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次期改定で脳卒中患者らの追い出しが加速? (DPC評価分科会)

 ロハス・メディカル (2009/7/2) に、中医協DPC評価分科会に関する、非常に気になる記事が掲載されていますので、紹介します。
 
次期改定で、脳卒中患者らの追い出しが加速?
 
 「中小病院では患者の追い出しにつながることは間違いない」。
 入院初期の診療報酬を引き上げる厚生労働省の方針に対し、民間病院の医事担当者は驚きを隠せない。
 来年4月から、脳卒中や心筋梗塞などで緊急入院した患者が早期に追い出されるケースが続出しそうだ (新井裕充)。

 厚生労働省は6月29日、脳卒中などで倒れた患者を受け入れる急性期病院の入院初期の診療報酬を大幅に引き上げる一方、入院期間がある程度経過した後の診療報酬を引き下げる方針を固め、中医協の分科会で了承された。

 まだ正式決定ではないが、厚労省案が中医協の基本問題小委員会で承認されて来年4月の診療報酬改定に反映されると、脳卒中などで入院した患者が現在よりも早期の退院を迫られるケースが増えるとの声もある。

 もちろん、急性期病院から回復期リハビリ病院へのスムーズな転院が進めば問題は少ないかもしれない。
 しかし、2008年度の診療報酬改定では、「在宅復帰率」 などで診療報酬が変わる "成果主義" が回復期リハビリ病院に導入されており、回復期リハビリ病院で患者選別が進んでいるとの指摘がある。
 つまり、回復期リハビリ病院の "入り口" が従来よりも狭くなっている。

 また、回復が難しい患者を受け入れる 「障害者病棟」 の対象患者から脳卒中などの患者が前回改定で外されたため、高齢者のリハビリ環境が悪化の一途をたどっているとの声もある。

 急性期病院と回復期病院との円滑な連携が不十分な状況であるにもかかわらず、厚労省は平均在院日数をさらに短縮するため、DPC (入院費の定額払い方式) を導入している病院について、入院初期のインセンティブを高める方針。
 急性期病院の入院初期の点数を上げると、早期に退院できない患者の受け入れに消極的になるという悪循環が懸念される。

 6月29日のDPC評価分科会で、伊藤澄信委員 (独立行政法人国立病院機構医療部研究課長) は、「今の現場の状況から言うと、(入院期間がある程度経過した) 『入院期間Ⅱ』 の平均ぐらいのところが一番儲かっていて、それ以上 (入院期間を) 長くしても短くしても収益が悪くなるので、平均在院日数が欧米に比べて縮まない原因はそこにある」 と指摘した上で、次のように厚労省案に賛同した。

 「あまり 『外国が』 という話はしたくないが、わが国の平均在院日数が長いのは、(早期退院に) インセンティブが働いていないので、今のままで (早期に退院させなくても) いいという形になっていると思う。ちゃんと医療機関の (機能) 分化を進めていくためには、ある程度の痛みを伴うのかなと思う。ある病院のデータで、出来高 (実績点数) とDPC点数との差を見ると、平均在院日数が長くなる方が収益が大きくなるという現状。平均在院日数を短くする仕組みとして、現在のままでは十分ではない」。

 同分科会は厚労省案を了承。
 これが基本問題小委員会で承認されれば、2010年度の診療報酬改定で入院初期の点数が変更される。

 今回の決定に対し、埼玉県内の民間病院の医事担当者は 「ベッドが高回転している病院ならばいいだろう。しかし、稼働率がほどほどの病院や稼働率が悪い病院は入院期間を短くする必要がなかったので、平均在院日数を短縮する流れになるだろう。今回の方針は、患者がどんどん運ばれてくる高稼働率の大学病院向けの改定ではないか。中小病院では患者の追い出しにつながることは間違いない。信じられない改悪だ」 と驚きを隠せない。

 また、東京都内の急性期病院 (400床) の医師はこう指摘する。
 「出来高の場合は、医師の裁量で患者に合わせた治療や入院期間を設定することができた。しかし、DPC (入院費の定額払い方式) になってから経営判断を無視できないようになったので、外来でできることは外来に移すようになった。厚労省は平均在院日数の短縮化を 『効率化』 と言うが、果たしてそうだろうか。やらなくてもいい治療を控えるようにしたことが 『効率化』 であるなら、『効率化』 は患者さんにとって望ましいことではない」。

 (以下、略)。

(1)現在、これまでの医療制度改革・診療報酬改定・介護報酬改定等に伴う下記の種々の問題点により、「患者選別・患者切り捨て」 (特に脳卒中・認知症) が既に生じており、それが 「医療難民 (特に脳卒中、認知症)・救急難民・リハビリ難民・介護難民・障害者難民」 の出現・増大に拍車をかけていると考えられます。

  ①疾患別リハビリテーション体系の導入ならびにリハビリテーション算定
   日数上限 (標準的算定日数) の導入

  ②回復期リハビリテーション病棟への成果主義の導入

  ③障害者病棟からの脳卒中・認知症患者の排斥

  ④医療療養病床の医療区分問題

  ⑤在宅医療システム・在宅ケアシステムの不備

  ⑥要介護認定の軽度化、区分支給限度額の据え置き

  ⑦介護保険の構造的問題 [区分支給限度額・応益負担 (原則1割自己負担)]
   による介護サービス利用制限

  ⑧介護保険リハビリテーション制限問題 (リハビリテーションマネジメント
   加算月8回問題)

  ⑨介護保険施設 (特に特養) の整備不足、等々。

 上述の次期2010年度診療報酬改定におけるDPC改定に伴い、「脳卒中患者等の追い出し」 が加速し、 「医療難民 (特に脳卒中、認知症)・救急難民・リハビリ難民・介護難民・障害者難民」 問題が益々深刻化する可能性が否めません。

(2)今後の中医協・診療報酬基本問題小委員会およびDPC評価分科会での議論の行方を注視する必要があると思われます。




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「TIA (一過性脳虚血発作) 後の脳卒中」 (半数は24時間以内に発症)

