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救急トリアージにおける限界ならびに陥穽

(1)トリアージ (triage) は、人材・資源の制約の著しい災害医療等において、最善の救命効果を得るために、多数の傷病者を重症度と緊急性によって分別し、治療の優先度を決定することです。
 フランス語の 「triage (選別)」 が語源です。

(2)救急トリアージには、下記のような例が挙げられます。

 (a) 事故や災害等にて複数の傷病者が生じた場合の救急隊による救急トリアージ

 (b) 救急外来や時間外外来に、「walk-in (独歩来院・自力来院)」 で受診した複数
  の患者に対して看護師または研修医が行う救急トリアージ


(3)救急トリアージ、特に大事故・大災害にて多数の傷病者が発生した場合のトリアージの際には、トリアージ・タグが使用されます。
 
(a) 黒 (black tag):カテゴリー0
 ◎死亡、もしくは救命に現況以上の救命資機材・人員を必要とし救命不可能な
  もの

(b) 赤 (red tag):カテゴリーⅠ
 ◎生命に関わる重篤な状態で一刻も早い処置が必要で救命の可能性があるもの

(c) 黄 (yellow tag):カテゴリーⅡ
 ◎今すぐに生命に関わる重篤な状態ではないが、早期に処置が必要なもの

(d) 緑 (green tag):カテゴリーⅢ
 ◎救急での搬送の必要がない軽症なもの

(4)トリアージ時、救助者に対し傷病者の数が特に多い場合に対し、判定基準を出来るだけ客観的かつ簡素にしたものが下記のようなSTART法 (Simple triage and rapid treatment) です。
 
(a) 歩けるか?
  (1) 歩ける→緑→状態の悪化がないか絶えず観察。
  (2) 歩けない→下記 (b) へ。

(b) 呼吸をしているか?
  (1) 気道確保なしで十分な呼吸が出来る→黄
  (2) 気道確保がなければ呼吸できない→
  (3) 気道確保をしても、呼吸がない→黒
  (4) 呼吸はあるが頻呼吸または徐呼吸である→下記 (c) へ。

(c) ショック症状はないか?
  (1) ショックの兆候がある→
  (2) ショックの兆候無し→黄

 小規模の災害なら 「赤」 になる例でも、START法では 「黒」 になってしまう事が多くなりますが、これは (現場に混乱を来してしまうほどの) 大規模災害のために考え出されたものです。
 また、この方式は腹膜刺激症状やクラッシュ症候群などの病態を無視しており、追って詳細な状態観察とトリアージが継続される事を前提としています。

(5)これまでの救急トリアージ事例で問題になったものの一つは、上記(2)-(a) の場合に成された 「黒」 タグ付与 (下記参照) についてです。

 (a) 死亡診断の出来ない (死亡判定を下す事が許されない) 救急救命士には、トリ
  アージで 「黒」 タグを付ける決断が難しい、および、心理的な負担が医療関係
  者以上に大きい。

 (b) 「黒」 タグを付けられ亡くなった方の遺族において、「見殺しにされた」 という
  感情を抱く場合がある。

(6)一方、別の大きな問題として、当初、意識清明・会話OK・バイタルサインOKの方が、しばらくの後に、突然、ショック状態あるいは心肺停止に陥る事態 (下記参照) が挙げられます。

 (a) 腹部打撲→緩徐出血性の腹腔内出血 (特に、明らかな腹部挫傷が見られない
  場合に見落とされがち)→出血性ショック

 (b) 肝刺創による緩徐出血性の腹腔内出血→出血性ショック

 (c) 骨盤骨折に伴う内腸骨動脈損傷・後腹膜出血 (出血源は骨盤静脈叢や仙骨静
  脈叢であることが多く、ショックが遅れて出現する)→出血性ショック

 (d) 外傷性心タンポナーデ

 (e) 脳内出血、急性硬膜外血腫・急性硬膜下血腫 [lucid inteval (意識清明期) に、
  トリアージが行われた場合]

 (f) その他

 上記のような方は、上記(2)-(a) の場合、「黄」 タグあるいは 「緑」 タグが付けられます。また、上記(2)-(b) の場合には、病院での治療が後回しにされます。

