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脳卒中地域医療連携 (急性期病院の 「回復期リハ病棟」 等への希望)

 国立循環器病センター内科脳血管部門・秋田県立脳血管研究センター・聖マリアンナ医科大学神経内科・国立病院機構九州医療センター脳血管内科の共同研究論文 「脳卒中地域医療の現状を把握するための全国アンケート調査-急性期病院の現状-」 (脳卒中31: 67-73, 2009) において、急性期病院の 「回復期リハビリテーション病棟、一般診療所、維持期施設・事業所 (入院、入所、通所および訪問)、周辺地域の連携構築、自治体 (市町村、広域連合体など)」 への希望が掲載されていますので、下記に示します。

【表2.脳卒中地域連携に関する質問】 (一部改変)

●回復期リハ病棟に希望すること (複数回答可)
 ①待機期間を短くしてほしい (51.9%)
 ②リハビリ機能を充実させてほしい (48.7%)
 ③入院基準を緩和してほしい (36.8%)
 ④脳卒中患者の医療情報を共有したい (36.1%)
 ⑤在宅生活支援に力をいれてほしい (30.0%)
 ⑥連絡会やカンファレンスなどを定期的にもちたい (23.1%)
 ⑦脳卒中患者の介護情報を共有したい (15.8%)
 ⑧問い合わせ窓口を簡略化してほしい (14.1%)
 ⑨介護保険意見書を積極的に作成してほしい (11.8%)
 ⑩特になし (6.3%)
 ⑪その他 (3.8%)

●一般診療所への希望 (複数回答可)
 ①維持期脳卒中患者の外来フォローアップ (74.0%)
 ②在宅生活支援に力をいれてほしい (48.5%)
 ③脳卒中患者の医療情報を共有したい (32.3%)
 ④介護保険意見書を積極的に作成してほしい (27.9%)
 ⑤連絡会やカンファレンスなどを定期的にもちたい (17.6%)
 ⑥脳卒中患者の介護情報を共有したい (16.4%)
 ⑦特になし (5.2%)
 ⑧問い合わせ窓口を簡略化してほしい (3.1%)
 ⑨その他 (1.1%)

●維持期施設・事業所 (入院、入所、通所および訪問) への希望 (複数回答可)
 ①待機期間を短縮してほしい (67.6%)
 ②リハビリを充実させてほしい (54.6%)
 ③入院入所基準を緩和してほしい (46.0%)
 ④在宅生活支援に力をいれてほしい (34.9%)
 ⑤脳卒中患者の医療情報を伝達してほしい (16.4%)
 ⑥介護保険意見書を積極的に作成してほしい (14.5%)
 ⑦脳卒中患者の運動機能や日常生活動作に関する情報を伝達してほしい
   (13.7%)
 ⑧リハビリ以外のサービス内容を充実させてほしい (13.5%)
 ⑨連絡会やカンファレンスなどを定期的にもちたい (12.8%)
 ⑩問い合わせ窓口を簡略化してほしい (10.1%)
 ⑪特になし (4.4%)
 ⑫その他 (1.9%)

●周辺地域の連携構築での希望(複数回答可)
 ①自治体と医療・介護従事者が協力した連携づくり (43.9%)
 ②連絡会などのコミュニケーションの場がほしい (34.0%)
 ③脳卒中患者の医療情報を共有したい (29.2%)
 ④医療・介護従事者主体の連携づくり (28.6%)
 ⑤自治体主体の連携づくり (18.7%)
 ⑥脳卒中患者の介護情報を共有したい (16.8%)
 ⑦特になし (9.4%)
 ⑧その他 (1.3%)

●自治体 (市町村、広域連合体など) への希望 (複数回答可)
 ①みんなが協働する意識を高める環境をつくってほしい (66.8%)
 ②脳卒中患者の医療および介護の現状をもっと調べてほしい (48.9%)
 ③地域における医療および介護に関する情報をもっと提供してほしい
   (33.0%)
 ④施設・事業所の意見をもっと聞いてほしい (20.0%)
 ⑤その他 (4.6%)

(1)上記の 「回復期リハ病棟に希望すること」 の結果において、急性期病院が回復期リハビリテーション病棟に対して希望している 「待機期間の短縮」・「リハビリ機能の充実」・「入院基準の緩和」 などが改善すれば、急性期病院の在院日数の短縮や、地域でのより有効なリハビリテーションの提供が期待でき、急性期病院と回復期リハビリテーション病棟との連携がより緊密になることが期待されています。

 また、上記の 「一般診療所への希望」 の結果において、一般診療所が 「維持期脳卒中患者の外来フォローアップ」・「在宅生活支援」 に力を入れることで、急性期病院から在宅への流れがよりスムーズになると予想され、一般診療所が 「脳卒中患者が自宅へ退院後にもシームレスに、いつでも医療・介護の相談ができるような役割」 を果たすことが期待されています。

 さらに、上記の 「維持期施設・事業所 (入院、入所、通所および訪問) への希望」 の結果において、急性期病院から維持期施設・事業所への希望として、「待機期間の短縮」・「入院入所基準の緩和」・「リハビリの充実」・「在宅生活支援」 が多く、「待機期間の短縮」 では急性期病院の入院期間の短縮が期待されています。
 また、「リハビリの充実」には、医療保険および介護保険での維持期リハビリテーションを行う専門職の充実が必要とされています。

