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脳卒中患者 リハビリ医療を奪われた 「棄民」 (多田富雄氏)

 朝日新聞 (2009/3/2) の 「私の視点」 に、免疫学の世界的権威であり、また、脳梗塞による重度後遺症の御身で、卓越した情報発信力・揺るぎない信念にて厚生労働省の 「リハビリテーション算定日数制限問題」 等の理不尽な政策を糾弾してこられた多田富雄・東京大名誉教授の鬼気迫る文章が掲載されています。

●脳卒中患者 リハビリ医療を奪われた 「棄民」 (多田富雄・東京大名誉教授)

 後遺症で身動きもままならないのに、入院中の病院から出ていってくれといわれた患者。転院を迫られても引き受けるところが見つからない重症者。帰るに帰れない事情を背負ったまひ患者。リハビリを打ち切られて極度に機能が落ちた重度の障害をもつ者。

 声を上げることができない脳卒中の患者が、行政から見放されている。「医療の効率化」 の名の下に重症者が選別され、国から見捨てられた棄民と化している。

 ウソだと思う人もいるだろうが、日本リハビリテーション医学会の最近のアンケートで、回復期リハビリ病棟の専門医の約2割が 「患者を実際に選別している」 と認め、約半数の医師が 「その可能性がある」 と答えているのだ。選別しなければ病院の経営が成り立たないような制度が相次いで施行されたためである。私の周囲でも、悲惨な患者の例を頻々と耳にするようになったのである。

 私は2001年に重症の脳梗塞になり、いまだに言葉を発することも、歩くこともできない。しかしリハビリ訓練を続けたおかげで。かろうじて社会復帰をしている。

 しかし、リハビリをめぐる状況は、この3年で急速に悪化している。

 発端は2006年の診療報酬改定である。政府は、超高齢化社会に対応して社会保障費を増やすどころか削減し、脳卒中のため障害を負った患者のリハビリ医療を、発症から起算して最高180日に制限した。これを機に、脳卒中患者の苦しみは、日を追って絶望的なものになった。

 日数制限の撤廃を求める署名は48万人に達したが、厚生労働省はそれを握りつぶし、翌07年の異例の再改定では、心筋梗塞などごく一部を日数制限から外して、緩和したように見せかけただけだった。

 逆に、日数を超えてリハビリを続ければ、病院には低い診療報酬しか支払われないようになり、慢性期の脳卒中患者のリハビリ継続はますます難しくなった。ことに救急車では込み込まれた重症の患者は、発症日から60日以後は回復リハビリ病棟に移ることもできなくなり、リハビリを始めることさえできない。初めから回復のチャンスが奪われてしまったのである。

 さらに、2008年10月からは治療結果による病院の”懲罰制”まで導入された。回復期リハビリ病棟に入院後180日以内に自宅やそれに準ずる施設に退院した患者が6割を超えないと、病院に支払われる報酬が大幅に減額される。病院はノルマを達成するために、治療途中の患者を自宅に帰さなければならない。そのためリハビリの期間は短くなり、治療半ばで中止させられる例も多い。中には点滴の管をつけたまま、自宅に退院させられる患者まで現れた。退院しても 「老老介護」 では、通院治療もままならない。

 そのうえ、慢性期のリハビリは介護保険のデイケアでやれといって、退院後の機能回復の機会を奪った。リハビリは患者の個別性に応じて行う専門的な医療であり、介護施設のデイケアなどでは対処できるものではないのだ。

 改善が目に見えないからといってリハビリを続けなければ致命的な機能低下が起こることを無視した日数制限の結果、寝たきりになった人が幾人いることか。残った機能の維持こそ命を救い社会復帰させる医療なのに。

 リハビリは単なる機能回復の訓練ではなく、社会復帰を含めた人間の尊厳を回復する医療なのである。患者や医師、リハビリ施設の職員たちから苦悩の声があがっても、厚労省は言を左右に、医師や病院の責任にして自分たちの非を認めない。脳卒中患者を抜き打ち的に狙った迫害、としか言いようがない。

 相次いだ制度の改悪によって、脳卒中の治療に熱心だった病院の収入は減り、重症の患者は初めから受け入れない傾向が生じた。そしてついには、最初に述べた患者の選別までが起こったのだ。

 これが 「文明国」 と称する日本の現状である。「すべての国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」 と定めた憲法25条は、脳卒中患者には当てはまらないとでもいうのだろうか。

 リハビリをすれば社会復帰できたのに、寝たきりになった患者の人権はどうなるのか。最後の命綱を断ち切られて、命を落とした人に涙を注がないのか。この日本で、難民ではなく医療を奪われた棄民が発生したのだ。

 リハビリ医療の度重なる制度改悪は、最弱者である患者の最後の希望を打ち砕き、医師や療法士のやる気をなえさせ、病院を疲弊させた。

 医療は崩壊ではなく、破壊されたのだ。

 最弱者を狙い撃ちにするような非人間的な制度は、即刻撤廃するべきである。

 上記に関する当ブログ管理人の考察・結論は、下記の通りです。

(1)多田名誉教授は、下記のような現在の医療行政の失政および医療制度改悪について鋭く指摘されています。

 (a) 医療費亡国論、小泉竹中構造改革、膨大な財政赤字 (官僚・与党議員等が何
  ら責任を取ろうとしない。反省・謝罪の弁も全くない!) に伴う財務省の財政
  再建至上主義 (財政再建原理主義) 等による 「医療費抑制・医師不足による医
  療崩壊・医療破壊 (特に、勤務医・病院)」


 (b) 「患者・高齢者・介護サービス利用者・障害者の視点」 より、「財政再建の視
  点」・「社会保障費削減の視点」・「医療費削減の視点」・「財務省の視点」・「厚生
  労働省の視点 (省益・局益)」・「診療報酬支払い側の視点」・「介護保険料の視
  点・市町村の視点」 等の方を重視してきた厚生労働省

