

の思惑・戦略の違いにつけ込み (分断作戦)、結果的に、「リハビリテーション算定日数制限」 を付与しやすい疾患別リハビリテーション料を導入し、リハビリテーション医療を混乱に陥れました。

 したがって、次期平成22年度診療報酬改定に向けて、リハビリテーション医療の正常化ならびに患者さん・障害のある方の安心・安全・納得・満足のために、また、「リハビリ難民・介護難民」 の解消および防止のためにも、(各疾患別リハビリテーション関連学会が単独で厚生労働省と交渉するのではなく)、上記の4つの疾患別リハビリテーション関連団体が 「合同で (スクラムを組んで)」 厚生労働省と交渉すべきと考えられます。




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