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地域リハビリテーション (CBR:community based rehabilitation)

 地域リハビリテーションに関して、「都道府県によって活動の度合いに温度差が相当ある」・「地域リハビリテーションに関する考え方・方向性が、関係者間で異なることが少なくない」・「マンパワー・予算不足等にて、活動の実効性・効果があまり高くない」 等、様々な問題点が浮き彫りになっています。
 本ブログ記事では、地域リハビリテーションの在り方について考察したいと思います。

(資料1) 地域リハビリテーション (CBR:community based rehabilitation) の定義
     (ILO・UNESCO・WHO、1994年)


 地域リハビリテーション (CBR) とは、障害のあるすべての人々のリハビリテーション、機会の均等、そして社会への統合を地域の中で進めるための戦略である。
 CBRは、障害のある人々と家族、そして地域、さらに適切な保健医療、教育、職業および社会サービスが一体となって努力する中で履行されていく。

(資料2) 地域リハビリテーションの定義と活動指針
     (日本リハビリテーション病院・施設協会、2001年)


●定義
 地域リハビリテーションとは、障害のある人々や高齢者およびその家族が住み慣れたところで、そこに住む人々とともに、一生安全に、いきいきとした生活が送れるよう、医療や保健、福祉及び生活にかかわるあらゆる人々や機関・組織がリハビリテーションの立場から協力し合って行う活動のすべてを言う。

●活動指針
 これらの目的を達成するためには、障害の発生を予防することが大切であるとともに、あらゆるライフステージに対応して継続的に提供できる支援システムを地域に作っていくことが求められる。
 ことに医療においては廃用症候の予防および機能改善のため、疾病や傷害が発生した当初よりリハビリテーション・サービスが提供されることが重要であり、そのサービスは急性期から回復期、維持期へと遅滞なく効率的に継続される必要がある。
 また、機能や活動能力の改善が困難な人々に対しても、できうる限り社会参加を可能にし、生あるかぎり人間らしく過ごせるよう専門的サービスのみでなく地域住民も含めた総合的な支援がなされなければならない。
 さらに、一般の人々が障害を負うことや年をとることを自分自身の問題としてとらえるよう啓発されることが必要である。

(資料3) 地域リハビリテーション支援体制整備推進事業 (厚生労働省老健局)

 高齢者が寝たきり状態になることを予防するためには、脳卒中や骨折等による障害発生時においては、急性期リハビリテーション及びその後の回復期リハビリテーション、また、安定期にある場合や廃用症候群に対しては、維持期リハビリテーションというように、高齢者それぞれの状態に応じた適切なリハビリテーションが提供されることが必要である。
 さらに、障害を持つ者や高齢者が、閉じこもり状態となり、老化に伴う心身機能の低下とあわせて寝たきり状態となることを予防し、住み慣れた地域において、生涯にわたって生き生きとした生活を送ることができるよう、保健・医療・福祉の関係者のみならず、ボランティア等の地域における住民が参画して行う、いわゆる地域リハビリテーションが適切に行われることも重要である。
 このような、高齢者等の様々な状況に応じたリハビリテーション事業が適切かつ円滑に提供される体制の整備を図ることを目的として、地域リハビリテーション支援体制整備推進事業を実施するものである。
 地域リハビリテーション支援体制整備推進事業のシステムは、下記の (図1) 参照。

(資料4) 地域リハビリテーション支援体制整備推進事業の現状
     (全国地域リハビリテーション支援事業連絡協議会)

 地域リハビリテーション支援体制整備推進事業が平成12年に始まり、現在、全国に都道府県リハビリテーション支援センターと約300の地域リハビリテーション広域支援センターが指定されている。これまで地域リハビリテーションの拠点施設として、現地指導や研修会の開催、介護予防事業への取り組みなど、様々な活動に成果を上げてきた。
 平成17年度からは国の補助事業から、各都道府県における事業へと移行した。その結果、全国的に都道府県における地域リハビリテーション事業への取り組みは、自主性と独創性を持つようになった。
 同時に介護予防事業や障害者自立支援法のスタートにより、地域リハビリテーション広域支援センターの果たす役割はより重要になってきている。

(資料5) 今後の地域リハビリテーション推進課題
     (日本リハビリテーション病院・施設協会、2007年)


