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  2. 2009年01月

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リハビリテーション医療におけるリスク管理

 近年、医療事故・医療過誤・医療訴訟の増加に伴い、医療安全管理 (医療事故防止)・リスク管理が重要視されています。

 リハビリテーション医療においても、リハビリテーション中の 「転倒・転落、骨折等の外傷、熱傷」 や 「脳卒中・急性心筋梗塞・肺塞栓・けいれん発作等の発症・再発」 等が問題視されています。
 「早期リハビリテーション実施」・「高齢患者の増加」・「急性期にて全身状態・原疾患が不安定およびまたは合併症・併存疾患のコントロール不良状態の患者の増加」 等により、リハビリテーション部門においても、以前よりも、急変リスクの高い患者が増えています。
 【関連記事】脳卒中リハビリテーションにおける 「早期離床」

 しかしながら、病院 (特に急性期病院) のリハビリテーション部門の多くが、リハビリテーション専任医師や看護師が常駐しておらず、安全管理や急変時対策が不充分な実態が少なくありません。小規模病院・診療所や介護施設 (老健施設、あるいは特養ホーム) のリハビリテーション部門ではなおさらと思います。
 したがって、(病院といえども) 急変時にすぐ医師 (あるいは看護師) の応援を依頼できない状況も充分想定され、緊急トリアージから初期対応 [BLS (一次救命処置)、ACLS (二次救命処置)] までをセラピストが行わなければならない場面も日常的に生じているものと推測されます。

 上記のような背景のもと、2008年11月に刊行された 「リハビリテーションリスク管理ハンドブック」 は、誠に時機を得たものだと思います。
 リハビリテーションを行う患者には常に急変が起こりうることを想定し、未然にリスクを回避するためにはどうしたらよいか [患者の観察・気づき (リスク感性)]、リハビリテーション室で遭遇しやすい症状・病態とそれらへの対処法、急変した際の対処法 (BLS、ACLS) 等、写真・イラストのビジュアルな面も考慮の上、解説されています。

 リハビリテーション医療におけるリスク管理は、患者さんのリハビリテーション時の安全確保のみならず、セラピスト自身の自己防衛にも繋がります。

 本書は、急性期~回復期~維持期の医療機関・介護施設等のリハビリテーション部門に常備したい1冊として推奨されます。また、セラピスト養成校の教科書・参考書にも適していると思います。値段も4,200円と比較的手頃です。

 以下に、本書の序文ならびに目次 (章のみ) を紹介します。

【序文】
 リハビリテーション (以下、リハ) は身体機能に障害をもった患者を対象に行うものである。高齢者やさまざまな合併症をもつ患者が対象となることが多く、病院内でも比較的急変のリスクが高い患者が多く集まる部門である。さらに、早期リハの必要性が一般にも認知されるようになり、リハの対象患者は全身状態の不安定な急性期患者も多く含まれるようになってきた。そして現代では質の高い医療が求められると同時に、内容の透明性が求められる情勢となり、マスメディアによる医療事故報道が多くなされるなど、医療を取り巻く環境には大きな変化がみられる。こういった背景があるにも関わらず、診療報酬改定ごとにリハの単価の切り下げが続き、健全な病院機能を維持するためにセラピスト一人あたりの稼働率の向上が求められ、時間的・精神的なゆとりをもてないなかでの診療を余儀なくされている。
 また、近年では療法士養成校の新設が盛んであるが、リハというリスクを伴う医療行為を行うにあたり、十分な医学知識が与えられていない卒業生も一部に見受けられる。さらにリハ部門の診療管理をし、リハスタッフの教育をするべきリハ科専門医は日本全国で約1,400名という状況であり、リハ部門の安全管理に従事する医師の供給は十分とは考えにくい。特に小規模病院・診療所や老健施設でのリハ部門など、急変時にすぐ医師の応援を依頼できない状況も十分想定され、緊急性のトリアージから初期対応までをセラピストが行わなければならない場面も日常的に生じているものと予想される。
 リハ部門で管理するべきリスクの内容としてはインシデントと急変などの医学的リスクの2つに分類されると考える。インシデントについては他の書籍に譲り、本書ではリハ中に生じた医学的リスクに対応する手法を述べることとした。内容としては、急変を予測するための情報収集から、その情報を解釈して緊急性の判断ができること、現場で行わなくてはならない応急処置につき紹介している。このため内容は多少の医学的知識を必要とするものとなっている。しかし広い範囲の疾患を対象とするリハの臨床においては本書の内容だけでは情報は十分とはいえない。実際の臨床場面での応用にあたっては、各施設のリハ科医師や処方箋を作成した担当医師と十分なコミュニケーションをとり、リスクの確認をする必要がある。
 本書がリハ医療の質および安全性のさらなる向上の一助となれば幸いである。