 他方、周辺地域の連携構築および自治体 (市町村、広域連合体など) への希望も高く、特に、自治体に 「みんなが協働する意識を高める環境をつくってほしい」 と希望しており、自治体の医療・介護を担当する部署が調整役となり、一般住民からの意見収集、連携のためのアイデアの提供、会議や連絡会の開催などを行うことで、周辺地域の連携がより推進されことが期待されています。

(2)一方、国立循環器病センター内科脳血管部門・秋田県立脳血管研究センター・聖マリアンナ医科大学神経内科・国立病院機構九州医療センター脳血管内科・全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会の共同研究論文 「脳卒中地域医療の現状を把握するための全国アンケート調査-回復期リハビリテーション病棟の現状-」 (脳卒中30: 735-743, 2008) において、「回復期リハビリテーション病棟から急性期病院への希望」 として、下記のようなことが挙げられています。

回復期リハビリテーション病棟から急性期病院への希望

 ①マイナスな面も含めて十分な医療情報を伝達してほしい (62.0%)
 ②患者が急病の時に、すぐに受け入れてほしい (60.8%)
 ③急性期の運動機能や日常生活動作に関する情報がほしい (36.5%)
 ④リハビリスタッフの意見が記入された紹介状が欲しい (25.3%)
 ⑤リハビリ機能を充実させてほしい (21.7%)
 ⑥連絡会やカンファレンスなどを定期的にもちたい (17.5%)
 ⑦在宅生活支援に力をいれてほしい (9.6%)
 ⑧問い合わせ窓口を簡略化してほしい (8.4%)
 ⑨介護保険意見書を積極的に作成してほしい (8.4%)
 ⑩その他 (7.8%)
 ⑪特になし (6.6%)

(3)しかしながら、現在、これまでの医療制度改革・診療報酬改定・介護報酬改定等に伴う下記の種々の問題点により、「患者選別・患者切り捨て」 (特に脳卒中・認知症) が既に生じており、脳卒中医療・脳卒中リハビリテーションにおけるシームレスな地域連携を大きく阻害していると思われます。
 そして、それが 「医療難民 (特に脳卒中、認知症)・救急難民・リハビリ難民・介護難民・障害者難民」 の出現・増大に拍車をかけていると考えられます。

  ①疾患別リハビリテーション体系の導入ならびにリハビリテーション算定
   日数上限 (標準的算定日数) の導入
  ②回復期リハビリテーション病棟への成果主義の導入
  ③障害者病棟からの脳卒中・認知症患者の排斥
  ④医療療養病床の医療区分問題
  ⑤在宅医療システム・在宅ケアシステムの不備
  ⑥要介護認定の軽度化、区分支給限度額の据え置き
  ⑦介護保険の構造的問題 [区分支給限度額・応益負担 (原則1割自己負担)]
   による介護サービス利用制限
  ⑧介護保険リハビリテーション制限問題 (リハビリテーションマネジメント
   加算月8回問題)
  ⑨介護保険施設 (特に特養) の整備不足、等々。

(4)上述の通り、脳卒中の地域医療連携および地域リハビリテーション連携においては、様々な多くの (且つ、一時的・姑息的な対策では解決できない) 阻害因子が存在しており、また、医療・介護の関係者だけでは到底対処できない多くの難問題が横たわっています。

 したがって、

  ①総医療費の増額 (医療再生→社会保障再生)
  ②医師 (特に勤務医) 不足の解消、医師の地域偏在・診療科偏在の解消
  ③患者・家族の意識改革 (チーム医療への積極的な参加、「医療の不確実性・
   限界・リスク」 および 「コンビニ受診・モンスターペイシェントの弊害」
   に対する充分な理解、等)
  ④マスメディア・オピニオンリーダーの医療崩壊・社会保障崩壊に対する
   正確な理解・報道・情報発出
  ⑤為政者 (政治家・官僚) の医療崩壊・社会保障崩壊に対する正確な理解と
   それに対する実効性の高い施策

等々、抜本的な対策が切に望まれます。




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脳卒中対策基本法制定で申し入れ (日本脳卒中協会)

 Japan Medicine (2009/6/26) に、「脳卒中対策基本法」 に関する記事が掲載されていますので、下記に示します。

●日本脳卒中協会など 脳卒中対策基本法制定で申し入れ
  総務省と厚労省による 「基本計画」 の策定を


 日本脳卒中協会は24日、脳卒中対策基本法制定のための要綱案を取りまとめ、厚生労働省に申し入れた。
 要綱案は、総務省と厚労省による 「脳卒中対策推進基本計画」 の共同策定を求め、各都道府県にもそれぞれの地域実態を反映させた基本計画の策定を義務付ける考えを明記。
 脳卒中について、急性期から回復期、維持期まで継ぎ目のない医療を提供するための基本理念を打ち出した。

 脳梗塞、脳出血に代表される 「脳卒中」 の死亡者は年間約12万人。
 発症者数が増加傾向にあることに加え、疾患別入院期間が最も長い実態があるなど、大きな社会問題となっている。
 超急性期脳梗塞の画期的治療法として 「t-PA」 が2005年に保険適用されたが、同協会によれば t-PA治療を受けた患者は脳梗塞患者全体の2%にとどまっているのが現状だ。

● 「脳卒中対策推進協議会」 の設置を国、都道府県に義務付け

 要綱案では、脳卒中に関する予防、救急搬送、脳卒中医療、リハビリ、介護・社会福祉にわたる対策を総合的、計画的に進めるための 「脳卒中対策推進基本計画」 が必要と明記。
 基本計画を遂行するには、救急搬送体制を担当する総務省と、医療提供体制を担う厚労省による 「省庁を超えた連携が不可欠」 とし、基本計画の共同策定、閣議決定を義務付けることを要望した。

