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2009介護報酬改定と2012改定に向けた課題 (老健局老人保健課長)

 日経ヘルスケア2009年4月号 「特集.徹底分析09年介護報酬改定」 に、厚生労働省老健局老人保健課長・鈴木康裕氏に対する、「2009年介護報酬改定について及び次回2012年診療報酬・介護報酬同時改定に向けた課題」 に関するインタビュー記事が掲載されていますので、下記に示します。

● 「処遇改善狙い加算中心の改定に」・「次回改定ではアウトカム評価の導入も」

<質問>
 今改定は基本報酬の一律引き上げではなく、加算の新設や見直しで評価したが、その理由は。


<鈴木課長>
①限られた財源を分配するに当たっては、一律に報酬を引き上げる 「平積み」 方式と、加算によってメリハリをつける 「傾斜配分」 の二つのやり方がある。
 今回の処遇改善を軸とした改定では、後者が適切だと考えた。

 例えば、人員基準よりもスタッフを手厚く配置したり、有資格者を多く雇用している事業所は、そうでないところよりも人件費が高くなっている。
 これを一律配分の平積み方式で評価すると、不公平な面が出てくる。
 業界団体からの要望もあり、今回は加算による傾斜配分を中心に評価することにした。
 また、加算の新設で、有資格者の雇用促進や、介護従事者の定着を図り、ケアの質を上げていきたいという狙いもあった。

<質問>
 人件費が高い都市部での処遇改善を図るため、地域区分の報酬単価の見直しが行われた。
 だが、グループホームや通所介護、特定施設では、逆に都市部の報酬単価がダウンした。


<鈴木課長>
②介護事業経営実態調査の結果を見ると、大半のサービスでは、前回調査と比べて収支差率が悪化していた。
 その中で、グループホームなどのサービスは収支差率が高く出ていた。
 異論もあるとは思うが、人件費の割合を正確に計算して反映した結果だ。

 今改定では、様々な加算を新設したり、見直しも行っている。
 報酬単価が若干引き下げになったとはいえ、加算を算定すれば、単純にマイナスになるとは考えにくい。

<質問>
 施設系サービスや通所系サービスの一部に、認知症ケアを推進する加算が数多く設けられた。
 グループホームとの役割分担は。


<鈴木課長>
③認知症高齢者は今後間違いなく増加し、その症状も多様化してくると考えている。
 リハビリが必要な人もいれば、身寄りがなく、特養に入るしかない人もいるだろう。
 こうした様々なケースに対応するには、グループホームが果たす役割に加えて、各施設や通所サービスの特徴を生かして、役割分担しながら進める必要があると考えた。

<質問>
 次回改定に向けた課題は。


<鈴木課長>
④今改定は、診療報酬との同時改定ではなく、制度改正も伴っていない。
 このため、診療報酬との整合性を取ったり、新たなサービスを創設したりすることは難しかった。
 次回2012年度改定では、これらの積み残した課題を検討していく必要があるだろう。

⑤今改定では、ケアの質の評価に当たり、有資格者や常勤職員、勤続年数の長い職員の割合を基準としたが、介護給付費分科会の議論の中では、これらが指標として完全ではないとの指摘を受けている。
 次回改定以降、プロセスやアウトカムなどの評価をどう組み込んでいくかも大きな課題だ。

⑥また、今改定の3.0%引き上げ分が、きちんと介護従事者の処遇改善に反映されているかどうかを検証する必要がある。
 これは単に給与のアップにとどまらず、例えば夜勤回数の減少など労働条件の改善や、職員の定着率の向上なども含めた話だ。

⑦今後は、将来にわたり、介護保険制度を安定的に持続させていくための議論も必要になるだろう。
 介護保険サービスの総量は、毎年4~5%の伸びを示している。
 これに伴い、被保険者が支払う保険料も右肩上がりで伸びており、このままだと保険料を払えない人が出てくる可能性もある。
 そうなると、介護保険制度自体が崩壊しかねない。