 Japan Medicine (2009/6/10) に、TIA (一過性脳虚血発作) に関する興味深い記事が掲載されていますので、下記に示します。

●TIA後の脳卒中 半数は24時間以内に発症 (ニューヨーク5日・ロイター)

 一過性脳虚血発作 (TIA) 後7日以内に認められる脳卒中の約半数は、最初の24時間以内に起きる-こんな新しい研究結果が示されている。
 この研究結果は、TIA後24時間以内の患者監視を推奨しているガイドラインの正当性を裏付けている。
 研究結果は 「Neurology」 (6月2日号) に、Peter M. Rothwell 氏 (英、Oxford University) らから報告されている。

 今回の結果は、地域住民を対象にした研究 「Oxford Vascular Study」 (英オックスフォード州の脳卒中患者、TIA患者が対象) のデータを解析して得られた。

 初回のTIAまたは脳卒中を発症した1,247人のうち、35人が24時間以内に同じ動脈部位で脳卒中を再発した。
 これら患者のうち25人は、脳卒中再発までに、最初のイベントから回復していた。
 16人は、脳卒中再発までに緊急の医療が必要だったが、抗血小板療法を受けた患者はいなかった。

 初回のTIAを発症した488人のうち、25人がTIA後24時間以内に脳卒中を発症した。
 これら25人は、初回TIA後7日以内に脳卒中を発症した48人の52%を占め、30日以内に発症した59人の42%を占めた。

 初回TIAを発症した患者で、TIA6時間後の脳卒中リスクは1.2%だった。
 12時間後は2.1%、24時間後は5.1%だった。

 また、評価手段として一般的に使われるABCD2スコアは早期の脳卒中再発を予測するのに有用だった。

(参考) ABCD2スコア [Lancet 2007 Jan 27; 369 (9558):283~292]

 A:Age (60歳以上=1点)
 B:BP (TIA後最初に測定された血圧:収縮期血圧140mmHg以上
   または拡張期血圧90mmHg以上=1点)
 C:Clinical features (臨床症状:片麻痺=2点、構音障害のみ=1点、
   その他=0点)
 D:Duration (TIA症状の持続時間:60分以上 =2点、10~59分=
   1点、10分未満=0点)
 D:DM (糖尿病あり=1点)

 7点満点で、
 ◎6~7点:2日間で脳梗塞になる高リスク (8.1%)
 ◎4~5点:2日間で脳梗塞になる中等度リスク (4.1%)
 ◎0~3点:2日間で脳梗塞になる低リスク (1.0%)

 「これは、軽度脳卒中発症後24時間以内に起きる脳卒中再発のリスクを検討した最初の、厳密な地域住民対象研究である。非常に軽度の脳卒中初発後であっても、その直後に重度脳卒中を発症するリスクは非常に高い。このことが今回研究で示されている」 と、発表資料のなかで Rothwell 氏は述べている。

(1)以前の当ブログ記事 [脳卒中急性期医療をめぐる課題と展望 (TIA:一過性脳虚血発作)] にて、下記の 『TIAに関する重要ポイント』 ならびに 『TIA 「べからず集」』 を述べています。
 
●TIAに関する重要ポイント

 (a) TIAの早期診断・治療が脳卒中を防ぐ。

 (b) TIAは、メディカル・エマージェンシーである。

 (c) ハイリスクのTIA患者を早期に診断・治療すれば、脳卒中そのものを起
  こさなくても済むわけであるから結果的に医療経済効果は遙かに高くなる。
   (海外のデータ:TIAを早期に治療すれば脳卒中のリスクは半減する)。

 (d) TIAは、脳にとっての不安定狭心症である (不安定狭心症を放っておい
  たら心筋梗塞になるのと同様に、TIAを放っておいたら脳卒中になる)。

 (e) TIAは、脳卒中予防五段階の崖っぷちである。

 (f) TIAを正確に診断すること。

 (g) TIAは、脳卒中の予行演習である。

 (h) TIAは、48時間以内 (あるいは24時間以内) に評価を終わらせ、治療を
  始めなければならない。

 (i) TIAは、脳卒中の重いものの予備軍である。

 (j) completed stroke よりも、TIAの方が、発症後3か月以内の脳卒中のリ
  スクは高い。

 (k) TIAを疑わせる患者さんには、なるべくその時に、ABCDスコア (下
  記の註を参照) や、脳卒中専門病院であれば頸部エコー、MRI/MRA
  等を行い、その場で 「がけっぷち」 のTIAか否かの診断ができるシステ
  ムをつくること。

(註)ABCDスコア
 (1) TIAが如何に脳梗塞になるかのリスクを調べるためのスコア。
 (2) Oxfordshire Community Stroke Projectが提案した簡易スコア。
 (3) スコア表
   A:Age (年齢) 60歳未満:0点、60歳以上:1点
   B:Blood pressure (血圧) SBP 140、DBP 90以下:0点
                SBP 140、DBP 90以上:1点
   C:Character (臨床的特徴) 片側性脱力:2点
                 脱力ない構音障害:1点
                 その他の症状:0点
   D:Duration (持続時間) 10分未満:0点、10~59分:1点、
               60分以上:2点
 (4) 5点以上は、相当、脳卒中リスクが高いので要注意。

●TIA 「べからず集」

 (a) TIA患者さんに、「良くなって、よかったですね」 と言って安易に帰すべ
  からず。

 (b) TIAでないものを、安易にTIAと言うべからず。(例:失神や意識消失
  発作に対してTIAと診断する医師は多い。実際は重篤な不整脈が隠れてい
  たりするなど、心臓疾患の可能性も含めて考えなければならない)。

 (c) TIAを見落とすべからず。(救急の現場ではいわゆる局所神経症状が出て
  いる 「がけっぷちのTIA」 を絶対見落とさない。「手のしびれ」 もTIAの
  可能性あり)。