【目次】
 第1章 リハビリテーションにおけるリスク管理
 第2章 急変を予測するために
 第3章 疾患ごとのリスク予想
 第4章 どのような急変を生じるか (遭遇しやすい症状とその対処法)
 第5章 急変を生じた場合に
 付録 カルテに使用されることの多い略語


リハビリテーションリスク管理ハンドブックリハビリテーションリスク管理ハンドブック
(2008/11)
亀田メディカルセンターリハビリテーション

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【追記】
 リハビリテーション医療におけるリスク管理については、また別の機会に、様々な角度から、当ブログで詳述したいと思っています。




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脳血管疾患等リハビリ料における廃用症候群の 「外科手術」 とは

 リハビリテーション医療従事者の一部で、脳血管疾患等リハビリテーション料の対象患者である 「廃用症候群」 における 「外科手術」 の解釈に関して、未だ混乱があるようです。
 下記の各資料を用いて考察したいと思います。

(資料1) 脳血管疾患等リハビリテーション料の対象患者 (平成20年度診療報酬改定)
 ア.急性発症した脳血管疾患又はその手術後の患者とは、脳梗塞、脳出血、
  くも膜下出血、脳外傷、脳炎、急性脳症 (低酸素脳症等)、髄膜炎等のも
  のをいう。
 イ.急性発症した中枢神経疾患又はその手術後の患者とは、脳膿瘍、脊髄
  損傷
、脊髄腫瘍、脳腫瘍摘出術などの開頭術後、てんかん重積発作等の
  ものをいう。
 (中略)
 キ.リハビリテーションを要する状態であって、一定程度以上の基本動作
  能力、応用動作能力、言語聴覚能力の低下及び日常生活能力の低下を来
  している患者とは、外科手術又は肺炎等の治療時の安静による廃用症候
  群
、脳性麻痺等に伴う先天性の発達障害等の患者であって、治療開始時
  のFIM 115 以下、BI85 以下の状態等のものをいう。

(資料2) 運動器リハビリテーション料の対象患者 (平成20年度診療報酬改定)
 ア.急性発症した運動器疾患又はその手術後の患者とは、上・下肢の複合
  損傷 (骨、筋・腱・靭帯、神経、血管のうち3種類以上の複合損傷)、
  脊椎損傷による四肢麻痺 (1肢以上)、体幹・上・下肢の外傷・骨折、
  切断・離断 (義肢)、運動器の悪性腫瘍等のものをいう。
 イ.慢性の運動器疾患により、一定程度以上の運動機能の低下及び日常生
  活能力の低下を来している患者とは、関節の変性疾患、関節の炎症性疾
  患、熱傷瘢痕による関節拘縮、運動器不安定症等のものをいう。

(資料3) 呼吸器リハビリテーション料の対象患者 (平成20年度診療報酬改定)
 ア.急性発症した呼吸器疾患の患者とは、肺炎、無気肺等のものをいう。
 イ.肺腫瘍、胸部外傷その他の呼吸器疾患又はその手術後の患者とは、肺
  腫瘍、胸部外傷、肺塞栓、肺移植手術、慢性閉塞性肺疾患 (COPD) に
  対するLVRS (Lung volume reduction surgery) 等の呼吸器疾患又はそ
  の手術後の患者をいう。
 (中略)
 エ.食道癌、胃癌、肝臓癌、咽・喉頭癌等の手術前後の呼吸機能訓練を要
  する患者とは、食道癌、胃癌、肝臓癌、咽・喉頭癌等の患者であって、
  これらの疾患に係る手術日から概ね1週間前の患者及び手術後の患者で
  呼吸機能訓練を行うことで術後の経過が良好になることが医学的に期待
  できる患者のことをいう。

(資料4) 早期リハビリテーション加算の対象患者 (急性発症した脳血管疾患等の
    疾患) (平成16年度診療報酬改定)

 ①脳血管疾患
 ②脊髄損傷等の脳・脊髄 (中枢神経) 外傷
 ③大腿骨頸部骨折、下肢・骨盤等の骨折、上肢骨折
 ④開腹・開胸手術後
 ⑤脳腫瘍などの開頭術後
 ⑥急性発症した脳炎、ギランバレーなどの神経筋疾患
 ⑦高次脳機能障害
 ⑧脳性麻痺
 ⑨四肢 (手部、足部を含む) の骨折・切断・離断・腱損傷
 ⑩脊椎・肩甲骨・関節の手術後
 ⑪四肢の熱傷 (Ⅱ度は体表面積15%以上、Ⅲ度は10%以上)、気道熱傷を伴
  う熱傷
 ⑫多発外傷
 ⑬植皮術後
 ⑭15歳未満の先天性股関節脱臼症 (LCC) の手術後