 (c) 平均在院日数の呪縛

 (d) 2006年の診療報酬改定で導入された 「リハビリテーション算定日数制限」
  よび厚生労働省の見せかけの緩和策

 (e) 医療保険において、リハビリテーションを継続することにより 「状態の改善」
  が得られる場合しか算定を認めない厚生労働省
   (*) 「状態の維持」 および 「状態の低下傾向の可能な限りの抑制」 も重要であ
   り、このことは、症例によっては、「状態の改善」 と同等あるいはそれ以
   上に難しいタスクです。したがって、介護保険リハビリテーションでは
   困難 (平成21年度介護報酬改定で導入される短時間通所リハビリテーショ
   ンでも困難) であり、医療保険での集中的かつ濃厚なリハビリテーション
   が必要な場合が少なくありません。

 (f) 2008年10月に導入された 「障害者病棟からの脳卒中患者・認知症患者の排除」

 (g) 量的・質的に不充分な回復期リハビリテーション病棟、発症・手術・損傷か
  ら同病棟入院までの期間の制限 [2ヵ月以内 (一部、1ヵ月以内)] 、2008年10
  月から導入された 「患者選別」 を強要する同病棟への成果主義 [在宅復帰率等
  のアウトカム評価 (通常の成果主義は、プロセス評価が主)]

 (h) 医療療養病床の理不尽な医療区分の問題・不充分な診療報酬の問題

 (i) 量的・質的に不充分かつ経営的に不安定な介護保険施設

 (j) 不充分な在宅ケア体制

 (k) 要介護度の軽度化、介護給付費の抑制、老老介護・介護殺人・介護自殺・孤
  独死等の介護保険の構造的問題 (含、本来の理念 「介護の社会化」 の空疎化)

(2)我々リハビリテーション関係者も、多田名誉教授の忸怩たる思いと腹の底からの叫び・主張・提言を、真摯に受け止め、自らの力不足・努力不足・認識不足・行政へのアピール不足・厚生労働省の分断作戦によるリハビリテーション関連団体の分断・分裂等を深く反省しなければならないと思います。

(3)リハビリテーション (特に、診療報酬・介護報酬) において、下記のように、立場が違うと、それぞれの思惑が大分異なります。

 (a) リハビリテーション関連団体
  (1) 整形外科関連3団体 (日本整形外科学会・日本臨床整形外科学会・日本
    運動器リハビリテーション学会)、
  (2) 日本呼吸器学会・日本呼吸ケアリハビリテーション学会
  (3) 日本心臓リハビリテーション学会
  (4) リハビリテーション関連5団体 (日本リハビリテーション医学会・日本
    リハビリテーション病院・施設協会、日本理学療法士協会、日本作業
    療法士協会、日本言語聴覚士協会)

 (b) 各リハビリテーション・ステージ (急性期、回復期、維持期)

 (c) 各診療科 (整形外科、内科、小児科、脳神経外科・神経内科、呼吸器内科・呼
  吸器外科、循環器内科・心臓血管外科、リハビリテーション科、等)

 (d) 各職種 (医師、PT、OT、ST、あん摩マッサージ指圧師、看護師、准看護
  師、柔道整復師)

 (e) 医療機関 (大学病院等特定機能病院、大病院、中小病院、診療所。総合病院、
  専門病院、等)

 (f) 医療保険 [医療機関、(施術所、治療院、鍼灸院、鍼灸マッサージ院、整骨院、
  接骨院)]、介護保険 (介護保険施設・居宅サービス事業所)、障害者自立支援法

 (g) 民間医療機関、公的医療機関

(4)上記(3)の立場の違い・思惑の違いにつけ込んで、厚生労働省は分断作戦を敢行し、勝利を収めてきました。そしてそれが、多田名誉教授が嘆かれている診療報酬改悪・介護報酬改悪・医療制度改悪に繋がってきました。

 したがって、我々リハビリテーション関係者は、リハビリテーションの理念の原点に戻り、上記(3)の様々な立場を超えて、足並みを揃え、「患者さん・障害のある方」 の視点に立った行動をとり、以て、我々の使命・責務を果たす必要があると思います。
 また、リハビリテーション効果の更なるエビデンスを示していく責任もあると考えられます。

(5)以上、多田名誉教授がお書きになった文章 (脳卒中患者 リハビリ医療を奪われた 「棄民」) について論じました。

 多田名誉教授が指摘された様々な問題点を包含するリハビリテーションの現状を打破するためには、我々リハビリテーション関係者のみならず、厚生労働省とも足並みを揃える必要があり、行政・政治・マスメディア等を巻き込んだ包括的なアプローチが肝要と考えられます。

 そしてそれが、「医療難民 (特に、脳卒中、認知症)・救急難民・リハビリ難民・介護難民・障害者難民」 ならぬ 「医療棄民 (特に、脳卒中、認知症)・救急棄民・リハビリ棄民・介護棄民・障害者棄民」 の出現防止に繋がると考えられます。




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医療・介護の機能強化 (2012年度診療・介護報酬同時改定で体制構築)

 2012年度診療報酬・介護報酬同時改定における医療・介護の機能強化に関して、 厚生労働省保険局医療課の企画官が、医業経営セミナーで講演していますので紹介します (Japan Medicine 2009/3/4)。

●医療・介護の機能強化 2012年改定で体制構築

①厚生労働省保険局医療課の宇都宮啓企画官は2009年2月28日、北海道札幌市内で開催された日本医業経営コンサルタント協会の医業経営セミナーで講演し、社会保障国民会議の報告書にある医療・介護の機能評価については、「2012年の診療・介護報酬改定で大きな体制構築を行うことになる」 との見通しを示した。