 都道府県レベルでも地域実態を踏まえた計画策定を求め、国と都道府県それぞれによる 「脳卒中対策推進協議会」 の設置を定めた。
 計画には、具体的な政策と目標、達成時期を明確に盛り込み、インターネットで公表する。
 5年ごとに計画の進捗状況について検証する考えも示した。

●実態把握の重要性にも言及

 要綱案は、国や自治体、医療保険者に求められる脳卒中対策に関する考え方も明記した。
 予防対策では、食生活や喫煙、飲酒といった生活習慣と脳卒中発症の関連性や、脳卒中に関する疾病情報の普及啓発を徹底するよう求めている。

 超急性期では、発症直後の救急搬送、救急医療、遠隔医療に関する体制整備や、必要な人材に対する研修等を要請する考えを盛り込んだ。
 回復期や維持期でも、脳卒中に関する技能、ノウハウを持った専門職の育成を掲げ、施設や事業者の整備に取り組むべきとしている。

 また、それぞれの地域での 「脳卒中の発症状況」・「救急搬送状況」・「救急・急性期、回復期、維持期に至る治療状況や転帰」 などの実態把握に努める必要性にも言及。
 こうした実態分析について、将来の脳卒中対策に反映させる重要性も強調した。
 t-PA静注療法の普及に向けた対策としては、救急隊員の教育をはじめ、t-PA静注療法実施施設の把握、現場での救急隊員による搬送先選定、遠隔医療の実践などを挙げた。

●日本脳卒中協会・山口武典理事長 脳卒中は障害や要介護の最大原因

 脳卒中は、患者さんご本人やご家族の生活を大きく変えてしまう障害や要介護になる最大の原因です。
 また、医療費・介護費の観点でも、がん以上に社会的な負荷がかかります。
 脳卒中対策には、医療のみならず、救急搬送やリハビリテーション、患者さんの生活の質の向上と社会参加の支援が含まれていなければならず、これらが全国どこでも受けられなければなりません。
 このため、脳卒中に特化した法律が必要なのです。
 このたび、関連学術団体、職能団体からもご意見を伺い、脳卒中対策基本法要綱案をまとめることができましたので、今後、立法化に向けた活動を進めていきたいと思っています。

●日本脳卒中協会・中山博文専務理事 法整備で包括的な脳卒中対策を

 脳卒中対策基本法が制定されると、行政として、国を挙げ、自治体を挙げて、包括的な脳卒中対策が進みます。
 たとえば、予防や脳卒中の見分け方、起こった時の対処などの情報を、行政が責務として広報に努め、それによって、「脳卒中を発症したら直ちに受診」、119番を呼べば、 24時間全国どこでも、最新の治療を行う専門病院に搬送される仕組みを整備できます。

 国民病ともいえる脳卒中について、最新の医療・リハビリがひとりでも多くの患者さんに適用されるようになるために、是非、立法化を推進させていきたいと思っています。

(1)日本における死亡率の第3位・寝たきり原因の第1位・要介護原因の第1位である 「脳卒中」 は、今なお、
  ①プレホスピタルケア (病院前救護)
  ②t-PA治療をはじめとした超急性期・急性期治療および再発・増悪予防
   のための慢性期治療
  ③脳卒中 「地域連携パス」 による地域医療連携システム
  ④超急性期・急性期~回復期の濃厚かつ集中的なリハビリテーション体制、
   および急性期~回復期~維持期のシームレスな地域リハビリテーション
   システム
等の不備が指摘されています。
 さらに、「脳卒中の症状・緊急時対応等に関する地域住民の理解不足・周知徹底不足」 も指摘されています。

(2)また、リハビリテーションにおいても、
  ①疾患別リハビリテーション体系の導入
  ②リハビリテーション算定日数上限 (標準的算定日数) の導入
  ③回復期リハビリテーション病棟への成果主義の導入
  ④介護保険リハビリテーション制限問題 (リハビリテーションマネジメント
   加算月8回問題)
等による 「患者選別・患者切り捨て」・「リハビリ難民 (リハビリ棄民)」・「介護難民 (介護棄民)」 等の問題が山積しています。

(3)したがって、「脳卒中対策基本法」 の早急の制定による抜本的かつ包括的な脳卒中対策が望まれます。




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「TIA (一過性脳虚血発作) 後の脳卒中」 (半数は24時間以内に発症)

 Japan Medicine (2009/6/10) に、TIA (一過性脳虚血発作) に関する興味深い記事が掲載されていますので、下記に示します。

●TIA後の脳卒中 半数は24時間以内に発症 (ニューヨーク5日・ロイター)

 一過性脳虚血発作 (TIA) 後7日以内に認められる脳卒中の約半数は、最初の24時間以内に起きる-こんな新しい研究結果が示されている。
 この研究結果は、TIA後24時間以内の患者監視を推奨しているガイドラインの正当性を裏付けている。
 研究結果は 「Neurology」 (6月2日号) に、Peter M. Rothwell 氏 (英、Oxford University) らから報告されている。

 今回の結果は、地域住民を対象にした研究 「Oxford Vascular Study」 (英オックスフォード州の脳卒中患者、TIA患者が対象) のデータを解析して得られた。

 初回のTIAまたは脳卒中を発症した1,247人のうち、35人が24時間以内に同じ動脈部位で脳卒中を再発した。
 これら患者のうち25人は、脳卒中再発までに、最初のイベントから回復していた。
 16人は、脳卒中再発までに緊急の医療が必要だったが、抗血小板療法を受けた患者はいなかった。