⑧長期的には、介護保険は重度者を主な対象にして、軽度者は財源を手当てした上で、地域の高齢者福祉で対応するなどの議論もあり得る。

 上記に関する当ブログ管理人の考察・結論は、下記の通りです。

(1)今回 (平成21年度) の介護報酬改定においては、「介護給付費の抑制→介護保険料の視点・保険者 (市町村) の視点を重視」 に基づいて厚生労働省が導入したと考えられる下記の事項が批判を浴びています。

 ⓐ新要介護認定制度の導入 (→要介護度の軽度化)

 ⓑリハビリテーションマネジメント加算・「月8回」 問題によるリハビリテー
  ション制限


(2)一方、見落としがちな大問題は、「区分限度支給額の据え置き」 および 「利用者の原則1割自己負担」 と考えられます。

 上記2つの大問題によって、今回の介護報酬の引き上げに伴い、「支給限度額超え」・「1割自己負担額増大」 にて、介護サービス利用者がサービスを利用できなくなるという事態が生じています。

 また、サービス提供者側も、「元々有資格者のマンパワーが豊富な事業所あるいは有資格者を積極的に雇用しようとしている事業所が、様々な加算を取得し、介護報酬を引き上げて、当該事業所の介護従事者の定着を図り、ケアの質を上げて行こう」 とすると、逆に、サービス利用者側において、「支給限度額を超える」・「1割自己負担額増大」 という支障を来たすため、事業者側が加算の取得を断念するという矛盾も実際に生じています。

(3)したがって、介護報酬引き上げの際には、「支給限度額も引き上げる」・「利用者の自己負担額を据え置く、あるいは1割自己負担を廃止する」 という施策を同時に行うべきと考えられます。

 診療報酬の場合も、患者さんにおいて、上記問題と同様な 「1~3割窓口自己負担」 問題を抱えており、やはり、窓口自己負担は廃止すべきと思われます。(但し、モラルハザード防止策は必要ですが・・・)。

(4)上記⑤において、鈴木課長は、2012年度診療報酬・介護報酬同時改定にて、介護保険にプロセスやアウトカムなどの評価を組み込む考えを示しています。

 しかしながら、2008年度に導入された回復期リハビリテーション病棟における成果主義、即ち、 「アウトカム評価」 で、実際に、患者選別・患者切捨てが生じています。

 したがって、介護保険においても、同様に、アウトカム評価に伴う 「サービス利用者の選別・切捨て」 が予想されるため、あくまで、「プロセス評価」・「ストラクチャー評価」 に限定すべきと考えられます。

(5)さらに、問題は、上記⑧で鈴木課長が述べているように、「介護保険のサービス対象者を重度者に限定」、即ち、介護保険からの軽度~中等度の要介護者の切り捨てです。

 同課長は、「軽度者は財源を手当てした上で、地域の高齢者福祉で対応する」 と述べていますが、これまでの厚生労働省の政策立案実行の歴史を考えると、あまり信用できないと思われます。

(6)以上、厚生労働省老健局老人保健課長・鈴木康裕氏に対する、「2009年介護報酬改定について及び次回2012年診療報酬・介護報酬同時改定に向けた課題」 に関するインタビュー記事について論じました。

 2012年度診療報酬・介護報酬同時改定は、日本の医療・介護を抜本的に変える大改定が予想されます。

 厚生労働省への要望として、これまでの診療報酬改定および介護報酬改定の結果的な失敗・失政を踏まえ、且つ、(「財政再建の視点」・「社会保障費削減の視点」・「財務省の視点」・「厚生労働省の視点 (省益・局益)」・「健康保険料の視点・診療報酬支払側 (保険者:国、全国健康保険協会、健康保険組合、共済組合、国民健康保険、後期高齢者医療広域連合) の視点」・「介護保険料の視点・介護報酬支払側 (保険者:市町村) の視点」 ではなく)「国民の安全・安心・納得・満足」 のための 「国民の視点・国民本位」 の2012年度 (平成24年度) 診療報酬・介護報酬の同時改定が望まれます。
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