②宇都宮氏は、昨年11月に出された社会保障国民会議の報告書に示された医療・介護の機能評価のシミュレーションについて、12年の診療報酬・介護報酬の同時改定で 「どこまで支援するか」 が課題になっているが、「内容が決まらなければ (12年の改定で) 支援のしようがない」 と指摘。
 例年は秋口から開催される社会保障審議会・医療部会が今年は時期を早めて2月26日に開催したのは 「早く開催して計画・プランを作り上げたい」 という意図だと説明した。

③その上で、「医療のプラン、介護のプランを検討して固めた上で、12年の同時改定で大きな体制構築を行うことになる」 との見通しを示した。

④また、宇都宮氏は、「社会保障費や医療費について、どの政党も削減をとなえられる状況ではないだろう」 との認識を示し、また同報告書の内容が 「高齢化社会を迎えるにあたって必要な体制をどう構築するかのシミュレーションである」 と指摘して、次期衆議院選挙の結果によって 「(取扱いが) 大きく左右されることはないだろう」 との見方を示した。

 上記に関する当ブログ管理人の考察・結論は、下記の通りです。

(1)上記①~③の通り、厚生労働省保険局医療課の宇都宮啓企画官は、「社会保障国民会議最終報告書 (2008/11/4) の 『医療・介護の機能評価のシミュレーション』 に基づいて、2012年度の診療報酬・介護報酬同時改定で大きな体制構築を行うことになる」 との見通しを示しています。

(2)最終報告書を、当ブログ管理人なりに解釈すると、医療・介護において、「財源」 「サービス提供体制」 の2つに集約されると思われます。

(3)医療・介護の財源として、公費負担 (税負担)・保険料負担 (医療保険・介護保険)・自己負担 (現在、1~3割負担) の3つが挙げられますが、最終報告書では、消費税アップを強調しています。

 但し、『二木立の医療経済・政策学関連ニューズレター (通巻53号)』 (2009/1/1) の 「インタビュー:医療立て直しの道筋は? 医療費抑制政策の転換へ 焦点は保険料の引き上げ」 において、日本福祉大学の二木教授は、上記の3つのうち、保険料の引き上げを主張しており、「サラリーマンの健康保険料 (事業主拠出分を含む) は国際的な水準と比べて低いために、引き上げ余地は大きい。国民健康保険も、高額所得者の保険料引き上げが必要だ」 と述べています。

 一方、以前の当ブログ記事 [『医療政策サミット2009 (日本医療政策機構)』・『「平成23年度からの消費税増税」 麻生政権の新たな火種』] で述べていますが、時の政府が、国民に消費税増税をお願いする時には、充分な景気回復税制の抜本的改革膨大な税金の無駄使いの抜本的是正 (伏魔殿化した特別会計、官僚の天下り・渡りの根絶、天下り用の無駄な公益法人や補助金の根絶、国会議員の定数削減・歳費の削減、国家公務員人件費の削減、無駄な公共事業の根絶等)、道路特定財源の完全なる一般財源化年金問題の早期完全解決等の達成または実行の約束を、明確化・数値化して、国民の納得を得る努力をすべきです。

(4)一方、医療・介護サービス提供体制については、最終報告書にて、厚生労働省は下記のような 「B2シナリオ」 を強調しています。

●B2シナリオ (選択と集中による改革:大胆な改革シナリオ) (2025年)

 1.急性期病床:病床数67万床 (重点化)
         入院患者数47万人
         平均在院日数10日 (短縮)
         人員数100%増 (増員)

 2.亜急性期・回復期等病床:病床数44万床
               入院患者数40万人
               平均在院日数60日 (短縮)
               人員数 (コメディカルを中心に30%増員)

 3.長期療養 (医療療養) 病床:病床数23.4万床
                入院患者数23万人
                平均在院日数154日

 4.介護施設:入所者数149万人 (特養78万人、老健72万人)

 5.居住系施設:入所者数68万人 (特定施設33万人、グループホーム35万人)

 6.在宅介護:利用者数429万人

 しかしながら、「機能分化と連携、選択と集中、集約化・重点化・拠点化」 により、医療に関する人材・財源を急性期病床に集中投入するのは、基本的には妥当なのですが、そのために、急性期後を受け持つ 「亜急性期・回復期等病床、長期療養 (医療療養) 病床、介護施設、在宅医療」 に対する人員・財源が不足し、不充分な医療サービス体制となれば、急性期病床を後方支援できず、結果的に、救急・急性期医療が崩壊する可能性があります。そして、医療難民・救急難民・脳卒中難民・認知症難民・リハビリ難民・介護難民等が増大すると考えられます。

 したがって、上記の問題を防止するためには、バランスのとれた医療・介護サービス提供体制・連携体制を、綿密なプランのもと、地域事情に合わせて (全国一律ではなく) 構築することが肝要と考えられます。

(5)以上、厚生労働省保険局医療課の宇都宮啓企画官の 「医療・介護の機能強化 (2012年診療報酬・介護報酬同時改定で体制構築)」 に関する講演について論じました。

 上記④の通り、同企画官が、「社会保障費や医療費について、どの政党も削減をとなえられる状況ではないだろう」 との認識を示し、また社会保障国民会議最終報告書の内容が 「高齢化社会を迎えるにあたって必要な体制をどう構築するかのシミュレーションである」 と指摘して、次期衆議院選挙の結果によって 「(取扱いが) 大きく左右されることはないだろう」 との見方を示しています。