 そして、そのような方に対する再トリアージまたは頻回のトリアージによる判定が成されないと、上記のような重篤な事態が生じます。

 このような場合、事例によっては、訴訟にまで至る可能性があります。
 しかしながら、再トリアージまたは頻回のトリアージを行えるだけの充分な数の救急隊員あるいは医療スタッフが確保されていればいいのですが、現実は厳しいものがあります。

 したがって、現実的には、初回トリアージ時が勝負の分かれ目で、バイタルサインのみならず、入念な体表面の観察、受傷機転を充分考慮した上での高度な判断が必要と考えられ、トリアージ行為を行う機会が多い救急隊員・看護師・研修医のスキルアップが肝要と思われます。 (トリアージ・スキルには限界があるとは思いますが・・・)。

(7)以上、救急トリアージにおける限界ならびに陥穽について論じました。

 上記(6)のように、症例によっては、救急トリアージには限界あるいは陥穽がありますので、救急トリアージ・ミスがあった場合でも、当事者を悩ます訴訟提起が成されないように (あるいは救急からの立ち去り型サボタージュが生じないように)、「産科医療における無過失補償制度」 のような制度の導入が必要と考えられます。

 また、上述のように、救急隊による救急トリアージには不確実性および限界があるため、救急医療体制における 「救急患者のたらい回し (本当は、救急患者の情報のたらい回し)」・「救急医療機関の受け入れ不能・受け入れ困難」 の問題の方を解決しなければならないと考えられます。
 救急隊が 「赤」 タグつけても、搬送先の病院が見つからなければお手上げですし、仮に結果的に間違って 「黄」 タグをつけても、すぐに病院に搬送できれば、急変が生じても病院で対処できます。

 最近、少し風向きが変わり、医療費増の方向にベクトルが変わったようですが、「医療亡国論」・「小泉竹中構造改革」・「財務省の財政再建至上主義 (財政再建原理主義)」 によるこれまでの大幅な医療費削減による 「医療崩壊・医療破壊」 ・「救急医療崩壊・救急医療破壊」 の現状 (惨状) を、「医療再建・医療再生」・「救急医療再建・救急医療再生」 させるには、いまだ道遠しであり、短期的には、医師・看護師等のマンパワーを地域拠点病院・救命救急センターに集約化して、「絶対断らない」 救急医療機関を作るべきと思われます。

 しかしながら、救急医療においては、「勤務医の過重労働と疲弊」・「コンビニ受診」・「医療事故・医療過誤・医療訴訟に対する不安」 等の問題が山積しており、現状では、「絶対断らない」 救急医療機関も机上の空論かもしれません。

【追記】
 「勤務医 開業つれづれ日記・2」 ブログの記事 (「緑」 と判定された人が腹を立て・・・『「トリアージ』進まぬ周知 災害、事故時の治療優先順位付け 医師 「人命救助 協力を」』) において、

 (1) 2005年の福岡沖地震では、福岡市内の病院でトリアージが行われたが、「緑」
  と判定された人が腹を立て、札をちぎり、再び判定を求めるケース
もあった。
  判定に従わない負傷者が増えれば混乱は避けられず、市民への周知は欠かせな
  い。だが、現状では医療者でさえ正確に理解していないこともあるという。

 (2) 大分県内の医療者や消防職員向けに毎月、学習会を開く玉井医師は、市民向
  けの啓発は今後の課題と指摘する。ただ 「周知しすぎると、負傷者が重傷を装
  って『演技』する恐れもあって悩ましい」
とも打ち明ける。

という新聞記事を引用して、「民度が低いとこうなります。トリアージも、みんなで札を引きちぎられたら意味ないです」 と警鐘を鳴らされています。

 したがって、救急トリアージにおいては、上記のような陥穽も考慮せざるを得ず、益々、複雑化・困難化にて、当該スタッフの負担増大に繋がると思われます。




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救急医療機関における救急患者の 「受け入れ不能」 問題

 最近、連日のごとく、新聞・テレビ等のマスメディアにて、「救急患者のたらい回し (実際は、救急患者の『情報』のたらい回し)」 が報道されていますが、現実は、「①他の救急患者への処置中・手術中で手が回らない、②病床あるいはICUが満床、③専門外あるいは疾患の特殊性のため対応が困難」 等による、救急医療機関における 『救急患者の受け入れ不能』 というのが正確な表現です。