 (d) TIAを、「脳卒中の軽いもの」 と安易に言うべからず。

 (e) 「アテローム血栓症や心原性脳塞栓症は重い病気で、それより軽いラクナ梗
  塞、さらに軽いTIAがある」 と安易に思うべからず。

(2)上述の通り、TIAは、メディカル・エマージェンシーであり、早期診断・早期治療が脳卒中を防ぎます。

 しかしながら、日本では、その認識が未だ充分には浸透していないため、患者さん・家族・ハイリスクの方・地域住民のみならず、研修医・開業医・他科医等への充分な啓発・啓蒙が必要と考えられます。




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脳卒中患者 リハビリ医療を奪われた 「棄民」 (多田富雄氏)

 朝日新聞 (2009/3/2) の 「私の視点」 に、免疫学の世界的権威であり、また、脳梗塞による重度後遺症の御身で、卓越した情報発信力・揺るぎない信念にて厚生労働省の 「リハビリテーション算定日数制限問題」 等の理不尽な政策を糾弾してこられた多田富雄・東京大名誉教授の鬼気迫る文章が掲載されています。

●脳卒中患者 リハビリ医療を奪われた 「棄民」 (多田富雄・東京大名誉教授)

 後遺症で身動きもままならないのに、入院中の病院から出ていってくれといわれた患者。転院を迫られても引き受けるところが見つからない重症者。帰るに帰れない事情を背負ったまひ患者。リハビリを打ち切られて極度に機能が落ちた重度の障害をもつ者。

 声を上げることができない脳卒中の患者が、行政から見放されている。「医療の効率化」 の名の下に重症者が選別され、国から見捨てられた棄民と化している。

 ウソだと思う人もいるだろうが、日本リハビリテーション医学会の最近のアンケートで、回復期リハビリ病棟の専門医の約2割が 「患者を実際に選別している」 と認め、約半数の医師が 「その可能性がある」 と答えているのだ。選別しなければ病院の経営が成り立たないような制度が相次いで施行されたためである。私の周囲でも、悲惨な患者の例を頻々と耳にするようになったのである。

 私は2001年に重症の脳梗塞になり、いまだに言葉を発することも、歩くこともできない。しかしリハビリ訓練を続けたおかげで。かろうじて社会復帰をしている。

 しかし、リハビリをめぐる状況は、この3年で急速に悪化している。

 発端は2006年の診療報酬改定である。政府は、超高齢化社会に対応して社会保障費を増やすどころか削減し、脳卒中のため障害を負った患者のリハビリ医療を、発症から起算して最高180日に制限した。これを機に、脳卒中患者の苦しみは、日を追って絶望的なものになった。

 日数制限の撤廃を求める署名は48万人に達したが、厚生労働省はそれを握りつぶし、翌07年の異例の再改定では、心筋梗塞などごく一部を日数制限から外して、緩和したように見せかけただけだった。

 逆に、日数を超えてリハビリを続ければ、病院には低い診療報酬しか支払われないようになり、慢性期の脳卒中患者のリハビリ継続はますます難しくなった。ことに救急車では込み込まれた重症の患者は、発症日から60日以後は回復リハビリ病棟に移ることもできなくなり、リハビリを始めることさえできない。初めから回復のチャンスが奪われてしまったのである。

 さらに、2008年10月からは治療結果による病院の”懲罰制”まで導入された。回復期リハビリ病棟に入院後180日以内に自宅やそれに準ずる施設に退院した患者が6割を超えないと、病院に支払われる報酬が大幅に減額される。病院はノルマを達成するために、治療途中の患者を自宅に帰さなければならない。そのためリハビリの期間は短くなり、治療半ばで中止させられる例も多い。中には点滴の管をつけたまま、自宅に退院させられる患者まで現れた。退院しても 「老老介護」 では、通院治療もままならない。

 そのうえ、慢性期のリハビリは介護保険のデイケアでやれといって、退院後の機能回復の機会を奪った。リハビリは患者の個別性に応じて行う専門的な医療であり、介護施設のデイケアなどでは対処できるものではないのだ。

 改善が目に見えないからといってリハビリを続けなければ致命的な機能低下が起こることを無視した日数制限の結果、寝たきりになった人が幾人いることか。残った機能の維持こそ命を救い社会復帰させる医療なのに。

 リハビリは単なる機能回復の訓練ではなく、社会復帰を含めた人間の尊厳を回復する医療なのである。患者や医師、リハビリ施設の職員たちから苦悩の声があがっても、厚労省は言を左右に、医師や病院の責任にして自分たちの非を認めない。脳卒中患者を抜き打ち的に狙った迫害、としか言いようがない。

 相次いだ制度の改悪によって、脳卒中の治療に熱心だった病院の収入は減り、重症の患者は初めから受け入れない傾向が生じた。そしてついには、最初に述べた患者の選別までが起こったのだ。

 これが 「文明国」 と称する日本の現状である。「すべての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」 と定めた憲法25条は、脳卒中患者には当てはまらないとでもいうのだろうか。

 リハビリをすれば社会復帰できたのに、寝たきりになった患者の人権はどうなるのか。最後の命綱を断ち切られて、命を落とした人に涙を注がないのか。この日本で、難民ではなく医療を奪われた棄民が発生したのだ。

 リハビリ医療の度重なる制度改悪は、最弱者である患者の最後の希望を打ち砕き、医師や療法士のやる気をなえさせ、病院を疲弊させた。

 医療は崩壊ではなく、破壊されたのだ。

 最弱者を狙い撃ちにするような非人間的な制度は、即刻撤廃するべきである。

 上記に関する当ブログ管理人の考察・結論は、下記の通りです。

(1)多田名誉教授は、下記のような現在の医療行政の失政および医療制度改悪について鋭く指摘されています。

 (a) 医療費亡国論、小泉竹中構造改革、膨大な財政赤字 (官僚・与党議員等が何
  ら責任を取ろうとしない。反省・謝罪の弁も全くない!) に伴う財務省の財政
  再建至上主義 (財政再建原理主義) 等による 「医療費抑制・医師不足による医
  療崩壊・医療破壊 (特に、勤務医・病院)」


