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ロコモティブ・シンドローム (日本人の40歳以上に推定約4,700万人)

(1)日本ロコモティブ・シンドローム研究会の定義によると、ロコモティブ・シンドローム (ロコモティブ症候群) とは、「運動器の障害のために要介護となる危険の高い状態」 をさします。(運動器とは、身体機能を担う筋・骨格・神経系の総称であり、筋肉、腱、靭帯、骨、関節、神経、脈管系など、身体運動の関わる組織・器官の機能的連合です)。

 ロコモティブ・シンドロームは、高齢社会・超高齢社会の運動器障害を考える上での重要なキーワードです。

 また、ロコモティブ・シンドロームは、診療報酬上の 「運動器リハビリテーション」・「運動器不安定症」、介護保険上の 「維持期 (運動器) リハビリテーション」、介護予防・地域包括支援上の運動器機能向上サービス等のベースとなるものです。

(2)m3.com (2009/7/1) に、ロコモティブ・シンドロームに関する興味深い記事 (提供:共同通信社) が掲載されていますので、下記に示します。

運動器症候群4,700万人 骨、関節から 「要介護」 に 東大グループが推定

 骨や関節などの障害で、要介護になったり危険性が高まったりする 「ロコモティブ (運動器) 症候群」 の原因となる病気がある日本人が、40歳以上で約4,700万人に達するとの推定結果を、吉村典子・東京大病院特任准教授らのグループが30日、発表した。

 原因として頻度が多いとされる変形性膝関節症と変形性腰椎症、骨粗鬆症の有病者数を推定。
 三つのいずれかを持つ人は男性の84%、女性の79%で、すべてを合併していると考えられる人も540万人に及んだ。

 研究グループは 「予防対策の確立は今後の課題だが、適切なトレーニングなどを心掛けてほしい」 としている。

 ロコモティブ症候群は日本整形外科学会が2007年に提唱。
 寝たきり予防などの観点から、骨や関節、筋肉などの運動器を全体としてとらえ、病気の予防と治療を総合して行おうとしている。

 研究グループは、日本の都市部、山村部、漁村を代表する住民の集団として、それぞれ東京都板橋区、和歌山県日高川町と太地町の計約3千人に協力してもらい、2005年からエックス線検査や骨密度測定などを実施。

 結果を国際的な進行度分類や学会の診断基準にあてはめ、自覚症状のない人も含めて有病率を算出。
 これを基に日本人全体の有病者数を推定した。

 三つの病気いずれかの有病率は年齢とともに上昇し、70歳以上では男女とも95%を超えた。
 病気別では男女とも変形性腰椎症の有病率が最も高いが、女性は男性に比べ変形性膝関節症や骨粗鬆症が高率だった。

 変形性膝関節症の人は、そうでない人に比べ軽い記憶障害など 「軽度認知障害」 の危険性が約1.8倍になるとの結果も示された。

(3)一方、Japan Medicine (2009/7/1) に、上記(1)・(2)に関連した運動器リハビリテーションに関する興味深い記事が掲載されていますので、下記に示します。

●運動器医療の改善を 自民・議連が申し入れ

 自民党の 「運動器の健康を増進させ健康寿命を延伸させる議員連盟」 (会長=尾辻秀久参院議員会長) は6月24日、運動器医療の改善に関する要請を取りまとめた。
 2010年度予算の概算要求や診療報酬改定に向けて、運動器医療の改善につながる施策を求めた。
 葉梨康弘事務局長 (衆院議員) が 25日、渡辺孝男厚生労働副大臣に提出した。

 要請では、運動器リハビリテーション制度の改善を訴えた。
 運動器リハビリの点数、制限日数の設定については、脳血管疾患等リハビリに比べてバランスを欠いていると指摘。
 極めて低いとされる消炎鎮痛処置の問題を含めて改善を求めた。
 さらに、地域で適切な運動器健診が実施できるよう求めたほか、専門医による指導管理の充実が不可欠とも申し入れた。

(4)以前の当ブログ記事 [運動器リハと脳血管リハとの格差是正を要望 (日本臨床整形外科学会)] でも述べましたが、運動器リハビリテーション料と脳血管疾患等リハビリテーション料との点数格差の原因として、次のようなことが挙げられます。