 初回のTIAを発症した488人のうち、25人がTIA後24時間以内に脳卒中を発症した。
 これら25人は、初回TIA後7日以内に脳卒中を発症した48人の52%を占め、30日以内に発症した59人の42%を占めた。

 初回TIAを発症した患者で、TIA6時間後の脳卒中リスクは1.2%だった。
 12時間後は2.1%、24時間後は5.1%だった。

 また、評価手段として一般的に使われるABCD2スコアは早期の脳卒中再発を予測するのに有用だった。

(参考) ABCD2スコア [Lancet 2007 Jan 27; 369 (9558):283~292]

 A:Age (60歳以上=1点)
 B:BP (TIA後最初に測定された血圧:収縮期血圧140mmHg以上
   または拡張期血圧90mmHg以上=1点)
 C:Clinical features (臨床症状:片麻痺=2点、構音障害のみ=1点、
   その他=0点)
 D:Duration (TIA症状の持続時間:60分以上 =2点、10~59分=
   1点、10分未満=0点)
 D:DM (糖尿病あり=1点)

 7点満点で、
 ◎6~7点:2日間で脳梗塞になる高リスク (8.1%)
 ◎4~5点:2日間で脳梗塞になる中等度リスク (4.1%)
 ◎0~3点:2日間で脳梗塞になる低リスク (1.0%)

 「これは、軽度脳卒中発症後24時間以内に起きる脳卒中再発のリスクを検討した最初の、厳密な地域住民対象研究である。非常に軽度の脳卒中初発後であっても、その直後に重度脳卒中を発症するリスクは非常に高い。このことが今回研究で示されている」 と、発表資料のなかで Rothwell 氏は述べている。

(1)以前の当ブログ記事 [脳卒中急性期医療をめぐる課題と展望 (TIA:一過性脳虚血発作)] にて、下記の 『TIAに関する重要ポイント』 ならびに 『TIA 「べからず集」』 を述べています。
 
●TIAに関する重要ポイント

 (a) TIAの早期診断・治療が脳卒中を防ぐ。

 (b) TIAは、メディカル・エマージェンシーである。

 (c) ハイリスクのTIA患者を早期に診断・治療すれば、脳卒中そのものを起
  こさなくても済むわけであるから結果的に医療経済効果は遙かに高くなる。
   (海外のデータ:TIAを早期に治療すれば脳卒中のリスクは半減する)。

 (d) TIAは、脳にとっての不安定狭心症である (不安定狭心症を放っておい
  たら心筋梗塞になるのと同様に、TIAを放っておいたら脳卒中になる)。

 (e) TIAは、脳卒中予防五段階の崖っぷちである。

 (f) TIAを正確に診断すること。

 (g) TIAは、脳卒中の予行演習である。

 (h) TIAは、48時間以内 (あるいは24時間以内) に評価を終わらせ、治療を
  始めなければならない。

 (i) TIAは、脳卒中の重いものの予備軍である。

 (j) completed stroke よりも、TIAの方が、発症後3か月以内の脳卒中のリ
  スクは高い。

 (k) TIAを疑わせる患者さんには、なるべくその時に、ABCDスコア (下
  記の註を参照) や、脳卒中専門病院であれば頸部エコー、MRI/MRA
  等を行い、その場で 「がけっぷち」 のTIAか否かの診断ができるシステ
  ムをつくること。

(註)ABCDスコア
 (1) TIAが如何に脳梗塞になるかのリスクを調べるためのスコア。
 (2) Oxfordshire Community Stroke Projectが提案した簡易スコア。
 (3) スコア表
   A:Age (年齢) 60歳未満:0点、60歳以上:1点
   B:Blood pressure (血圧) SBP 140、DBP 90以下:0点
                SBP 140、DBP 90以上:1点
   C:Character (臨床的特徴) 片側性脱力:2点
                 脱力ない構音障害:1点
                 その他の症状:0点
   D:Duration (持続時間) 10分未満:0点、10~59分:1点、
               60分以上:2点
 (4) 5点以上は、相当、脳卒中リスクが高いので要注意。

●TIA 「べからず集」

 (a) TIA患者さんに、「良くなって、よかったですね」 と言って安易に帰すべ
  からず。

 (b) TIAでないものを、安易にTIAと言うべからず。(例:失神や意識消失
  発作に対してTIAと診断する医師は多い。実際は重篤な不整脈が隠れてい
  たりするなど、心臓疾患の可能性も含めて考えなければならない)。

 (c) TIAを見落とすべからず。(救急の現場ではいわゆる局所神経症状が出て
  いる 「がけっぷちのTIA」 を絶対見落とさない。「手のしびれ」 もTIAの
  可能性あり)。

 (d) TIAを、「脳卒中の軽いもの」 と安易に言うべからず。

 (e) 「アテローム血栓症や心原性脳塞栓症は重い病気で、それより軽いラクナ梗
  塞、さらに軽いTIAがある」 と安易に思うべからず。

(2)上述の通り、TIAは、メディカル・エマージェンシーであり、早期診断・早期治療が脳卒中を防ぎます。

 しかしながら、日本では、その認識が未だ充分には浸透していないため、患者さん・家族・ハイリスクの方・地域住民のみならず、研修医・開業医・他科医等への充分な啓発・啓蒙が必要と考えられます。




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「脳卒中対策基本法」 (仮称) 制定を目指す (日本脳卒中協会)

 CBニュース (2009/3/10) に脳卒中対策基本法 (仮称) に関する記事 (「脳卒中対策基本法」 制定を-日本脳卒中協会) が掲載されていますので紹介します。
 
