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介護保険改革は 「家族の問題は遮断」 (厚労省老健局長)

 Japan Medicine (2008/9/19) にて、「NPO在宅ケアを支える診療所・市民全国ネットワーク第14回全国の集い」 (平成20年9月14~15日、京都市) に関する記事が掲載されています。

 その中で、9月14日のシンポジウム 「介護保険制度と家族」 に関する記事において興味深い部分がありましたので紹介します。

【実質は家族をアテにした制度】
 14日の 「介護保険制度と家族」 をテーマにしたシンポジウムには、厚生労働省の宮島俊彦老健局長が参加、今後の高齢化社会を支えるには基本的な医療モデルの転換を促す必要などを語った。
 このシンポジウムでは、社会学者の上野千鶴子・東京大大学院教授、立岩真也・立命館大大学院教授、黒岩卓夫・同ネットワーク会長らも参加、家族介護のとらえ方と地域のかかわり、地域医療との連携などを討論した。
 シンポジウムは、「おひとりさまの老後」 などの著書で、現行介護保険制度が家族をベースにしたものとなっているとの批判を続けている上野千鶴子氏など、「家族に依拠した制度」 への批判を中心に進んだ。
 これに対して宮島氏は、「制度構築時に家族の問題が論議され、運用での実態としてあるかもしれないが、制度自体には家族の関与は入っていない」 としたほか、今後の制度改革についても、「今後の高齢化での在宅ケアを考えるときには、家族の問題は遮断して考える必要がある」 とのスタンスを明確にした。


 上記の老健局長の言葉を聞いて、唖然とする介護従事者・介護サービス利用者・家族の方も多いと思います。「患者さん・介護サービス利用者・家族の視点」・「一般国民の視点」・「現場感覚」 が、為政者には大切なのですが・・・。

 「介護の社会化」 (「介護」 が 「個人・家族の責任」 から 「社会の責任」 として定着するプロセス) という 「錦の御旗?」 を掲げて、鳴り物入りで華々しく登場した 「介護保険制度」 も、いつのまにか、2回連続の介護報酬マイナス改定を経て、要介護度判定の厳格化もあり、「介護の社会化」 から程遠いものになってしまいました。
 即ち、現在は、「実質は家族をアテにした制度」 に他なりません。

 平成21年度介護報酬改定は、プラス3%の改定率 (うち、在宅分1.7%、施設分1.3%) のもと、下記の基本的な視点に立って施行されます (厚生労働省パブリックコメント参照)。

(1)介護従事者の人材確保・処遇改善
 介護従事者の離職率が高く、人材確保が困難である現状を改善し、質の高いサービスを安定的に提供するためには、介護従事者の処遇改善を進めるとともに、経営の効率化への努力を前提としつつ経営の安定化を図ることが必要である。
 このため、
  ①各サービスの機能や特性に応じ、夜勤業務など負担の大きな業務に対して
   的確に人員を確保する場合に対する評価
  ②介護従事者の能力に応じた給与を確保するための対応として、介護従事者
   の専門性等のキャリアに着目した評価
  ③介護従事者の賃金の地域差への対応として、介護報酬制度における地域差
   の勘案方法 (地域区分毎の単価設定) 等の見直し
を行う。
(2)医療との連携や認知症ケアの充実
①医療と介護の機能分化・連携の推進

 介護が必要となっても住み慣れた地域で自立した生活を続けることができるよう、医療から介護保険でのリハビリテーションに移行するにあたり、介護保険によるリハビリテーションの実施機関数やリハビリテーションの内容の現状等を踏まえ、医療と介護の継ぎ目のないサービスを効果的に利用できるようにする観点からの見直しを行う。
 また、利用者の状態に応じた訪問看護の充実を図る観点からの評価の見直しや、居宅介護支援における入院時や退院・退所時の評価を行う。
 介護療養型老人保健施設については、療養病床からの転換が円滑に進められるよう、実態に応じた適切な評価を行うという観点から評価の見直しを行う。
②認知症高齢者等の増加を踏まえた認知症ケアの推進
 「認知症の医療と生活の質を高める緊急プロジェクト」 報告を踏まえ、認知症高齢者等やその家族が住み慣れた地域での生活を継続できるようにするとともに、認知症ケアの質の向上を図るため、認知症行動・心理症状への緊急対応や若年性認知症の受け入れへの評価、認知症高齢者等へのリハビリテーションの対象拡大、専門的なケア提供体制に対する評価等を行う。
 また、居宅介護支援や訪問介護において、認知症高齢者等へのサービスの評価を行う。
(3)効率的なサービスの提供や新たなサービスの検証
①サービスの質を確保した上での効率的かつ適正なサービスの提供

 介護サービス事業の運営の効率化を図るため、サービスの質の確保を図りつつ、人員配置基準等の見直しを行う。例えば、訪問介護事業所のサービス提供責任者の常勤要件、夜間対応型訪問介護事業所のオペレーター資格要件、小規模多機能型居宅介護の夜勤体制要件、介護老人保健施設の支援相談員の常勤要件等必要な見直しを行う。
 また、介護保険制度の持続性の確保及び適切な利用者負担の観点から、居住系施設に入所している要介護者への居宅療養管理指導や介護保険施設における外泊時費用を適正化するなど、効率的かつ適正なサービス提供に向けた見直しを行う。
②平成18年度に新たに導入されたサービスの検証及び評価の見直し
 平成18年度に新たに導入された各種サービス (新予防給付・地域密着型サービス等) について、より多くの利用者に適切に利用されるよう、サービスに対する評価の算定状況、普及・定着の度合いや事業者の経営状況等を把握した上で、より適切な評価の在り方についての検討を行い、必要な見直しを行う。


 プラス3%の改定率では不充分であり、上記の基本的視点の達成は困難と考えられます。即ち、当分の間は未だ未だ、「家族をアテにした制度」 が続くと思われます。
 1日24時間、在宅における介護サービス利用者 (独居の方も含めて) や家族の方が、安心・安全・納得・満足した生活を送れるようになるのは、いつの日になることやら・・・。

 今回は、介護報酬改定が不充分ながらもプラス3%改定 (但し、在宅分1.7%、施設分1.3%) となりましたが、厚生労働省は、財務省の財政再建・社会保障費削減の圧力に屈し、これまで様々な介護保険制度改悪・介護報酬改定・改悪 (要介護認定の厳格化、介護給付費の抑制) を行ってきた歴史があります。
 厚生労働省は、日頃は、「患者さん・介護サービス利用者の視点を一番大事にします」 と言っておきながら、肝心な時には、「財政再建の視点」・「社会保障費削減の視点」・「財務省の視点」・「厚生労働省の視点 (省益・局益)」・「介護保険料の視点・市町村の視点」 の方を重視してきました。
 この自己矛盾を打破し、国民の安全・安心・納得・満足のために、国民本位の社会保障政策、医療・介護・福祉政策の施行を切望します。

【追記】
 厚生労働省が提唱している、今後の高齢化社会を支えるための基本的な 「医療モデルの転換」 に関しては、また別の機会に、詳述したいと思っています。




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