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国内の大規模感染拡大は確実 (新型インフルエンザ)

 前回の当ブログ記事 [新型インフルエンザ (秋冬の大流行に備え、肺炎球菌ワクチン接種を)] に引き続き、新型インフルエンザに関する Japan Medicine (2009/6/22) の記事を紹介します。

●東北大・押谷氏/新型インフル 「国内の大規模感染拡大は確
 実」 ハイリスク患者で死者の可能性も


①東北大大学院医学系研究科微生物学分野の押谷仁氏は13日、東京都内で開かれた第49回日本呼吸器学会学術講演会で 「インフルエンザA (H1N1) による新型インフルエンザの各国の状況と日本の課題」 と題して緊急報告し、「国内でも半年以内に大規模な感染拡大が確実に起こる」 と言明した。
 また喘息患者や妊婦への感染は、重症化する恐れがあるとの見方を紹介。
 感染の広がりとともに、リスク要因を抱えた患者が一定の割合で死亡する可能性が高いことも指摘した。

●入院患者の8割に喘息などのリスク保有

②押谷氏は米ニューヨーク市の最新データから、今回のインフルエンザの特徴を説明した。
 6月12日時点の入院患者数は567人で、6月2日と比べて 226人増加。
 死者は9人増えて16人となった。
 ICUでのケアを必要としているのは入院患者全体の21%で、mechanical ventilation (人工呼吸器) が必要な患者も10%に達していた。

③特に25~64歳のグループを見ると、入院患者は219人で10日前のデータから100人増加。
 それに伴い死者も10人にまで膨らんだ。
 0~4歳、65歳以上の層でも入院患者が大幅に増えたことなどから、押谷氏は 「重症化するのは必ずしも若い層ばかりでない」 と解説した。

④また入院患者の80%が喘息、妊娠、2歳以下、糖尿病などのリスク要因を保有しており、全死亡例のうち12例が65歳以下であったとするデータを報告。
 肥満を伴う患者が、ハイリスク群に入る可能性のあることも示唆した。

⑤押谷氏はさらに、WHO関係者からの情報を基に重症化例のほとんどがウイルス性肺炎であると推測。
 重症化の理由に関しては、ニューヨークで扱われた全剖検例の気道がウイルスで満たされていたことなどを踏まえ、「ウイルス増殖のコントロールを全くできていないというのが基本にある」 と述べた。

●抗インフル薬:重症化例での効果に疑問

⑥押谷氏は国内における新型インフルエンザについて、「明らかに感染拡大が続いており、それがいま段々と明らかになってきている」 との見方を示した。
 その根拠として疫学リンクのない例 (感染源が特定されていない例) が多数確認されていることを挙げ、「感染源が分からない人が出たということは当然、コミュニティーで感染が広がっているという兆候であると見るべき」 と強調した。

⑦こうした状況を踏まえ、国内でもコミュニティーで妊婦などにも感染が拡大すれば、一定の割合で重症化する患者が出現し、死亡例も出てくる状況は避けられないとの見解を提示。
 「こういうことが日本でもこれから起きてくる可能性が高い」 と述べた。

⑧また、国の行動計画で想定されている新型インフルエンザへの罹患率は人口の25% (約3,200万人) で、仮に致死率が0.4%にまで上がると12万人を超える死者が出るとの推計を紹介した。
 通常の季節性インフルエンザと同程度の致死率 (0.1~0.2%) であっても、死者の多くを子どもや50代までの成人が占める状況になりうることから、「社会的なインパクトが全く違う形で出てくる」 と見通した。

⑨重症化例に対する抗インフルエンザ薬治療に関しては、「ウイルス性肺炎を起こしてウイルスの増殖が全く抑えられないような症例にタミフル、リレンザを使っても効くとは思えないところがある」 と発言。
 早期からウイルス増殖をコントロールする対策が今後の課題になるとした。

●10月にも国内第2波か

⑩このほか重症化例を受け入れる国内医療体制に懸念を表明。
 「ICUが全くない地域もあるという今の医療体制の中で、こういう患者が多発した場合はどうするのか」 と訴えた。
 押谷氏によると、新型インフルエンザへの対策が世界で最も進んでいるとされるニューヨークでさえも、罹患率5%の段階で医療機関にかなりの混乱が生じているという。