● 「脳卒中対策基本法」 制定を-日本脳卒中協会

①日本脳卒中協会の山口武典理事長は3月8日、横浜市内で開かれた参加型イベント 「NO梗塞アカデミー」 (主催:同協会、サノフィ・アベンティス日本法人) で、脳卒中を予防したり、後遺症を減らしたりするための 「脳卒中対策基本法」 (仮称) の制定を呼び掛けた。

 山口理事長はあいさつで、「がん対策基本法はあるのに、脳卒中に関する法律はない。厚生労働省管轄の病院と総務省管轄の救急隊が連携を取り合って、スムースな救助活動をするために、一刻も早い法整備が必要」 と指摘。その上で、「要綱案はできているので、国会が正常に動くようになったら、議員立法での制定を目指したい」 と意欲を示した。

②同協会は現状の問題点として、

 (a) 脳卒中に関する知識は、医療者と市民の活動に頼るしかない。

 (b) (発症した場合に) どこの病院に行けばよいか、判断がつきにくい。

 (c) 119番で救急隊員を呼んでも、脳卒中かどうか判断できない。

 (d) 救急隊を呼んでも、(病院との連携がうまくいっていないため) 専門病院に
  運んでもらえる保証がない。

 (e) 受診が遅れると、治る可能性が低くなってしまう。

などを指摘。

 また、山口理事長によると、「3年前に国内でも使えるようになった血栓溶解薬 (t-PA) は効果が大きいが、発症から3時間以内に投与しないと、副作用の恐れがある」という。

③同協会は基本法の制定によって、政府、地方自治体、医療保険者、医療従事者らが協力して予防事業などを進められるようになるとしている。

 具体的には、

 (a) 「脳卒中を発症したら直ちに受診」 を国民に徹底周知。

 (b) 119番すれば、24時間全国どこでも、専門病院に搬送してもらえる仕組み
  を整備。

 (c) 急性期から維持期 (慢性期) まで途切れることなく最新の医療、リハビリ、
  療養支援を受ける仕組みを、全国的に整備。

 (d) 脳卒中の後遺症と共に生きる患者と家族の、生活の質の向上と社会参加
  を支援。

などを目指していく。

④山口理事長は、会場に集まった脳梗塞患者とその家族らに、「国を挙げて脳卒中の予防と後遺症のリハビリに取り組むためにも、一刻も早い法整備が必要」 と呼び掛けた。

⑤ t-PA治療

 2005 年10月から医療保険が適用された。t-PA治療によって、障害が残らない患者は、1.5倍になるといわれている。しかし、同治療は発症3時間以内に行うことが望ましいとされている。

 病院到着後、準備に1時間近くかかるため、発症2時間以内には同治療を実施できる医療機関に到着している必要があり、現状で同治療を受けているのは脳梗塞患者の約2%にとどまっている。

 上記に関する当ブログ管理人の考察・結論は、下記の通りです。

(1)上記②・⑤の通り、日本の脳卒中急性期診療の問題点の一つとして、「患者・家族・地域住民等の脳卒中発症サインの理解不足」・「救急隊と、血栓溶解療法 (発症から3時間以内の t-PA治療)・血管内治療を含めた超急性期の脳卒中治療が行える医療機関との、連携体制の不備」 等による当該病院受診遅延とそれに伴う 「血栓溶解療法・血管内治療等の超急性期脳卒中治療の断念」 が生じ、後遺症の発現に繋がります。
 また、地域によっては、血栓溶解療法・血管内治療を含めた超急性期の脳卒中治療が行える医療機関の不足・欠如が大きな問題となっています。

(2)上記①~④の通り、「脳卒中対策基本法」 (仮称) が制定されると、「厚生労働省管轄の病院と総務省管轄の救急隊が連携を取り合って、スムースな救助活動ができるようになる」・「政府、地方自治体、医療保険者、医療従事者らが協力して予防事業などを進められる」 等の利点があり、一刻も早い法整備が必要と指摘されています。

(3)また、上記の通り、同基本法の制定によって、下記のような具体的な成果が期待されています。

 (a) 「脳卒中を発症したら直ちに受診」 を国民に徹底周知。

 (b) 119番すれば、24時間全国どこでも、専門病院に搬送してもらえる仕組みを
  整備。

 (c) 超急性期・急性期~回復期 (亜急性期)~維持期 (慢性期) まで途切れること
  なく、最新の医療、リハビリテーション、療養支援を受ける仕組みを、全国
  的に整備。

 (d) 脳卒中の後遺症と共に生きる患者と家族の、「生活の質 (QOL) の向上」 と
  「社会参加」 を支援。

(4)2007年4月1日施行に施行された 「がん対策基本法」 は次の通りです。

【がん対策基本法】

●概要

 日本人の死因で最も多いがんの対策のための国、地方公共団体等の責務を明確にし、基本的施策、対策の推進に関する計画と厚生労働省にがん対策推進協議会を置くことを定めた法律である。

●基本的施策

 1.がんの予防及び早期発見の推進
   ◎がんの予防の推進
   ◎がん検診の質の向上等

 2.がん医療の均てん化の促進等
   ◎専門的な知識及び技能を有する医師その他の医療従事者の育成
   ◎医療機関の整備等
   ◎がん患者の療養生活の質の維持向上

 3.研究の推進等

 「基本法」 とは、国の制度・政策に関する理念、基本方針が示されているとともに、その方針に沿った措置を講ずべきことを定めている法律です。その基本方針を受けて、その目的・内容等に適合するように行政諸施策が定められ、個別法にて遂行されます。また、基本法は 「親法」 として優越的な地位をもち、他の法律や行政を指導・誘導する役割があります。