 ①医療機関によっては、運動器リハビリテーションにおいて少なからず指摘
  されている (脳血管疾患等リハビリテーションにおいても、医療機関によっ
  ては、指摘を受けていますが) 「セラピストおまかせリハビリテーション」
  即ち、医師およびリハビリテーション専任医師の関与が少ないリハビリテ
  ーション
という現実。(時に、「無診察リハビリテーション」 の実態)。

 ②施設基準におけるリハビリテーション専任医師の数の差異 【運動器リハビ
  リテーション料 (Ⅰ)
は、運動器リハビリテーションの経験を有する専任の
  常勤医師が1名以上勤務、一方、脳血管疾患等リハビリテーション料 (Ⅰ)
  は、専任の常勤医師が2名以上勤務していること [ただし、そのうち1名
  は、脳血管疾患等のリハビリテーション医療に関する3年以上の臨床経験
  又は脳血管疾患等のリハビリテーション医療に関する研修会、講習会の受
  講歴 (又は講師歴) を有すること]】。

 ③施設基準におけるセラピストの数の差異 【運動器リハビリテーション料
  (Ⅰ)
は、専従の常勤理学療法士 (PT) が2名以上勤務、又は、専従の常勤
  作業療法士 (OT) が2名以上勤務、又は、専従の常勤PT及び専従のOT
  が合せて2名以上勤務していること、一方、脳血管疾患等リハビリテーシ
  ョン料 (Ⅰ)
は、専従の常勤PT5名以上勤務&専従の常勤OTが3名以上
  勤務 [言語聴覚療法を行う場合は、専従の常勤言語聴覚士 (ST) が1名以
  上勤務]】。

 ④運動器リハビリテーション料 (Ⅰ) の施設基準における有資格者による代替
  者の問題
(当分の間、適切な運動器リハビリテーションに係る研修を修了し
  た看護師、准看護師、あん摩マッサージ指圧師又は柔道整復師が、専従の
  常勤職員として勤務している場合であって、運動器リハビリテーションの
  経験を有する医師の監督下に当該療法を実施する体制が確保されている場
  合に限り、理学療法士が勤務しているものとして届け出ることができる)。

 ⑤一部の医療機関にて、「処置 (介達牽引および消炎鎮痛等処置) と区別がつ
  かないような運動器リハビリテーション」
が行われている。また、定期的
  なリハビリテーション治療効果判定がなされていない (長期漫然としたリ
  ハビリテーション
)。

 ⑥一部の医療機関において、運動器リハビリテーションの算定日数上限が来
  るたびに、リセットを繰り返している。(例:変形性頸椎症→右肩関節周囲
  炎→左肩関節周囲炎→変形性腰椎症→右変形性膝関節症→左変形性膝関節
  症→腰部脊柱管狭窄症→左変形性股関節症→・・・・・・)。

  ●上記リセット問題に対して発出された厚労省疑義解釈。

(問)「膝の変形性関節症」 での運動器リハビリテーションが終了した日以降、「脊椎疾患」 や 「隣接関節疾患」 などで、新たな運動器リハビリテーション料を算定できるのか。

(答)脊椎疾患等の傷病が新たに発症したものであれば算定できる。なお、脊椎疾患等の慢性的な疾患については、膝変形性関節症に対するリハビリテーションを実施中に既に発症していた可能性が高いことから、発症日を十分に確認する必要がある。

 ⑦疾患別リハビリテーション料の施設基準の要件 [(a) リハビリテーションに
  関する記録 (医師の指示、実施時間、訓練内容、担当者等) は患者ごとに一
  元的に保管され、常に医療従事者により閲覧が可能であること。(b) 定期的
  に担当の多職種が参加するカンファレンスが開催されていること] が遵守さ
  れていない一部の医療機関。

 ⑧ 「運動器不安定症」 は、慢性期的、廃用症候群的、介護保険的、あるいは介
  護予防的な 「疾患名 (?)」 であり、医療保険・診療報酬には馴染まず、使用
  すべきではないと考えられている。(レセプト減額査定も少なくない)。