 「ぷにっと囲碁!なブログ」 において、救急患者の 「受け入れ不能」 に関する興味深い記事が掲載されていますので紹介します。

救急受け入れ問題FAQ  (註:FAQ=頻繁に尋ねられる質問)

(問1) なんで急患の受け入れを断るの?
(答) (人員・設備が足りない・・・などの) 物理的問題で、(受け入れると犯罪になってしまうケースがある・・・などの) 法的問題で、断らざるを得ない状態にあり、これは 「受け入れ拒否」 ではなく、「受け入れ不能」 なんです。

(問2) なんで 「専門外だから」 が断る理由になるの?
(答) 「専門外の患者を受け入れるのは犯罪」 という司法の判例 (奈良心タンポナーデ事件) があるからなんです。
 
(問3) ベッドが無いなら、廊下で治療すればいいんじゃないの?
(答) 「設備不十分な状態で患者を受け入れるのは犯罪」 という司法の判例 (加古川心筋梗塞事件) があるんです。(「勤務医 開業つれづれ日記・2」 ブログの記事 『加古川終了へ 司法による医療制限 「加古川市民病院・内科の外来制限/兵庫」』 参照)。
 そもそも、「ベッド」・「ベッド」 って言われてますけど、病院で言うところの 「ベッド」 は、心電図とか、酸素マスクとか、呼び出し用ボタンとか、それを管理する人員とか、それら全て 「込み」 ですからね。もはや 「ベッド」 というより 「設備」 と言ったほうが適当かも。

(問4) 応急処置してから、他の病院に移すのは駄目なの?
(答) 「応急処置の後、他病院に転送するのは犯罪」 という司法の判例 (上に同じく、加古川心筋梗塞事件) があるんです。

(問5) なんで、一度断った病院が、後になって受け入れるなんて事があるの?
(答) 救命中であった患者が 「落ち着く」 か 「亡くなる」 かのどちらかで、病院側に 「空き」 が出来たからです。

(問6) 有名人や金持ちだったら嬉々として受け入れるんじゃないの?
(答) 西村真悟議員の息子の飛び降り自殺・・・。アレも、重度のうつ状態で入院の必要があるとされながらも、「ベッドが無い」 という理由で入院できませんでしたよね。もはや、コネやカネではどうにも出来ない程に、患者の受け入れが困難な状況なんです。

(問7) ぶっちゃけ、人の命より金儲けのほうが大事なんでしょ?
(答) 金儲けのほうが大事だったら、そもそも、不採算部門である救急なんて、最初からやりません。

(問8) 医師が足りないなら、海外から医師を呼んだらいいんじゃない?
(答) 本国より遥かに待遇の悪い日本に来る理由が見当たりません。というのも、実は、日本の医師の待遇は、諸外国のソレよりも遥かに悪いんです。

(問9) ドクターヘリを導入したら? 空からなら直通でしょ?
(答) ヘリを導入するにも、周囲の建物が邪魔で安全に飛べなかったり (ビルに激突、民家に墜落・・・の危険性あり)、ヘリポートのある (作れる) 病院が少なかったり、騒音問題で導入を反対する住民がいたり・・・など、色々と問題が山積みなんです・・・。
 あと、ドクターヘリを必要とするほどの重症患者を扱う 「3次救急」 自体の数が減っていることも問題の一つとなっています。

(問10) リアルタイムでベッドの空き情報の分かるネットワーク、システムを作ったらいいんじゃない?
(答) いくら良いシステム、良いネットワークを作っても、医師の手術スピードが上がる訳でもなく、患者を診るための設備が増える訳ではないため、根本的な解決とはなり得ません。
 また、それに近いシステムが既にあるのですが、現在、病院側にそのシステムを操作するマンパワーが足りないために、空き情報をリアルタイムに更新出来ない・・・という問題が発生しています。

(問11) 救急病院が急患を受け入れられないなら、救急病院を辞めちゃえば?
(答) 現実に次々と辞め・・・ていうか、潰れていってるんです・・・。過去5年で430件以上・・・。
 特に、重症患者を扱う 「2次救急」、救急最後の砦である 「3次救急」 が減っていることが深刻な問題となっています。
 また、一つの病院が救急を撤退してしまうと、その病院が受け入れていた患者が他の病院に流れ込み、その病院のキャパシティをオーバーして受け入れ不能・・・という、「受け入れ不能のドミノ状態」 に陥ってしまう・・・という危険性があります。