 上記のように、がん対策基本法により、がんの対策に対する国、地方公共団体等の責務が明確化されるため、基本的施策 (「がんの予防及び早期発見の推進」・「がん医療の均てん化の促進等」・「研究の推進等」) の実施が推進されます。

 したがって、脳卒中対策基本法が制定されれば、例えば、「予防や脳卒中の見分け方、起こった時の対処などを行政が公に知らせることができる」・「救急隊が、現場で、脳卒中かどうかを判断し、専門病院に直接運ぶ仕組みができる」・「各自治体が、全国に、必要な仕組みを整備する」 等のメリットが生じます。
 特に、医療現場においては、「脳卒中医療の均てん化の推進」 が期待されます。

(5)日本脳卒中協会のホームページに、「脳卒中対策の法制化に向けた取り組み」 について、次のように詳しく説明されています。

●脳卒中対策 (脳卒中を予防し後遺症を減らす) についての法律が必要です。

 現在、法律による解決が必要と思われる課題が二つあります。

 一つは、一般市民の脳卒中の予防や発症時の対応についての啓発活動を全国的に継続的に行うには、行政の力なしには限界があるということです。

 もう一つは、脳梗塞の画期的な治療法である t-PA療法を普及するには救急搬送から t-PA治療を実施できる医療機関の整備まで、省庁を超えた制度的な対応が必要だということです。

 脳卒中予防のための知識、症状、発症時の対応方法を、公的な活動によって広く一般市民に普及させるには、法律が必要です。

 t-PA治療を普及させるには、脳卒中が疑われた場合には、t-PA治療をいつでも直ちに実施できる医療機関に直接搬送できるようにしなければなりません。

 そのためには、脳卒中救急搬送計画の策定、救急隊員の教育、受け入れ側の整備などが必要です。

 したがって、救急搬送を管轄する総務省消防庁と、医療機関を管轄する厚生労働省との、省庁を超えた調整が不可欠です。これは、法的な根拠なしにはなかなか実現できません。

 これらの問題を解決し、脳卒中対策を一層充実させるために、日本脳卒中協会は、脳卒中対策の法制化、すなわち脳卒中対策基本法 (仮称) の制定が必要であると考えています。

●脳卒中対策基本法 (仮称) ができると

(a)脳卒中の発症を防ぐために

 (*) 脳卒中を予防するための事業を、政府、地方自治体、医療保険者、医療
  従事者等が協力して進めることができるようになります。

(b)全国どこでも、いつでも、脳卒中の専門的治療を受けられるように

 (1) 「脳卒中を発症したら直ちに受診」 が国民に広まります。

 (2) 脳卒中が疑われたら、119番を呼べば、 24時間全国どこでも、専門病院
  に搬送してもらえる仕組みが整備できます。

 (3) 超急性期・急性期~回復期 (亜急性期)~維持期 (慢性期) まで継ぎ目なく、
  最新の医療、リハビリ、療養支援を受ける仕組みが、全国的に整備され
  ます。

 (4) 脳卒中後遺症とともに生きる患者と家族の、「生活の質 (QOL) の向上」
  と 「社会参加」 が支援されるようになります。

(c)研究成果が速やかに脳卒中に応用されて

 (1) 脳卒中の発症、救急搬送、受診、治療成果等の情報が集まり、予防対策
  や脳卒中医療の改善に活用できるようになります。

 (2) 救急隊員が脳卒中を現場で判断し直ちに搬送するための仕組みや教育・
  研修が整えられます。

 (3) 必要な地域には、遠隔医療が整備されます。

 (4) 急性期を含む脳卒中リハビリが全国的に普及します。

(6)脳梗塞の啓発啓蒙ホームページとして、 「NO!梗塞.net」 があります。下記の内容が含まれており、一般の方々に推奨されます。

(a) 脳卒中とは?、脳梗塞の種類・診断方法・治療方法・リハビリ・再発予防

(b) 市民公開講座の紹介

(c) 脳梗塞Q&A

(d) 脳梗塞を早く見つけるためのポイント

(e) いざという時、あなたはどうする!? (発作時の対処法)

(f) あなたの脳卒中危険度チェック! (セルフチェック)

(g) アニメでみる発症から退院まで (脳卒中急性期の治療と診断)

(h) 脳梗塞コラム

(7)以上、「脳卒中対策基本法」 (仮称) について論じました。

 以前の当ブログ記事にて何回も強調していますが、実際の脳卒中医療において、(a) 不充分な急性期治療・(b) 不充分な早期リハビリテーション・(c) 「医原性」 の二次的合併症・障害 (廃用症候群・過用症候群・誤用症候群)・(d) 不充分な回復期リハビリテーションあるいは回復期リハビリテーションの欠如のため、結果的に障害の回復が不充分なまま、あるいは余計な障害まで作られた上で、介護保険・福祉に受け継がれることが未だ少なくなく、全県的な脳卒中医療、リハビリテーション・ネットワークの構築の必要性が喚起されてます。

 「脳卒中対策基本法」 (仮称) の制定により、脳卒中の対策に対する国、地方公共団体等の責務が明確化され、各府省庁および各局の施策が 「縦割り」 から 「横の密な連携・コラボレーション」 に変わり、そして、「脳卒中の予防及び早期発見の推進」・「脳卒中医療の均てん化の促進等」・「研究の推進等」 が期待されます。