 上記の種々の課題が解決されない限り、運動器リハビリテーション料と脳血管疾患等リハビリテーション料との点数格差は解消されないと思われます。

(5)しかしながら、超高齢社会を迎え、寝たきり予防・介護予防のためにも、脳卒中対策に加えて、ロコモティブ・シンドロームに対する対策も重要と考えられます。

 メタボリックシンドロームと同様に、ロコモティブ・シンドロームの概念を、先ずは、一般の方々 (特に中高年の方々) に啓発・啓蒙し、そして、「運動器の障害のために要介護となる危険の高い状態」 を早期発見・早期介入して、極力、運動器能力・ADL能力の低下を防止することにより、特に高齢者の方々の 「健康寿命の延伸」・「QOL (生活の質・人生の質) の維持向上」 を図ることが肝要と考えられます。




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これからの人工呼吸-非侵襲的陽圧換気療法 (NPPV)

 近年、急性期リハビリテーションの分野において、急性呼吸不全および慢性呼吸不全の急性増悪等に伴う人工呼吸器装着患者に対する呼吸リハビリテーションのニーズが益々高まっています。

 セラピストも、スキルアップ・キャリアアップのため、3学会合同呼吸療法認定士の資格取得の機運が高まっており、呼吸療法認定士に対する診療報酬上のインセンティブ [呼吸器リハビリテーション料 (Ⅰ) の施設基準] も既に導入されています。(将来的には、もう少し高いインセンティブの導入が望まれます)。
 
 一方、人工呼吸療法において、本邦では、気管切開人工呼吸 (TPPV:tracheostomy positive pressure ventilation) が主流ですが、欧米では超急性期のICUから在宅まで、非侵襲的陽圧換気療法 (NPPV:non-invasive positive pressure ventilation) が人工呼吸療法の主流になりつつあります。

 NPPVは、「患者にやさしい治療」 (下記の記事および下記の看護雑誌の 「紹介文」 参照) という大きなメリットがある反面、「医療者にとっては 『侵襲的』」 (排痰・気道クリアランス保持等、リスクマネジメントおよびケアに係るマンパワーやスキルを、TPPVよりも必要とする場合がある) というデメリットもあります (詳細は下記記事参照)。

 週刊医学界新聞 (2009/2/16) に、NPPVに関する記事が掲載されています。
 記事の全文・参考資料が、下記のウェブサイトにアップロードされていますので、興味ある方は、(長文ですが)、ご参照下さい。

座談会・これからの人工呼吸-非侵襲的陽圧換気療法NPPVの展望と課題


 この記事の中で、『JJNスペシャル 2008年09月号 (通常号) (No.83) 「NPPV (非侵襲的陽圧換気療法) のすべて-これからの人工呼吸」 (編者:石川悠加・国立病院機構八雲病院小児科医長)』という看護雑誌のことが、編者から下記のように紹介されています。

 欧米では超急性期のICUから在宅まで、人工呼吸療法の主流になりつつあるNPPVですが、わが国では評価をされながらも、爆発的に広がったとは言えない状況で推移しています。
 初めての導入がうまくいかずに、あきらめてしまった施設も少なくないのではないでしょうか。
 ひとつでも多くの施設に成功してほしいという願いを込めて発行しました。



 また、同看護雑誌の 「紹介文」 は、下記の通りです。

 NPPV (非侵襲的陽圧換気療法) は、マスクやマウスピースなど、非侵襲的なインターフェースを使った人工呼吸です。
 人工呼吸としての効果は、従来の人工呼吸と同じか、それ以上のことも。
 急性呼吸不全から慢性呼吸不全まで、適応がますます拡大し、すでに欧米での人工呼吸の主流はNPPVになっています。
 すぐ始められて、すぐ止められて、自己抜管の心配もなく、人工呼吸器関連肺炎のリスクが軽減。
 一番のメリットは、患者さんのQOLの維持・向上ができること。
 人工呼吸をしながら、食べることも、話すことも可能です。
 問題は、まだ使い慣れていない方法であること。
 どうすれば、効果的に、安全に、NPPVを活用できるか? それは、この本を読めばわかります。



 呼吸リハビリテーションに携わっている呼吸療法認定士 (特にNPPVの経験があまり深くない方) のみならず、呼吸療法認定士の資格取得を目指している方も含めて、各専門職種の方々等に、ご一読をお勧めします。(コメディカル目線の非常に分かり易い内容です)。
 また、下記の 「NPPVハンドブック」 (医学書院、2006) も推奨されます。


● 「NPPV (非侵襲的陽圧換気療法) のすべて-これからの人工呼吸
   JJNスペシャル 2008年09月号 (通常号) (No.83) [医学書院]
   (編者:石川悠加・国立病院機構八雲病院小児科医長)