(問12) 1次・2次・3次って何? どれも救急病院じゃないの?
(答) 救急病院は、患者の緊急度の度合いによって、「1次救急」・「2次救急」・「3次救急」 に種別されています。
 「1次救急」 は、入院や手術の必要が無い患者が対象で、「2次救急」 は、入院や手術が必要な患者が対象、「3次救急」 は、1次・2次では対応できないレベルの重症患者が対象となっています。
 ここ数年、救急医療が不要なレベルの 「軽症患者」 が、夜間救急・・・特に 「2次救急」・「3次救急」 に駆け込み、夜間救急がパンク状態になっている事が、深刻な問題となっています。

(問13) 20~30件も断わられる事なんてあるの?
(答) 大多数の救急が、マンパワー不足・キャパシティ不足のために、常にパンク寸前 (or 本当にパンク) の状態に陥っており、20~30件、いや、それ以上断られる可能性は、大いにありえます。
 また、過重労働で医師が倒れる、燃え尽きて退職・・・などで、救急を辞める病院も出ており、今後は 「受け入れ不能」 状態が加速、最悪、「たらい回せる病院」 すら無くなり、立ち往生・・・という事態もあり得ます。

(問14) 救急病院が多い東京でも患者の受け入れが出来ないのはなぜ?
(答) 救急病院は多いですが、それでも追いつかない程に人口が多すぎるんです。
 また、東京の周囲の他県の受け入れ状況も非常に厳しく、他県からの救急患者が東京に流れ込んでしまっている・・・という問題を抱えていたりします。(大阪府も同じような問題を抱えている)。


 上記に関する当ブログ管理人の考察・結論は、下記の通りです。

(1)救急受け入れ問題FAQは、一般の方々の素朴な疑問に対して、軽妙洒脱・当意即妙の回答がなされており、多くの一般国民およびマスメディアの方々への周知徹底が望まれる有意義な 「Q&A」 と思います。

(2)FAQの問1~4は、救急医療機関が、人員・設備等、不充分な手薄な体制のもと、救急患者を受け入れ、その結果、不幸な転帰をとった時、責任を負わされる (犯罪になるという司法判例がある) ため、「受け入れ不能」 とせざるを得ない現実があるということです。

 「新小児科医のつぶやき」 ブログにおいても、次のように述べられています。

 受け入れ病院には非常に重い十字架が架せられています。最近の医療では不十分な体制で受け入れる事も非難される時代になっています。義侠心を出して手薄な体制で引き受け、結果として不幸な転帰を取った時には 「引き受けた方が悪い」 と非難の的になります。「なぜもっと万全の体制の医療機関に送らなかったのか」 の厳しい批判です。

 批判は単なる言葉だけの問題ではありません。莫大な賠償金付きの訴訟が待っています。訴訟が起されればマスコミからのリンチのような社会的制裁が待っています。そんなものを受ければ病院の存亡に関わる事態になりかねませんし、担当した医師は医師生命を断たれてしまいます。

 この十字架についてはネットに参加する医師の間では既に常識化しており、「ロシアン・ルーレット」 とか 「ババ抜き」 と表現されています。患者の為に医師の使命感に燃え、無理を承知で引き受けたものが破滅する怖ろしいシステムです。この十字架は都市伝説の類ではなく、立派に司法の場で繰り返し断罪され判例となっている事実なんです。


(3)FAQの問10については、平成20年度診療報酬改定において、医師事務作業補助体制加算が新設され、特に忙しい救急外来・ERにおける 「診断書などの文書作成補助、診療記録への代行入力」 および 「救急医療情報システムへの入力」 等を、医療クラークが行えば、診療報酬が算定できるようになりました。
 しかし現実は、救急医療機関において、コスト・ベネフィット等の関係で未だ算定していない医療機関 (特に中小病院) があり、また、現在の診療報酬点数では、充分な人数の補助者が雇用できないという問題があります。

(4)FAQの問12は、救急医療 (特に夜間救急) をパンクさせる 「軽症患者・コンビニ受診患者」 の問題です。

 m3.com (2009/2/6) でも、「“コンビニ受診”で現場は疲弊している」 という記事で、次のように述べられています。

●患者の“コンビニ受診”が大半を占め、現場は疲弊している。患者教育をしないと、救急をやりたいと思う医師は増えない。

●医師や看護師などの不足のため、救急医療をやめる医療機関が多い。そのため、救急医療をやっている医療機関に患者が集中し、その多忙さの故に医師、看護師が退職してしまう、という悪循環が生じている。