 そうなれば、超急性期・急性期~回復期~維持期の各ステージの脳卒中医療体制・リハビリテーション体制が確立し、且つ、充実した脳卒中医療連携体制および地域リハビリテーション連携ネットワークの構築が実現し、実際の脳卒中医療において、『濃厚な急性期治療ならびに充分な早期リハビリテーションが実施されることにより、脳の損傷が最小限に抑えられ、且つ 「医原性」 の二次的合併症・障害 (廃用症候群・過用症候群・誤用症候群) の出現も防止でき、そして、その後、充分な回復期リハビリテーションが行われることにより、「可能な限りの障害の回復が得られ、余計な障害も作られることなく」、介護保険・福祉に円滑に受け継がれる』という理想的な流れが得られると思います。

 また、医療難民 (特に、脳卒中難民、認知症難民)・リハビリ難民・救急難民・介護難民・障害者難民等の防止も期待できます。

【関連記事】
 ◎脳卒中急性期医療体制の構築 (東京都脳卒中急性期医療機関 2009)
 ◎脳卒中急性期医療をめぐる課題と展望 (リハビリテーション)
 ◎脳卒中急性期医療をめぐる課題と展望 (TIA:一過性脳虚血発作)
 ◎地域リハビリテーション (CBR:community based rehabilitation)




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脳卒中急性期医療をめぐる課題と展望 (TIA:一過性脳虚血発作)

 前回の当ブログ記事 [「脳卒中急性期医療をめぐる課題と展望 (リハビリテーション)」] の続編です。
 週刊医学界新聞 (第2820号:2009年3月2日) の記事 (【座談会】 脳卒中急性期医療をめぐる課題と展望) におけるTIA (一過性脳虚血発作) の部分を抜粋して紹介します。

【TIAの早期診断・治療が脳卒中を防ぐ】

● 「よくなってよかったですね」 で帰してはいけない


① (内山・東京女子医科大学神経内科教授)
 欧米では、TIA (一過性脳虚血発作) はメディカル・エマージェンシーであり、早期の評価と治療を要することが、ここ4~5年強調されています。それに比して、日本ではその認識が遅れており、症候学として、あるいは診断基準の論争だけにとどまっていた傾向があると思います。

 実際、脳卒中発症後にt-PA療法を行っても、全体としての効果は3か月後の転帰良好例が30%増えるだけです。一方、ハイリスクのTIA患者を早期に診断・治療すれば、脳卒中そのものを起こさなくても済むわけですから、結果的に医療経済効果ははるかに高くなります。実際に海外では、TIAを早期に治療すれば脳卒中のリスクは半減するというデータも出ています。そういった意味でも、今後日本におけるTIAの認識を変えていかねばなりません。

② (平野・熊本大学医学部附属病院神経内科副科長)
 先ほど長尾先生から心臓の話が出ましたが、「TIAは脳にとっての不安定狭心症」 だと言うことができます。不安定狭心症を放っておいたら心筋梗塞になるのと同様に、TIAを放っておいたら脳卒中になる。メディカル・エマージェンシーだという認識をしっかり持ち、必ず血管系のサーベイをして、すぐに的確な対策を立てることが大切です。よく九州医療センターの岡田靖先生の言葉を借りて 「TIAは脳卒中予防五段階のがけっぷちです」 と言うのですが、いちばん危ない病態だと認識してほしいということを、患者さんにも開業の先生方にも、機会があるごとにお話ししています。

③ (内山) 他科の医師や研修医にも啓発が必要です。例えば、週末の救急外来を受診した当日発症のTIA患者さんに、当番にあたった医師が 「よくなってよかったですね。また来週の月曜日に来てください」 と言って帰す。これは絶対にいけません。それで帰宅後に脳卒中を起こした患者さんも実際にいます。このことは口を酸っぱくして言っているのですが、まだまだ認識が不十分だということは、痛いほど感じています。

●TIAを正確に診断する

④ (長尾・東京都保健医療公社・荏原病院神経内科医長)
 私が現場で感じているのは、他科の医師のTIA診断に関する誤解が非常に大きいことです。TIAでないものをTIAと言い、 TIAをTIAと言わない傾向が非常に強い。例えば、失神や意識消失発作に対してTIAと診断する医師は多いですよね。でも、実際は重篤な不整脈が隠れていたりするなど、心臓疾患の可能性も含めて考えなければならない。「それを簡単にTIAと言っていいのか」 というのは、常々疑問に思っています。また、救急の現場ではいわゆる局所神経症状が出ている 「がけっぷちのTIA」 の整理も不十分だと感じています。

 私は 「TIAは脳卒中の予行演習」 と言っていますが、本当のがけっぷちのTIAをきちんと拾い上げ、本番になる前に適切な対処をすることが必要です。つい先日も 「手がしびれる」 と整形外科を受診し、診断がつかずに手こずった患者さんがいました。最終的にその方はTIAだったのですが、もちろんご本人にもTIAの認識はありませんでした。t-PAと同様に、発症から来院までにもう少し啓発が必要ではないかと現場では感じています。

⑤ (内山) その通りです。2005年度から、JPPPという動脈硬化性疾患に対するアスピリンの一次予防に関する厚労科研費研究で、松本昌泰先生・峰松一夫先生と一緒にTIAと診断された患者さんのイベント評価を行っているのですが、TIAと診断された10人のうち7~8人が、実際はTIAの診断基準を満たしていません。JPPPは一般のクリニックの先生を中心に行われているスタディですが、やはりもう少しTIAの正確な診断を啓発する必要があると思います。