 (b) 「患者・高齢者・介護サービス利用者・障害者の視点」 より、「財政再建の視
  点」・「社会保障費削減の視点」・「医療費削減の視点」・「財務省の視点」・「厚生
  労働省の視点 (省益・局益)」・「診療報酬支払い側の視点」・「介護保険料の視
  点・市町村の視点」 等の方を重視してきた厚生労働省

 (c) 平均在院日数の呪縛

 (d) 2006年の診療報酬改定で導入された 「リハビリテーション算定日数制限」
  よび厚生労働省の見せかけの緩和策

 (e) 医療保険において、リハビリテーションを継続することにより 「状態の改善」
  が得られる場合しか算定を認めない厚生労働省
   (*) 「状態の維持」 および 「状態の低下傾向の可能な限りの抑制」 も重要であ
   り、このことは、症例によっては、「状態の改善」 と同等あるいはそれ以
   上に難しいタスクです。したがって、介護保険リハビリテーションでは
   困難 (平成21年度介護報酬改定で導入される短時間通所リハビリテーショ
   ンでも困難) であり、医療保険での集中的かつ濃厚なリハビリテーション
   が必要な場合が少なくありません。

 (f) 2008年10月に導入された 「障害者病棟からの脳卒中患者・認知症患者の排除」

 (g) 量的・質的に不充分な回復期リハビリテーション病棟、発症・手術・損傷か
  ら同病棟入院までの期間の制限 [2ヵ月以内 (一部、1ヵ月以内)] 、2008年10
  月から導入された 「患者選別」 を強要する同病棟への成果主義 [在宅復帰率等
  のアウトカム評価 (通常の成果主義は、プロセス評価が主)]

 (h) 医療療養病床の理不尽な医療区分の問題・不充分な診療報酬の問題

 (i) 量的・質的に不充分かつ経営的に不安定な介護保険施設

 (j) 不充分な在宅ケア体制

 (k) 要介護度の軽度化、介護給付費の抑制、老老介護・介護殺人・介護自殺・孤
  独死等の介護保険の構造的問題 (含、本来の理念 「介護の社会化」 の空疎化)

(2)我々リハビリテーション関係者も、多田名誉教授の忸怩たる思いと腹の底からの叫び・主張・提言を、真摯に受け止め、自らの力不足・努力不足・認識不足・行政へのアピール不足・厚生労働省の分断作戦によるリハビリテーション関連団体の分断・分裂等を深く反省しなければならないと思います。

(3)リハビリテーション (特に、診療報酬・介護報酬) において、下記のように、立場が違うと、それぞれの思惑が大分異なります。

 (a) リハビリテーション関連団体
  (1) 整形外科関連3団体 (日本整形外科学会・日本臨床整形外科学会・日本
    運動器リハビリテーション学会)、
  (2) 日本呼吸器学会・日本呼吸ケアリハビリテーション学会
  (3) 日本心臓リハビリテーション学会
  (4) リハビリテーション関連5団体 (日本リハビリテーション医学会・日本
    リハビリテーション病院・施設協会、日本理学療法士協会、日本作業
    療法士協会、日本言語聴覚士協会)

 (b) 各リハビリテーション・ステージ (急性期、回復期、維持期)

 (c) 各診療科 (整形外科、内科、小児科、脳神経外科・神経内科、呼吸器内科・呼
  吸器外科、循環器内科・心臓血管外科、リハビリテーション科、等)

 (d) 各職種 (医師、PT、OT、ST、あん摩マッサージ指圧師、看護師、准看護
  師、柔道整復師)

 (e) 医療機関 (大学病院等特定機能病院、大病院、中小病院、診療所。総合病院、
  専門病院、等)

 (f) 医療保険 [医療機関、(施術所、治療院、鍼灸院、鍼灸マッサージ院、整骨院、
  接骨院)]、介護保険 (介護保険施設・居宅サービス事業所)、障害者自立支援法

 (g) 民間医療機関、公的医療機関

(4)上記(3)の立場の違い・思惑の違いにつけ込んで、厚生労働省は分断作戦を敢行し、勝利を収めてきました。そしてそれが、多田名誉教授が嘆かれている診療報酬改悪・介護報酬改悪・医療制度改悪に繋がってきました。

 したがって、我々リハビリテーション関係者は、リハビリテーションの理念の原点に戻り、上記(3)の様々な立場を超えて、足並みを揃え、「患者さん・障害のある方」 の視点に立った行動をとり、以て、我々の使命・責務を果たす必要があると思います。
 また、リハビリテーション効果の更なるエビデンスを示していく責任もあると考えられます。

(5)以上、多田名誉教授がお書きになった文章 (脳卒中患者 リハビリ医療を奪われた 「棄民」) について論じました。

 多田名誉教授が指摘された様々な問題点を包含するリハビリテーションの現状を打破するためには、我々リハビリテーション関係者のみならず、厚生労働省とも足並みを揃える必要があり、行政・政治・マスメディア等を巻き込んだ包括的なアプローチが肝要と考えられます。

 そしてそれが、「医療難民 (特に、脳卒中、認知症)・救急難民・リハビリ難民・介護難民・障害者難民」 ならぬ 「医療棄民 (特に、脳卒中、認知症)・救急棄民・リハビリ棄民・介護棄民・障害者棄民」 の出現防止に繋がると考えられます。




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脳卒中急性期医療をめぐる課題と展望 (TIA:一過性脳虚血発作)

 前回の当ブログ記事 [「脳卒中急性期医療をめぐる課題と展望 (リハビリテーション)」] の続編です。
 週刊医学界新聞 (第2820号:2009年3月2日) の記事 (【座談会】 脳卒中急性期医療をめぐる課題と展望) におけるTIA (一過性脳虚血発作) の部分を抜粋して紹介します。

【TIAの早期診断・治療が脳卒中を防ぐ】

● 「よくなってよかったですね」 で帰してはいけない


① (内山・東京女子医科大学神経内科教授)
 欧米では、TIA (一過性脳虚血発作) はメディカル・エマージェンシーであり、早期の評価と治療を要することが、ここ4~5年強調されています。それに比して、日本ではその認識が遅れており、症候学として、あるいは診断基準の論争だけにとどまっていた傾向があると思います。