 ①地域リハビリテーション活動課題
  (a) 介護予防の推進
    ◎地域包括支援センターと地域リハビリテーション推進組織との連携
  (b)在宅リハビリテーション推進拠点の確立 (在宅リハビリテーションセンター、
   訪問リハビリテーションステーション等) とその支援 (診療所・「かかりつけ
   医」、介護サービス提供事業所等との連携)
  (c) 地域医療連携 (リハビリテーションの流れ) づくり
    ◎地域リハビリテーション連絡協議会等を発展させた地域連携の推進
  (d) 当事者・市民が参画する地域リハビリテーション活動の展開 (住民組織等へ
    の支援)
 ②地域リハビリテーション推進組織としての課題
  (a) 都道府県全体の意識向上
    ◎都道府県ごとの地域リハビリテーション推進体制の再構築
  (b) 地域リハビリテーション広域支援センターの活性化


 (図1) 地域リハビリテーション支援体制整備推進事業のシステム
地域リハシステム図.gif


 上記に関する当ブログ管理人の考察は、下記の通りです。

(1)地域リハビリテーションの主なタスクは、次の通りです。
 ①急性期リハビリテーションの充実
  ◎廃用症候群の予防、徹底したリスク管理のもとの早期離床・早期リハビリテ
   ーション
 ②回復期リハビリテーションの充実
  ◎在宅を視野に入れた実用的なADL向上を目的とした集中的リハビリテーシ
   ョンと多専門職種による徹底したチームアプローチ
  ◎回復期リハビリテーション病棟の更なる普及と質の向上
 ③維持期リハビリテーションの充実
  ◎生活機能低下予防・介護予防、特に在宅等での訪問リハビリテーション・通
   所リハビリテーション
 ④地域リハビリテーション連携の推進
  ◎急性期~回復期~維持期のシームレスなリハビリテーション連携体制
  ◎地域連携クリニカルパス、地域医療連携室、地域医療連携カンファレンス、
   ケアカンファレンス、情報の共有化 (特に患者・利用者の生活機能に関する
   情報)・IT (情報技術) 化、プライマリケアを担う 「かかりつけ医」 の明確化
   と連携
  ◎「脳卒中モデル」 のみならず 「廃用症候群モデル」 にも対応したシステム
 ⑤予防的リハビリテーションの推進
  ◎健康増進、生活機能低下予防、介護予防 (新予防給付、地域支援事業)
 ⑥地域リハビリテーションを支える人材の確保・育成
  ◎リハビリテーション専門職のみならず、リハビリテーション・マインドを持
   った看護職員・介護職員・介護支援専門員・ソーシャルワーカー等の養成も
   必要。
 ⑦新たなニーズに応じたリハビリテーションの提供
  ◎特に、高次脳機能障害、摂食嚥下障害、認知症
 ⑧テクノエイドサービスの充実
  ◎福祉機器・用具や住宅改修などのテクノエイドサービスの提供、テクノエイ
   ドサービスの拡充とノーマライゼーション社会の実現を目的としたネットワ
   ークの整備
 ⑨地域リハビリテーション、リハビリテーションマインドの普及・啓発活動の推進
  ◎障害のある方、家族、地域住民、医療機関・「かかりつけ医」、訪問看護ステ
   ーション、介護保険施設、居住系施設 (高齢者専用賃貸住宅、有料老人ホー
   ム、グループホーム等)、障害者施設、関係団体 [職能団体 (医師会・看護協
   会等)、住民組織 (患者の会・家族の会・ボランティアグループ等)]、行政 (県
   や市町村、保健所、地域包括支援センター) 等の関係者への啓発
 ⑩NPO法人やボランティアの育成、支援
 ⑪高齢者・障害のある方にやさしい福祉のまちづくりの推進
  ◎バリアフリー、ユニバーサルデザイン
 ⑫ノーマライゼーションの推進
  ◎「高齢者も障害者も子どもも女性も男性もすべての人々が、人種や年齢、身
   体的条件に関わりなく、自分らしく生きたいところで生き、したい仕事や
   社会参加ができる、そうしたチャンスを平等に与えられる」 “みんなが一緒
   に”暮らせる社会が“当たり前”だとする考え方
 ⑬障害者雇用の促進
  ◎社会での役割を担う (社会参加、社会貢献)、生きがい・QOLの向上