 しかしながら、政権交代によっては、同報告書 (特に、医療・介護シミュレーション) の取扱いが相当左右されるのではないかと推察されます。
 但し、現在、西松建設の違法献金問題 [民主党の小沢代表ならびに複数の自民党議員 (特に二階経済産業大臣)] にて、政治が混乱に陥っており、解散・総選挙も含めて、不透明な状況です。
 可及的速やかに、上記混乱状態から脱出し、早期に解散・総選挙を施行して、国民の信任を得た強力な内閣にて、景気回復・社会保障等の多くの懸案を解決して頂きたいと思います。




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医療の提供体制の現状と課題 (講演:厚生労働省保険局医療課長)

 平成21年2月15日開催の 「全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会 第13回研究大会 in 大阪」 にて、厚生労働省保険局医療課長が基調講演 「医療の提供体制の現状と課題」 をされていますので、その紹介記事と講演抄録を紹介します。

(資料1) 回復期リハのより良い質の評価指標を検討-中医協検証部会で議論へ [Japan Medicine (2009/2/18)]

①全国回復期リハ協・第13回研究大会2日目の15日、厚生労働省保険局医療課の佐藤敏信課長は、2008年度診療報酬改定で試行導入された回復期リハビリテーション病棟における質の評価の在り方について、中医協診療報酬改定検証部会でより良い質の評価指標などについて検討していく考えを示した。

②08年度改定で在宅復帰率と日常生活機能評価の改善、重症患者の受け入れの割合が指標として使用されている。

③佐藤課長は、回復期リハ病棟の質の評価は試行的であり、検証部会を通じて評価指標の在り方や、評価区分 (重症患者回復病棟加算) も唯一の設定でいいのかなど、今後、議論してもらいたいとし、「質のより良い評価指標を導入することで、医療現場の努力が報われるようにしたい」 と語った。

④このほか、医療分野の問題や社会保障費の問題などについて解説した。


(資料2) 医療の提供体制の現状と課題 (講演抄録)

(a)我が国の医療提供体制は、医療法と国民皆保険制度の下で整備が進められ、WHO等の評価においても、世界最高のシステムとの評価を得るに至っている。
 しかしながら、
  ①諸外国と比較して人口当たりの病床数が多く、医療機能の分化・連携が十分
   に進んでいない。
  ②病院当たりの医療従事者数が少ない。
  ③平均在院日数が長い。
  ④患者・国民への医療に関する情報提供が不十分。

などの指摘もある。

(b)こうした背景の中で、一昨年夏、健康保険法及び医療法、さらにその関連で医師法、歯科医師法など計7本の法律が改正された。
 その主なポイントは次の通りである。
  ①患者・国民の選択の支援に資する医療に関する情報提供の推進
  ②医療計画制度の見直しなどを通じた医療機能の分化・連携の推進
  ③地域や診療科における医師不足問題への対応
  ④医療安全対策の推進
  ⑤医療従事者の資質の向上


(c)上記(b)の項目のうち、病院の機能分化に直接関係すると思われるものは、(b)-②であり、間接的に(b)-①である。

(d)まず、(b)-①は、医療機関に関する情報提供を通じて患者が適切に医療機関を選択できるよう支援し、ひいては医療機関の機能分化を図ろうとするものである。
 内容的には2つの事項からなっている。すなわち、「都道府県を通じた医療情報の提供制度の創設」 と 「医療に関する広告規制制度の見直し」 である。
 後者は 「これまでのような原則禁止から、客観的な事実については広告可能な範囲を大幅に拡大」 するものである。
 前者は、広告のような医療機関の任意の情報提供のみでなく、一定の情報については医療機関から都道府県に報告することを義務づけ、これを都道府県が比較可能な形式に整理し、インターネット等で公表する仕組みである。

(e)次に(b)-②の医療計画制度は、昭和60年以来、主として医療圏ごとの総病床数の規制としての役割を果たしてきたが、医療機能の分化・連携を推進するという役割を追加することとしたものである。
 具体的には、脳卒中、小児医療など主要な疾病・事業 (4疾病5事業) について、都道府県ごとに医療の連携体制を構築することとし、併せてその結果を計画に書き込むこととしたものである。

(f)今回の改正がきっかけとなって、医療機関はあらたな競争と淘汰の時代に突入するであろう。
 一方、厚生行政全体を眺めると、医療費適正化計画、介護保険事業支援計画、さらには、がん対策推進計画、地域ケア整備構想、健康増進計画など、各種計画も同時進行している。今後はこうした動きも注視していく必要があろう。
 また、診療報酬についても、こうした動きを踏まえて適宜・適切に評価していくこととなろう。


 上記に関する当ブログ管理人の考察・結論は、下記の通りです。

(1)資料1の①~③によると、平成20年度診療報酬改定で試行導入された回復期リハビリテーション病棟に対する成果主義 (回復期リハビリテーション病棟入院料1における在宅等復帰率・重症患者受け入れ率、および重症患者回復病棟加算) に関しては、回復期リハビリテーション病棟における質の評価の在り方について、中医協診療報酬改定検証部会で、より良い質の評価指標などについて検討していく考えを示しました。

 一つ気になったのが、「評価区分 (重症患者回復病棟加算) も唯一の設定でいいのか」 という発言です。詳細は、検証部会の議論を待ちたいと思います。

 但し、一般的に、医療の成果主義は、プロセス評価が基本です。
 回復期リハビリテーション病棟に対する成果主義にアウトカム評価が用いられているのは大問題です。
 アウトカム評価は、「医療の不確実性」 を考えると、基本的に医療への適用は差し控えるべきです。
 特に、リハビリテーションの分野においては、在宅等復帰率や患者回復度は、患者の原疾患の重症度、合併症・併存疾患のみならず、病前ADL、介護者因子、環境要因等の多因子に大きく左右されるため、アウトカム評価の適用は控えるべきと思います。
 したがって、回復期リハビリテーション病棟に対する成果主義の指標としては、アウトカム評価ではなく、プロセス評価・ストラクチャー評価に重きを置くべきと考えられます。