 実際、脳卒中発症後にt-PA療法を行っても、全体としての効果は3か月後の転帰良好例が30%増えるだけです。一方、ハイリスクのTIA患者を早期に診断・治療すれば、脳卒中そのものを起こさなくても済むわけですから、結果的に医療経済効果ははるかに高くなります。実際に海外では、TIAを早期に治療すれば脳卒中のリスクは半減するというデータも出ています。そういった意味でも、今後日本におけるTIAの認識を変えていかねばなりません。

② (平野・熊本大学医学部附属病院神経内科副科長)
 先ほど長尾先生から心臓の話が出ましたが、「TIAは脳にとっての不安定狭心症」 だと言うことができます。不安定狭心症を放っておいたら心筋梗塞になるのと同様に、TIAを放っておいたら脳卒中になる。メディカル・エマージェンシーだという認識をしっかり持ち、必ず血管系のサーベイをして、すぐに的確な対策を立てることが大切です。よく九州医療センターの岡田靖先生の言葉を借りて 「TIAは脳卒中予防五段階のがけっぷちです」 と言うのですが、いちばん危ない病態だと認識してほしいということを、患者さんにも開業の先生方にも、機会があるごとにお話ししています。

③ (内山) 他科の医師や研修医にも啓発が必要です。例えば、週末の救急外来を受診した当日発症のTIA患者さんに、当番にあたった医師が 「よくなってよかったですね。また来週の月曜日に来てください」 と言って帰す。これは絶対にいけません。それで帰宅後に脳卒中を起こした患者さんも実際にいます。このことは口を酸っぱくして言っているのですが、まだまだ認識が不十分だということは、痛いほど感じています。

●TIAを正確に診断する

④ (長尾・東京都保健医療公社・荏原病院神経内科医長)
 私が現場で感じているのは、他科の医師のTIA診断に関する誤解が非常に大きいことです。TIAでないものをTIAと言い、 TIAをTIAと言わない傾向が非常に強い。例えば、失神や意識消失発作に対してTIAと診断する医師は多いですよね。でも、実際は重篤な不整脈が隠れていたりするなど、心臓疾患の可能性も含めて考えなければならない。「それを簡単にTIAと言っていいのか」 というのは、常々疑問に思っています。また、救急の現場ではいわゆる局所神経症状が出ている 「がけっぷちのTIA」 の整理も不十分だと感じています。

 私は 「TIAは脳卒中の予行演習」 と言っていますが、本当のがけっぷちのTIAをきちんと拾い上げ、本番になる前に適切な対処をすることが必要です。つい先日も 「手がしびれる」 と整形外科を受診し、診断がつかずに手こずった患者さんがいました。最終的にその方はTIAだったのですが、もちろんご本人にもTIAの認識はありませんでした。t-PAと同様に、発症から来院までにもう少し啓発が必要ではないかと現場では感じています。

⑤ (内山) その通りです。2005年度から、JPPPという動脈硬化性疾患に対するアスピリンの一次予防に関する厚労科研費研究で、松本昌泰先生・峰松一夫先生と一緒にTIAと診断された患者さんのイベント評価を行っているのですが、TIAと診断された10人のうち7~8人が、実際はTIAの診断基準を満たしていません。JPPPは一般のクリニックの先生を中心に行われているスタディですが、やはりもう少しTIAの正確な診断を啓発する必要があると思います。

 アメリカではNational Stroke Associationで 「TIAは48時間以内に評価を終わらせ、治療を始めなければならない」 というガイドラインを出しましたが、ヨーロッパはさらに一歩進んで、24時間以内でなければいけないと主張しています。たしかに、ついさっき起こったTIAと1年前に起こったTIAとでは危険度がまったく違うという認識も、一般医にはほとんど理解されていない面があると思います。

●TIAは 「重い脳卒中の予備軍」

⑥ (豊田・国立循環器病センター内科脳血管部門医長)
 TIAというと皆、「脳卒中の軽いもの」 という言い方をしますよね。実際、神経内科医や脳外科医を含めてかなり多くの人が 「アテローム血栓症や心原性脳塞栓症は重い病気で、それより軽いラクナ梗塞、さらに軽いTIAがある」 という誤った認識を持っていると思います。TIAというのは基本的にはアテローム血栓症か心原性脳塞栓症の機序による一過性の脳梗塞ですから、決して 「脳卒中の軽いもの」 ではなくむしろ 「重いものの予備軍」 なのです。ですから、症状が安定しているラクナ梗塞の患者を緊急入院させる感覚を持っている医師だったら、それ以上の真剣さでTIAの患者さんに入院を勧めるべきだと思います。

⑦ (内山) おっしゃるとおりです。いくつかの前向きコホート研究では completed stroke よりもTIAのほうが発症後3か月以内の脳卒中のリスクは高いと出ています。

⑧ (豊田) それがなかなか入院に結びつかない原因の1つは、患者さんがTIAの危険性を理解していないことにあります。診察の段階では症状は消えていることが多いので、入院と言われても納得しにくいでしょうし、医師も主に病歴でしか判断できないため、自信を持って 「これは入院が必要な病気だ」 と言いづらいのでしょう。しかし、TIAを疑わせる患者さんにはなるべくそのときに、ABCDスコアや、脳卒中専門病院であれば頸部エコー、MRI/MRA等を行い、その場で 「がけっぷち」 のTIAか否かの診断ができるシステムをつくることが大事です。


(1)上記①・②・④~⑧より、TIAに関する重要ポイントは次の通りです。

 (a) TIAの早期診断・治療が脳卒中を防ぐ。

 (b) TIAは、メディカル・エマージェンシーである。

 (c) ハイリスクのTIA患者を早期に診断・治療すれば、脳卒中そのものを起こ
  さなくても済むわけであるから、結果的に医療経済効果ははるかに高くなる。
  (海外のデータ:TIAを早期に治療すれば脳卒中のリスクは半減する)。