「NPPVハンドブック」 (医学書院)

NPPVハンドブックNPPVハンドブック
(2006/05)
聖路加国際病院呼吸療法チーム

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靴の中敷きの微小振動による高齢者の転倒防止

 65 歳以上の高齢者において、転倒の年間発生率は10~20%であり、そのうちの約10%は骨折に至ると報告されています。
 転倒を経験した高齢者は、たとえ軽傷で済んでも心理面に強い影響を受け、閉じこもって不活発な生活に陥り易く、様々な健康障害を招くことが知られています。
 不幸にも、骨折 (特に大腿骨頸部骨折) に至った場合は、その後の手術やリハビリテーションの治療効果ならびに患者要因 (高齢、重度・重複障害、複数の合併症・併存疾患) によっては、廃用症候群も重なり、寝たきりになることも少なくありません。
 したがって、高齢者の転倒防止は、生活・人生の質 (QOL) のためにも、重要な課題です。

【関連記事】
 ◎リハビリテーション医療におけるリスク管理

 Medical Tribune (2008/10/23) に、靴の中敷きの微小振動を用いた転倒防止対策に関する記事が掲載されていますので紹介します。

●靴からの振動で高齢者の転倒防止

 米国ボストン大学生体力学センターの James J. Collins 教授と Attila A. Priplata 博士が行っている研究によると、70歳の高齢者が20歳の若者と同等のバランスを維持するためには、靴の中敷きから雑音 (ノイズ) が出るようにした 「ノイジーシューズ」 が一つの解決策となるかもしれない。

 高齢者は転倒しやすく、骨折に至ることも多い。
 今回の方法は、バランス感覚にかかわるすべての障害の解決策になることは期待できないものの、少なくとも高齢者にとっては役立つ可能性がある。
 また、この方法は、足の感覚が失われてしまう糖尿病患者にも役立つ可能性がある。

 今回考案されたノイジーシューズは、統合閾値を持つ感覚神経系におけるノイズに対する反応を利用するものである。
 高齢者では活動を促す信号が加齢とともに衰えるが、この信号の弱まりを救済するのがノイズである。

 Collins 教授らが開発したのは、ゲル状の中敷きに電気モーターを挿入し、そこから微小振動を足に伝えることで、感覚神経にノイズを加える方法である。

 同教授らは高齢者にノイジーシューズを履いてもらい、静止して立っている間にどの程度揺れてしまうかを測定し、バランス維持能力を調査した。
 その結果、この中敷きの効果によって、高齢者の揺れは普通の靴を履いた20代の若者と同等にまで改善されたという。

 電気中敷きを敷いたノイジーシューズは、Afferent 社 (米国ロードアイランド州) が製造し、2年以内に上市される予定である。

【関連論文】
 ●Priplata AA, Patritti BL, Niemi JB, Hughes R, Gravelle DC, Lipsitz LA, Veves A,
  Stein J, Bonato P, Collins JJ. Noise-enhanced balance control in patients with
  diabetes and patients with stroke. Ann. Neurol. 59 (1): 4-12, 2006.


 上記に関する当ブログ管理人の考察・結論は、下記の通りです。

(1)ノイジーシューズは、靴の中敷きタイプの転倒予防装置であり、装着しやすく、実用性・利便性は高いと思われます。

(2)上記関連論文によると、電気モーター (電池式) による微小振動刺激 (ランダムな刺激) については、「本人が気がつかないほど、非常に微弱なもの」 で、不快感は生じにくいとのことです。
 但し、微小振動刺激が、脳卒中・糖尿病患者あるいは高齢者において、下肢のしびれ (異常感覚) を出現・増悪させる可能性も否定できないと思われます。(刺激パターンの工夫が必要と思われます)。
 また、下肢の末梢神経障害の程度によっては、転倒予防効果はあまり望めないと推察されます。

(3)高齢者の転倒・骨折は、寝たきり、あるいは閉じこもり・廃用症候群を生じやすく、医療費も相当かかります。
 転倒には、多くの様々な内的要因・外的要因が関与しますので、本装置だけでは完全には防止できませんが、少しでも、数%でも、高齢者の転倒事故が減少すれば、高齢者のQOLに大きく貢献すると思います。
 できるだけ早期の製品化が望まれます。




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