(2)資料1の④については、資料2が参考になります。
 資料2の(a)は、これまでの使い古された (これからも使い回される) 厚生労働省の主張であり、しかも、まやかしの論理も含まれています。
 例えば、(a)-①については、米国にはナーシングホーム (療養病床かそれ以上) が整備されており、その病床数を入れると日米の人口当たりの病床数の差はなくなります。
 また、(a)-②については、医療費抑制のため、政府・厚生労働省の方が、病院当たりの医療従事者を増やしていないためです。これが、医師・看護師等の過重負担・疲弊に繋がっています。
 さらに、(a)-③の平均在院日数については、これも統計のマジックで、欧米の平均在院日数は純粋に急性期病院のみの数字で、日本の療養病床に相当するナーシングホーム等が計算から除外されているので、必然的に、日本の平均在院日数は、他国と比べて長くなるのは当然です。

 これらの厚生労働省の主張の裏には、「急性期病院を二段階に分けて、高次急性期拠点病院に集約・統合再編成していくための布石 (民間中小急性期病院は亜急性期以降へ誘導)」 という陰謀・謀略が隠れています。
 医療マンパワーを高度急性期総合病院・救命救急センターに集約化・重点化するのは、ある意味では妥当ですが、その後方病院の医療パワーが落ちれば、患者、特に重症患者は、高度急性期総合病院から後方病院へ転院できず、長期入院化するという矛盾が生じます。
 やはり、医療費の増額、医師・看護師・コメディカルおよびそのサポーターの増員が必要です。

 上記の厚生労働省の旧態依然とした論法に則り、これからも医療提供体制の構築・診療報酬改定がなされるかと思うと、我々医療現場はモチベーションが益々下がると思います。
 机上のまやかしの理論 (空論) ではなく、斬新な発想の転換が望まれます。

(3)資料2の(a)が、資料2-(b)~(e)に繋がり、そしてそれが、資料2の(f)の 「医療機関の淘汰」・「医療費の適正化=削減」・「介護保険制度の改悪」・「がん対策推進計画・地域ケア整備構想・健康増進計画の計画倒れ・構想倒れ」・「診療報酬改定=改悪」 をもたらし、「医療崩壊」・「医療破壊」 という負のスパイラルが止まらないという最悪の結果を生じさせます。

(4)下記のことは、当ブログにて、何回も何回も繰り返して主張してきたことですが、何回言っても言い足りません!

 厚生労働省は、財務省の財政再建・医療費削減の圧力に屈し、これまで様々な①医療制度改悪、②診療報酬改定 (改悪)、③介護報酬改定・改悪 [要介護認定の厳格化 (平成21年4月より更なる改悪!)、介護給付費の抑制 (平成21年度介護報酬改定における改定率プラス3%では不足!)]、④悪名高き障害者自立支援法 (応益負担→応能負担等、抜本的見直しが実現?)、⑤悪名高き後期高齢者医療制度の導入 (政権与党が約束した抜本的見直しは遅々として進まず) 等を行ってきました。

 厚生労働省は、日頃は、「患者・高齢者・介護サービス利用者・障害者の視点を一番大事にします」 と言っておきながら、肝心な時には、「財政再建の視点」・「社会保障費削減の視点」・「医療費削減の視点」・「財務省の視点」・「厚生労働省の視点 (省益・局益)」・「診療報酬支払い側の視点」・「介護保険料の視点・市町村の視点」の方を重視してきました。

 この自己矛盾を打破し、国民の安心・安全・納得・満足のために、国民本位の社会保障政策、医療・介護・福祉政策、診療報酬改定、介護報酬改定、障害のある方ならびに高齢者に対する施策を施行することを切望します。

 また、「まやかしのエビデンス」 ではなく、現場の医療介護福祉従事者・患者・介護サービス利用者・障害のある方・高齢者・家族・地域住民等が納得する 「真のエビデンス」 に基づく診療報酬改定・介護報酬改定・障害者自立支援法見直し等を行って頂きたいと思います。

【関連記事】
 ◎地域包括ケアの実現に向けて (講演:厚生労働省・宮島老健局長)
 ◎厚生労働省のキャッチフレーズ及び行動指針の策定について
 ◎回復期リハビリ病棟への成果主義の導入 (厚労省保険局医療課の見解)
 ◎水面下で決まった2008年度診療報酬改定の改定率





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急性期・亜急性期のリハビリ料の出来高払いの既定事実化 (二木教授)

 以前の当ブログ記事 (リハビリテーション診療報酬の 「包括化」 導入の可能性) においてリハビリテーション診療報酬の 「包括化」 導入の可能性について論じました。

 『二木立の医療経済・政策学関連ニューズレター (通巻54号)』に転載された、日本福祉大学の二木教授の対談記事 「対談:リハビリテーションの制度改革と診療報酬」 において、リハビリテーション診療報酬における 「制限診療の導入」 および 「急性期・亜急性期のリハビリテーション料の出来高払いの既定事実化」 について述べられていますので紹介します。

1.リハビリテーション診療報酬における 「制限診療の導入」
 ①2002年に患者一人当たりの合計回数の上限が導入。
  ◎当時は回復期リハビリテーション病棟でも、6単位まで
 ②2006年にリハビリテーション算定日数の上限が導入。
  ◎急性期~亜急性期 (回復期) リハビリテーションは医療保険で給付、維持期
   リハビリテーションは介護保険で給付という、厚生労働省の 「医療保険の純
   化」
路線。