 (d) TIAは、脳にとっての不安定狭心症である。 (不安定狭心症を放っておい
  たら、心筋梗塞になるのと同様に、TIAを放っておいたら脳卒中になる)。

 (e) TIAは、脳卒中予防五段階の崖っぷちである。

 (f) TIAを正確に診断すること。

 (g) TIAは、脳卒中の予行演習である。

 (h) TIAは、48時間以内 (あるいは24時間以内) に評価を終わらせ、治療を始
  めなければならない。

 (i) TIAは、脳卒中の重いものの予備軍である。

 (j) completed stroke よりも、TIAの方が、発症後3か月以内の脳卒中のリス
  クは高い。

 (k) TIAを疑わせる患者さんには、なるべくその時に、ABCDスコア (下記
  のを参照) や、脳卒中専門病院であれば頸部エコー、MRI/MRA等を
  行い、その場で 「がけっぷち」 のTIAか否かの診断ができるシステムをつ
  くること。

(註)ABCDスコア
 (1) TIAが如何に脳梗塞になるかのリスクを調べるためのスコア。
 (2) Oxfordshire Community Stroke Projectが提案した簡易スコア。
 (3) スコア表
   A:Age (年齢) 60歳未満:0点、60歳以上:1点
   B:Blood pressure (血圧) SBP 140、DBP 90以下:0点
                SBP 140、DBP 90以上:1点
   C:Character (臨床的特徴) 片側性脱力:2点
                 脱力ない構音障害:1点
                 その他の症状:0点
   D:Duration (持続時間) 10分未満:0点、10~59分:1点、
               60分以上:2点
 (4) 5点以上は、相当、脳卒中リスクが高いので要注意。

(2)上記③・④・⑥より、TIA 「べからず集」 は次の通りです。

 (a) TIA患者さんに、「良くなって、よかったですね」 と言って安易に帰すべ
  からず。

 (b) TIAでないものを、安易にTIAと言うべからず。(例:失神や意識消失
  発作に対してTIAと診断する医師は多い。実際は重篤な不整脈が隠れてい
  たりするなど、心臓疾患の可能性も含めて考えなければならない)。

 (c) TIAを見落とすべからず。(救急の現場ではいわゆる局所神経症状が出て
  いる 「がけっぷちのTIA」 を絶対見落とさない。「手のしびれ」 もTIAの
  可能性あり)。

 (d) TIAを、「脳卒中の軽いもの」 と安易に言うべからず。

 (e) 「アテローム血栓症や心原性脳塞栓症は重い病気で、それより軽いラクナ梗
  塞、さらに軽いTIAがある」 と安易に思うべからず。

(3)上述の通り、TIAは、メディカル・エマージェンシーであり、早期診断・早期治療が脳卒中を防ぎます。

 しかしながら、日本では、その認識が未だ充分には浸透していないため、患者さん・家族・ハイリスクの方・地域住民のみならず、研修医・開業医・他科医等への充分な啓発・啓蒙が必要と考えられます。




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脳卒中急性期医療をめぐる課題と展望 (リハビリテーション)

 週刊医学界新聞 (第2820号:2009年3月2日) に、脳卒中急性期医療についての興味深い記事 (【座談会】 脳卒中急性期医療をめぐる課題と展望) が掲載されていますので、リハビリテーションに関する部分を抜粋して紹介します。

●リハビリ開始は1日でも早く

① (内山真一郎・東京女子医科大学教授)
 もう一つの課題は、急性期~回復期~慢性期にわたるシームレスな医療の実現です。今年から脳卒中専門看護師・専門理学療法士の認定が新たにスタートすることも鑑みると、他職種、他診療形態との連携がいっそう重要になってくると考えます。

② (平野照之・熊本大学医学部附属病院神経内科副科長)
 熊本では、30年以上前にわれわれの一世代前の先輩方が、神経内科におけるリハビリの重要性を強く認識され、国内の先進的な施設で勉強して県内に多くのリハビリ病院をつくられました。同じころから脳外科の先生方が救急の素地をつくっておられましたので、そこにわれわれ神経内科のグループが参加し、脳外科と協力して脳卒中急性期診療を行う、という形が自然と生まれてきました。

 私が卒業した時期、ちょうど先輩の橋本洋一郎先生が国循から戻られた1987年ごろは、救急で入院すると2~3か月してやっとリハビリの転院を考えようかという時代でした。ですから、リハビリ病院の先生から 「あんたたちは、脳卒中の患者さんをスルメにして送ってくるから困る。それをイカに戻すには、ずいぶん時間がかかる」 と言われました (笑)。とにかく、早く送ってほしいと。実際、長期間安静にされた患者さんよりも、ともかくリハビリを早く始めた患者さんのほうが圧倒的に回復がいいということが年を経るごとにわかってきたのです。いまは救急の病態をなるべく早く落ち着けて、早期にリハビリが始められることを急性期のゴールにしていますし、入院したその日から、関節可動域訓練や体位交換といった他動的なリハビリを始めるようにしています。15年以上前から 「電話1本1週間」 をキャッチフレーズに、急性期と回復期で連携を取りながら進んできました。

③ (内山) 長尾先生のところでは、リハビリや後方病院の確保についてはどうされていますか。

④ (長尾毅彦・東京都保健医療公社荏原病院神経内科医長)
 東京の泣き所はリハビリ病院の少なさで、全国でいちばん苦労している地域ではないかと思います。現在、回復期リハの病院は関東地域でも増えつつあり、10年前と比べると状況はかなり改善しています。それでも入院期間は熊本より1週間から10日ほど長くなってしまうのが実情です。

 そこでカギとなるのが、急性期のリハビリです。回復期のリハビリを受けるまでの2~3週間がブランクになると、それこそスルメになってしまいます。それを防ぐためには、発症直後から回復期に負けないレベルでしっかりと急性期リハビリを行い、その上で回復期リハビリ病院への転院を待機する。私は、それが comprehensive stroke center の大きな役割の1つだと考えています。特に、東京のようになかなか転院先が決まらない地域であれば、より急性期のリハビリを重要視して、患者さんの早期回復を狙うべきです。とはいえ、実際に急性期リハビリの体制が整った脳卒中基幹病院は多くないので、今後、リハビリをペアにした脳卒中センターという概念をもう少し強調すべきではないかと考えています。