(2)資料1の通り、地域リハビリテーションは、CBR (community based
rehabilitation)
、即ち、地域に根ざした (あらゆる) リハビリテーション・アプローチのことです。
 また、資料2・3に記されているように、地域リハビリテーションは、(健康増進~生活機能低下予防~) 急性期~回復期~維持期のシームレスなリハビリテーション連携体制が肝要です。
 しかしながら、地域リハビリテーション支援体制整備推進事業は、厚生労働省の老健局が所掌したため (対象者が介護保険制度の被保険者であり)、どちらかといえば、事業の活動が、維持期リハビリテーション・介護保険リハビリテーション (訪問リハビリテーション・通所リハビリテーション)・介護予防・地域支援事業等に偏っていることは否めません。

(3)資料4の通り、平成17年度からは、地域リハビリテーション支援体制整備推進事業が、国の補助事業から、各都道府県における事業へと移行したため、(都道府県によって温度差がありますが)、予算とマンパワーの不足が本事業の大きな阻害因子となっています。
 また、 「関係機関・関係者 [(1)-⑨参照] の地域リハビリテーション、リハビリテーション・マインドについての理解不足および連携不足」・「リハビリテーション科以外の医師、リハビリテーション・ナース以外の看護師、セラピスト以外のコメディカル等の地域リハビリテーション、リハビリテーション・マインドについての理解不足」 等も同様に地域リハビリテーション活動およびリハビリテーション医療の阻害因子となっています。
 したがって、地域リハビリテーションを推進するためには、上記の方々に対する地域リハビリテーション、リハビリテーション・マインドの普及・啓発活動の推進が重要と考えられます。特に、行政サイドの充分な理解が肝要です。

(4)都道府県によって相当な温度差がありますが、マンパワー・予算不足の現状では、実際の地域リハビリテーション活動は、研修会や技術指導・支援 (主に、地域リハビリテーション概念の普及、脳卒中リハビリテーション関連) 、各種相談事業および介護予防事業を中心とした活動 (運動機能向上・転倒予防・体力向上、口腔ケア、認知症への取り組み等) に限定されている所も少なくないようです。

(5)各都道府県およびその二次医療圏においては、人口・人口密度・高齢者比率、各種医療・介護・福祉サービス医療提供体制、地域医療連携体制、地域リハビリテーション連携体制、リハビリテーション資源、地域リハビリテーションとリハビリテーション・マインドに関する理解度、地域包括ケア体制等々に、かなりの地域差があり、各地域独自の地域リハビリテーション支援体制の構築が必要と考えられます。(熊本方式、尾道方式が有名です)。

(6)上記の通り、地域リハビリテーション活動には、様々な障壁がありますので、資料5のように、日本リハビリテーション病院・施設協会が、今後の地域リハビリテーション推進課題と対策について記しています。

(7)地域リハビリテーションにおいて、当ブログ管理人が一番問題視しているのは、脳卒中の急性期・回復期リハビリテーションの充実 [(1)-①・②] です。(この充実度は、都道府県および各二次医療圏によって相当異なりますが)。
 この項目を挙げた理由は、下記の通りです。

●実際の脳卒中医療において、①不充分な急性期治療・②不充分な早期リハビリテーション・③「医原性」 の二次的合併症・障害 (廃用症候群・過用症候群・誤用症候群)・④不充分な回復期リハビリテーションあるいは回復期リハビリテーションの欠如のため、結果的に障害の回復が不充分なまま、あるいは余計な障害まで作られた上で、介護保険・福祉に受け継がれることが未だ少なくなく、全県的な脳卒中医療、リハビリテーション・ネットワークの構築の必要性が喚起されています。

 上記理由の①には 「患者・家族等の脳卒中発症サインの理解不足による病院受診遅延」 とそれに伴う 「血栓溶解療法 (t-PA) の断念」、②・③には 「急性期病院サイドのリハビリテーション・廃用症候群等についての理解不足」、④には 「急性期病院サイドのリハビリテーションについての理解不足 (急性期病院から、リハビリテーションを充分には提供しないまま、回復期リハビリテーション病棟も経由させずに、そのまま自宅等・療養病床・老人保健施設等に退院・転院させる医療機関が未だ存在します)」 および 「回復期リハビリテーション病棟の数的不足および質の問題」 等の関与が挙げられます。