⑪押谷氏は、WHOによる警戒レベル 「フェーズ6」 の宣言を、「世界中にインフルエンザウイルスが大規模に広がって非常に大きな被害が起こる可能性があるということ」 と説明。
 季節性インフルエンザとは異なる新型であると世界に強く警告するために、WHOが宣言を決断したとの認識を示した。

⑫WHOが現在のパンデミックを 「モデレート」 と表現したことに関しては、新型インフルエンザによる致死率が、季節性インフルエンザ時の0.1%程度からスペインインフルエンザ時の2%の間に該当すると判断しているためだと解説した。

⑬世界的に感染が拡大している状況については、「いまわれわれが見ているのは本当にごく初期のパンデミックで、本格的なインフルエンザシーズンは地球上のどこも体験していない」 とし、これから冬を迎える南半球を注視する姿勢を見せた。

⑭特にオーストラリアでは急速に感染が広まっているとの認識を示し、このまま一気にパンデミックに突入すれば東南アジアにも拡大し得るとの見方を披露。
 「そうなると日本は全く感染者の流入を止められない」 とし、場合によっては国内流行の「第2波」 を10~11月に迎える可能性も十分に考えられるとした。

(1)前回の当ブログ記事 [新型インフルエンザ (秋冬の大流行に備え、肺炎球菌ワクチン接種を)] で紹介しました 「菅谷氏 (神奈川県警友会けいゆう病院小児科部長) 見解」 と今回の 「押谷氏 (東北大学大学院医学系研究科微生物学分野教授) 見解」 (上記②) の一致点は、「重症化症例に対する人工呼吸器の必要性」 です。

 現在の日本の医療体制では、人工呼吸器の絶対数が不足していると考えられ、また、上記②・⑩の通り、必要な集中治療室 (ICU) の数も不充分と考えられます。

 新型インフルエンザの今年の秋冬における大流行に向けて、人工呼吸器およびICUの早急な整備が望まれます。

(2)「菅谷氏見解」 では、新型インフルエンザの死亡原因のほとんどは、細菌性肺炎とされています。一方、「押谷氏見解」 では、上記⑤の通り、WHO関係者からの情報を基に重症化例のほとんどがウイルス性肺炎であると推測しており、「ウイルス増殖のコントロールを全くできていないというのが基本にある」 と述べています。

 さらに、「押谷氏見解」 では、上記⑨の通り、重症化例に対する抗インフルエンザ薬治療に関しては、「ウイルス性肺炎を起こしてウイルスの増殖が全く抑えられないような症例にタミフル、リレンザを使っても効くとは思えないところがあり、早期からウイルス増殖をコントロールする対策が今後の課題になる」 と述べられています。

 スペイン風邪や鳥インフルエンザによる死亡原因として、サイトカイン・ストーム説 [サイトカインの過剰産生:サイトカインは免疫系による感染症への防御反応として産生されるが、それが過剰なレベルになると気道閉塞や多臓器不全を引き起こす (アレルギー反応と似ている)。これらの疾患では免疫系の活発な反応がサイトカインの過剰産生につながるため、若くて健康な人がかえって罹患しやすいと考えられる] も唱えられており、新型インフルエンザの死亡原因の早急な特定・解明が重要と考えられます。

(3)両者の見解より、現時点では、「肺炎球菌ワクチン」 (特に、高齢者) ならびに 「新型インフルエンザワクチン」 の両方の接種が必要と考えられます。

 しかしながら、共同通信 (2009/6/19) の下記の記事を読むと、不安に駆られます。
 政府・厚生労働省の早急かつ周到な新型インフルエンザ対策が望まれます。

ワクチン製造7月中旬から 新型インフルで、厚労省
 
 厚生労働省は19日、新型インフルエンザワクチンの製造を7月中旬から始めると発表した。
 政府の新型インフルエンザ対策本部専門家諮問委員会 (尾身茂委員長) から 「季節性インフルエンザワクチンの製造を中止し、新型に切り替えるのが適当」 との答申を受け、正式決定した。

 厚労省によると、新型ワクチンの原料となる種ウイルスが季節性のウイルスと同程度に増殖するとすれば、12月末までに約2,500万人分を製造可能。
 早ければ10月から接種できるようになる。
 7月中旬の切り替えまでに季節性のワクチンも昨年の約8割に当たる約4千万人分を確保できるという。