 基本的に、脳血管疾患等リハビリテーション料の対象患者における廃用症候群 (資料1-キ) の 「外科手術」 とは、胸腹部の手術のことであり、通常、開胸術ならびに開腹術 [資料4-④] のことを指します。
 開胸術・開腹術の一部で、呼吸機能訓練のみで対処できる場合は、呼吸器リハビリテーション料の対象患者 (資料3-イ・エ) となります。
 胸腔鏡下手術・腹腔鏡下手術の場合は、(通常、開胸術・開腹術と同様に、術後廃用症候群として取り扱いますが)、手術侵襲が低く、廃用症候群が生じにくいと見なされると、レセプト返戻 (呼吸器リハビリテーションへの変更勧告等) もしくは減額査定されやすくなります (都道府県によって温度差がありますが・・・)。

 四肢・体幹・脊椎 (整形外科領域:運動器) の手術後 [資料4-③術後・⑨術後・⑩・⑭] は、運動器リハビリテーション料の対象患者 (資料2-アの手術後の患者) に該当します。但し、脊髄障害を呈している場合は脳血管疾患等リハビリテーション料の対象患者 (資料1-イ) に該当します。

 ちなみに、頭部の外科手術後 [開頭術後 (資料4-⑤)] は、脳血管疾患等リハビリテーション料の対象患者 (資料1-イ) に該当します。

 上述の通り、基本的には、四肢・体幹・脊椎 (整形外科領域:運動器) の手術後は、「臨床的に廃用症候群症状が合併していても」、診療報酬上は、脳血管疾患等リハビリテーション料の対象患者における廃用症候群 (資料1-キ) の 「外科手術」 には該当せず、脳血管疾患等リハビリテーション料は算定できません。運動器リハビリテーション料での算定になります。
 即ち、診療報酬上、脳血管疾患等リハビリテーション料の対象患者における廃用症候群 (資料1-キ) は、あくまで、運動器リハビリテーション料の対象患者に該当しない場合に適用できます。
 呼吸器リハビリテーション料との関係は微妙ですが、上述のように、通常、呼吸機能訓練のみの場合は呼吸器リハビリテーション料での算定、それ以外は、術後廃用症候群として脳血管疾患等リハビリテーション料を算定するのがベターと考えられます。


 厚生労働省も、「術後の整形疾患なども廃用症候群として算定してくる例が多く、何でも廃用症候群として算定してくる例が多い」 という認識であり、一時期、「廃用症候群を対象患者から削除する」 という考えでした。リハビリテーション関連5団体等との交渉により、削除案は撤回されましたが、平成20年度診療報酬改定における 「廃用症候群に係る評価表」 (下記参照) の義務化に繋がりました。

●廃用症候群に該当するものとして脳血管疾患等リハビリテーション料を算定する場合は、廃用をもたらすに至った要因、臥床・活動性低下の期間、廃用の内容、介入による改善の可能性、改善に要する見込み期間、前回の評価からの改善や変化、廃用に陥る前のADLについて別紙様式22を用いて、月ごとに評価し、診療報酬明細書に添付すること。

 運動器リハビリテーション料の対象患者の中にも、運動器疾患の廃用症候群とも呼ばれている 「運動器不安定症 (資料2-イ)」 がありますが、整形外科手術後の廃用症候群にはあまり馴染みません。
 そこで、日本運動器リハビリテーション学会は、「社会保険診療報酬に関する改正要望書 (概要版) 平成20年11月12日 外科系学会社会保険委員会連合 (外保連)」 にて、平成22年度診療報酬改定に向けて、「運動器リハビリテーションにも廃用症候群を追加」 という要望を出しています。 (導入されるかどうかは、今のところは懐疑的ですが・・・)。

 以上、現時点では、医療機関において、安易に 「術後の整形疾患など、何でも廃用症候群として算定する」 ことは厳に慎み、また、「廃用症候群に係る評価表」 をきちんと作成することにより、廃用症候群が、脳血管疾患等リハビリテーション料の対象患者から削除されないために、リハビリテーション関係者の不断の努力が肝要と思われます。また、廃用症候群に対するリハビリテーション治療効果等についての更なる強いエビデンスの確立が望まれます。

【追記】
 疾患別リハビリテーション料体系を廃止すれば、上記の件も含めて、多くの混乱
がなくなるのですが・・・。




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