2.リハビリテーション診療報酬における 「急性期・亜急性期のリハビリテーション
 料の出来高払いの既定事実化」

 私は、介護保険がスタートした2000年の段階では、中長期的には、リハ医療は回復期リハ病棟を含めて、包括払いに組み込まれるようになると予測していました。
 しかし、2003年3月に閣議決定された 「医療制度改革基本方針」 で、「診療報酬体系については、①医療技術の適正な評価 [ドクターフィー的要素 (注1)]、②医療機関のコストや機能等を適切に反映した総合的な評価 [ホスピタルフィー的要素 (注1)]、③患者の視点の重視等の基本的考え方に立って見直しを進める」 とされたこと、および同年から大学病院等の特定機能病院を対象にして導入されたDPC包括評価の対象からリハ料が除外されたことを総合判断して、急性期・亜急性期医療 (回復期リハ病棟も含む) のリハ料は、今後も出来高払いであり続けると考えるようになりました。
 「医療制度改革基本方針」では、「ドクターフィー的要素」 の範囲は明示されていませんでしたが、DPC包括評価の実績から、それには医師技術料だけでなく、リハ料も含まれる=出来高払いとされると判断したわけです。
 その後の3回の診療報酬改定 (2004、2006、2008年) により、急性期・亜急性期のリハ料は包括払いの対象に含めないとの方針は、既定事実化あるいは既得権化したと思います。

(注1) ドクターフィー的要素、ホスピタルフィー的要素
 これらの表現は、坂口力氏 (元厚生労働大臣) が2002年9月に 「診療報酬体系の見直しについての改革私案」 を発表したときに用いられ、「診療報酬体系を医療技術の評価 (ドクターズフィー的要素) と医療機関の運営コストを反映した評価 (ホスピタルフィー的要素) に再編」 することを提起した。[『医療改革と病院』 (勁草書房、2004)]。


 上記に関する当ブログ管理人の考察・結論は、下記の通りです。

(1)上記1の通り、リハビリテーション診療報酬においては、「患者一人当たり合計回数の上限の導入」・「リハビリテーション算定日数上限の導入」 という 「制限医療」 が既に導入されていることを厳粛に受け止める必要があります。

 リハビリテーション医療の分野は、他の医療分野に比して、医療費等への影響が比較的小さい領域ということで、これまでの診療報酬改定において、厚生労働省による実験場的役割 (制限医療の導入、疾患別リハビリテーション体系化、回復期リハビリテーション病棟への成果主義の導入) を果たしていました。

 しかしながら、リハビリテーション従事者・現場の立場としては、短期間に制度がガラッと変わるので、辟易の極致です!!
 次期改定はリハビリテーションの何がターゲットになるのかと考えると憂鬱になります。(厚生労働省の机上の理論に振り回されるのは、もう懲り懲りです・・・)。[今日はちょっと情緒不安定です (苦笑)]。

(2)上記2の 「診療報酬における急性期・亜急性期のリハビリテーション料の出来高払い」 に関しては、二木先生が仰るとおり、これまでの診療報酬改定の歴史・経緯を見ても、「急性期・亜急性期医療 (回復期リハビリテーション病棟も含む) のリハビリテーション料は、今後も出来高払いであり続ける」・「急性期・亜急性期のリハビリテーション料は包括払いの対象に含めないとの方針は、既定事実化あるいは既得権化した」 と思われます。

 厚生労働省DPC研究班・主任研究者の松田教授 (産業医科大学) も、「制度設計は厚労省、中医協が行うことだ」 と前置きした上で、DPCについては、傷病名が優先される分類であるため、疾病横断的なリハビリテーションを包括化していくことは難しく、出来高範囲に置く方が妥当との見方を示しています。[Japan Medicine (2007/6/11)]。

(3)一方、全国医学部長病院長会議は、前回の平成20年度診療報酬改定の際に、次のような 「超急性期リハビリテーションにて急性期加算の設定」 を要望していました。
 「大学病院における超急性期リハビリテーションは、ベッドサイドでの訓練の必要性や、患者にとっては突然の機能喪失に対するモチベーションの低下など多くの困難を伴うが、発病後2週間で主病名の治療以外に適切なリハビリテーションを行うことが重要であるということで、同会議・DPC検討委員会では、大学病院の超急性期リハビリテーションの提供を促進するため、個別のリハビリテーション点数だけでなく、発病後2週間以内のリハビリテーションに急性期加算を設定すべきという要望を出すことになった」。

 その要望を受けて、前回の平成20年度診療報酬において、次のような 幻の急性期リハビリテーション料包括化計画」 が考えられていたそうです。 [「医療経営Phase3 (フェイズ・スリー)」 (平成19年12月号)]。
●急性期リハビリテーション料の新設
 リハビリテーションは発症初期から開始することが重要であり、平成18年度診療報酬改定でも急性期・回復期のリハビリを評価している。
 急性期・回復期のリハビリは、発症直後から関節可動域訓練などを開始することが重要視されているが、急性期は臥床したままで、リハビリの専門病院に転院した後、または回復期リハビリ病棟に転棟した後に、リハビリを開始する事例も多い。
 この場合、リハビリを開始する時点で既に回復が困難なレベルにまで拘縮が進んでいるため、回復期リハビリが充分な効果を発揮できない事例があることも、厚労省は把握している。
 これらをもとに同省では、発症直後から何らかのリハビリを開始することを評価した点数を設定することを検討している。
 具体的には、「1日につき150点の急性期リハビリテーション加算を新設する」 意向だ。
 算定条件としては、
  ①リハビリを必要と認める患者に対して発症直後から2週間までの間に、
   医師の指示の下、看護師 (准看護師を含む)、または理学療法士が関節
   可動域訓練などを実施した場合に、入院基本料に加算できる。
  ②対象者を疾患別リハビリの対象患者に限定する。
  ③疾患別リハビリ料とは併算不可とする。
などが考えられている。
 財政負担は、年間16億円程度と試算されている。