 厚労省は今後、新型用のワクチンをどのような人に優先的に接種するかの順位を検討する。




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これからの人工呼吸-非侵襲的陽圧換気療法 (NPPV)

 近年、急性期リハビリテーションの分野において、急性呼吸不全および慢性呼吸不全の急性増悪等に伴う人工呼吸器装着患者に対する呼吸リハビリテーションのニーズが益々高まっています。

 セラピストも、スキルアップ・キャリアアップのため、3学会合同呼吸療法認定士の資格取得の機運が高まっており、呼吸療法認定士に対する診療報酬上のインセンティブ [呼吸器リハビリテーション料 (Ⅰ) の施設基準] も既に導入されています。(将来的には、もう少し高いインセンティブの導入が望まれます)。
 
 一方、人工呼吸療法において、本邦では、気管切開人工呼吸 (TPPV:tracheostomy positive pressure ventilation) が主流ですが、欧米では超急性期のICUから在宅まで、非侵襲的陽圧換気療法 (NPPV:non-invasive positive pressure ventilation) が人工呼吸療法の主流になりつつあります。

 NPPVは、「患者にやさしい治療」 (下記の記事および下記の看護雑誌の 「紹介文」 参照) という大きなメリットがある反面、「医療者にとっては 『侵襲的』」 (排痰・気道クリアランス保持等、リスクマネジメントおよびケアに係るマンパワーやスキルを、TPPVよりも必要とする場合がある) というデメリットもあります (詳細は下記記事参照)。

 週刊医学界新聞 (2009/2/16) に、NPPVに関する記事が掲載されています。
 記事の全文・参考資料が、下記のウェブサイトにアップロードされていますので、興味ある方は、(長文ですが)、ご参照下さい。

座談会・これからの人工呼吸-非侵襲的陽圧換気療法NPPVの展望と課題


 この記事の中で、『JJNスペシャル 2008年09月号 (通常号) (No.83) 「NPPV (非侵襲的陽圧換気療法) のすべて-これからの人工呼吸」 (編者:石川悠加・国立病院機構八雲病院小児科医長)』という看護雑誌のことが、編者から下記のように紹介されています。

 欧米では超急性期のICUから在宅まで、人工呼吸療法の主流になりつつあるNPPVですが、わが国では評価をされながらも、爆発的に広がったとは言えない状況で推移しています。
 初めての導入がうまくいかずに、あきらめてしまった施設も少なくないのではないでしょうか。
 ひとつでも多くの施設に成功してほしいという願いを込めて発行しました。



 また、同看護雑誌の 「紹介文」 は、下記の通りです。

 NPPV (非侵襲的陽圧換気療法) は、マスクやマウスピースなど、非侵襲的なインターフェースを使った人工呼吸です。
 人工呼吸としての効果は、従来の人工呼吸と同じか、それ以上のことも。
 急性呼吸不全から慢性呼吸不全まで、適応がますます拡大し、すでに欧米での人工呼吸の主流はNPPVになっています。
 すぐ始められて、すぐ止められて、自己抜管の心配もなく、人工呼吸器関連肺炎のリスクが軽減。
 一番のメリットは、患者さんのQOLの維持・向上ができること。
 人工呼吸をしながら、食べることも、話すことも可能です。
 問題は、まだ使い慣れていない方法であること。
 どうすれば、効果的に、安全に、NPPVを活用できるか? それは、この本を読めばわかります。



 呼吸リハビリテーションに携わっている呼吸療法認定士 (特にNPPVの経験があまり深くない方) のみならず、呼吸療法認定士の資格取得を目指している方も含めて、各専門職種の方々等に、ご一読をお勧めします。(コメディカル目線の非常に分かり易い内容です)。
 また、下記の 「NPPVハンドブック」 (医学書院、2006) も推奨されます。


● 「NPPV (非侵襲的陽圧換気療法) のすべて-これからの人工呼吸
   JJNスペシャル 2008年09月号 (通常号) (No.83) [医学書院]
   (編者:石川悠加・国立病院機構八雲病院小児科医長)


「NPPVハンドブック」 (医学書院)

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(2006/05)
聖路加国際病院呼吸療法チーム

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