 当院でも、たかだか2~3日リハビリの開始を前倒ししただけで、すべての回転がスムーズになり、患者さんの状態もよくなるというデータがわずか1年で出てきました。「ああ、こんなに違うんだな」 と実感しましたね。急性期リハビリ脳卒中ケアユニット加算にも入っていることでもあり、そのあたりの認識を、脳卒中の専門医も持つべきだと思います。

 上記に関する当ブログ管理人の考察・結論は、下記の通りです。

(1)上記①の通り、脳卒中医療において、急性期~回復期~慢性期にわたるシームレスな医療の実現が重要です。
 リハビリテーションにおいても、(健康増進リハビリテーション~生活機能低下予防リハビリテーション~) 超急性期・急性期リハビリテーション~回復期リハビリテーション~維持期リハビリテーションの、シームレスなリハビリテーション・システム (地域リハビリテーション連携システム) の構築が必要であり、特に、脳卒中の急性期リハビリテーション・回復期リハビリテーションが肝要と思われます。

(2)何故ならば、以前の当ブログ記事 [「地域リハビリテーション (CBR:community based rehabilitation)」、「脳卒中急性期医療体制の構築 (東京都脳卒中急性期医療機関 2009)」] で述べているように、実際の脳卒中医療において、(a) 不充分な急性期治療・(b) 不充分な早期リハビリテーション・(c) 「医原性」 の二次的合併症・障害 (廃用症候群・過用症候群・誤用症候群)・(d) 不充分な回復期リハビリテーションあるいは回復期リハビリテーションの欠如のため、結果的に障害の回復が不充分なまま、あるいは余計な障害まで作られた上で、介護保険・福祉に受け継がれることが未だ少なくなく、全県的な脳卒中医療、リハビリテーション・ネットワークの構築の必要性が喚起されているからです。

 上記 (a) には 「患者・家族等の脳卒中発症サインの理解不足による病院受診遅延」 とそれに伴う 「血栓溶解療法 (t-PA) の断念」、「脳卒中専門医・脳神経外科医・神経内科医の不足」、「救急・急性期病院における 24時間・365日・発症3時間以内のt-PA 治療体制の不備・未整備」、(b)・(c) には 「急性期病院サイドのリハビリテーション・廃用症候群等についての理解不足」、(d) には 「急性期病院サイドのリハビリテーションについての理解不足 (急性期病院から、リハビリテーションを充分には提供しないまま、回復期リハビリテーション病棟も経由させずに、そのまま自宅等・療養病床・老人保健施設等に退院・転院させる医療機関が未だ存在します)」 および 「回復期リハビリテーション病棟の数的不足、質の問題、および発症から入院までの月数制限」 等の関与が挙げられます。

(3)実際、上記②の通り、地域によっては、あるいは急性期病院によっては、「脳卒中の患者さんをスルメにして、回復期リハビリテーション病棟、療養病床、介護老人保健施設、あるいは在宅等に送る・送ってしまう」 ことが未だ少なくありません。
 即ち、「医原性の廃用症候群」 (例:関節拘縮、廃用性筋力低下・筋萎縮、誤嚥性肺炎、心肺機能低下・起立性低血圧、深部静脈血栓症・肺塞栓リスク、骨粗鬆症・骨折リスク、褥創、認知症・抑鬱、尿路感染症・尿路結石・尿失禁・便秘、等々) が生じて 「スルメ」 状態になった患者さんを、「イカ」 に戻すのに相当な時間を要するため、本格的な集中的な回復期リハビリテーションを施行するのがかなり遅延、もしくは施行困難となります。(あるいは、「スルメ」 状態にて在宅等に追い出されます)。

 したがって、患者さんのためには、上記②・④の通り、救急の病態をなるべく早く落ち着けて、早期にリハビリが始められることを急性期のゴールにし、入院したその日または遅くとも翌日から、ベッドサイド・リハビリテーション (関節可動域訓練・体位変換・呼吸排痰訓練・深部静脈血栓症予防・精神心理的サポート等の他動的なリハビリテーションが中心) を始める必要があります。そして、厳格なリスク管理 (「リハビリテーション医療におけるリスク管理」 参照) のもと、早期離床 (『脳卒中リハビリテーションにおける 「早期離床」 』参照) に繋げていきます。
 
 そして、上記②の通り、熊本方式でお馴染みの 「電話1本1週間」 をキャッチフレーズにした急性期病院と回復期リハビリテーション病院とのスムーズな連携が肝要です。
 一方、上記④の通り、回復期リハビリテーション病棟の少ない地域では、転院のための待機時期が比較的長くなるため、特に、充実した急性期・回復期前期リハビリテーション体制が必要と考えられます。

(4)上記④で推奨されている脳卒中センター・脳卒中ケアユニットの件については、診療報酬上の 「脳卒中ケアユニット入院医療管理料」+「超急性期脳卒中加算」 [「脳卒中急性期医療体制の構築 (東京都脳卒中急性期医療機関 2009)」 参照] の算定要件・施設基準を満たすものが、いわゆる 「脳卒中センター」 あるいは日本で言う 「ストローク・ケア・ユニット (SCU)」 で、各専門の医療スタッフが集まり組織づくりをし、チームで脳卒中の発症予防、早期発見および急性期 (発症時) 治療から超急性期~急性期リハビリテーションまでの一貫した総合的な治療を提供します。