 また、次期衆議院総選挙のマニフェストの基になる 「民主党 INDEX 2008」 の 「厚生」 の章26ページに下記の記載があります。
●包括払い制度の推進
 超急性期・回復期・維持期リハビリテーションについては、その重要性を考慮し、当面は出来高払い制度としますが、スタッフの充実度および成果を検証し、将来的には包括払い制度に組込みます。

(4)以上、次期平成22年度診療報酬改定における急性期リハビリテーション料の 「包括化およびセラピスト以外の代替有資格者 (看護職員) の算定可能化」 の導入の可能性は完全には否定できませんが、基本的には、二木教授が仰るとおり、「急性期・亜急性期医療 (回復期リハビリテーション病棟も含む) のリハビリテーション料は、今後も出来高払いであり続ける」・「急性期・亜急性期のリハビリテーション料は包括払いの対象に含めないとの方針は、既定事実化あるいは既得権化した」 と思われます。

 しかしながら、DPC対象病院に限らず、急性期・亜急性期のリハビリテーション料において、「ドクターフィー (医師技術料) あるいはドクターフィー的要素 (コメディカル技術料)」 と 「ホスピタルフィー」 の考え方が、導入される可能性も否めません。

 急性期・亜急性期のリハビリテーション料の出来高制度を守るためにも、以前の当ブログ記事 (リハビリテーション診療報酬における 「医師の技術料」 (政府見解)疾患別リハビリテーションにおける専任医師の人員基準リハビリ医療における 「医師および疾患別リハビリ専任医師」 の責務) で論じたように、リハビリテーション医療における医師および疾患別リハビリテーション専任医師の関与度 (特に、リハビリテーション適応判定、定期的なリハビリテーション治療効果判定、原疾患・合併症・併存疾患の医学的コントロールならびにリハビリテーション・リスク管理等の責務) をより高め、且つ、セラピストのスキルアップおよび多専門職種による徹底したチーム・アプローチによる、リハビリテーション治療効果の更なる向上を図る必要があります。

 そして、リハビリテーション医療の効率化と質の管理、リハビリテーション成果 [アウトカム評価は、患者・家族要因、環境要因、社会的要因等に左右されるため、「プロセス評価」 および人員基準等の一部のストラクチャー評価がベター] のエビデンスを示していく必要があると思います。

【関連記事】
 ◎リハビリテーション診療報酬における 「医師の技術料」 (政府見解)
 ◎疾患別リハビリテーションにおける専任医師の人員基準
 ◎リハビリ医療における 「医師および疾患別リハビリ専任医師」 の責務
 ◎リハビリテーション診療報酬の 「包括化」 導入の可能性)




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リハビリテーション診療報酬の 「包括化」 導入の可能性

 以前、当ブログに掲載した記事
  ◎リハビリテーション診療報酬における 「医師の技術料」 (政府見解)
  ◎疾患別リハビリテーションにおける専任医師の人員基準
  ◎リハビリ医療における 「医師および疾患別リハビリ専任医師」 の責務
において言及したリハビリテーション診療報酬の 「包括化」 導入の可能性について考察したいと思います。

(資料1) 超急性期リハビリテーションで急性期加算の設定を要望
 全国医学部長病院長会議 (平成19年5月18日) において、平成20年度診療報酬改定に対する要望について討議が行われた。
 大学病院における超急性期リハビリテーションは、ベッドサイドでの訓練の必要性や、患者にとっては突然の機能喪失に対するモチベーションの低下など多くの困難を伴うが、発病後2週間で主病名の治療以外に適切なリハビリテーションを行うことが重要であるということで、同会議・DPC検討委員会では、大学病院の超急性期リハビリテーションの提供を促進するため、個別のリハビリテーション点数だけでなく発病後2週間以内のリハビリテーションに急性期加算を設定すべきという要望を出すことになった。

(資料2) 「医療経営Phase3 (フェイズ・スリー)」 (平成19年12月号) の中の記事 (霞が関ズームアップ「平成20年度診療報酬改定の評価項目が浮上」) において、下記の 「急性期リハビリテーション料の新設」 に関する予測記事が掲載されたが、結局、平成20年度診療報酬改定での導入は見送られた。
【急性期リハビリテーション料の新設】
 リハビリテーションは発症初期から開始することが重要であり、平成18年度診療報酬改定でも急性期・回復期のリハビリを評価している。
 急性期・回復期のリハビリは、発症直後から関節可動域訓練などを開始することが重要視されているが、急性期は臥床したままで、リハビリの専門病院に転院した後、または回復期リハビリ病棟に転棟した後に、リハビリを開始する事例も多い。
 この場合、リハビリを開始する時点で既に回復が困難なレベルにまで拘縮が進んでいるため、回復期リハビリが充分な効果を発揮できない事例があることも、厚労省は把握している。
 これらをもとに同省では、発症直後から何らかのリハビリを開始することを評価した点数を設定することを検討している。
 具体的には、「1日につき150点の急性期リハビリテーション加算を新設する」 意向だ。
 算定条件としては、
  ①リハビリを必要と認める患者に対して発症直後から2週間までの間に、
   医師の指示の下、看護師 (准看護師を含む)、または理学療法士が関節
   可動域訓練などを実施した場合に、入院基本料に加算できる。
  ②対象者を疾患別リハビリの対象患者に限定する。
  ③疾患別リハビリ料とは併算不可とする。
などが考えられている。
 財政負担は、年間16億円程度と試算されている。

(資料3) 次期衆議院総選挙のマニフェストの基になる 「民主党 INDEX 2008」 の 「厚生」 の章26ページに下記の記載がある。
【包括払い制度の推進】
 超急性期・回復期・維持期リハビリテーションについては、その重要性を考慮し、当面は出来高払い制度としますが、スタッフの充実度および成果を検証し、将来的には包括払い制度に組込みます。