 アメリカではNational Stroke Associationで 「TIAは48時間以内に評価を終わらせ、治療を始めなければならない」 というガイドラインを出しましたが、ヨーロッパはさらに一歩進んで、24時間以内でなければいけないと主張しています。たしかに、ついさっき起こったTIAと1年前に起こったTIAとでは危険度がまったく違うという認識も、一般医にはほとんど理解されていない面があると思います。

●TIAは 「重い脳卒中の予備軍」

⑥ (豊田・国立循環器病センター内科脳血管部門医長)
 TIAというと皆、「脳卒中の軽いもの」 という言い方をしますよね。実際、神経内科医や脳外科医を含めてかなり多くの人が 「アテローム血栓症や心原性脳塞栓症は重い病気で、それより軽いラクナ梗塞、さらに軽いTIAがある」 という誤った認識を持っていると思います。TIAというのは基本的にはアテローム血栓症か心原性脳塞栓症の機序による一過性の脳梗塞ですから、決して 「脳卒中の軽いもの」 ではなくむしろ 「重いものの予備軍」 なのです。ですから、症状が安定しているラクナ梗塞の患者を緊急入院させる感覚を持っている医師だったら、それ以上の真剣さでTIAの患者さんに入院を勧めるべきだと思います。

⑦ (内山) おっしゃるとおりです。いくつかの前向きコホート研究では completed stroke よりもTIAのほうが発症後3か月以内の脳卒中のリスクは高いと出ています。

⑧ (豊田) それがなかなか入院に結びつかない原因の1つは、患者さんがTIAの危険性を理解していないことにあります。診察の段階では症状は消えていることが多いので、入院と言われても納得しにくいでしょうし、医師も主に病歴でしか判断できないため、自信を持って 「これは入院が必要な病気だ」 と言いづらいのでしょう。しかし、TIAを疑わせる患者さんにはなるべくそのときに、ABCDスコアや、脳卒中専門病院であれば頸部エコー、MRI/MRA等を行い、その場で 「がけっぷち」 のTIAか否かの診断ができるシステムをつくることが大事です。


(1)上記①・②・④~⑧より、TIAに関する重要ポイントは次の通りです。

 (a) TIAの早期診断・治療が脳卒中を防ぐ。

 (b) TIAは、メディカル・エマージェンシーである。

 (c) ハイリスクのTIA患者を早期に診断・治療すれば、脳卒中そのものを起こ
  さなくても済むわけであるから、結果的に医療経済効果ははるかに高くなる。
  (海外のデータ:TIAを早期に治療すれば脳卒中のリスクは半減する)。

 (d) TIAは、脳にとっての不安定狭心症である。 (不安定狭心症を放っておい
  たら、心筋梗塞になるのと同様に、TIAを放っておいたら脳卒中になる)。

 (e) TIAは、脳卒中予防五段階の崖っぷちである。

 (f) TIAを正確に診断すること。

 (g) TIAは、脳卒中の予行演習である。

 (h) TIAは、48時間以内 (あるいは24時間以内) に評価を終わらせ、治療を始
  めなければならない。

 (i) TIAは、脳卒中の重いものの予備軍である。

 (j) completed stroke よりも、TIAの方が、発症後3か月以内の脳卒中のリス
  クは高い。

 (k) TIAを疑わせる患者さんには、なるべくその時に、ABCDスコア (下記
  のを参照) や、脳卒中専門病院であれば頸部エコー、MRI/MRA等を
  行い、その場で 「がけっぷち」 のTIAか否かの診断ができるシステムをつ
  くること。

(註)ABCDスコア
 (1) TIAが如何に脳梗塞になるかのリスクを調べるためのスコア。
 (2) Oxfordshire Community Stroke Projectが提案した簡易スコア。
 (3) スコア表
   A:Age (年齢) 60歳未満:0点、60歳以上:1点
   B:Blood pressure (血圧) SBP 140、DBP 90以下:0点
                SBP 140、DBP 90以上:1点
   C:Character (臨床的特徴) 片側性脱力:2点
                 脱力ない構音障害:1点
                 その他の症状:0点
   D:Duration (持続時間) 10分未満:0点、10~59分:1点、
               60分以上:2点
 (4) 5点以上は、相当、脳卒中リスクが高いので要注意。

(2)上記③・④・⑥より、TIA 「べからず集」 は次の通りです。

 (a) TIA患者さんに、「良くなって、よかったですね」 と言って安易に帰すべ
  からず。

 (b) TIAでないものを、安易にTIAと言うべからず。(例:失神や意識消失
  発作に対してTIAと診断する医師は多い。実際は重篤な不整脈が隠れてい
  たりするなど、心臓疾患の可能性も含めて考えなければならない)。

 (c) TIAを見落とすべからず。(救急の現場ではいわゆる局所神経症状が出て
  いる 「がけっぷちのTIA」 を絶対見落とさない。「手のしびれ」 もTIAの
  可能性あり)。

 (d) TIAを、「脳卒中の軽いもの」 と安易に言うべからず。

 (e) 「アテローム血栓症や心原性脳塞栓症は重い病気で、それより軽いラクナ梗
  塞、さらに軽いTIAがある」 と安易に思うべからず。

(3)上述の通り、TIAは、メディカル・エマージェンシーであり、早期診断・早期治療が脳卒中を防ぎます。

 しかしながら、日本では、その認識が未だ充分には浸透していないため、患者さん・家族・ハイリスクの方・地域住民のみならず、研修医・開業医・他科医等への充分な啓発・啓蒙が必要と考えられます。




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