 地域リハビリテーション活動にて、維持期リハビリテーション・介護予防等をいくら頑張っても、急性期・回復期リハビリテーションが不充分であれば、障害が重度化 (当初軽度障害→結局中等度障害、当初中等度障害→結局重度障害) して、どうにもなりません。片手落ちあるいはお手上げ状態になります。
 したがって、地域リハビリテーション活動として、「脳卒中や骨折等で入院した高齢者等が、発症後早期に適切なリハビリテーションが受けられるように、急性期リハビリテーションの重要性について、医療機関等に働きかける」・「医療機関に回復期リハビリテーション病棟の開設・増床を働きかける」 必要があります。
 但し、上記の働きかけが一番困難なタスクであり (当ブログ管理人も困っていますが・・・)、各医療機関のポリシー、財務事情、リハビリテーション・マンパワー等も絡みます。
 地域リハビリテーション支援事業のマンパワー・予算が潤沢であれば、「当該医療機関へのリハビリテーション・マンパワーの派遣」「充分なリハビリテーション機能を持つストロークユニット (脳卒中専門病棟)・回復期リハビリテーション病棟の開設の促進」、あるいは 「熊本方式等の地域リハビリテーションシステム構築」 等が出来るのですが・・・。(それだけのことをする価値は充分あるのですが・・・)。


 以上、地域リハビリテーションについて、当ブログ管理人独自 (いつも好き勝手な意見かつ長々とした文章で恐縮ですが) の考察を述べてきました。

 リハビリテーション従事者以外の関係機関・関係者 [(1)-⑨参照] の一部に誤解があるようですが、地域リハビリテーションは、単に介護保険下の維持的リハビリテーション (訪問リハビリテーション・通所リハビリテーション)・介護予防のみを指すのではありません。
 真の地域リハビリテーションとは、地域 (二次医療圏) における包括的なリハビリテーションシステム (CBR:community-based rehabilitation) です。
 したがって、「健康増進リハビリテーション~生活機能低下予防リハビリテーション~超急性期・急性期リハビリテーション~回復期 (集中的) リハビリテーション~維持期 (断続的) リハビリテーションまでのシームレスなリハビリテーションが、二次医療圏において円滑に進むようなシステム」 を構築する必要があります。

 また、地域リハビリテーション (CBR) の確立のためには、「緊密な病診連携・病病連携・病介 (病施設) 連携による地域医療連携・地域リハビリテーション連携システムの構築」、「医療保険と介護保険の円滑な流れ・連携」、ならびに、「リハビリテーション・マインドの啓発・啓蒙」 が重要と考えられます。

 但し、地域リハビリテーション活動には、医療制度・診療報酬問題 (疾患別リハビリテーション体系・単価の減額、リハビリテーション算定日数制限、回復期リハビリテーション病棟の成果主義、障害者施設等入院基本料からの脳卒中・認知症患者の除外、後期高齢者医療制度等) ・介護報酬問題 (要介護認定の厳格化、介護給付費の抑制等)・障害者自立支援法 (応能負担→一律1割の応益負担、年収制限の厳格化、障害区分認定問題) 等も大きく影響します。
 したがって、医療難民・リハビリ難民・救急難民・脳卒中難民・認知症難民・介護難民・障害者難民等を防止するためにも、厚生労働省の医療・介護・福祉政策の策定・施行に対して、エビデンスを掲げて、良い意味での影響力を行使するのも、地域リハビリテーション活動の一つと思います。
 また、地域リハビリテーション支援事業の実効性をより高めるためには、当該事業の実施に、厚生労働省の老健局・保険局・医政局・健康局・障害保健福祉部の横の連携・コラボレーションが肝要と思います。

【関連記事】
 ◎脳卒中リハビリテーションにおける 「早期離床」
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 ◎回復期リハビリ病棟への成果主義の導入 (厚労省保険局医療課の見解)
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 ◎平成20年度リハビリ診療報酬改定 (日本リハビリ医学会の総括)
 ◎「入院医療のあり方 (機能分化)」 日本病院団体協議会の提言
 ◎リハビリテーション医療におけるリスク管理
 ◎脳血管疾患等リハビリ料における廃用症候群の 「外科手術」 とは
 ◎「後期高齢者医療制度」 与野党間の不毛な議論
 ◎「リハビリテーション医療のあり方」 日病協の提言
  
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