(資料4) 疾病横断的なリハの包括化は難しい
     [厚生労働省DPC研究班・主任研究者 松田教授 (産業医科大学)]
 Japan Medicine (2007/6/11) によると、第44回日本リハビリテーション医学会学術集会 (平成19年6月6~8日) において 「DPC導入とリハビリテーション医療」 に関するシンポジウムが開催された。
 同シンポでは、厚労省がDPC参加への拡大方針を示すとともに、2010年度診療報酬改定での調整係数の廃止の動きから、現行体系で出来高払いのリハビリテーションが、今後、包括範囲に組み込まれる可能性を危ぐする意見もだされた。
 これに対して松田教授は、「制度設計は厚労省、中医協が行うことだ」 と前置きした上で、DPCについては、傷病名が優先される分類であるため、疾病横断的なリハビリテーションを包括化していくことは難しく、出来高範囲に置く方が妥当との見方を示した。
 また、聖隷浜松病院の高橋博達氏は、「同院のDPC適用患者の85%がリハビリ非提供だったことを考慮すると、リハビリを包括範囲に組み込む必要性がない」 との見方を示した。

(資料5) リハビリテーション医療のあり方 (日病協)
 日本病院会 (日病) など11の団体で構成する日本病院団体協議会 (日病協、議長:山本修三・日病会長)は、2008年12月25日、「医療・介護提供体制および診療報酬体系のあり方について」 (2008/12/19) という提言書を公表した。
 提言書は、入院医療、精神科医療、介護入所施設、外来診療、入院基本料、医療専門職の職掌、リハビリテーション、DPC、の8章より構成されている。その中で、リハビリテーション医療の部分を下記の通り。
(1) 急性期リハビリテーションについて
 リハビリテーションは発症後や手術後、提供が早期であればあるほど高い効果が期待できることは周知の事実である。また、手術によっては術後発生する可能性の高い障害を予防するための術前 (予防的) リハビリテーションも効果がある。
 これらのリハビリテーションはベッドサイドで行えるものが主体であり、専用の施設や病床は必ずしも必要としない。「施設基準」ではなく、「人員配置基準」 を定めることが効率的である。
 また、急性期リハビリテーションの提供については、高度な判断が必要となるため、リハビリテーション専門医の配置を高く評価すべきである。
(2) 回復期・亜急性期リハビリテーションについて
 回復期・亜急性期リハビリテーションについては、多くの面から制度改正が行われたため、施設整備は順調である。
 しかし、「回復度」 や 「一律の提供時間・期間」、「限られた疾病・部位」 など、まだ科学的根拠が確立されていないものまで診療報酬制度で規定されているため、利用者・国民の理解が得られない場合がある。今後は充分なデータに基づく制度設計が望まれる。
(3) 維持期リハビリテーションについて
 維持期リハビリテーションは、その必要性が高いことから、医療保険、介護保険を問わず両制度下で提供されるべきである。特に進行性疾患や重度障害に対しては、疾患治療の継続と同時に、医療保険下での長期的リハビリテーションが必要であり、本来、適応、期間等は医師の裁量に任せるべきものである。一方、介護保険下では、体力や機能の維持・向上、社会参加の促進、介護負担の軽減、等を通して自立生活を支援することが目標となる。しかしながら、現行の介護保険制度下では、その量・質とも十分とは言い難く、早急な改善が必要である。
 症状増悪期や廃用症候群に対しては、適切なリハビリテーションを医療・介護、在宅・施設を問わず、短期集中的に実施出来る環境・制度が求められる。


 資料1では、平成20年度診療報酬改定に対して、大学病院での超急性期リハビリテーションとして、個別のリハビリテーション点数だけでなく発病後2週間以内のリハビリテーションにおける急性期加算の要望が挙げられています。

 資料1の提案が、資料2の 「急性期リハビリテーション料の新設」 に繋がっていると考えられます。
 この 「急性期リハビリテーション料」 は、発症から2週間看護師・准看護師・理学療法士 (PT) がベッドサイドで関節可動域 (ROM) 訓練等を施行した場合、入院基本料に加算されます。但し、疾患別リハビリテーション料とは併算不可であり、いわゆる 「包括化」 された点数です。
 しかしながら、結局、平成20年度診療報酬改定での導入は見送られました。

 資料3では、民主党が、超急性期・回復期・維持期リハビリテーションの将来的な包括払い制度 (「包括化」) の導入を謳っています。但し、急性期は出来高制度を堅持するようです。

 資料4では、平成19年の時点において、DPCのキーマンである松田教授が、「DPCについては、傷病名が優先される分類であるため、疾病横断的なリハビリテーションを包括化していくことは難しく、出来高範囲に置く方が妥当」 と述べています。

 資料5の 「リハビリテーション医療のあり方」 (日病協) では、リハビリテーションの 「包括化」 については明確には記されていませんが、急性期リハビリテーションにおいて、ベッドサイドで行えるものが主体であり、専用の施設や病床は必ずしも必要とせず、「施設基準」 ではなく「人員配置基準」 を定めることが効率的であると記載しており、資料2の急性期リハビリテーション 「包括化」 のニュアンスが少し滲んでいます。

 以上の資料より、リハビリテーション診療報酬の 「包括化」 導入は、未だ未だみたいです。しかしながら、次回診療報酬改定にて、DPC対象病院である大学病院や高度急性期総合病院 (多数の病院が、セラピストの配置が元々少ない) での急性期リハビリテーション対策のため、資料2のような包括化された 「急性期リハビリテーション料」 が導入される可能性も捨て切れません。(一方、セラピストが充分配置されている病院もありますので、そういう病院は疾患別リハビリテーションを算定しても良いという、二本立てかも知れません)。

 今後の中医協とDPC評価分科会の動向を注視する必要があります。




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