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「TIA (一過性脳虚血発作) 後の脳卒中」 (半数は24時間以内に発症)

 Japan Medicine (2009/6/10) に、TIA (一過性脳虚血発作) に関する興味深い記事が掲載されていますので、下記に示します。

●TIA後の脳卒中 半数は24時間以内に発症 (ニューヨーク5日・ロイター)

 一過性脳虚血発作 (TIA) 後7日以内に認められる脳卒中の約半数は、最初の24時間以内に起きる-こんな新しい研究結果が示されている。
 この研究結果は、TIA後24時間以内の患者監視を推奨しているガイドラインの正当性を裏付けている。
 研究結果は 「Neurology」 (6月2日号) に、Peter M. Rothwell 氏 (英、Oxford University) らから報告されている。

 今回の結果は、地域住民を対象にした研究 「Oxford Vascular Study」 (英オックスフォード州の脳卒中患者、TIA患者が対象) のデータを解析して得られた。

 初回のTIAまたは脳卒中を発症した1,247人のうち、35人が24時間以内に同じ動脈部位で脳卒中を再発した。
 これら患者のうち25人は、脳卒中再発までに、最初のイベントから回復していた。
 16人は、脳卒中再発までに緊急の医療が必要だったが、抗血小板療法を受けた患者はいなかった。

 初回のTIAを発症した488人のうち、25人がTIA後24時間以内に脳卒中を発症した。
 これら25人は、初回TIA後7日以内に脳卒中を発症した48人の52%を占め、30日以内に発症した59人の42%を占めた。

 初回TIAを発症した患者で、TIA6時間後の脳卒中リスクは1.2%だった。
 12時間後は2.1%、24時間後は5.1%だった。

 また、評価手段として一般的に使われるABCD2スコアは早期の脳卒中再発を予測するのに有用だった。

(参考) ABCD2スコア [Lancet 2007 Jan 27; 369 (9558):283~292]

 A:Age (60歳以上=1点)
 B:BP (TIA後最初に測定された血圧:収縮期血圧140mmHg以上
   または拡張期血圧90mmHg以上=1点)
 C:Clinical features (臨床症状:片麻痺=2点、構音障害のみ=1点、
   その他=0点)
 D:Duration (TIA症状の持続時間:60分以上 =2点、10~59分=
   1点、10分未満=0点)
 D:DM (糖尿病あり=1点)

 7点満点で、
 ◎6~7点:2日間で脳梗塞になる高リスク (8.1%)
 ◎4~5点:2日間で脳梗塞になる中等度リスク (4.1%)
 ◎0~3点:2日間で脳梗塞になる低リスク (1.0%)

 「これは、軽度脳卒中発症後24時間以内に起きる脳卒中再発のリスクを検討した最初の、厳密な地域住民対象研究である。非常に軽度の脳卒中初発後であっても、その直後に重度脳卒中を発症するリスクは非常に高い。このことが今回研究で示されている」 と、発表資料のなかで Rothwell 氏は述べている。

(1)以前の当ブログ記事 [脳卒中急性期医療をめぐる課題と展望 (TIA:一過性脳虚血発作)] にて、下記の 『TIAに関する重要ポイント』 ならびに 『TIA 「べからず集」』 を述べています。
 
●TIAに関する重要ポイント

 (a) TIAの早期診断・治療が脳卒中を防ぐ。

 (b) TIAは、メディカル・エマージェンシーである。

 (c) ハイリスクのTIA患者を早期に診断・治療すれば、脳卒中そのものを起
  こさなくても済むわけであるから結果的に医療経済効果は遙かに高くなる。
   (海外のデータ:TIAを早期に治療すれば脳卒中のリスクは半減する)。

 (d) TIAは、脳にとっての不安定狭心症である (不安定狭心症を放っておい
  たら心筋梗塞になるのと同様に、TIAを放っておいたら脳卒中になる)。

 (e) TIAは、脳卒中予防五段階の崖っぷちである。

 (f) TIAを正確に診断すること。

 (g) TIAは、脳卒中の予行演習である。

 (h) TIAは、48時間以内 (あるいは24時間以内) に評価を終わらせ、治療を
  始めなければならない。

 (i) TIAは、脳卒中の重いものの予備軍である。

 (j) completed stroke よりも、TIAの方が、発症後3か月以内の脳卒中のリ
  スクは高い。

 (k) TIAを疑わせる患者さんには、なるべくその時に、ABCDスコア (下
  記の註を参照) や、脳卒中専門病院であれば頸部エコー、MRI/MRA
  等を行い、その場で 「がけっぷち」 のTIAか否かの診断ができるシステ
  ムをつくること。

(註)ABCDスコア
 (1) TIAが如何に脳梗塞になるかのリスクを調べるためのスコア。
 (2) Oxfordshire Community Stroke Projectが提案した簡易スコア。
 (3) スコア表
   A:Age (年齢) 60歳未満:0点、60歳以上:1点
   B:Blood pressure (血圧) SBP 140、DBP 90以下:0点
                SBP 140、DBP 90以上:1点
   C:Character (臨床的特徴) 片側性脱力:2点
                 脱力ない構音障害:1点
                 その他の症状:0点
   D:Duration (持続時間) 10分未満:0点、10~59分:1点、
               60分以上:2点
 (4) 5点以上は、相当、脳卒中リスクが高いので要注意。

●TIA 「べからず集」

 (a) TIA患者さんに、「良くなって、よかったですね」 と言って安易に帰すべ
  からず。

 (b) TIAでないものを、安易にTIAと言うべからず。(例:失神や意識消失
  発作に対してTIAと診断する医師は多い。実際は重篤な不整脈が隠れてい
  たりするなど、心臓疾患の可能性も含めて考えなければならない)。

 (c) TIAを見落とすべからず。(救急の現場ではいわゆる局所神経症状が出て
  いる 「がけっぷちのTIA」 を絶対見落とさない。「手のしびれ」 もTIAの
  可能性あり)。

 (d) TIAを、「脳卒中の軽いもの」 と安易に言うべからず。

 (e) 「アテローム血栓症や心原性脳塞栓症は重い病気で、それより軽いラクナ梗
  塞、さらに軽いTIAがある」 と安易に思うべからず。

(2)上述の通り、TIAは、メディカル・エマージェンシーであり、早期診断・早期治療が脳卒中を防ぎます。

 しかしながら、日本では、その認識が未だ充分には浸透していないため、患者さん・家族・ハイリスクの方・地域住民のみならず、研修医・開業医・他科医等への充分な啓発・啓蒙が必要と考えられます。
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