●他の先進国の数分の1しかいない、貧弱な病院勤務医の定数のため、交代制勤務すら組めず、最低限の人員で救急に当らないといけない現状と、司法や国民の求める (時には妄想としか思えないような) 高い医療水準による訴訟リスクのため、各地の救急医療供給体制は急速に崩壊している。


 一方、共同通信社 (2009/2/5) の 「救急車の出動件数2年ぶり減少 適正利用の広報が奏功」 の記事は下記の通りです。

 2008年に全国の救急車が出動した件数は2007年比3.6%減の510万31件で、2年ぶりに減少したことが5日、総務省消防庁の集計 (速報値) で分かった。搬送人数も4.5%減の468万606人だった。
 出動件数の減少理由として、緊急性のない出動要請を控えるなど 「救急車の適正利用に関する市民への広報活動」 や、「頻繁に利用する人への個別指導」 などの効果を挙げる消防本部が多かった。
 出動件数を都道府県別に見ると、急病患者の搬送が増加した大分、宮崎の2県を除き、45都道府県で減った。減少率は北海道と大阪がともに5.6%、東京が5.5%など、搬送人数の多い自治体で高かった。
 年間出動件数は、統計を取り始めた1964年から増加し続けていたが、2006年に初めて減少。2007年は微増だった。


 上記の通り、救急医療に対する一般の方々の理解が良くなっている傾向も見られますが、未だコンビニ救急・コンビニ受診にて救急医療の現場が困っている現実があります。

 しかしながら、「AEDで子供を救おう」 ブログの記事 「救急車の適正利用」 で述べられているように、真に必要な時 (特に、心筋梗塞、脳卒中) に、救急車の利用を躊躇すると手遅れとなり、死亡あるいは重い後遺症が残ります
 まさしく、不正利用・誤った利用・過少利用ではなく、救急車の 「適性利用」 が重要なのですが、一般の方々の判断にはやはり限界がありますので、行政および各関連医学会により、地域住民への各種救急疾患の症状等の充分な啓発・啓蒙を地道に行うべきと思います。

(5)FAQの問11・13は、救急医療システムの根源的な問題です、

 即ち、医療亡国論および小泉竹中構造改革による 「医療費抑制、医師不足 (特に勤務医不足)」 により、これまで2次救急を担ってきた中小病院の多くが、救急医療から撤退し、それが、3次救急を担っている医療機関に更なる負担をかけ、結果的に救急患者受け入れ不能を更に悪化させるという図式 (救急患者受け入れ不能のドミノ状態) に陥ります。

 「高齢者の増加に伴う救急患者数の増加」 ならびに 「コンビニ受診 (軽症患者の夜間休日救急外来受診) というモラルの問題、モンスター・ペイシェント (医療従事者や医療機関に対して自己中心的で理不尽な要求、果ては暴言・暴力を繰り返す患者やその家族・保護者等) 問題」 等の患者側の問題 も、この根源的な問題の悪化に拍車をかけています。(『「やぶ医師のつぶやき」~健康、病気なし、医者いらずを目指して』 ブログの記事 「医療崩壊 、医師不足を切り口に」 参照)。

 最終的には、救急患者受け入れ不能状態が加速→「たらい回せる病院」 すら無くなる→救急医療完全崩壊という、国民にとって最悪のシナリオが待っています。

(6)最近、少し風向きが変わり、医療費増の方向にベクトルが変わったようではありますが、未だに、上述の医療亡国論および小泉竹中構造改革による 「医療費抑制、医師不足 (特に勤務医不足)」 の重い後遺症が残存しており、それが、医師 (特に勤務医) の過重労働と疲弊および立ち去り型サボタージュ (→残された医師の過重労働と疲弊が増悪→悪循環)」 を生じさせています。
 また、特定の診療科医師 (特に、救急医、産科医、小児科医、麻酔科医、外科医) の不足、新生児集中治療室 (NICU) のベッド不足・医療スタッフ不足等も挙げられます。
 現在の 「救急医療崩壊・破壊」 の現状 (惨状) を、「再建・再生」 させるのは、並大抵のことではありません。