 構成メンバーとして、「24 時間体制の、脳卒中専門医 (あるいは脳卒中の経験が深い神経内科医・脳神経外科医、脳血管内治療医)、脳卒中専門ナース等の看護師、薬剤師、診療放射線技師、臨床検査技師」・「放射線科専門医、循環器専門医、呼吸器専門医等の協力」、「リハビリテーション科専門医の関与」、「特に急性期脳卒中リハビリテーションの経験が深い理学療法士 (PT)・作業療法士 (OT)・言語聴覚士 (ST)、管理栄養士、医療ソーシャルワーカー (MSW)」 が挙げられます。
 また、高度医療機器 (CT、MRI、脳血管造影、SPECT、超音波検査等) は24時間フル稼働体制です。

 上記のような脳卒中センターが、全国の各二次医療圏に設置され、円滑に運用されれば、脳卒中急性期医療体制は、地域格差も解消され、飛躍的に進化すると思います。

 但し、急性期後の回復期・維持期の医療体制および脳卒中医療連携体制も同時に確立させないと片手落ちになり、それが、医療難民・救急難民・リハビリ難民・介護難民等を生み出します

(5)地域リハビリテーション [「地域リハビリテーション (CBR:community based rehabilitation)」 参照] に関しては、リハビリテーション従事者以外の関係機関・関係者の一部に誤解があるようですが、地域リハビリテーションは、単に介護保険下の維持的リハビリテーション (訪問リハビリテーション・通所リハビリテーション)・介護予防のみを指すのではありません。

 真の地域リハビリテーションとは、地域 (二次医療圏) における包括的なリハビリテーションシステム (CBR:community-based rehabilitation) です。
 したがって、「健康増進リハビリテーション~生活機能低下予防リハビリテーション~超急性期・急性期リハビリテーション~回復期 (集中的) リハビリテーション~維持期 (断続的) リハビリテーションまでのシームレスなリハビリテーションが、二次医療圏において円滑に進むようなシステム」 を構築する必要があります。

 また、地域リハビリテーション (CBR) の確立のためには、「緊密な病診連携・病病連携・病介 (病施設) 連携による地域医療連携・地域リハビリテーション連携システムの構築」、「医療保険と介護保険の円滑な流れ・連携」、ならびに、「リハビリテーション・マインドの啓発・啓蒙」 が重要と考えられます。

 実際、地域リハビリテーション活動にて、維持期リハビリテーション・介護予防等をいくら頑張っても、急性期・回復期リハビリテーションが不充分であれば、障害が重度化 (当初軽度障害→結局中等度障害、当初中等度障害→結局重度障害) して、どうにもなりません。片手落ちあるいはお手上げ状態になります。

 したがって、地域リハビリテーション活動として、「脳卒中や骨折等で入院した高齢者等が、発症後早期に適切なリハビリテーションが受けられるように、急性期リハビリテーションの重要性について、医療機関等に働きかける」・「医療機関に回復期リハビリテーション病棟の開設・増床を働きかける」 必要があります。

 但し、上記の働きかけが一番困難なタスクであり (当ブログ管理人も困っていますが・・・)、各医療機関のポリシー、財務事情、リハビリテーション・マンパワー等も絡みます。
 地域リハビリテーション支援事業のマンパワー・予算が潤沢であれば、「当該医療機関へのリハビリテーション・マンパワーの派遣」、「充分なリハビリテーション機能を持つストロークユニット (脳卒中専門病棟)・回復期リハビリテーション病棟の開設の促進」、あるいは 「熊本方式等の地域リハビリテーションシステム構築」 等が出来るのですが・・・。(それだけのことをする価値は充分あるのですが・・・)。

(6)以上、脳卒中急性期医療をめぐる課題と展望 (リハビリテーション) に関する考察等を述べました。

 上述の通り、超急性期・急性期~回復期~維持期の各ステージの脳卒中医療体制・リハビリテーション体制が確立し、且つ、充実した脳卒中医療連携体制および地域リハビリテーション連携ネットワークの構築が実現すれば、実際の脳卒中医療において、『濃厚な急性期治療ならびに充分な早期リハビリテーションが実施されることにより、脳の損傷が最小限に抑えられ、且つ 「医原性」の二次的合併症・障害 (廃用症候群・過用症候群・誤用症候群) の出現も防止でき、そして、その後、充分な回復期リハビリテーションが行われることにより、「可能な限りの障害の回復が得られ、余計な障害も作られることなく」、介護保険・福祉に円滑に受け継がれる』という理想的な流れが得られると思います。

 但し、地域リハビリテーション活動には、医療制度・診療報酬問題 (疾患別リハビリテーション体系・単価の減額、リハビリテーション算定日数制限、回復期リハビリテーション病棟の成果主義、障害者施設等入院基本料からの脳卒中・認知症患者の除外、後期高齢者医療制度等) ・介護報酬問題 (要介護認定の厳格化、介護給付費の抑制、支給限度額等)・障害者自立支援法 (応能負担→一律1割の応益負担、年収制限の厳格化、障害区分認定問題) 等も大きく影響します。

 したがって、医療難民・リハビリ難民・救急難民・脳卒中難民・認知症難民・介護難民・障害者難民等を防止するためにも、厚生労働省の医療・介護・福祉政策の策定・施行に対して、エビデンスを掲げて、良い意味での影響力を行使するのも、地域リハビリテーション活動の一つと思われます。

 また、地域リハビリテーション支援事業の実効性をより高めるためには、当該事業の実施に、厚生労働省の老健局・保険局・医政局・健康局・障害保健福祉部の横の連携・コラボレーションが肝要と思われます。

【関連記事】 (本文中に引用した関連記事は除く)
 ◎障害者施設等入院基本料・算定要件の解釈の厳格化
 ◎回復期リハビリ病棟への成果主義の導入 (厚労省保険局医療課の見解)
 ◎リハビリ算定日数制限 (厚労省保険局医療課の見解)
 ◎地域包括ケアの実現に向けて (講演:厚生労働省・宮島老健局長)
 ◎平成20年度リハビリ診療報酬改定 (日本リハビリ医学会の総括)
 ◎ 「リハビリテーション医療のあり方」 日病協の提言
 ◎6万床時代を迎える回復期リハビリ病棟 (回リ協・会長講演) ①
 ◎6万床時代を迎える回復期リハビリ病棟 (回リ協・会長講演) ②




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