(7)理論的には、厚生労働省が提唱しているように、特定の病院 (3次救急医療機関・高度急性期総合病院・地域拠点病院) に、医師・看護師等のマンパワーを集約し、北米型ER (緊急救命室)・総合診療科機能も併せ持った上で、当該医療圏の1次~2次~3次救急患者全員を絶対断らずに一旦受け入れて、トリアージで、1次救急患者および2次救急患者の一部を診療所・中小病院に逆搬送するという体制を作るのが理想的です。

 しかしながら、この理論にも落とし穴があり、(医師・看護師の絶対数が足りない今の現状で) 医師等を上記の特定の病院に集約化すると、「1次救急患者および2次救急患者の一部を逆搬送される診療所・中小病院において、医師等のマンパワーが少なくなり、医療パワーも低下し、ある程度医療必要度等が高い救急患者は受け入れられない」 という矛盾が生じます。

 また、上記の特定の病院で急性期を終えた患者が、急性期後のケアを受けるため、亜急性期病院 (回復期リハビリテーション病棟、亜急性期病床) へ転院しようと思っても、「①亜急性期病院の数が不足、②医師・看護師等のマンパワー、即ち医療パワーが充分でないため、ある程度医療必要度・看護必要度が高い患者を受け入れることが出来ない亜急性期病院が少なくない、③亜急性期病院も、出口 (療養病床・介護保険施設・在宅ケア等での慢性期・維持期ケア) が充分でないと、病床の空きが出来ず、急性期病院から患者さんを受け入れられない」 という問題があります。
 その結果、医療必要度の高い患者等が、救急病院に長期入院せざるを得ないという問題が生じています。

 即ち、結果的に現在、医療難民・リハビリ難民・救急難民・介護難民等が生じており、根本的な現状打破は今のところ困難といわざるを得ない状況と考えられます。

(8)一方、一般住民・マスメディア等への救急医療の惨状の啓発・啓蒙は必要であり、(医療訴訟との兼ね合いも含めて)、「医療には、不確実性・限界・リスクがある」・「医療は、医療スタッフと患者との協働である (パートナーシップ)」・「患者・家族・地域住民の医療参加」 ということは特に啓蒙する必要があります。

 以前の当ブログ記事 [一般の方に知って頂きたいリハビリテーション医療7ヶ条 (試作版)] に取り上げた 「非医療者に知ってもらいたい医療10ヶ条 (修正版)」 が参考になると思いますので、再掲します。

非医療者に知ってもらいたい医療10ヶ条 (修正版)

①医療は不確実です。医療には限界があります。医師がどんなに手を尽くしても亡
 くなることはあります。

②医師はエスパーではありません。症状をきちんと伝える為に 「いつから、どこが
 どう痛いのか」 等を予めメモにまとめておきましょう。

③医師は敵ではありません。敵なのは病気であり、医師は共に戦う仲間です。

④医師は病気を治すのではありません。医師は病気を治す手伝いをするのです。

⑤新聞やニュースの医療記事を鵜呑みにしないようにしましょう。偏向報道の場合
 があるので出来たらネット等で調べ、多角的に考えましょう。

⑥ 「たらい回し」・「受け入れ拒否」 という言葉は使わないようにしましょう。これら
 は人手・設備不足等で受け入れ能力がないために起こります。つまり 「受け入れ
 不能」・「受け入れ困難」 の方が適切です。

⑦ “ベッドが満床”のベッドは、物理的なベッド以外に、酸素マスクや看護する人
 員等含んだ設備と言う意味があります。つまり「ベッドが満床」=「(物理的な) ベッ
 ド・設備・人員すべて受け入れる余力が無い」 んです。それから“ベッドが無けれ
 ばソファに寝かせて治療”は重症患者ではとてもできません。

⑧ 「一般人だからわからない」 と言わずに調べるくせをつけましょう。自分の病気に
 ついても人任せにしないで正しい知識をつけましょう。

⑨時間外の救急外来に平日昼間のような設備や人員は望めません。コンビニ受診は
 控えましょう。

⑩医療崩壊について調べてみましょう。医療崩壊、医師不足や受け入れ不能事件の
 一因は我々国民にもあることを自覚し、何をしたらいいのか建設的に考えていき
 ましょう。我々非医療者、医療者が協力し合わなければ医療崩壊はくい止められ
 ません。





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